ダイヤモンド王国の暗殺部隊に所属しており、魔法騎士団入団試験の為に鍛錬していた期間にアルトが出会った少女___マリエラがブラック・マーケットにいた。
「‥‥‥マリエラ」
「‥アルト」
思わぬ再会をした2人はお互いに相手に驚愕した表情で見つめていた。
そんな2人を見て、楽しそうに口に片手を当てて、からかうように見ている茶髪ポニーテールの女性。
「どうして貴方がここに‥‥」
マリエラはアルトがこの場所にやってきた理由を尋ねた。
「団の先輩に此処を教えて貰ってな、気になって来ただけだ。お前こそどうして此処に?」
「‥‥私は、ファンゼル先生の婚約者であるドミナさんに会いに来たんです」
ファンゼル‥‥鍛錬の際にマリエラが任務で襲ったおっさんだとアルトは頭の中で思い出していた。
ファンゼルの婚約者に会いに来たということは、いったいどういう事なのか気になり、更に質問した。
「追いかけていた
「いいえ。ファンゼル先生とドミナさんを救うためです」
「なに?」
アルトはその言葉を聞くと、更に質問しようとしたが、このブラック・マーケットにある者達が空間魔法でやって来た。
その一人を見たドミナことドミナント・コードは男性を蛸殴りにしながら、文句を言っていた。
「このヤドロク!? 何時まで待たせるのよ! こんなか弱い女子を長い間放置しやがってェエエ!!」
しかし、文句を言った後、先程の言葉とは裏腹にファンゼルの胸元に目尻に涙を浮かべながら抱き付いた。
「本当に心配したんだからね‥怪我してないかって‥‥」
「怪我なら今してたんですけど‥‥」
現れた際から少しばかり怪我を負っていたファンゼルは先程のドミナントによる蛸殴りによって更に腫れ顔になってしまう。
ドミナントは愛しい男性と再会できた事に喜び、[黒の暴牛]団の銀髪の女子___ノエル・シルヴァに感謝をした。
しかし、彼女は先程の婚約者への蛸殴りを見て彼女の言葉を素直に受け止められなかった。
そんな彼女を無視して、ドミナントはアスタに視線を向けた。
しかも、アスタの名を呼びながら‥‥
自身の名を知っている事に驚いたアスタは何故知っているのかを尋ねると、ある人物から聞いていたとドミナントは答える。
その誰かが気になったアスタがその人物を聞くが、彼女が体をむき直す事でその人物に視線を誘導した。
そして、その人物と近くにいるアルトを視認したアスタは驚愕する。
「‥なっ‥!? お前、マリエラ!? アルトも何で‥‥!?」
「俺は団の先輩に此処のことを教えて貰ってな。気になってきただけだ。来てみると偶然にもマリエラと再会しただけだ」
「物騒な事しませんよ。そもそも、女の子一人に何ができるというんですか」
「教師を集団でボコっただろうがよ。どうせまた同じ様な‥‥」
アスタは嘗てファンゼルを集団で襲撃したマリエラを警戒し、ファンゼルも婚約者を守る様に身を挺した。
事情を知らぬ、アスタと共にやってきたノエルと茶髪の青年____フィンラル・ルーラケイスは首を傾げていた。
「此方に敵意はありません。でも、私に利用されてください」
「え?」
「どういう事だ?」
彼女を警戒していたアスタとファンゼルは彼女の言葉に疑問に思い、問い質すことになった。
アルト達は丸い机と人数分の椅子を集めて座り、マリエラの話しを聞いた。
優雅にお茶を飲みながら‥‥‥
「────あの連中を壊滅させるつもりで、[黒の暴牛]のアジトに攻め込ませた!?」
マリエラの話しを聞いたアスタは驚愕の声を上げた。
彼以外にも、驚いている者はいる。
そんな彼等の心境など無視して、マリエラは話しを続けた。
「その間にブラック・マーケットに来て、ドミナさんに先生が来ることを伝えて準備をしてたんです。アルトと出会ったのは想定外でし、こんなに早く来ると思ってもみませんでしたが‥‥」
