姉妹艦隊 『シャルンホルスト』と『グナイゼナウ』 作:シャルとグナ
外交官を残し帰路に付きますが色々波乱含みです。
<やれやれズタズタだな。 これからどうする。>ラクスタルは
ロデニウス艦隊の次の攻撃に備えた。(といっても出来る事は限られて
いたが・・・。)
ロデニウス艦隊は左舷の手の届きそうな近距離を併走していた。一番前を
走る名も知らぬ美しい戦艦、その戦闘艦橋で光が点滅していた。
<海戦は終わった。 さて先程かわした約束だが両者とも残存したので
貴国の外交官は貴艦が回収するのが妥当と考える。本艦隊は現場を
離れる。以上。>
<貴艦名、司令官名を通達されたし>ラクスタルが発光器を操って
ロデニウス艦隊について少しでも情報をとろうとする。
<後日発行されるムーの新聞を読まれたし。>シャルンホルストに座乗
するフローラはそれだけを発行信号で伝えると艦隊速度をあげ、見る
間にラクスタルの前から去っていった。
ラクスタルは一度放出した艦載艇を呼び戻しシエリア達外交官
一行を再び迎えた。
「これは、やっと浮いているだけではないのか! 何時沈むかも
分らないこんな艦に乗艦しろと言うのか!」ダラスがかなり左舷側に
傾いた床に不安をいだいたらしく抗議した。
「止めんか!ダラス先程までいた艦載艇で何日も過ごしたいのか!」
シエリアはさすがにダラスの自分本位さに呆れて叱責した。
「それにしてもロデニウス艦隊の目的はなんだったのでしょうね。」
シエリアは傾いた甲板に腰を降ろして言った。
現在『グレードアトラスター』は左舷を深く海中に沈め傾斜したまま
ゆっくりと退避中だ。
「ムーやミリシアルの追撃も警戒せねばなりませんね。」ダラスも
顔面蒼白になりつつ言った。
「確か、情報部によるとロデニウス艦隊には疑似ヘラクレス級が複数
確認されている。 今回対戦した様な小型戦艦の出る幕は無いはず、
また非確認情報だが疑似『グレードアトラスター』級も二隻はあるら
しい。 何故それらの有力戦力を投入しないのか、理解に苦しむ。」
ラクスタルは腕組みをする。
やがて味方艦載機が上空に現れ『グレードアトラスター』の惨状を
母艦に伝える、ラクスタルは『グレードアトラスター』が通信手段も
失っている事を発光信号で伝えた。
「これだけボロボロにやられていては『グレードアトラスター』は雷撃
による海没処分、俺は帰ってから軍法会議だな。」ラクスタルは頭を
掻いた。
「艦長の責任はともかく、『グレードアトラスター』は意地でも回航、
修理するでしょう。」ダラスが空気の読めない発言をした。
「ダラス少しは艦長の気持ちを考えろ!」シエリアがダラスに掴み
かろうとしたが、ラクスタルはそれを止めた。
「今のダラス殿の指摘で少しロデニウス連合王国の考えが判った様な
気がする。」ラクスタルはロデニウス艦隊の去った方を見つめた。
『グレードアトラスター』はグラ・バスカル帝国にとってただ一隻で
列強レイフォルを滅ぼした殊勲艦でありもはや伝説の域に達した艦で
ある、当然、幾ら、資金労力がかかろうと再生、復活させなければ
ならない、へたをすれば『グレードアトラスター』の新造艦を作る位の
負担すら帝国は持さないとラクスタルは読んだ。
確かにラクスタルの読み通り、本国では二番艦『バルサー』が艤装中、
三番艦が進水済み、四番艦が起工済みと『グレードアトラスター』
不死身伝説が形付くられつつあった。
「一つお尋ねしていいですか、いえ軍機に触れる部分は結構です
が・・・。」艦娘『シャルンホルスト』がフローラに舵輪を執りながら
問うた。
「私達の正体? いきなり来ていきなり頭を抑えられ言いようにこき使
われては堪らないわよね。」フローラが前方を双眼鏡で監視しながら
言った。
「切れ切れにはお二人の情報が入ってくるのですが、余りにも荒唐無稽
なものが多くてどれを
信じて良いのやら途方にくれていました。 でも今回の海戦の手腕を見
