シネマハウスへようこそ   作:遊馬友仁

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第13章~今夜はトーク・ハード~⑩

秀明・亜莉寿・昭聞の三人で行う最後の収録が終わった翌日、すなわち三人が揃って出演した最後の放送日の放課後、秀明と亜莉寿は、今年度の打ち上げと亜莉寿の送別会を兼ねた、ささやかな会合のため、放送室に招待された。

放送部を代表して、高梨翼から労いと感謝の言葉が吉野亜莉寿に贈られる。

 

「吉野さん、番組の出演お疲れ様でした。去年の一学期から今日まで、ホンマにありがとう~。吉野さんのおかげで、良い放送が出来て本当に良かったわ~。あと、海外での生活は大変なこともあると思うから、困ったことがあったら、いつでも日本に連絡してきて~。有間クンが助けてくれると思うから~」

 

放送部の実権を握る上級生は、冗談とも本気とも判断のつかない真顔で話す。

 

「いやいや、そこは、高梨センパイとか放送部が助けてくれるんじゃないですか?主語が間違ってません!?」

 

お約束の様に秀明がツッコミを入れると、

 

「う~ん……。有間クンは吉野さんが困ってる時に助けてあげへんの?そんな冷たいヒトやと思わへんかったわ~。吉野さんに何かあったら、真っ先に飛行機に乗ってアメリカに駆けつけるタイプやと思うんやけどな~、有間クンは」

 

掴みどころの無い性格の上級生は、顔色ひとつ変えずに、壮大な話しを振る。

 

「ボクは、国際救助隊か何かですか?大阪からサンダーバードで行けるのは、せいぜい金沢か富山くらいまでですよ!?」

 

秀明が再びツッコミを入れると、今度は昭聞が反応する。

 

「そんな西日本限定の鉄道ネタが女子に通じると思ってんのか!?『ボケる時は、客層を見ろ』って、いつも言ってるやろ!」

 

秀明も即座に切り返す。

 

「そんなこと、校内放送中に『御先祖様万々歳』とか、オレ以外に全校生徒でも観てる人間がいるかどうかもわからんアニメを例に出して、ドヤ顔でネタにしてくるブンちゃんにだけは言われたないわ!」

 

三人の掛け合いを眺めていた亜莉寿は、クスクスと楽しそうに笑いながら、

 

「ありがとうございます。何か困ったことがあったら、日本に連絡する様にします」

 

と答え、翼の耳元に近寄って

 

「有間クンが、どれだけ頼りになるかはわかりませんけど……」

 

と、囁く様に話す。

 

「ちょっと、小声で言ってるけど、聞こえてるで!」

 

秀明が、警告すると女子二人は、また可笑しそうにククク、と笑う。

そんな会話を続けるうちに、亜莉寿が、名残惜しそうに、

 

「でも、自分で決めたこととは言え、有間クンと坂野クンのトークや放送部の皆さんのお話しを聞けなくなるのは、やっぱり、ちょっと寂しいですね───。ワガママですけど……」

 

ポツリとつぶやいた。

その言葉を聞いた翼は、

 

「もし良かったら、四月からの『シネマハウスにようこそ』の放送内容を録音しておこうか~?パソコンで録音しておけば、電子メールやったけ?それで、録音した内容をアメリカに送れるんじゃないかな~?それが無理でもCDに音源をコピーして郵送する方法もあるし~。できるよね、あきクン?」

 

こんな提案をしつつ、昭聞にたずねる。

 

「はい!放送部のPCに放送した音源を録音しておけば、可能ですね」

 

昭聞も間髪入れずに答えを出す。

 

「ホントですか!?嬉しい!楽しみにします!!」

 

亜莉寿は、心の底から嬉しそうな声をあげた。

 

「じゃあ、電子メールか国際郵便の係は、有間クンにお任せするわ~」

 

今度は、楽しそうに笑いながら、上級生が新たな業務を秀明に与える。

 

「また、ボクですか!?」

 

すかさず反応する秀明に、

 

「だって、前にメールアドレス?っていうのを持ってるって言ってたし───。国際郵便にする必要がある時は、放送部の部費から郵便料金を出してあげるから~」

 

翼は、当然のことだという様に、文字通り放送部の部外者である秀明を亜莉寿への伝送係に指名した。

 

「お気遣い感謝します。しかし、相変わらず部外者でも容赦ないですね。高梨センパイ」

 

そう返す秀明に、亜莉寿が割って入り、

 

「ありがとう!お願いね、有間クン」

 

と、手のひらを合わせたポーズのまま、片目を閉じて、目配せをする。

その様子を見た秀明は、人差し指で、こめかみの辺りをかきながら

 

「まあ、そういうことなら、仕方ないな……」

 

と、つぶやく。

そして、亜莉寿と秀明の様子を眺めていた翼は、満足気な表情を浮かべつつ、

 

「そういえば、吉野さんのこれからのスケジュールは、どうなってるの~?」

 

と、亜莉寿の渡米前後の予定をたずねる。

 

「母親の仕事は、四月上旬から始まるらしいので、三月二十三日に、日本を発つ予定です。向こうの新学年は、九月に開始なんですけど、英会話になれるために、私も四月末か遅くとも五月には、大学で開催される語学研修に参加する予定になってます」

 

上級生の質問に、亜莉寿は、スラスラとスケジュールを答えた。

 

「そっか~。慣れないうちは、大変やと思うけど、がんばってね~」

 

と、翼は亜莉寿にエールを贈る。

そして、やや唐突に秀明に向き直り、

 

「そうそう!四月からの放送のことで、有間クンに話しておきたいことがあるんやけど、ちょっとイイ~?」

と、たずねる。

 

(あらたまって、何だろう?)

と、いぶかる秀明をよそに、

 

「ごめん、ちょっとだけ席を外すね~」

 

と言いながら、秀明にも放送室から廊下に出るよう、うながした。

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