東方龍魂伝 ~ Battle of Fantasia   作:龍玉@MUGEN

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ここに来て今更ですが、ミカンさん(仮名)の描いてくれたリュウです。ありがとうございます。

【挿絵表示】

超初期のリュウですけどね。今じゃもう面影もないですが……


紅の狂気、蒼き執念

 霧の湖の上空。

 そこに、互いに睨み合う二体の化物がいた。

 

 一方は、戦いに狂いし化物。

 髪の毛、眉、瞳、着ている服、そして体から放出されるオーラまでもが、常人なら見ているだけで気が狂わんばかりの深紅に染まっていた。

 そして、胸には巨大な穴。これはもう一方の化物に貫かれた痕跡である。しかし、普通の生物であれば生命活動を停止してしまうようなこの傷を負ってなお、その顔面に張り付いたような笑みは解けない。

 

 もう一方は、執念に狂いし化物。

 見た目はベースとなった妖精と何ら変わりはない。ただ、中に潜めし物が違った。

 体は不気味な蒼い光がぼんやりと浮かび、一見すればただの無表情にしか見えないその顔は、近付く者を見えないベクトルで一切寄せ付けない圧倒的な威圧感を放っていた。

 

 風は一切止み、周辺の空気は、二体の化物を中心に完全に凍てついてしまったのではないかという感覚も覚えさせる。

 否、本当に凍てついてしまっているのだろう。

 それ程、その空間には他人が踏み込めない「何か」があった。

 

 

 

「――湖周辺に居た他の妖精達にはどこか遠くへまとまって逃げるように、わかさぎちゃんには湖の支流の方へ逃げてもらうように言ってきました」

「ん、ご苦労だったぜ」

 

 その化物達から数百メートル離れた場所に、霧雨魔理沙、大妖精の二人は居た。

 二人は周辺の者に避難を呼び掛けて回っていたが、一通り済んだので再びこの場へ戻ってきていた。

 魔理沙は、化物達の戦いを引き起こした張本人として。大妖精は、青い化物――元のチルノの一番親しい友として。

 

 数百メートル先に見える、二体を見つめる。

 未だにそこは、完全に凍てついてしまったような空間があった。

 ふと何かを思い出した魔理沙は、大妖精へ問い掛けた。

 

「なあ……以前にも、あいつはあんな感じになった事はあるのか?」

「いいえ、ありません。――一体、何が起きたのか」

「……そうか」

 

 チルノの変化に未だに動揺を隠せない大妖精は、心配そうに二体の方を見ながらそう言った。

 

「そう言うそちらも、龍虎さんの変化は?」

「こっちも見たことないぜ。……と言っても、たかが数ヶ所の付き合いだがな」

 

 逆に問い掛けられた魔理沙は、首を降りながらそう答えた。

 お互いにわからない事だらけで、二体に何があったのかも知らない。

 

「ただ――」

 

 だが、これだけは言えた。

 根拠は何もない。しかし、何故かそう思えた。

 

「――この勝負、どっちが勝っても、この幻想郷に何かしらの爪痕を残すだろうぜ」

 

 

 

「―――オイ」

 

 凍てついてしまった空間を裂き、紅い化物――新神龍虎が問いかけた。

 

「テメェは何物だ」

 

 だが、問いかけられた蒼い化物――チルノの形をした何かは、無表情まま、その場に佇んだまま、一切口を開かない。

 

「……だんまりか。まあ、いい」

 

 龍虎は、少し残念そうに目を閉じる。そして、再び口を開いた。

 

「『所詮この世は弱肉強食 強ければ生き弱ければ死ぬ』……マンガで見たセリフだが――この御時世、本当にそう思わねぇか? この幻想郷は強い奴と人里の人間(かちく)のみが生き残れるように出来ている――」

 

 そして、おもむろに左手を差し向け、

 

 

 

「来いよ」

 

 

 

 誘った。

 その単語が、空間をぶち壊した。

 