マリエラはポケットから折りたたまれた紙を差し出した。
「この地図には私が調べた、安全な逃走経路が書かれています」
どうやらその紙は地図らしい。
しかし、嘗てファンゼルを襲った彼女がそこまでするのか怪しんだアスタは問い。
ファンゼルは彼女がそれを行動した理由に少しばかり予想がついた。
どうやら、彼女は組織への復讐だった様だ。
暗殺を行なう組織の仕事に精神が参り、疲労した彼女は自身の犯した罪を償うために、クローバー王国ないで、今回の復讐を行える機会を待ち続けていたらしく、今日、ファンゼルが[黒の暴牛]のアジトへと入った事を知り、結構した様だ。
「────だから、私を捕まえてください。これでめでたしめでたしです」
「本当に上手くいくと思っているのか? コレまで君がやってきた事からして、重い処罰を受けるかもしれないし、収容所の中でだって、組織の報復を受ける事になる」
マリエラは全てを話し終えると、事件が解決しめでたく、終了すると思っていた。
しかし、ファンゼルは昔の教え子がそんな簡単に終了できるとは思っても居らず、彼女を心配するかの様に、法の処罰や、ダイヤモンド王国からの刺客による報復を突きつけるが、マリエラはそれすらも覚悟の上らしく、死ぬ事以外ならば甘んじて受ける所存だった。
マリエラはアルトに視線を向けた。
その視線に気付いたアルトはマリエラに訪ねた。
「どうした?」
「以前に言っていましたよね。生きる理由なんて、俺自身が決めることだって」
「それがどうした?」
「上から目線でウザかったです」
「‥‥会わない内に変わったかと思ったが、変わってないな」
アルトは嘗て、ファンゼルやマリエラの前で言った言葉が上から目線でウザいと言われてしまった。
マリエラの久しく出会わなかった為、変化があったと思っていたアルトだったが、毒舌が変わっていない事を指摘した。
「でも、しびれました。格好良かったです」
「‥‥お前熱でもあるのか?」
アルトのその言葉に、周りの空気が凍った。
「褒めたのですが‥‥」
「一緒に暮らしてた時に褒めた事があったか?」
「‥‥」
ファンゼルへの襲撃までアルトの力について近づいてきたマリエラと、短い期間だけ共に生活していた。
その際に彼女の毒舌などであって、褒めた事などなかった。
よって、彼はその言葉が癇にさわってしまったのか、マリエラは右手に氷の剣を創り出すと、アルトに一閃した。
「うぉっ!? ‥危ねぇだろ!?」
「あなたが悪いからです」
「はぁっ!?」
アルトはマリエラの攻撃を躱すが、突然、攻撃してきたマリエラを非難するが、マリエラがアルトが悪いと言ってきた。
その言葉が理解出来ず、素っ頓狂な声を上げるアルト。
しかし、周りはマリエラの言葉に同調する様に頷いた。
特にマリエラと同じ女であるノエルとドミナントは強く頷き返していた。
「(俺が悪いのか?)」
女性達から強く頷かれてしまったアルトは攻撃された原因が自分なのかと思いながらも、マリエラに話しの続きをさせた。
「私に下される処分はリストアウトされた代償を、今までの贖罪と考えています。だからどんな罰でも受けなきゃダメだと思うんです」
「マリエラ」
教え子の覚悟に思うところがあったのか、ファンゼルは思いに耽っていると、この場にいる者とは違う、第三者の声が彼等の耳に響いた。
「巫山戯るな!!」
ファンゼルの右側に赤い空間魔法の孔が広がり、左目に古い切り傷痕があるダイヤモンド王国のローブを羽織った、ヒゲ面の男がやってきた。
マリエラはその男を見るや、驚いて立ち上がり、その男に苦言を告げる。
「ガレオンさん! あなた中隊長なのに部隊を捨ててきたんですか!? 酷いです」
