姉妹艦隊 『シャルンホルスト』と『グナイゼナウ』   作:シャルとグナ

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 戦艦『グレードアトラスター』とロデニウス連合王国・艦隊の決戦も
今回決着が付きます。

 しかも雷撃戦で・・・、その理由は本文でお楽しみ下さい。


8,戦艦・雷撃戦

 『グレード・アトラスター』が放った三発の徹甲榴弾は

『シャルンホルスト』が放った徹甲弾に弾かれ軌道が変わったため

『グナイゼナウ』から遠く離れた海面に着弾した。

「砲弾で砲弾を迎撃、本当に出来るんですね。 最初聞いた時はホラだ

とばかり思っていましたが・・・。」艦娘『シャルンホルスト』が感心

して言った。

「無駄口叩いていないで即次の段階に移る、『アドミラル・グラーフ

・シュペー』、『アドミラル・シェーア』、『ドイッチェランド』を

呼び寄せて。」フローラが次の段階に入ろうとした時、フレイアから

念話通信が入った。

<『グレード・アトラスター』の機関は健在だ。 次の段階に入るには

奴の速度が速すぎはしないか?>とフレイア。

<そうね、あなたの言う通りだわ。 十ノット位に減速してもらいま

しょう。>かといって敵艦が素直に減速してくれるはずも無く

フローラは『シャルンホルスト』と『グナイゼナウ』を再度合流させる

と二艦の全主砲を再び『グレード・アトラスター』に向けて今度は徹甲

弾を放った。

十八発の徹甲弾の目標は『グレード・アトラスター』の煙突である。

煙突には『グレード・アトラスター』といえども装甲は無い(煙路出口

には蜂の巣甲板があるが・・・。)十八発の徹甲弾はブスブスと煙突を貫き

そっくりこそげ落としてしまった。

ガクッと急減速する『グレード・アトラスター』、急減速の理由が

判らず当惑する艦橋要員達、すると後部を担当する見張り士官が

「煙突が消失しています!」と報告した。

「何!」ラクスタルと航海長は後部を見渡せる窓に顔をくっつけて

状況を観察した。

確かに雄々しく聳えたっていた大煙突の姿形はなかった。それに機関は

全速運転しているはずなのに排出されてくる煤煙の量が極端に少なか

った。

「機関長を呼んで来い!」ラクスタルは伝令に命じた。

「缶焚きの親分を呼ぶまでもありませんよ。 敵艦は本艦の煙路を破壊

して煤煙の排出効率を落としたのです。」航海長が状況を説明した。

「煤煙の排出が上手く出来なくなると…、そうか速度が出せなくなる!」

ラクスタルも海軍軍人を長く勤めている、航海長の言葉で自分達が

更なる危機に陥った事を悟った。

『グレード・アトラスター』を追い込んだロデニウス連合王国・艦隊は

次なる作戦に取り掛かるべく、三隻のポケット戦艦を呼び寄せ、

『グナイゼナウ』を先頭に五隻の戦艦で単縦陣を作って『グレード

・アトラスター』と五千mの間隔を開けて並走し始めた。

<あんな化け物がまだ三隻もいたのかよ…。>ラクスタルは絶望を通り

越して呆れた。

「これまでだな、同乗している外務省の職員を呼んでくれ。」

ラクスタルは覚悟を決めた。

 外務省のシエリア課長とダラス局員が艦橋に上がって来た。

「戦況はどうなのですか!」シエリアがラクスタルに詰め寄る。

「戦況も何も、主砲塔を三基とも潰されました、左舷は上甲板より上が

焼き尽くされてスクラップ、煙突も吹っ飛ばされて速度が出ない、全く

良い事無しです。」ラクスタルは両手を上げた。

「まさか降伏しようと言うのじゃないだろうな、この艦は栄光ある

『グラ・バスカル帝国』の象徴『グレード・アトラスター』なのだぞ!

 降伏なぞ許されない!」ダラスが吠えた。

「誰も降伏するなぞと言ってない!」ラクスタルは決意に満ちた目で

外務省・職員達を見詰めた。

 