『ぎいっ!!』

 

 龍虎の一言からコンマ一秒も経たず、青い化物は動き出した。

 ばっ、と両手を広がると同時に、3つの青い巨大な結界が広がる。

 

『ハァァッ!!』

 

 そして結界から現れたのは――龍。氷で形取られた、胴体の太さは直径5メートルはあるであろう三体の巨大な龍だった。

 

 

『『『グオォォォォォオ!!!!』』』

 

 三体の龍は雄叫びを上げながら、結界から飛び出してきた勢いのまま紅い化物に突っ込む。

 

「またまた大層な物をぶつけてきやがった……なッ!!」

 

 まず左右から襲ってきた二体の龍に、右裏拳、左肘を冷静に打ち込む。

 バキィン!! バキィン!! と、鋼鉄がぶつかり合うような音が周りの空間を叩く。

 そして、ワンテンポ遅れて来た龍へ、

 

「……らッ!!」

 

 バキィィィン!! と、左拳の拳骨。

 その瞬間、三体の龍が、頭から胴体へ連鎖するように砕けていった。粉々に砕けた氷塊は、ダイアモンドダストのように輝きながら散っていく。

 三体の龍全てをそれぞれ一発で破壊した龍虎は、心の中で一息吐く。

 が、直後。

 

「!!」

 

 真下から、()()()()の龍が襲ってきた。前触れも無い唐突な出現に、龍虎はなすすべもなく龍に飲み込まれてしまう。が、龍虎が飲み込まれた直後、その龍の腹部が吹き飛ぶ。

 

「ハァァァァァッ!!!!」

 

 気の放出により、龍虎は無傷で脱出する事に成功した。しかし、息つく間もなく何かを感じとる。

 

「上かッ!!」

『雹符「ヘイルストーム」ッ!!!!』

 

 絶叫とともに出現した蒼白い結界から、氷の弾丸が恐ろしい密度で広範囲に一斉掃射される。

 

「――ッ!!? 大妖精!! もっと遠くへ逃げるぞ!!」

「はっ、はい!!」

 

 魔理沙が、自分の居る位置も弾幕の射程圏内だという事にいち早く気付き、大妖精の手を掴んで全力で駆け出した。

 広範囲へ放たれた弾幕が、ズドドドドド!! という轟音とともに、地上の木々を空襲の如く破壊していく。

 

「ハァ……危うく死ぬ所だったぜ……」

「ま……まったくです……」

 

 轟音が止んだ。

 間一髪逃げ切れた二人は、土煙を上げて無残にも破壊された森を見て、ゾッとする。もし自分たちがあんな物に巻き込まれていたら、蜂の巣どころかミンチにされていたであろう。

 そんな想像をしてしまって、青ざめた所で思い出す。

 あの殺人弾幕の中心にいた、新神龍虎の事を。

 

「リュ、リュウは!?」

 

 元居た場所にも、地上にも、彼女の姿は無い。

 あのスペルカードルールを完全に無視したレベルの密度の弾幕だ、まともに受けたら跡形も無くかき消されてしまっていても何ら不思議ではない。

 

 ――だが。

 

 憎しみに染まりきった表情のチルノの背後を見たとき、アイツはいた。

 ――硬く握った左拳を顔の横に構え、歯を剥き出しにして笑っているアイツが。

 

「リュウ!」

「スペルカード・ブレイクだぜェ!! チルノォォォォッ!!」

 

 龍虎は()()()()()()()

 津波のように、逃げ場も無く圧倒的スピードで襲い掛かってきたあの弾幕を、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ぅおらァ!!!!」

 

 チルノの背後を取った龍虎は、チルノの脳天を目掛け、左拳を思いっきり降り下ろす。

 完全な不意討ち。不可避。

 そう思われた。

 が。

 

 

 

 降り下ろした拳は、虚空を切った。

 

 

 

「なッ……!?」

 