「お前だけには言われたくない。そんなに処刑されたいなら、今此処で俺が処刑してやる」
ガレオンと呼ばれた魔導士は両手を広げながら、マリエラの処刑を行なおうとしていた。
「皆さん逃げてください。あのオジサン、言っている事は小物臭いですけど、魔法はちょっと面倒くさいです」
マリエラも自身の魔導書を開き、対抗しようとする中、アルト達に逃げるように告げる。
____空間魔法"開かずの赤い部屋"____
ガレオンは広げた両手を地面に叩き付けながら魔法を行使した。
すると、赤い波動が地を這ってマリエラへと近づくが、その波動がマリエラに当たる前に突然と凍り砕けちった。
「なにっ!?」
「これは‥‥!?」
魔法を防がれたガレオンは無論。
自身に向けられた魔法を防いだ自分以外の人物による氷魔法。
この場で氷魔法を使える、マリエラ以外の人物を彼女は考えた。
ファンゼルは風魔法、ノエルはファンゼルに水の魔力弾を使っていた事から水魔法、ドミナントも違う系統の魔法で、アスタは魔力無しで反魔法を使える。
そして、フィンラルはアジトからここまで最短で来たことから空間魔法。
よって残る1人を想像したマリエラはアルトへと視線を向けた。
するとそこには氷の魔力を少し開放したアルトが立っていた。
「アルト‥」
「邪魔をするな!」
ガレオンはヒステリックな叫びを行ないながら、魔力弾を放つ。
しかし、その魔力弾すらも凍り砕け散る。
「マリエラ、お前は自身の今までの事に疲れたと言ったな?」
「え? はい‥‥」
突然の質問に戸惑いながらも答えるマリエラ。
「罪を償うなら、死以外は受け入れると言ったな?」
「はい」
「なら、今度は殺した以上の数の人を助けろ」
「え?」
「ゴチャゴチャと‥‥‥‥邪魔をするな!」
ガレオンは新たに空間魔法を行使しようするが、アルトが少し開放した魔力の量を上げると、彼は空間を形成するどころか、魔力操作すらもできなくなった。
しかも、その魔力量はアルトがレブチの鎖魔法から開放されるために行なった方法と同じで魔力を上げる事で防いだ事だが、違うのは、あの時は鎖魔法で抑えられた魔力が開放されてクローバー王国内全土に重圧を掛けてしまったが、アルトはガレオンだけにその魔力を重圧させている。
ガレオンはその重圧に負けて、地に這いつくばり、アルトの上げた魔力量の溢れがファンゼルたちにも襲っているが、それでも身動きが出来ないワケではなかった。
しかし、アルトへの驚愕の視線を向けるファンゼルたち。
その魔力量を呼吸するように行なっているアルトは淡々とマリエラに告げる。
「お前は理不尽に殺したのならば、今度は生かす為に尽くせ」
「馬鹿が‥ソイツは死んで終わ‥ガハッ!!?」
アルトの言葉に地に這い蹲るガレオンが否定するが、更なる上昇を起こした魔力量に中毒症状を起こしたかのように表情を更に悪化し、血反吐を嘔吐する。
「お前が喋っていいと、誰が言った?」
アルトは無慈悲にガレオンに中毒のように魔力を上昇させて黙らせた。
ガレオンを黙らせると、マリエラに告げた。
「ダイヤモンド王国の情報を吐き出したら、殺した以上の数の人を救え。ダイヤモンド王国からの刺客から狙われるっていうなら、お前に降りかかる理不尽を俺が滅ぼしてやる」
「なっ!? なぜ私を守ろうとするんですか!?」
マリエラはアルトの発言に、異を唱えた。
自身が起こした事は決して許されることではない。
無論、理不尽を行なう者や、許容する者を許すつもりがないアルトも、許して等いないが、マリエラの場合、彼女が行なってきた事に疲労を感じ、自身の罪を認めている。
そういう者に関しては、アルトも許している。
故に、"死"以外の事で償おうとしていた。
