シネマハウスへようこそ   作:遊馬友仁

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第10章~Smells Like Teen Spirit~⑥

午前6時過ぎに帰宅した秀明は、シャワーを浴び、グッタリとベッドに横になると、そのまま眠りに落ちた。

目覚ましによって、午後三時に目覚めた彼は、前日の夕方まで、あれほど楽しみにしていたナリタブライアンの復帰戦を寝起きの冴えない感覚のまま視聴した。

この日のレースで、ナリタブライアンは、春までの圧倒的な強さは見る影もなく、デビュー後はじめてとなる十二着の惨敗を喫した。

 

 

亜莉寿と一夜をともにした(?)日から一週間が経った土曜日、秀明は、昭聞とともに、私立大学の学園祭に参加していた。

この日は、彼ら二人が毎週聞いているラジオ番組の出演者が、映画研究会主催のアニメ上映会とトークを兼ねたイベントのゲストとして招かれていたのだ。

阪急千里線の駅に向かう帰り道、イベントを堪能した二人は、感想を語り合う。

 

「上映会の『パトレイバー2』も良かったし、平野先生とボンちゃんのトークも面白かったし、最高のイベントやったな!」

 

と昭聞が興奮気味に語ると、

 

「そうやな~。『攻殻機動隊』の公開を控えた時期に、春の地下鉄テロ事件を受けて『パト2』を上映したのは最高のタイミングやと思うわ。イベントを企画したヒト、センスあるな~」

 

と秀明も手放しで褒め称える。

 

「こういう学園祭の雰囲気を見ると、早く大学生になって、『面白いことしたい!』って感じになってくるな」

 

日頃は醒めた性格に見える昭聞が、いつになく、ハイテンションで話す様子を見た秀明は、

 

「ブンちゃんは、やっぱり、今日みたいな大学の雰囲気に憧れる?って言うか、もう志望校とか進路とか決めてんの?」

 

と、普段なら、あまり昭聞には聞かないことを聞いてみた。

今日は機嫌が良いのか、昭聞も素直に答えてくれる。

 

「そうやなぁ、前にも話したかも知らんけど、メディア業界の仕事に就きたいって考えてるから、その業界の就職に有利になる大学が中心になるかな?」

「そっか……。みんな、将来のこと、ちゃんと考えてて、エライな」

 

それから先のことを口にこそ出さなかったが、秀明は、校内放送でともに出演している、亜莉寿と昭聞が、すでに確固たる目標を持っていることに対する引け目を感じざるを得なかった。

どこか寂しげにつぶやく秀明の様子を見て、昭聞も、いぶかしげな表情になる。

駅から電車に乗り込み、眺めた車窓には十一月の美しい夕焼け空が広がっていた。

───だが、秀明は心の中に、またも自己嫌悪の黒いマントが広がってくるのを感じた。

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