 チルノの姿が、音も無く消えていた。

 否、消えたのではない。

 ――奴の貼り付いたような笑顔は、龍虎を肩の後ろから覗くようにあった。

 

「またかっ! リュウ、後ろだ!!」

 

 魔理沙が叫ぶ。

 だが、本気で殺しにかかって来ているチルノの行動の速さに、今度こそその叫びは

遅かった。

 

『殺ッ!!!!』

 

 ドゥン!! という衝撃音。

 

「が……っ!」

 

 龍虎の後頭部に放たれた一撃は、魔理沙に放った物の数倍の威力を持っていた。

 龍虎はそのまま、地上へ隕石の如きスピードで叩きつけられる。そのあまりの衝撃に、落ちた場所を中心に岩盤が崩落した。

 

「ああっ……!!」

「だ、大丈夫かっ!! リュウーーーっ!!」

 

 ――想定していた、最悪の事が起こった。

 勝利を確信した蒼い化物の高笑いも完全に無視して、魔理沙は思わず龍虎が落下した場所へ駆け出した。

 

「なあ、おい! 返事をしてくれ!! リュウーーー!!」

 

 魔理沙は、土煙舞う崩落した場所を上から覗く。

 崩落は直径百メートル近くにまで及んでいた。どれだけの衝撃が龍虎の後頭部を襲ったのかが、ダイレクトに伝わる。

 これ程までの衝撃を、頭という急所に、だ。

 上空の蒼い化物の高笑いが止まない。

 魔理沙と大妖精が、最早彼女の事は絶望的だと思いはじめていた。

 

 だが、三人は忘れていた。

 

 龍虎が、()()()()()()という事を。

 

 ズバババババッ!! と、音が聞こえた気がした。

 魔理沙がそれを疑問に思う前に、ゴッ!! と、爆風とともに一気に土煙が晴れる。

 吹き飛ばされそうになった彼女だったが、なんとかその場で堪えた。堪えた所で、爆風の中心に、とある人物を見た。

 

 崩落した場所の中心。

 瓦礫の上に立ち、チルノへ向け両手を構えた、新神龍虎がそこにいた。

 

「烈符『バーニングアタック』!!!!」

 

 宣言とともに、赤いオーラを帯びた高速の気弾が、チルノへ向け一直線に放たれた。

 

『――ッ!!? グッ……』

 

 いきなり飛んできた高速の気弾に、高笑いをしていたチルノは不意を突かれる。だが、間一髪で身を翻すことによりすれすれでかわす。

 そのまま一直線に飛んでいった気弾ははるか上空の入道雲に入り――

 

 

 

 ――閃光を放ち、入道雲を跡形も無く消し飛ばした。

 

 

 

 そのあまりの威力に、チルノは不覚にも呆気にとられた。

 遠くに見えるため小さく見える雲だが、実際にはとてつもなく大きい。だがそれを、あの気弾は一瞬にして消し飛ばした。もしあの気弾をあの状況で喰らっていたならば、間違いなく雲のように消し飛んでいたのは自分だ。

 そう考えて、チルノは背筋が凍る。

 背筋が凍った所で。

 

 ポンポン、と肩を叩かれた。

 

 反射で、思わずチルノは振り向いてしまう。

 新神龍虎(アイツ)だと、分かっていた。それでも、無音で背後を取られた恐怖で、思わず振り向いてしまった。

 思惑通り、そこには凶悪そうな笑顔をした新神龍虎がいた。同時に、肩に置かれた右手から立てられた人差し指が、いたずらっぽくチルノの頬に触れた。

 そして。

 

「帝符『デスビーム』」

 

 ズッ、と。

 

「ガッ――」

 

 チルノの左頭から、赤い光線が飛び出た。

 

「ァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 脳髄を貫かれたチルノが、頭を抱えて絶叫する。

 今回は、完全に不意を突かれた。

 貫かれた箇所は瞬時に元通りになったが、それでもまだ、頭を焼き切られたような痛みは消えない。

 両耳を塞いでチルノの絶叫を五月蝿そうにしていた龍虎だったが、我慢の限界だったのか、怒り気味にチルノの口を鷲掴みにし、持ち上げた。

 