しかし、先程ファンゼルが言った様に刺客を送ってくる可能性がある。
それ即ち、
故にアルトはマリエラを守る事を選んだ。
「なに、下らん理不尽を許容するつもりがないだけだ」
アルトはマリエラの質問に答えながら、ガレオンへと歩み寄った。
「さて、ガレオンと言ったな。誰が誰を処刑するって?」
アルトの言葉に反応する様に、更なる魔力の重圧を受けるガレオンは苦渋の声を漏らしながらアルトを睨み返す。
その睨みからアルトはこの状況を打開できる方法があると言わんばかりな意志の目を向けている事に気付いた。
「ふむ。この状況を打破できると言いたいようだな」
「っ!?」
ガレオンは自身の心中を見抜かれた事に驚いた。
しかも、打破の方法すらも見抜かれているとはガレオンも思わなかった。
「先程の魔法の効果に入れれば勝てると思っているようだな」
「っ!? ‥‥‥っ」
自身の打破の方法までも見抜かれたガレオンは苦しみながらも、更なる眼光で睨みつける。
「そんなに自身の魔法に自信があるなら、試してみろ。無駄である事を教えてやる」
アルトはそう言うと、ガレオンに掛けていた魔力の圧力が解かれた。
自由になったガレオンは身体強化の魔法を行使してアルトから離れると、魔導書を開き魔法行使に入った。
「お、おい! アルト」
アスタはアルトの奇行に戸惑う。
アスタ以外にもアルトの行動に驚いている者が多かった。
「もう遅い!!」
____空間魔法"開かずの赤い部屋"____
先程の魔法をガレオンが行なうと、アルトは今度は何もせずに受けた。
すると、アルトの近くにいたマリエラも一緒にガレオンの空間内に入れられた。
────────────────────────
アルトとマリエラがガレオンの魔法空間内に入った。
その空間内は赤い立方体の部屋だった。
「ふむ。ここが奴の魔法空間か」
「アルト! なにを考えているんですか!? 魔法効果も知らないのに、馬鹿なんですか!?」
そんな事を告げるアルトにマリエラが声を荒げながら抗議する。
「奴の思惑の全てを壊せば、簡単に心が折れるのはわかっている」
そんな会話をしていると、突然、"開かずの赤い部屋"の立方体の空間が、小さな四角形によって閉じられようとしていた。
「まさか、空間魔法内の全てを閉じ込めて殺すつもりです!」
マリエラは自分達に起きようとしている事に気付いた。
「アルト! 混沌魔法なら、貴方だけでも逃げられます! ですから‥‥」
「慌てるなマリエラ」
マリエラはアルトだけでも逃がそうとするが、アルトは一切焦った様子もなく、自身の魔力を解放させた。
すると、閉じ込めようとするかの如く、閉ざし始めていた空間魔法に亀裂が無数に走り、アルトはマリエラを庇うように魔力で覆うと、彼等に迫った閉じる空間が自壊する様に、割れたガラスの如く破砕した。
────────────────────────
一方
アルトとマリエラがガレオンの空間魔法内へと入れられた事で、二人の姿はブラック・マーケットから消えた。
「‥ふ‥フハハ‥ハハハハハハハハ‥!!!」
ガレオンは空間魔法内にアルトとマリエラを入れた事に高笑いした。
「いい気味だ! あいつらは2度とこの場所に戻れないのだ!」
「なにっ!?」
「どういう事よっ!!」
ガレオンの言葉にファンゼルは驚きの声を上げ、ノエルが問い質す。
「俺が使った魔法は"開かずの赤い部屋"だけじゃない。空間魔法"閉じる赤い部屋"で"開かずの赤い部屋"内にいる存在を消滅させるんだ! 今頃、後悔しながら死んでるだろうよ!」
ガレオンは"開かずの赤い部屋"だけでなく、もう一つの魔法も使用しており、その魔法で裏切り者のマリエラと、自身に屈辱を味合わせたアルトを葬った事に、歓喜していた。
