※また、登場人物の一人にはしっかり許可をもらっています。
事の発端は、投稿日から見て先月二十三日の二十三時半くらいの事だった。
その日は母さんが不慮の事故で俺の車の後部座席に灯油を溢したり、仕事の絡みでこれ以上ないというほど疲れていた。顔も知らない、しかしとても仲のいいと断言できるSNSで知り合った友人たちとの通話も切り上げ、『さあ明日はクリスマスだ、関係ねえ仕事だ仕事!』とさっさと寝ようとしていたタイミングで、事件は起こった。
『おー、もしもしバンバ君。桐生だけど』
「あ、お久しぶりです、二ケ月ぶりですかね」
『そうだなー。こないだはうちの若い衆がごめんなぁホント。どうだ、君も一発殴っとく?』
「流石に遠慮しておきます、本人も記憶無くしてますし。
まあ、お酒はほどほどが一番ですよ、ええ」
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桐生さんは、まあ、その、所謂非合法的自営業の人だ。年号が変わった年の夏、ビール缶片手に夏祭りの屋台をぶらぶらと歩きまわって行きついた射的屋で店主をしていた。
その時向こうから『最近の若い子はどういう景品が好みなのかねえ』と話を振られて、ヤイノヤイノと盛り上がった。
『最近だったらやっぱり目玉はSwitchとかですかねえ。ソフト単体でも狙う人は多いかもです。ポケモンとか、ちょっと前にでたモンハンとか。特にポケモンは俺も未だにやってますし』
『対象年齢が高いとか低いとか、やっぱり関係ねえのか。うちのセガレも中学なんだが、よくZのやつとかやってるしな』
『まあでも、大きい分狙う人も多いし、落ちないような細工してたら長い目で見れば客さんは入らなくなりそうだし、仮にとられたら『もう目玉がないのかー』って客足も減りかねませんしねえ』
『そらそうだわな。しかしそうか、ソフトだけじゃなくて本体もか……』
こんな話だったり。
『んー、例えばなんですけど、こちらのカードたちとかも直接狙わせない方がいいっすよ。もしもこれでカードに傷が入ったりして『交換してくれ!』なんて言われたらその分の予備も用意しなきゃいけないですし、それ考えたら的用意した方がいい』
『確かになあ。でもよ、狙いたいものが目の前にあるならそれを狙って躍起にならねえかい?』
『ならそれこそ、『そのカードの絵をコピーした的』を用意した方がいいですわ。なんだかんだ、そういうカードゲームのプレイヤーってのはカードの効果とか把握してるので絵柄だけでも判別ができるので』
『ははあ、成程。オメー先生だなさては! 言うことが一々わかりやすい!』
『そんなわけないっすわー。てか、正直偏見混じってますけど、最近のカードゲーマーとかって、用がなければ特に外出しないとか、仲のいい仲間内や恋人同士でもないとこういう夏祭りとか来たがらない人が多いと思いますよ?』
『ハハハ! そしたら先生はなんで来たんだよ!』
『先生じゃありませんって! ただ、その。人込みとか正直苦手ですけど、人同士の賑わいとか、そんな中から見える花火とかが好きなだけです』
『へぇ、風流ってやつなんかねえ……。九時過ぎたらまたここに来な! 俺らのところ来な! 打ち上げに参加させたらあ!』
『えええぇ……?』
そんなこんなで気が付けば打ち上げに巻き込まれ、あわやテキーラのガムシロ三杯割りとかいうトンデモ劇物を飲まされそうになったり、最後の〆に『ここにいる若いのは全員うちの若い衆だからよ! 仲良くしてやってくれ!』と言われ、『建築屋か施工屋ですか?』と尋ねたら爆笑され『うちらはヤの付く自営業さ!』なんて返答されて頭を抱えたりしながらも、今に至るまで仲良くさせてもらっていた。
まあ、特に金を借りたりその組に入ったりはせずに健全な仲で過ごさせてもらったわけだが。
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「それで、そうしたんですこんな時間に?」
『ああ、そうだな。……バンバ君さ、うちの組の関わり合いのところから、ここ半年くらいで金借りたかい? 二百六十くらい』
「は?」
思考がフリーズする。五秒経ったか、十秒経ったか。心臓が鼓動のペースを上げ、目が回るような錯覚に襲われる。
なんの、ことだろうか。
「いえ全く、全く心当たりがないです」
『だろうなあ……写真と顔が全然違うし』
「どういうことです?」
なんだかハラハラする緊張感に苛まれながら、言葉を発する。
それはそうだろう。覚えのない大金を借りたかとそういう職業の人に尋ねられて動揺するなという方が無理だ。
桐生さんからの言葉をまとめた。
・元友人、仮にAと呼ぼう。彼が桐生さんの関係先からお金を借りた。
・その際の連帯保証人、仮にBと呼ぶが、そいつが俺の名を騙っていた。
・念のため写真を撮っておいたが、桐生さんがその写真を見た際明らかに俺と顔が違ったため、確認として俺に電話した。
こんな具合である。
Aと俺は縁を切っていた。中高時代までは仲が良かったのは間違いない。しかし彼は、高校を卒業して三ケ月でギャンブルに溺れたのである。
唐突に連絡を寄こしてきて、『今月ピンチだから十万貸してくれよ、俺とお前の仲だろう?』とかなんとか言ってきたが、それ以来彼の電話を着信拒否にし、LINEでのチャットでの殴り合いの末に相互削除まで至った訳だが。
そんな過去からの負債がドタドタと追いかけてくるなんて誰が思おうか。
『たぶん、住所は年賀状なんかから知ったんだろうね』
「……確かに、中高時代、年賀状を送りあってましたね。それで、今Aは?」
『高飛びしたらしくて、目撃情報は上がってるから多分C県の方だとは思うんだ』
「そう、ですか」
『いやほんと悪いね。今度詫び入れに行く』
「いや大丈夫です! 家族は俺と桐生さんところが仲がいいって知りませんし!」
『あー、ならそのうち飯を奢ろう』
そんなこんなで疲れ果てて、電話を終えた後自分のディスコード鯖に愚痴とみんなも気を付けてねと注意喚起を書き連ね布団に潜った訳だが。
どうしてこうなった。この言葉に尽きる。
まあ、厄年だし多少はね? とあきらめてもいた。
結婚した友人の夫婦が使ったアダルトグッズの修理。
二トンほどの吊荷が腰を直撃し、男性器に致命傷を負いかけた。
会社の先輩の隠し子案件に全く関係のないことに巻き込まれ、槍玉に上げられた。
そこに来て今回のこれだ。頭を抱えたくもなる。
信じられるか? これ全部一年以内に起きたことだぜ……?
「どうしてこうなった」
俺のどうしようもないつぶやきは、部屋の暗闇と布団に吸い込まれて消えた。
年明け早々、俺が改めて御払いに向かった事は、語るまでもない。
あい、というわけでだいたいノンフィクションでお送りしました。
2020の厄を文字起こしすることで禊したいと思いまして。ハイ。
皆さんも詐欺紛いの事件には気を付けて!
ハッピーニューイヤー!!