「あーうるせぇうるせぇ、実験動物ごときが喚くんじゃねぇよクソったれ。脳ミソよりもその喉笛をかっ消した方がよかったか?」

 

 チルノは口を押さえている腕に両手で掴みかかったが、ピンと張った吊り橋のワイヤーのように、びくともしない。

 

「離さねぇよ、ギャーギャー喚くオマエが悪いんだ。オマエ、妖精だろ? だったら窒息程度で死ぬことはねぇだろ」

 

 龍虎は掴む手に、チルノの顔を握り潰さんとばかりに力を込める。

 メシメシメシ!! と耳に聞こえる程に顔を絞められ、チルノの表情が苦痛に歪む。

 龍虎はそのまま、世間話でもするような口調で喋り出す。

 

「――それにしても、オマエはよく働いてくれたなァ。お陰でこの状態の時の体の耐久力がよーくわかった。わざわざ全力でやってくれるなんてな――おいおい、そんなに驚いた顔すんなよ? ああ、そういや説明してなかったな。オマエの思考は、こうして直接触れている事でリアルタイムで伝わってくる。無論、オマエが全力でやってたのも分かるぜ。まあこれも、気の操作の一環だ」

 

 元居た場所に戻ってきた魔理沙含む二人は、龍虎が喋っているのを不思議そうに見ていた。

 

「なあ、リュウの奴、一体何を話してるんだ?」

「さあ……でも、なんだかすごい楽しそうに話してますね」

「ちょっと近づくか?」

「……そうしますかね」

 

 龍虎は普通の話し声程度の声量で話しているため、その声は軽く一キロ近く離れている彼女達には聞こえていない。話の内容が気になった彼女達は近づく事にしたが、戦闘に巻き込まれる可能性もあるため、ビクビクしながらぎこちない動きで移動を始める。

 そんな彼女達を他所に、龍虎は淡々と話を続ける。

 

「話戻すが……最後の一撃はなかなかよかったぞ。流石のオレも脳がぐらついたな。ん? でもオレ心臓なくても元気ハツラツなワケだし、そういうのあんま関係ねえのかな? もしかしたら脳ミソグシャグシャにかき混ぜられても動けるのかもな。ハッハハ、これじゃまるでゾンビじゃねぇか。もしかして本当にゾンビだったりな――」

 

 チルノは掴む腕を凍らせようと冷気を送り続けているのだが、何故か凍りつく気配は全くと言っていい程ない。なすすべの無い彼女は、龍虎が一方的に喋る様子を忌々しげに睨み付ける事しか出来なかった。

 

 唐突に、喋り続けていた龍虎が、何かを思い出したかのように話を中断した。

 

「おっと、ちょっと話しすぎたかな。本題から脱線しすぎちまったな。ということで話を戻すが――」

 

 龍虎はつまんなそうに、頭をポリポリと掻きながら告げる。

 平坦な口調で、()()()()()()()()

 

 

 

「オマエはもう、攻撃しなくていい」

 

 

 

「「なっ……!?」」

『~~~ッ!!』

 

 その言葉で腹立たしさが頂点に達したチルノは、両手を腕から離し、龍虎の顔面に目掛けて冷気弾を放った。

 気弾は避けられる事無く両頬に命中し、頬から後頭部にかけてを凍らせる事に成功する。

 が。

 氷は、超高温の金属に当てられたように、一瞬で蒸発してしまった。

 

「ほらな、この通りだ。オマエの本気はもう十分にわかった。どうせこれぐらいの事しか出来ねぇんだ、無駄だということぐらいわかるだろ?」

『ーーッ!! ーーーーーーーー!!』

 

 チルノは押さえられた口で必死に叫びながら、死に物狂いで冷気弾を乱射し始める。

 煙ではなく、水蒸気が立つ。

 冷気弾の連射が止み、水蒸気の中から無傷の龍虎の顔が現れる。

 

