姉妹艦隊 『シャルンホルスト』と『グナイゼナウ』 作:シャルとグナ
二組の凸凹姉妹の『グレードアトラスター』への挑戦が始まった。
最初はカルトアルパス港の海の見える喫茶店が舞台。
さてはてその勝敗は? ご期待下さい。
神聖ミリシアル帝国の表玄関カルトアルパスには列強十一国会議に出
席する各国代表とそれを護衛する艦隊が次々と入港していた。
「第一文明圏 トルキア王国 戦列艦7、使節艦1 8隻入港。」「第
一文明圏へ誘導しろ。」
「第一文明圏 アガルタ法国 魔法艦6 民間船2 到着。」次々と入
港する艦隊の中、只一隻ではあったが辺りを睥睨する勢いで入って来る
戦艦があった。
問題の「グラ・バルカス帝国」、『グレード・アトラスター』である。
港湾職員は「グラ・バルカス帝国」の謀略など全く知らされておらず職
務に忠実に『グレード・アトラスター』を定位置に誘導した。
誘導された『グレード・アトラスター』の航海艦橋で誘導に若い新任
操舵士が応じられるか少し心配だった艦長のラクスタルは無事に指定位
置で錨を入れられ満足した。
右隣りを見ると何時の間にか二隻の戦艦が停泊していた。
「いつの間に・・・。」ラクスタルは副長に訊ねた。
「いえ、私も気が付きませんでした。 しかし何処の戦艦でしょう。
あれだけ端正な艦はそんじょそこらの国では造れませんよ。」副長が良
い物を見たという感じでいった。
「確かに美しい艦だ、しかし艦尾の形状は見た事の無いものだ。
帆船クルーザーを思わせる。 速度も出るのだろうな。 ついでに艦
長が女だったら文句なしだな。」
実際に会議場で世界に降伏を求める役目が無いお留守番であるラクス
タル達はお気楽だった。
「しかし隣の戦艦、確かに美しいが主砲は少し小さいみたいだな。
対空兵装は充実しているようだが、今回の敵としては小物だな。」ラ
クスタルは隣の戦艦を見下した。
「艦長、副長、ちょっと、ちょっと」隣の戦艦を双眼鏡で観察してい
た士官が二人を呼んだ。
隣に停泊した外国艦を観察するのは決して非礼なものではない。
海外で外国艦と接近出来る場合お互いに情報収集するのは当たり前の
事である。
先程、隣の戦艦を見下したラクスタルは自分が何を見落としたか、気に
なって士官の差し出す双眼鏡を受け取り指し示す方向を見た。
「おっ、こりゃあ、ウン、あの戦艦は『グレード・アトラスター』より
強いかも!」ラクスタルの豹変に副長も双眼鏡を構える。
「確かに、少し主砲(胸)は小さいが破壊力は抜群ですね。国籍は・・・
ロデニウス連合王国ですか…。」副長が述べた国籍にラクスタルは反
応した。
<ロデニウス連合王国は確かパーパルディア皇国を解体した連中だ。
我々であれば皇国を滅ぼす事など造作もないが、極力、国体を残した
まま無力化するのは意外と難しい。
政治力、国力、軍事力のバランスが取れていないと皇国の解体と再構
成などと言う芸当は出来ない。>
先程、緩んだ心で覗いた双眼鏡を再度覗くラクスタル、双眼鏡の視界
内に写った女がアッカンベーをした。<いかん、気付かれたか!>ラク
スタルは今まで観察していた戦艦の直ぐ隣に停泊している戦艦の艦橋に
双眼鏡の視界を移した。
「えっ、こっちもか!」ラクスタルの覗く双眼鏡の視界には先程見た美
女が艦長帽を被っていたのにこちらの艦長(?)は逆立った髪のせい
か、無帽だった。
こちらは一人ではなく少し年少に見える士官(?)が付き添ていたが、
若い士官は『グレード・アトラスター』のそこここから自分達に向け
られる視線が気になる様でちょっとフレイアが目を離した隙に『グナイ
ゼナウ』を飛び出して『グレード・アトラスター』に抗議に行った。
勿論、そこには神聖ミリシアル帝国の兵士が警備をしていたので艦娘
『グナイゼナウ』はそれを突破して『グレード・アトラスター』の艦橋
まで怒鳴り込むつもりだったのだが、寸での所でフレイアとフローラに
止められた。
「駄目よ! まだ実力行使は許しません!」フローラとフレイアは艦
娘『グナイゼナウ』の両脇を抑えて自艦隊に戻ろうとした。
「折角の御訪問だ、本艦をゆっくり観て行って欲しい、と言いたいと
ころだがそちらと同じく機密満載なのでそれは許されない。 で代わり
にお茶でもどうだ。」ラクスタルは結構、軟派だった。
「まあ、確かに今の状況で情報収集するのはお互いさまね。
でも女性の身体を舐め回す様に観察
するのは情報収集ではなくて劣情収集ではなくて?」フローラはラクス
タルの誘いを受けた。
桟橋が直ぐ近くに見える小さな喫茶店にラクスタルと副長、そしてフロ
ーラは腰を落ち着けた。
艦娘『グナイゼナウ』とフレイヤは騒動のタネにしかならないので先に
艦へ返した。
男所帯の戦艦乗りは女に弱い、特にフローラの様な飛び切りの美女を前
にしては頭クラクラだった。
「 さて、せっかくグラ・バスカル帝国とロデニウス連合王国の非公式
代表が集まったのだから情報交換をしましょ。」フローラの提案にラク
スタルは息を呑んだ。
「まずはこちらから、派遣されて来たのは『シャルンホルスト』、『グ
ナイゼナウ』の2隻、同型艦よ。全長235m、排水量38,900t、
幅30m、最大機関出力160,000馬力、
速力最大31ノット、主砲は28.3cm54.5口径三連双砲塔3基よ。
この辺りが一番知りたかった事でしょ。」フローラはコーヒーを啜りなが
ら悪戯っぽく微笑んだ。
ラクスタルはここまで手の内を明かす彼女の意図が判らなかった。
しかし目の前に居る女、ロデニウス連合王国海軍・派遣艦隊・司令フローラ・ライニッケ大佐と名乗った女からは強烈な血の臭いが漂って来た訳ではなか
ったが数々の実戦をこなし、生き延びて来たものだけが持つ威圧感が
あった。
「こちらの諸元で教えられるのは艦名が『グレード・アトラスター』と言う事と全長が263m、全幅38.9m、だと言う事ぐらいだ。」ラクスタルは
悔し気に応えた。
「組織に縛られた軍人さん達には外観から判る事以上の情報を漏らせ
ない事は判っていたわ。」
フローラは立ち上がると出口に向かって歩き出した。
「おい、まだ聞きたいことが・・・。」副長がフローラを呼び止めようと
した。
「こちらが必要な情報は貰ったわ。コーヒーごちそうさま、おいしかっ
たわ。」フローラはそれだけ言うと外へ消えていった。
次はいよいよ実戦です。
思いもよらぬ秘密兵器が登場します。 お楽しみに!