るとそれら荒唐無稽な話もまんざら嘘じゃないって思えてきたんで
す。」艦娘『シャルンホルスト』は眼を輝かせて言った。
「何を聞いていたか知らないけれど、多分それ全部本当よ。」フローラ
・ライニッケは艦娘達に自分達の正体を明かす事を決めた。
「フレイアそろそろいいでしょ。 私達がいつ再召喚されるか、判ら
ない以上伝えるべき事は伝えられる時に伝えるべきよ。」フローラは念
話では無く艦隊内通信を使ってフレイアに話し掛け、この通話内容は
ロデニウス連合王国・艦隊の全艦に通達された。
① 二人は今から約二百五十年後の地球から召喚された事。
② 二人の所属は「国連宇宙軍・ドイツ艦隊」
③ 本名と階級:フローラ・ライニッケ大佐フレイア・ライニッケ中佐
④ 乗艦:フローラは重巡航宇宙艦『シャルンホルスト』、フレイアは
重巡航宇宙艦『グナイゼナウ』両者とも乗艦の艦長。(中佐での
艦長拝命は特例)
⑤ 地球外生命体の侵略により地球の寿命は後一年、地球を浄化する
システムを受け取るため特務艦が発進して行った。
⑥ 国連宇宙軍は残存兵力を搔き集め特務艦が制圧した冥王星の守備に
あたっていた。
遊星爆弾を放っていた敵の冥王星基地は特務艦がつぶしたが、いつ
奪回しにくるか、判らなかった。 奪回されれば再び遊星爆弾の
脅威に晒される。 絶対に死守しなければならない戦線だった。
⑦ この任務の最中二人は船ごと召喚された。
「って駄目じゃないですか! そんな重要な局面を放っり出してこんな所
で油売ってる場合じゃないでしょ!」艦娘『グナイゼナウ』が慌ててマ
イクをひったくって言った。
「かと言ったって俺達の戦果を召喚した奴が充分と判断しない限り、
俺達の再召喚はないぜ。フレイアがぼやく。
人任せで自分では何も出来ないのが不満なのだ。
フローラは自分の指先にキラキラした霧が発生しているのに気付く。
その霧はどんどん広がり二人の全身を包んだ。
<再召喚が始まったんだ、はっ!>艦娘『シャルンホルスト』は聞き忘れ
た重要な事を殆ど消えかけているフローラに訊ねた。
「敵の名は何ですか! こちらを襲う可能性は!」
だが殆ど消失しかけているフローラが伝えたのは「ガ・ラ・」という意味
不明の言葉だけだった。
三日後、グラ・バルカス帝国海軍東方艦隊司令長官カイザルは朝、出勤
するといつもの様に仕事机の上に置かれたムーの新聞を手に取った。
これは情報収集を兼ねてムー在住の諜報員から送らせている物である。
折り畳んであった紙面を広げるとカイザルの目は紙面に釘づけになり、
新聞を掴む両手はブルブルと震えていた。
「なんだこれは! 一体どうやってこんな写真を撮ったのだ!」
紙面には大破し左へ大きく傾斜した『グレードアトラスター』が写ってい
たがそれ以外の被害個所がそれぞれ詳細にアップで写っていた。
<『グレードアトラスター』がフォーク沖海戦で大破したのは知ってい
たが、これほどの損害を与えられる敵は一体どんな艦隊だ。>カイザル
の脳裏にはロデニウス海軍が持つと言われる疑似『グレード・アトラ
スター』の姿が浮かんでは消えた。
しかし、紙面の下の方にロデニウス艦隊の簡単な紹介が出ているのに
気づきその写真と簡単な諸元を見てカイザルの怒りは頂点に達した。
艦名『シャルンホルスト』(同型艦『グナイゼナウ』同作戦参加)
基準排水量 31,500t
全長 235,4m
全幅 30m
主砲 28.3cm
副砲 15cm
<こいつ等は戦艦とはいっても小舟だ! いくら2隻いたからといって
負けるはずがない!
ラクスタルは一体何をしていたんだ!>カイザルは自分一人では耐えられず
旧友の元へ問題の新聞を持って訊ねた。
ロデニウス連合王国・艦隊司令:フローラ・ライニッケ大佐 副
司令:フレイア・ライニッケ中佐の出自が明らかに成りました。
彼女達が乗っている重巡航宇宙艦も『シャルンホルスト』、』と「グナ
イゼナウ』です。