「だーかーらー、もう何もやらなくていいっつったろ。しつこいぞオマエ」

 

 チルノの顔から、一気に血の気が引く。今の彼女の心情は、蛇に呑まれる蛙そのものだった。

 圧倒的強者。食物連鎖の上位。絶対なる絶望。それに見入られた自分。

 彼女の純粋なる復讐心は、今ここで塗り替えられようとしていた。

 

「今後はこっちが攻撃する番。ということで、オマエは今から妖精サンドバックちゃんだ。殴られるのが本業だからな。自覚しろよ?」

 

 一方、龍虎はそんな事はお構い無しに、殴りかかる準備を始める。

 今の龍虎に理性など無かった。あるのはただ、破壊衝動という名の狂気のみ。チルノの事は当然、殴る物としてしか見なしていない。喋りかけていたのも返事など求めていない。人間の言葉が喋れない犬や猫に、一方的に話しかけるようなものだった。

 

「さーて、こっからはちょっと本気になるぜ。初めて本気を引き出すからな、力加減が上手くいかんかもしれん」

 

 掴む右手を持ち上げながら、左手を握りしめて腰に据え、

 

「――勝手にくたばんなよ?」

 

 右手を放した。

 直後、

 

 

 

 狂宴が始まった。

 

 

 

 ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!! という絶え間ない、爆撃のような破壊音が空間を打ち鳴らした。

 

「「!?」」

 

 直後、体全体を叩くような衝撃波が魔理沙達を連続して襲った。

 

「なん……だっ?」

 

 龍虎による、拳と蹴りの猛打が始まったのだ。だが、あまりにも人知を超えたスピードであったがため、魔理沙達には龍虎の姿はただ赤い影がブレているようにしか見えない。

 ゼロ距離でガトリングガンを射たれるような強烈な猛打に、チルノは交通事故のモニターになった人形のように身を投げ出す事しか出来ない。

 拳を受ける度に、彼女の四肢が力無く波打ち、衝撃波が拡散する。

 

「――うらァ!!」

 

 龍虎の気合いの一声とともに、止めだと言わんばかりの強烈な一撃がチルノの胸にクリーンヒットする。

 

『ごっふぁ!!?』

 

 チルノはそのまま一直線に吹っ飛んだが、さらに高速移動してきた龍虎の前蹴りが腰に命中し、回転しながら上空へ飛ばされた。

 そしてチルノが、辛うじて体制を立て直した所で。

 

「帝符『エンペラーデスビーム』!!」

 

 ズン!! と、赤い閃光が彼女の胸を貫いた。

 

「フヒッ――」

 

 そして、上空へ指を指したままの龍虎は、口元を裂けんばかりに引き上げ、

 

「ハッハハハハハハハハハハハハハーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!」

 

 狂ったように、連続で光線を放った。

 ズドドドドドドドドドドド!! という目にも留まらぬ連射は、ただの乱射のようにも見える。しかしよく見ると、右膝、首、左肩、右掌……とピンポイントでかつ全体をまんべんなく射ち抜いていっていた。

 チルノもフル稼働で再生能力を行使し、体に空いた穴を次々に塞いでゆく。

 

 その様子をただ見つめていた大妖精が、でも……と魔理沙に話しかけた。

 

「……確かに、龍虎さんの猛攻はこの世の生物とは思えない位に凄いです。でも、チルノちゃんはすぐ回復してしまいますよね。だとしたら、この状況は一様に龍虎さんが有利とは言えないのかもしれないですね」

 

 投げ掛けられた質問に対し、魔理沙は化物の死合いを真剣な眼差しで見ながら答える。

 

