姉妹艦隊 『シャルンホルスト』と『グナイゼナウ』   作:シャルとグナ

7 / 10
 いよいよ『グレードアトラスター』もとい、ラクスタル艦長の反撃が
始まります。


7,反撃の狼煙

「さぁ、お返しだ、目標ロデニウス連合王国艦隊・1番艦、敵の操艦は

巧みだ、こちらの射程距離に僅かだけ踏み込み発砲すると直ぐに射程外に

退避する。

そして砲弾が飛翔するには時間が掛かる、だから敵艦隊の動きを良く観察

して接近の兆しが見えたら直ぐに発砲だ。」

「弾種はどうしますか?」砲術長がラクスタルに尋ねる。

「超重量弾だ。 確実に仕留める。」ラクスタルは一度で仕留めなければ

また超威力の榴弾の雨に晒される恐れを抱いた。

「弾種、超重量弾、装填中に測距を済ませろ。」砲術長もラクスタルの

考えに同調していた。

「測距、終わりました、何時でも射撃可能です。」測距手が伝える、

「全砲門装填終了、撃て!」砲術長の指令に従い測距手が引き金を引く。

損傷した第一砲塔を除く、第二、第三砲塔が火を噴く、そして四万二千m

先のロデニウス王国連合艦隊に向かって六発の砲弾が飛翔した。

『グナイゼナウ』で『グレード・アトラスター』の発砲炎を観測した

フレイアはとり舵をいっぱいにきった。

操舵が同調している『シャルンホルスト』もそれに従う。

これにより、『グレード・アトラスター』の砲弾は全て近弾となり外れた。

ロデニウス艦隊に『グレード・アトラスター』が砲弾を外されたのは

一つには弾種の選択を誤った事がある。

超重量弾は徹甲弾の弾の長さを増す事によって弾の重量を増やし敵艦の

装甲に与えるエネルギーを増して大きな損害を与えるものであるが、

重い弾を通常弾と同じ装薬で発射すれば必然的に射程距離は減り全て

近弾になってしまったのだ。

ここは思い切って通常の徹甲弾、いや榴弾で勝負すべきであった。

 

 『シャルンホルスト』、『グナイゼナウ』の砲身が再び四五度の天空

を睨み、「S式榴弾」の雨を『グレード・アトラスター』に浴びせた。

轟音が轟き、戦闘艦橋の要員が投げ出される。

「くそっ、この威力、本当に榴弾なのかよ。」ラクスタルは立ち上がり

ながらぼやいた。

「今のはすくなくとも最初に第一砲塔に命中した”怪弾”では

ありません。」砲術長が訳の分からない事を言う。

「”怪弾”?」ラクスタルが聞き返す。

「この世界には”魔法”という我々とは異なる理(ことわり)がありま

すからな、装甲板を破らず破壊力だけを浸透させるすべがあるのかもし

れません。」

砲術長は自分の言葉に納得したかの様に頷く。

<あの二隻をカルトアルパスの港で見た時どこの戦艦にもない機能美に

満ちていた。搭載砲が小振りなので侮っていたが、射程距離は

『グレード・アトラスター』と同等か、少し上回っている、これでは

いくら砲の威力が上でも届かないんじゃ意味がない。 

反対にロデニウス連合王国艦隊は砲の威力は小さくても確実に砲弾を

届けさせれば『グレード・アトラスター』に着実にダメージを

与えられる。>ラクスタルは敵の司令官の辣腕ぶりに舌を巻いた。

「緊急連絡! 第二砲塔のターレット・リングに損傷、回転不能です!」

艦内電話を取った士官が報告した。

「何! 直ぐダメ・コン(ダメージ・コントロール班)を廻すそれまで

出来る限りの復旧を急げ!」砲術長が命令する。

しかしラクスタルには無駄な努力に思えた、<ターレット・リングは

砲塔下にあり外部からの損傷は受け難い所だ、今の状況を考えると敵が

見舞う猛烈な榴弾攻撃でターレット・リングが熱変形を起こしそこで

無理に砲塔を廻そうとして咬み込みを起こしたと考えるべきだろう。>

と考えたからだ。

そうなるとラクスタルが、いや『グレード・アトラスター』が使える

主砲塔は第三砲塔のみ、僅かで良いから自艦の射程距離内に食い込み

必殺の四十六cm砲弾を見舞うしかない。

それまで第三砲塔は大破している上部構造物の陰に隠し、敵艦隊に

接近を図る!射程距離に入ったところで左へ転舵、第三砲塔を使って

攻撃する。

この作戦案はすぐさま砲術長、第三砲塔長、航海長、機関長に伝達

される。

「敵艦隊に対し正面を向け全速力で距離を詰める、射程距離に入り

必中のポイントで艦の方位を九十度転換、今まで隠していた

第三砲塔を出し、敵艦に直撃を加える。ここまでいいか。」

ラクスタルは作戦主要メンバーに確認する。

「我艦は相当被弾していますが、損害は上甲板以上に限定されています。

機関が無償なのは僥倖です。速度は目一杯出せます。」機関長が艦長の

案の背を押した。

「九十度針路位ビシッと決めてみせますよ。」

「今はレーダー照準は距離があり過ぎて出来ませんが、接近すれば

有効になるでしょう。 光学照準は辺りが暗くなり過ぎたので使用出来

ません。」砲術長の意見も前向きだった。

「敵艦は二隻います。一度に相手にするのは無理です。」砲塔長が

苦言を呈した。

「一隻づつ片していけば良い。 その代わりまず沈めるのは先頭を

走る旗艦だ。」ラクスタルの闘志が皆の心に火を付けた。

 