それを聞いて、アスタとファンゼルが魔導書を開き、魔法を行使しようとするが、その前にある人物の声がこの場にいる全員に聞こえた。
「何かと思えば、それがお前の切り札か?」
「は‥‥?」
「え?」
ガレオンは間抜けを声を上げた。
同じくアスタやファンゼル達も声がした方向へと視線をやると、突如空間に大きな罅が入り、ガラスのごとく砕け散った。
すると、そこからアルトとマリエラが無傷で現れた。
「なっ‥!?」
「アルト!!」
「マリエラ、無事だったか!」
アスタとファンゼルはアルトとマリエラが生きていた事に喜んでいた。
同時にガレオンは自身の切り札が効かなかった事に驚き、呆然と立ち尽くしていた。
「はい。空間が圧縮してきたのですが‥‥アルトが魔力を少し解放したら壊れていきました」
マリエラはファンゼルに状況を教えながら、無事である事を証明する。
マリエラの言葉を聞いて、呆然と立ち尽くしていたガレオンが話しに割り込んだ。
「馬鹿なっ! たかが魔力を解放したくらいで俺の魔法が壊れるものかっ!!!」
惨めな悲痛の叫び。
自信作と言って良い切り札の魔法が魔力を解放した程度で簡単に敗れたのだ。
とても非現実的な破り方にガレオンの頭は理解出来なかった。
マリエラの話しが真実だとしたら、状況が違えど、嘗て彼が行なってきた所行の被害者と同じく、ガレオンは理不尽を味わっている事になる。
「空間に閉じ込めたぐらいで、俺を閉じ込められるとでも思ったのか?」
アルトはガレオンに向けて、ガレオンの魔法など無駄だと言い付けた。
余りにも屈辱的な結果を示されたガレオンはやけくそになり、魔力弾を放とうとする。
しかし、そんなガレオンに無数の光の線が彼の身体を貫き、身動きが出来ないようにした。
「‥ば、馬鹿‥な‥お前の‥魔法は‥氷魔法じゃ‥‥ないのか?」
ガレオンはそう告げると、倒れたのだった。
「俺の魔法属性は氷じゃない‥‥混沌だ」
アルトがそう告げると、倒れたガレオンは居られた心が持たず、気絶した。
アルトは魔導書を開き、鎖魔法でガレオンを縛り上げた。
「さて、後はお前達だ」
アルトはそう言いながら、マリエラとファンゼルを見た。
その瞳からまるで自分達を逮捕するのではと思ったファンゼルだったが、アルトから告げられる言葉に、驚愕するのだった。
「ダイヤモンド王国について知っている事を[黒の暴牛]団アジトで話して貰おうか」
『えっ?』
あまりのアルトの言葉に裁かれる立場であるファンゼルやマリエラ、ドミナントだけでなく、[黒の暴牛]団員であるアスタやノエル、フィンラルまでも驚いていた。
「なにを驚いてるんだ?」
アルトは彼等が驚いている事に理解出来なかった。
「[黒の暴牛]団は、今回の一件の第一発見者であり、ダイヤモンド王国の重要人物の逃亡の協力をした様なものだからな」
「な、なんで‥協力者扱いになるのよ‥!!」
アルトの言葉にノエルは抗議する。
「利用されたとはいえ、ファンゼルをここに連れて行く際にダイヤモンド王国の刺客から逃亡させた事に変わらないだろ」
「‥‥‥っ!?」
アルトの正論に反論できないノエル。
フィンラルも同じ様な思いだが、アルトの言葉は正論であり、魔法騎士団としては当然の対処だ。
納得出来ずとも、魔法騎士団として動かなければならない。
魔法騎士団は命を賭けて国を護る事を使命とする英雄軍。
国とは民と民の暮らす村々によって維持されている。
無論、魔法騎士団は無料で命を賭けてはいない。
しかし、犯罪者をどのように裁くかは魔法議会と呼ばれるクローバー王国の司法機関だが、犯罪者をどの罪状で逮捕するかは魔法騎士団である。
