俺は自分の書いた小説に対して物書きとして最後まで責任を持つからよ……英雄になれ、ライナー…
これは、原作者という名の“神”から愛された男“ライナー・ブラウン”のあったかもしれないもう一つの物語。
ある日のこと。俺、ライナー・ブラウンは戦士候補生のファルコと共に、ファルコの兄コルトが用意した車でリベリオに向かうところだった。
「ブラウン副長、車の用意できました!」
「おう。じゃあな」
「えぇ、元気で」
その場にいたピークとガビに別れを告げ、ファルコと並んで建物の出口の方へ歩く。
「なんか静かですねぇ。街の中には軍もいないし本部とはえらい違いだ」
「ああ。マーレの戦力は軒並み向こうに回してんのかもな」
「まぁ、そんなのもう関係ないですけどね」
「上機嫌だな」
「そりゃそうですよ。みんな助かるし、兄さんも頑張ってたし、俺も頑張らないと」
なんだかんだあってエルディア人とマーレ人は共存の道を選び、パラディン島勢力との戦争は終結した。死ぬはずだったコルトも何故か生きている。大事なので2回言うがなんだかんだあったのだ。詮索しないでくれ。
「あぁ」
そうだ。俺たちが今まで積み上げてきたもんは全部無駄じゃなかった。これからも俺たちは進み続ける。
※来週は夕方5時00分からお送りします。
建物から出た、ちょうどその時だった。
車のブレーキ音が横から聞こえた。振り向くとその先には、ヒットマンの放った銃弾が俺たちに向けて迫っていた。
〜〜〜
「というわけでお前さんは死んでしまった」
気づいた時には空の上にいた。畳らしきものが宙に浮いていて、そこに俺と神の名乗る老人が向かい合って座っている。
「ちょっとした手違いで君の命日を本来よりも早めてしまった。本当に申し訳ない」
深く頭を下げた神はことの経緯を説明した。どうやらこの老人が誤って俺の人生を書き換えたせいで、あの日ヒットマンに襲われて本来の寿命より早く死ぬことになったらしい。
「……あぁ、そうだな」
いずれ来る死が少し早くなっただけのこと。俺はその事実をありのまま受け入れることが出来た。
「えっと、名前はライナー・ブラウンくん。享年は21歳…」
神は手元の書類と俺の顔を交互に見つめ怪訝な表情をしていた。書類にはちょうど4年前の頃の俺の顔写真が載っている。
「君ほんとに21?」
「そうだ」
写真に写るさわやかナイスガイとは違って、今の俺はすこぶるダンディだ。疑われても「仕方なかった」ってやつだ。
そんなことよりもっと聞きたいことがある。
「俺はこれからどうすればいい?」
「すぐに生き返らせる」
「今、何を……」
その言葉を聞いた瞬間、酷い目眩がした。両手で頭を押さえ、その場で崩れ落ちる。
その言葉は俺が一番聞きたくないものだった。俺は死にたかったんだ。元の世界に戻るなんて嫌だ。
「どうして…お前らは……俺を死なせてくれないんだ!」
「あ、生き返ると言っても元の世界に生き返らせることは出来んのじゃよ。そういうルールでな。別の世界で生き返ってもらいたい」
「え……」
___こうしてライナーの新たな冒険が始まる!
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「待っ───」
再び目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界。
あの後、神によって否応なく異世界転生させられ、この世界で第二の人生を始めることになった。
しかし一体今の俺にここで生きていく意味はあるのだろうか。
「まぁ、変な格好」
「それになんて暗い顔なんだ。見てるこっちまで暗くなる」
街に着いたものの、どうやら通行人から距離を置かれているようで話しかけづらい。この格好のせいなのだろうか、心ない陰口に顔を曇らせる。
「約束が違うわ!代金は金貨一枚だったはずよ!」
路地裏で何やら声が聞こえる。行く当てもないのでとりあえず声のする方へ向かうことにした。
「なにを言ってやがる。確かにこの水晶鹿の金は───」
「あ…」
その場にいた男女2人組と目が合った。状況から察するに商品の受け渡しで揉めているようだ。
「なんだてめぇ?俺たちになんか用か?」
「もしかしてこいつらの仲間か?」
「あ、いや…人違いです」
男たちから険悪な目を向けられ、どうにも居心地が悪い。
