シネマハウスへようこそ   作:遊馬友仁

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第7章~恋人までの距離(ディスタンス)~②

無事に、二学期最初の収録を終えて、帰宅の準備をする秀明に、亜莉寿が声を掛けてきた。

「ねぇ、有間クン。今日、番組で話した内容のことなんだけど……。私、ちょっと言い過ぎたかな?」

「ん?気に掛けてくれてるの?大丈夫!気にせんといて!」

と、明るく答えつつ、

「帰る準備が出来たから、もし、気になる様なら外で話そうか?」

そう言って秀明は、亜莉寿を放送室の外に出るように、うながした。

二人は、廊下を歩き、放送室から少し離れた階段の踊り場に移動する。

周囲に他の生徒がいないことを確認して、

「で、放送の内容のことやったっけ?」

秀明がたずねると

「うん、ちょっと、有間クンにキツく言い過ぎかな、って……」

亜莉寿がつぶやくと、

「あ~、さっきも言ったけど、マジで気にせんといて!ちょっと嫌がるふりしてるのは、高梨先輩に対する牽制やから」

手をヒラヒラと動かしながら、秀明は笑って答える。

「牽制……?」

「うん、夏休み前の最後の放送は、聞いてくれてる人たちの反応を考えて、取り上げる映画が指定されたやろ?ずっと、それが続くのは面倒やなと思ってて……。番組の方針で、もしもキャラ付けを強要されたら、それを受け入れる代わりに、『新作映画やレンタルビデオの選択は、出演者に一任してほしい』って交渉しようと考えてたんよ」

秀明が、意図を語ると、

「そうなんだ!」

亜莉寿は、声を上げる。

「まあ、交渉材料にするなら、イジられ役を嫌がってる方が、説得力が増すかな、と……(笑)オレが担当してる新作映画は別にいいけど、アリス店長の『レンタル・アーカイブス』のコーナーは、意図を持って作品を選んでるやろ?」

秀明が、ニヤリと笑ってたずねると、

「う、うん」

と肯定する亜莉寿。

「そこに横ヤリを入れられるのは避けたい、と思ってたんよ。でも、交渉に入る前に、先輩の方から作品の選択を一任してくれることを提案してくれて良かった。まあ、あの先輩のことやから、オレが本気で嫌がってないことは、わかってたと思うけど……」

苦笑いしながら、秀明は答える。

「そっか……。でも、どうして、そこまで自分たちでオススメ作品を選ぶことにこだわるの?」

亜莉寿が、たずねる。

「う~ん、さっきも言ったみたいに、新作映画紹介は、ある程度、作品の指定があっても、自分たちが気に入らない映画やったら、ツッコミを入れまくって紹介しても良いと思ってるんやけど……。レンタルビデオの方は、オレ自身が、アリス店長が本当にオススメしたいと思う映画を知りたいと思うから」

少し照れながら、秀明は語る。

「そうなの?」

「多分、アリス店長は、学園モノと言うか、青春映画をチョイスして、レンタル作品を紹介してくれるんじゃないかと思うんやけど……。SF小説を貸してくれた時みたいに、自分が知らない作品なら、新しく知る喜びがあるし、既に観たことのある映画なら、『アリス店長は、どんな風にこの映画を紹介するのかな?』って楽しみがあるから。それを他のヒトに邪魔されたくないな~、と思って……」

頬をかきながら、秀明はつぶやく様に語った。

「そんな風に考えてくれてたんだ……。ありがとう」

ポツリと亜莉寿がつぶやくと、

「いやいや、感謝される様なことじゃないから!」

大げさに手を振って応じる秀明。

「ううん、ありがとうね、有間クン。……でも、本当に全校放送で、あんな風に言われるのは、イヤじゃないの?」

どうしても気になるのか、亜莉寿は、再び疑問を口にした。

「あ~、そのことね。少なくとも、ブンちゃんとアリス店長にイジられることで気分悪くなることはないから、安心して!ブンちゃんとの会話は、いつもの馴れ合いの延長やし(笑)それに、アリス店長……いや、吉野亜莉寿さんにも、喫茶店での会話とかで、いつも、からかわれてるじゃないですか!?」

顔をそむけて、

「言わせんなよ、恥ずかしい……」

と、最後は小声になる秀明。

普段とは異なり、この日は、会話の主導権を取ることが、ほとんどなかった亜莉寿だが、彼の様子をみて、いつもの調子を取り戻し始める。

「あれ~、有間クン。顔をそむけて、どうしたの?もしかして、嫌がってる風を装いながら、吉野亜莉寿さんにからかわれるのを秘かに喜んでいたのかな?」

ニヤニヤと笑いながら、亜莉寿は秀明の顔をのぞき込む。

「べ、別にそんなことは言ってないやん!」

必死に取り繕う秀明の言葉を受け流しながら、

「あ~、ポニーテールの髪型だけじゃなくて、また一つ有間クンの異常な性的嗜好を発見してしまった……。いや、これは、禁断の扉を開いて、開発してしまったのかな?」

一人言の様に、亜莉寿はつぶやく。

「あの、オレはポニテフェチではないし、女子にイジられて喜ぶ性癖なんて持ってないからね!」

必死に自らの潔白を訴える秀明だが、おそらく、目の前の彼女の耳には届いていない。

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