よってアルトはそれを行使して、ファンゼル達のクローバー王国亡命を許可させようとしていた。
その為に、今回のダイヤモンド王国からの刺客による奇襲時の状況を[黒の暴牛]団アジトで聞く事にした。
フィンラルの空間魔法を経由して、[黒の暴牛]団アジトへと来たアルトは団長のヤミ・スケヒロを初めとした団員達から話しを聞いたりした後、マリエラ達に起きた出来事を事細かに記し、クローバー王国の魔法騎士団員の入団を魔法騎士団本部の魔法帝に申し込んだ。
アルトの手紙を一文字も見逃さず読んだ魔法帝は三人に共通として「ダイヤモンド王国に関する情報の全てを提示」と、一人ずつ、別の義務を与える事にした。
ファンゼルに「魔法騎士団への入団希望者と兵士の教育」の義務化。
ドミナントに「魔導具開発部門の入隊」。
マリエラは「[紅蓮の獅子王]団に入隊。殺害数の倍以上の救済を活動」を条件付けられた。
ファンゼルとドミナントはそれぞれ監視を付けることになるが、二人の生活を安全を保護され、マリエラはアルトが監視役兼護衛を行なう事になった。
特に、マリエラに関しては行なってきた事例の贖罪として、
今回のダイヤモンド王国魔導士の襲撃を解決した[黒の暴牛]団には星二つが授与され、独自でこの行動を行なったアルトはマリエラの護衛と監視を行なうという罰則で咎められた。
無論、マリエラが入隊する[紅蓮の獅子王]団の団長であるフエゴレオンも、今回のアルトの独断行動に思う所があり、五時間以上の説教をアルトに行なっていた。
正座させられた状態で五時間も説教を受けた為、アルトは脚を痺れさせながらも、仕事を全うしていた。
そして、マリエラ達の処遇が決まった翌日。
マリエラは‥‥‥
「皆聞け! 今日から新しく入団したマリエラだ!!」
「よろしくお願いします」
いつも着用していたダイヤモンド王国のマークが付いた黒いモサモサのフード付きマントではなく、[紅蓮の獅子王]団のローブを羽織ったマリエラがフエゴレオンの紹介に応じるように、挨拶した。
[紅蓮の獅子王]団に入団し、アルトとペアを組むようにフエゴレオンに言われた彼女は、今後、アルトと多く任務を受ける事になる。
「‥‥こうなるとは、思いもしませんでした」
「だろうな」
そんな何気ない会話を、アジトの庭にて、アルトとマリエラはしていた。
「殆ど魔法帝のおかげだが‥」
「何故、そうまでして助けたんですか?」
「前に約束したろ。次に出会ったら今度こそお前を助けるっと」
庭にて寝転んだ状態で話しているアルト。
マリエラはその言葉に、そっぽ向くように顔を背けた。
彼女は頬を赤く染めて‥‥‥‥‥
そんな二人にフエゴレオンがやってきて話し掛けた。
「アルト」
「フエゴレオン団長」
フエゴレオンを見ると、寝転んでいたアルトは立ち上がる。
「明日の戦功叙勲式にお前も呼ばれている。明日、私とレオポルドと共に王都に向かうぞ」
「戦功叙勲式?」
アルトは聞き覚えのない言葉に頭を傾けた。
そんなアルトにフエゴレオンが戦功叙勲式について話した。
「規定数の星を取得した魔法騎士団員に新たな等級を与える式だ。お前の星取得数は13。お前はダイヤモンド王国の八輝将の一人を倒している事から、これほどの星を取得している」
「八輝将を、倒した」
マリエラはフエゴレオンの言葉に驚いていた。
ダイヤモンド王国の最強の魔導士の名称に新人魔導士であるアルトが勝ったのだ。
無理もないだろう。
「新たな等級を手にし、今回のお前の独断行動の贖罪を他の者達に見せ、認めさせるのだ!」
「‥‥‥そのつもりです」
フエゴレオンはアルトのその言葉に、頷き、建物の中へと戻っていった。
翌日。
ある事件を裏で引き起こしていた人物が本来の目的のために動き始めているとは‥‥‥‥まだ誰も知らない