「――大妖精、お前、『自切』って知ってるか」

「『自切』? 蜥蜴とかザリガニとかが、天敵に襲われた時に自ら尻尾や腕を切り落とすやつですか?」

「その通りだ。今回は蟹を例に挙げて説明するが……蟹に挟まれた時に、そいつを無理やり放させようとすると、腕だけ残して『自切』するだろ?」

「ですね。蟹にいたずらしようとすると、だいたいそうなります」

「その『自切』をするとき、そいつ自身はあまり痛みを感じないそうだ。常識的に考えてもそうだろう? 死ぬか死なないかの瀬戸際に一々『痛いからやりたくない』とか考えていたら元も子も無いぜ」

 

 魔理沙は視線を変えぬまま、得意げに説明を続ける。

 

「でもな――人為的に腕を取ろうとすると、痛みを感じるらしいんだ」

「え?」

「結果的に脱皮を重ねる内に再生していく事には変わり無いんだが――要するに、『()()()()()()()()()()()()()()()』、たったそれだけで『()()()()()()()()()()()』が大きく左右されるんだ」

「……なるほど」

「これにチルノ(アイツ)を当てはめるとすると、前者が覚醒前にリュウと互角に渡り合ってたアイツで、後者が今のアイツだ」

 

 そう、肉体は回復できたとしても、体力までも回復できるわけではない。そのため、チルノは破壊される箇所を肉体とは別とみなす事でダメージを回避していたのだ。覚醒前に見せていた、自身を殴らせて相手の動きを氷で封じ込めるはこれの応用である。

 しかし、烈符『バーニングアタック』から完全にペースを取られてしまった彼女はそれが出来ず、龍虎の一撃一撃がその(ライフ)を確実にじわじわと刈り取っている。

 

(しかし――)

「ックハハハハハハハハハハハハーーーーーーーッッッ!!!! このままじゃテメェ、白アリに喰われた木材みてぇにスッカスカになっちまうぞォ!!?」

 

 狂ったように光線を撃ち続ける龍虎。

 その様子を冷静に見ているように見える魔理沙だったが、実は内心でかなり焦っていた。

 

(ここら一帯に冷気を感じる辺り、既に例の『相手の動きを察知する空間』は発動しているのだろう。しかも、アイツはその気になれば私のマスパも完全に防いだバリアも張れるはずだ。――だが、アイツはそんな万全の態勢でも受けきれてない。それはつまり、それ程にリュウの攻撃が速く、重いという事だろう。しかも――)

 

 魔理沙は忌々しげに龍虎を睨みつけ、歯をくいしばる。

 

(――リュウが覚醒した直後は気が動転していた所為だと思っていたが……あの時から鳥肌が立ったまま治らない! しかも今じゃ身震いまでしてきちまった……! 一体何なんだこれは! 恐怖? 恐怖なのか? リュウに対する? じゃあ一体――)

「アイツは……」

「――ハ」

(――アイツはどうなっちまったんだ……?)

 

 リュウの放つ光線の一つが、チルノの顔面を貫いた。

 直後、

 

 

 

「飽きた。」

 

 

 

 直径5メートルがあるであろう巨大な赤き霊力玉が、今迄とは逆の左指から形成された。

 

「!? なんだあれは!? あんなバカでかい霊力玉は初めて見たぞ!!」

 

 貼りついたような笑みでチルノを見上げ、紅の化物はスペルカード宣言をする。

 死神が、死を諭すように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊銃『レイガン』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




龍虎さんが最高に「ハイ!」ってやつになった記念にいろんな技をぶち込んでみました。無論全部ドラゴンボール。
今後増加予定。
性能については後で活動報告に載せます。

・烈符「バーニングアタック」
 未来トランクスの技。原作ではメカフリーザ戦で使用。これを避けようとしてメカフリーザが飛び上がったところを、剣で真っ二つにした。

・帝符「デスビーム」
 フリーザの技。いろんな場面で使用。場面によって爆発したり貫いたりと性能が変わる。

・帝符「エンペラーデスビーム」
 ゲーム「ゼノバース」でのゴールデンフリーザの究極技。技力ゲージが尽きるまでデスビームを連射する。
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