今の俺は世界を救う英雄でも頼れる兄貴面した兵士でもない。もう面倒ごとに関わるのはごめんだ。
そう心の中で吐き捨て、元の道を引き返そうとする。
しかし俺の中の“悪魔”はそれを許さなかった。
〜〜〜
『ライナー、君は英雄になるんだろ』
それは過ぎ去りし日の記憶。まだ純粋で世界を救う英雄になれると信じていた頃。辛い訓練に挫け、涙を流す俺にかつての“相棒”は言った。
「勘弁してくれよ」
なぁベルトルト、どうしてお前は今でもそうやって俺に戦士の頃を思い出させるんだ。
俺はまだ進み続けなきゃならないのか。
『そうだ』
不意に耳元で囁き声がした。
その声をよく知っている。決して忘れることのできないあの男の声。その声の方へ恐る恐る振り向く。
「………エレン」
その目は俺に立ち止まることを許さないでいる。あぁ、分かってる。
始祖奪還計画が始まったあの日。英雄になりたい一心で作戦を無理やり続行させ、壁を破壊したあの日から積み上げてきた罪、その責任を未だ果たせていない。そうお前は言いたいんだな。
そして目の前の"悪魔”は甘く囁いた。
『これは、お前が始めた物語だろ』
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「さっきは助けてくれてありがとうございました。お名前は…」
「ライナー・ブラウンだ」
あの後のことはよく覚えていない。ただ何となく覚えてるのは、一時的な衝動に駆られて男たちに飛びかかりを女2人を逃したこと、そして激昂した男たちに呆気なく返り討ちにされ意識を失うまで殴られ蹴られ続けたこと。
暫くして様子を見に戻ってきた彼女たちに血塗れで倒れている姿を発見され、このとある宿屋へと運び込まれたようだ。行く当てがないと伝えると快く宿屋の手続きをしてくれた。おかげで今何とか飯にありつけている。
「しっかし驚いたわねー。あんたさっきまでボコボコにされて倒れてた割にはピンピンしてるじゃない、ほんとに何者?」
「………」
「お姉ちゃん、ブラウンさんに失礼だよ」
いや、いいんだ。俺は中途半端なクソ野郎で、全部俺が悪いんだ。疲弊しきっていた身体とはいえ、たかがチンピラ2人に倒されたあげく、こんな年端の行かぬ女の子に助けられた本当にどうしようもない人間だ。
「それよりここを紹介してくれて助かった、えっと…」
「私はエルゼ・シルエスカ。そしてこっちは双子の妹のリンゼ・シルエスカよ。名前呼びで構わないわ」
「エルゼにリンゼか。俺も名前で構わない」
長髪の方がエルゼ。短髪の方がリンゼというらしい。
事情を聞けば、数日前にとある物品を渡す依頼でこの街に来たようだ。といっても正規の取引をしなかったために、つい先程のようなトラブルに発展してしまったのだが。
「そういえばライナーさんはなんでこの街に来たんですか?」
「理由か。言葉にするのが難しいが、一言で言えばそうだな…」
ふと記憶に蘇るのは、あの「宣戦布告」の日の出来事。膝をついて死を懇願する俺に、奇しくもリベリオで再開した”あいつ”は手を差し向ける。俺と同じだというあいつの言葉の意味を今となって理解できる。
___自分のした行いや選択した結果に対して、
___自らの意志で地獄に足を踏み入れた者として、
___最後まで責任を果たす。
たとえその地獄の先にさらなる絶望が待ち受けていようと、
『俺たちは進み続ける』
〜〜〜
「ふふふ、うまくやっているようじゃのう」
ちょうどその頃。天の上で彼らを見下ろす男の姿があった。筆を走らせ、紙面に生気を吹き込んでいる。そこにまた別の男がやって来た。
「先生、進撃の最終巻描き終わりそうですか?」
「あぁ、後ちょっとで終わりそうじゃから待ってくれんかのう〜」
男は再び筆を取り、最後にこう一行書き加える。
___物語はまだ始まったばかりである!
主人公 ライナー・ブラウンについて
「進撃の巨人」に登場するキャラクターでエレンたち壁内人類にとっては敵となる「鎧の巨人」の正体。作中では原作者の寵愛を一身に受け散々な目に遭う。
これまで犯した罪の重さに苛まれ何度も自殺未遂を繰り返していた。前世での強迫観念からか、異世界に来た後も自分の意志で地獄に足を踏み入れ続けている。
中の人は某止まるんじゃねぇぞ…の団長も担当している。最近ではアニメの影響もあり、シャニマスやひぐらしの世界に転移しているようだ。ライナークロスオーバー 流行らせゴラァ!