「敵艦より発光信号、『本国・外務省・職員を内火艇に乗せ放出する。

回収されたし。』です。」艦娘『シャルンホルスト』がフローラに報告

する。

それを聞いたフローラはしばらく腕組みして考えていたが艦娘

『シャルンホルスト』に返信を命じた。

「今は海戦中だ、外務省の出番は無い、内火艇の放出は認めるが回収は

海戦に勝った方がすれば良い。」

ロデニウス連合王国・艦隊の返信を知ったラクスタルは敵がこちらを

これほど追い込んでも全く油断していない事を知って武者震いに見舞わ

れた。

左舷側の短艇収容庫はズタズタで機能しなかったが右舷側は戦火を浴び

ていなかったので通常通り機能し外務省・職員を乗せた内火艇は無事に

打ち出され、誤射を避けるために屋根の上に赤色閃光燈を光らせ海戦の

行方を見守った。

「ダラス、お前はどちらが勝つと思う。」内火艇のキャビン入口に立つ

シエリアは隣に控えるダラスに問うた。

「当然、『グレード・アトラスター』です。いやそうで無ければいけま

せん。」ダラスは拳を握りしめブルブルと震えていた。

<敵艦の艦長は女だそうな。それも二隻ともだ。女であるが故に私は

苦闘し続けている。あっちの艦長達も同じだろうな。女である事を差し

置いて戦艦の艦長を任される程の猛者だ。

残念ながら『グレード・アトラスター』に勝ち目はないな。>

シエリアは複雑な想いで微笑んだ。

そのころ『グレード・アトラスター』は唯一残された火器である

第二副砲・三連双十五・五cm砲を構えて反撃の機会を覗っていた。

敵艦隊までの距離、五千mは通常なら必中の距離なのだがS式榴弾を

多数浴びた第二副砲の照準装置は壊れており、現在は応急の照準装置に

頼るしかなかった。

『グレード・アトラスター』の放った十五・五cm砲弾は砲架の

アライメントが少し狂っており散布界が大きくなってしまってとても

命中弾は期待できそうも無かった。

<無駄な事をしやがる、それに命中したってこちらの装甲は破れない

ぜ。>フレイヤが敵艦の足掻きを嘲笑う。

<あまり舐めないで、勝負は下駄を履くまで分からないわ。>フローラが

窘める、と、『グレード・アトラスター』の放った一弾が水中弾となり

『グナイゼナウ』の推進器の一つを破壊した。

ドイツ艦は伝統的に推進器は三軸で中央軸だけが少し後ろに下がってい

る。 ここに水中弾が命中、中央軸を破壊したのだ。

<アチャー、油断した、でも水中弾じゃ避けようがないよ!>フレイアが

言い訳する。

水中弾とは敵艦の手前で海面に落ちた砲弾がそのまま海底に落ちず

少しの間海面と並行に進み敵艦の水線下に命中、被害を与えるものであ

る。

通常は偶然が起こす現象だが大日本帝国海軍は九一式徹甲弾として

水中弾効果を持つ砲弾を運用した。しかし、これは主砲のみで副砲の

砲弾には適用されていなかった。

<現状で何ノット出せる?>フローラは出来てしまった事はしょうが

ないと現在の状態を確認する。

<二十ノット出ればいい方だ。 でも敵艦の速度も落ちているから

作戦には支障が無い。>フレイアは作戦から外されるのでは、と、恐れ

ていた。

そんな妹の反応を横目にフローラは新たなる指令を下した。 

「全艦、単縦陣を維持しつつ雷撃態勢に入れ、目標『グレード

・アトラスター』! 雷撃諸元は追って知らせる。」フローラはここで

海戦を終わらせるつもりだった。

ポケット戦艦三隻は一段下がった後部甲板に四連双魚雷発射管を右舷、

左舷に一基づつ装備している、その発射管が舷側の方を向き魚雷頭部が

舷側から直角になったところで止まった。

『シャルンホルスト』級の二艦は艦中央部の両舷に三連双魚雷発射管を

一基づつ装備している、その両発射管とも魚雷頭部が舷側から直角に

なったところで止まった。

ポケット戦艦は三隻いるから発射される雷数は三隻X二基X四本で

計二十四本、『シャルンホルスト』級は二隻X二基X三本で計十二本、

合計三十六本の魚雷が『グレード・アトラスター』に殺到することに

なる。

まてまて、使える魚雷は右舷のみ十八本では?と考えるのは順当だ、

しかし当時の魚雷は決して無誘導ではない、航跡を予めインプットして

おけば大まかな針路変更は出来たのだ。

第一次大戦で潜水艦と魚雷の組合せが絶大な威力を持つ事を示した

帝政ドイツのU―9は前部発射管四門、後部発射管二門だった。

彼女は北海で三隻の英国装甲巡洋艦隊に遭遇しこれを攻撃した。 

最初の二隻は二本づつの前部発射管の魚雷で仕留めた。(アブーキア、

ホーグ)最後の一隻は方向転換してしとめたわけではない、艦自体は

向きを変える事無く発射した魚雷を百八十度方向転換させて最後の

装甲巡洋艦を撃沈したのだ。(クレッシー)

