シネマハウスへようこそ   作:遊馬友仁

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第11章~いつかのメリークリスマス~⑤

「自分の話しをする前に……。まず、今日のことを謝ります。急にウチを飛び出してしまって、ごめんなさい。二人には心配を掛けてしまったと思うし、裕之オジさんにも、お店にも迷惑を掛けてしまって……」

 

彼女の言葉を聞いた博明は、

 

「そうだね。裕之のところには、また明日にでも、謝りに行こう」

 

再び父の言葉にうなずいた亜莉寿は、さらに続ける。

 

「もう一つ。アメリカの高校に行きたいと考えていたことを、今まで話せていなかったことも───。急にこんなことを言い出して、二人を驚かせちゃったと思うから───。今から、私が考えていることを話そうと思うので、聞いてもらえると嬉しいな」

 

今度は、娘の言葉に父が「わかった」と、うなずき、彼の左前方に座っている亜莉寿の母親に

 

「真莉さんも良いかな?」

 

と確認を行う。

 

「ええ、聞かせてもらいましょう。話してちょうだい、亜莉寿」

 

父親とは異なり、母親は冷静さを失わない口調で話している様に感じられ、秀明は自身のことの様に、身構えている自分に気付き、同時に

(がんばれ、亜莉寿)

と、心の中でつぶやく。

亜莉寿は、一呼吸おいて語り出した。

 

「二人には、まだ話したことがなかったけど───。私ね、将来は映画のシナリオライターになりたいって考えてるんだ。そして……」

 

ここで、彼女は、また一呼吸したあと、

 

「まだ、ハリウッドでも実現していない『たった一つの冴えたやり方』とティプトリー・ジュニアの人生を映画化したいっていうのが、私の究極の目標なの」

 

と、語り終えると、「ふぅ~」と息を吐く。

亜莉寿を見守りつつ、彼女の両親の様子を観察していた秀明には、二人が、特に母親の真莉が大きく目を見開くのが見てとれた。

吉野家のリビング・ルームに沈黙が流れる。

それまで親子三人の会話を黙って聞いていた秀明は、亜莉寿が語った彼女の想いを無駄にしない様、慎重に様子をうかがいながら切り出した。

 

「あの、僕の方からも良いでしょうか?」

 

秀明の言葉に博明が反応する。

 

「ん?なんだい、有間クン?」

「はい、亜莉寿さんが、僕をこの場に呼んでくれたこととも関係あるかも知れないのですが……」

 

落ち着いた口調になる様に努力しながら、秀明は語り出した。

 

「夏休みに亜莉寿さんのお母さんと初めてお会いした日のことなんですけど───。あの日は、亜莉寿さんに借りていたティプトリーの小説を彼女に返して、僕が小説を読んで感じた感想を聞いてもらっていたんです。そして、僕がティプトリーの幼少期に興味を持っていると伝えると、亜莉寿さんが、『ジャングルの国のアリス』を読んでみないか、と誘ってくれたんです」

 

秀明の言葉を黙って聞いていた真莉が

 

「そうだったの……」

 

ポツリと、つぶやく。

秀明は、さらに語り続ける。

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