<敵艦が針路を変えたぜ。 相対距離を詰めて主砲を使える様にする

つもりだ。>フレイアの念話がフローラの頭の中に響いた。

<第一砲塔は潰したわ。 第二砲塔も針路変更に伴って旋回する必要が

あるのに動いていない。 そうか、上部構造物の陰になっている

第三砲塔を使うつもりね!>フローラが返す。

<第二砲塔は死んだふりかもしれないぜ。それに第三砲塔を使える様に

する為には直角に変針しなくちゃならない。あの艦は”バウ・スラスター”

を持っているってか?>

<砲塔はそんなに早くは旋回出来ない、変針時に旋回させても間に合わ

ないわ。あれは「S式榴弾」の熱で故障している。 それといくら

なんでも”バウ・スラスター”は持っていないでしょう。

多分、 ”艦首副舵”による機動性向上が良い所よ。>ライニッケ姉妹の

遣り取りはかなり『グレード・アトラスター』を侮った物に聞こえる、

しかしこれは有効射程距離で優位に立ち、また艦速でも優位、機動性も

大きな図体を取りまわさなければならない『グレード・アトラスター』

に比べ、小柄な『シャルンホルスト』級は俊敏であり、機関出力も

『グレード・アトラスター』が十五万馬力なのに比べ

『シャルンホルスト』級は十六万馬力と卓越していたからこその余裕で

あった。

そのころ『グレード・アトラスター』は『シャルンホルスト』と

『グナイゼナウ』が見舞う「S式榴弾」を真っ向から浴びて艦首甲板に

張られた木材が燃えまさに火の玉となって突撃していた。

<『グレード・アトラスター』をここまで追い込んだのが超弩級戦艦

ではなくて弩級戦艦とは…。>ラクスタルは怒りに燃えながらどこか

爽やかな物を感じていた。

「敵艦隊、変針! 反航戦を挑んで来ます!」見張りの士官が報告する。

「何!反航戦だと! ここに来て一体何を考えている!」ラクスタルは

口ではそう言いながらロデニウス艦隊の目的が第三砲塔を潰す事だと

感じていた。

「敵艦隊に艦首を向け続けろ! 後部に廻り込ませるな!」

ラクスタルは舵手にそう命じたが見張りの士官が絶望的な事を伝えた。

「敵艦隊、二手に分かれました。 挟撃するつもりです!」見張士官の

声は震えていた。

「黙れ! 左舷の敵にだけ注目! 右舷に廻った敵は牽制だ!」

ラクストルは確信があってそう言ったわけではない、ただ今までの堂々

とした戦いぶりから(砲塔の)後ろから撃つと言う真似はすまいと

確信していた。

だがラクスタルの予想は別の形で裏切られた。

『グレード・アトラスター』の正面に廻ったのは『グナイゼナウ』、

背面に廻ったのが『シャルンホルスト』で、当然二艦の射撃統制を

しているフローラ・ライニッケ大佐は

『シャルンホルスト』に座乗していた。

『グレード・アトラスター』と『グナイゼナウ』の距離が二万mに

詰まった時、ほぼ双方同時に砲弾を放った。

『グレード・アトラスター』は徹甲榴弾を、『グナイゼナウ』は

粘着榴弾(HESH)を発射した。

『グナイゼナウ』が粘着榴弾(HESH)を放ったのは

『グレード・アトラスター』の砲塔装甲を抜けるのがそれしかないため

だが、『グレード・アトラスター』が使った砲弾が超重量弾でも徹甲弾

でも榴弾でもなく徹甲榴弾であるところにラクスタルや砲術長の苦心が

あった。

超重量弾を使えば『シャルンホルスト』級の装甲はどこでも抜ける、

しかし爆発しない以上ただ単に装甲に穴が開くだけである、

これは徹甲弾も同じだ、『グレード・アトラスター』の榴弾は

ロデニウス連合王国艦隊の使用する榴弾より遙かに威力が劣る。

そこで装甲を貫通した後爆発して被害を拡大する徹甲榴弾を選んだ、

 

戦艦の砲戦距離二万mは比較的近い距離である、ラクスタルと砲術長は

確実に一矢報いる事が出来ると確信していた。

双方の弾丸がすれ違う、『グナイゼナウ』が放った粘着榴弾

(HESH)九発は『グレード・アトラスター』の第三砲塔の正面装甲に

集中的に着弾し、そこで爆発すると爆発の圧力波がポプキンソン効果で

装甲の裏面に伝わりそこでスポール破壊を引き起こして装甲裏面を剥がし

無数の破片を砲塔内にまき散らして砲塔要員や重要な装置に破壊を

もたらした。

これで『グレード・アトラスター』の全ての主砲塔は沈黙し、残された

武装は三連双十五,五cm副砲のみとなった。




 砲弾の種類は色々ありますが大別すると次の二種類です。

(1)運動エネルギー弾 徹甲弾 徹甲榴弾 超重量弾
            特徴は飛ぶ距離が増えると威力が減る事。

(2)化学エネルギー弾 榴弾 成形炸薬弾 粘着榴弾 
            特徴は射程のどの部分で炸裂しても威力は変わらない事


他の作品でも対空弾や地上破壊弾が出て来ますがそれらも大枠で考えれば
化学エネルギー弾と考えて良いと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。