 

 また、魚雷発射管を旋回させて敵を狙うと思っている人も多いと

思うが旋回式魚雷発射管の本当の意味は一基で両舷戦闘が出来るという

事に尽きる。

また魚雷はある程度の高さから高速で走っている海面に発射、落とす為

無理な力が掛かると直ぐに折れてしまう。

大日本帝国海軍の「妙高」型重巡洋艦は就役当初最上甲板から魚雷を

発射すると海面までの高さが高すぎて魚雷の燗体が壊れてしまうのを

恐れて艦内の中甲板に側面に向けて発射する様になっていた。

発射管は固定式だから動かせない、それでも装備されたのは発射後の

誘導がある程度可能だったからである。

この問題は「愛宕」型以降、魚雷の改良で解決され「妙高」型も

魚雷発射管は甲板装備となった。

 

 単縦陣で波を蹴立てて走るロデニウス連合王国艦隊、航跡が一本の

白い線に見える見事な艦隊運動だ。

その各艦から左右に魚雷が打ち出され幾つもの白い十字が描きだされる、

と左舷に打ち出された魚雷群十八本は大きく向きをかえほぼ百八十度

変針するとロデニウス連合王国艦隊の下を潜って『グレード

・アトラスター』を狙う魚雷群、第二陣として『グレード

・アトラスター』のバルジ目指して突っ込んでいった。

<おい、今『グレード・アトラスター』に命中予定の魚雷は五本も

あるぞ、多すぎないか?>フレイアが語り掛けた。

<そうね、S式榴弾による損害もあるし、被雷は三本が良い所

かしらね。>

「命中しそうなのは十五番から十九番か、よし、十五番と十九番の

魚雷を自爆させて!」フローラが命令すると艦娘『シャルンホルスト』

は納得がいかないと言う顔をしながら魚雷の自爆操作をした。

『グレード・アトラスター』の遙か手前で自爆した魚雷、何事かと

水柱の方に目をやったラクスタル達は無数の白い航跡が自分達に

向かって進んできているのに気づき絶望した。

一度は副砲による反撃で敵に一矢報いたと思ったのに水雷戦隊の一斉

攻撃並みの雷撃に言葉を失った。

<戦艦隊が何故こんな重雷装をしている!>ラクスタルはこの艦隊が

通商破壊艦を集めた艦隊である事に気付いていなかった。

グラ・バスカル帝国の常識では通商破壊の任務は潜水艦が担うべき

ものだからである。

だから戦艦(水上艦)で通商破壊戦を戦う地球の常識はラクスタルには

理解出来なかった。

 

追記:通商破壊(戦)とは

軍事物資を積んだ船舶を臨検ないしは無通告で攻撃、敵国の補給路を断つ事が目的

通商破壊艦が雷装しているのは臨検後その船舶を処分するのに用いる。

また通商破壊艦は戦艦や重巡など攻撃力の強い敵艦に出会った時砲力が落ちる為

不利になるが雷装していれば反撃出来る。

 

 

やがて左舷のバルジに三本の魚雷が突き刺さって爆発、三本の水柱が

高々と上がった。

「応急注排水装置作動、ダメ・コン(ダメージ・コントロール)班は

破口の応急修理を急げ!」ラクスタルの命令一下、『グレード

・アトラスター』生存の努力が始まった。

注水と言うとダメージを受けた艦が浸水した区画の反対舷の区画に

注水してバランスを取ると思っている人も多いと思うがもしそれを

実施してしまうと艦首や艦尾が水没してしまう恐れがある。 

注水するのは艦首なら反対舷の艦尾、中央部でもバランスを考えて

分散して注水するのである。

幸い魚雷の破壊力は左舷のバルジで食い止められバイタル・パートの

内側に被害は及んでいなかったが、艦のバランスを取る為の注水は行わ

ざるを得なかった。

注水すれば艦は重くなりただでさえ船足が遅くなっているのにもはや

五ノット出ていれば御の字という有様なってしまった。

 




 今回は魚雷について

 実用になる魚雷は英国のホワイト・ヘッド社が開発しました。
ホ社の魚雷が他社の物と大きく違っていたのは「秘密室」と
呼ばれる深度設定・保持機構、針路設定機構が備わっていた事です。

 良く「無誘導の魚雷」という表現がされますが、現在の魚雷の様な
ホーミング機構こそ備わっていませんでしたがある程度複雑な針路や
深度を設定する事が出来ました。
 大戦中の米潜水艦など前後の魚雷発射管の魚雷を一つの目標に叩き
こんだり(10本です。)
別々の目標に分けて雷撃したり出来ました。
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