戦功叙勲式
マリエラの[紅蓮の獅子王]入団から翌日。
アルトはレオポルドとフエゴレオンと共に王都に来ていた。
大きな扉がある場所にやってくると、3人の他にも別の団の魔法騎士団と団長が来ていた。
一つは、銀色の鷲のシンボルを持った毛皮の様なローブを羽織った3人の銀髪男女。
彼等は[銀翼の大鷲]団の団長ノゼル・シルヴァと団員2人だ。
一つは、薔薇のシンボルを持った青いローブを羽織った銀の鶏冠を模した兜や胸や籠手などに鎧を着けた、兜に収まる様に纏められた金髪の女性と褐色肌の長身長の女性。
彼女たちは[青の野薔薇]団の団長シャーロット・ローズレイと団員だった。
そして、太陽のシンボルを持った金色のローブを羽織った3人の男達。
彼等は[金色の夜明け]団の団員たちだった。
しかし、この団だけは団長が不在だった。
初めてやってきたアルトはフエゴレオンに言われた通りの場所で待機した。
右隣に褐色肌の長身長の女性が立っており、左隣にレオポルドが立ち、アルトとレオポルドの間の背後に立つ様にフエゴレオンが立っていた。
彼等は大人しくその場にて待っているが、フエゴレオンがアルトに説明した事から、アルトがこの場に初めてやってきた事を知るや、馬鹿にする様な視線を向ける銀髪男女と、見下す様な視線を向ける[金色の夜明け]の団員が一人。
そんな彼等の視線など気にも止めていないアルトは唯々待ち続けた。
すると、大きな扉が開き、皆が開いた扉へと体を向けた。
しかし、扉の先にいる人物を見てアルトは驚いた。
その人物は嘗て、魔法騎士団入団の為の修行の際に出会ったユリウス・ノヴァクロノだった。
彼の背後にはアスタとユノまでもが一緒にいた。
アスタとユノも式典用の長机に向かって歩いて行くユリウスの後ろ姿を見ていると、ユリウスが机に向かっていく中、今回の勲章授与の為に待っていた魔法騎士団員達の整列して並んでいる姿の中に、アルトがいる事に気付き、驚いていた。
「──────では‥‥戦功叙勲式を始めよう!」
ユリウスの言葉と共に戦功叙勲式が始まった。
戦功叙勲式とは個人で規定の星の取得数を得た魔法騎士団員に新たな称号を与えられる。
つまり、ユリウスと共にやってきたアスタ達を除いた、元々この場に来て待っていたアルト達がその称号授与者に当たる。
「星取得数7[紅蓮の獅子王]団、レオポルド・ヴァーミリオン!! 二等中級魔法騎士の称号を授与する!! ‥‥‥兄である獅子王団団長と同じく、君の炎魔法の威力は圧倒的だね! やり過ぎに要注意かな」
ユリウスに呼ばれたレオポルドが机を挟んで、ユリウスの目の前に移動して、勲章を貰った。
レオポルドは勲章を貰いながら、ユリウスからのアドバイスに返事を返した。
「悪に容赦など必要がありません」
レオポルドがそう告げると、彼は元いた場所まで戻った。
「星取得数13[紅蓮の獅子王]団、アルト!!」
アルトはレオポルド同様にユリウスの目の前まで移動した。
「一等中級魔法騎士の称号を授与する!!」
その言葉を聞いて、魔法騎士団入団試験に来ていた他の団長や団員、そして、アスタやユノが驚いていた。
短期間の内に新入団員が一等中級魔法騎士の称号を得るなど、到底考えられない事なのだ。
実際に、1年前に入団しているレオポルドですらも、今回の勲章授与で二等中級魔法魔法騎士の称号なのだ。
この事から、アルトは約二年間のレオポルドの実績を凌駕したのだ。
「ダイヤモンド王国の[八輝将]を一人で倒すとは、あの時よりも更に強くなったね!」
ユリウスの言葉に更なる驚愕を他の騎士団員を襲った。
[八輝将]とはクローバー王国でいう所の魔法騎士団長クラスの実力者を意味する名称。
新入団員が団長クラスを倒した。
それならば、彼の異常な昇格も頷けると思った二人の団長。
「俺はあの時の人が魔法帝だった事に驚いてますよ」
「ははは、すまなかったね。単独行動は控えても精進するように頑張ってね!」
「はい」
アルトはユリウスと二言三言、話した後で元の場所へと戻った。
その際に、アスタとユノに視線を向けた。
先に魔法帝になるのは俺だっ! と言わんばかりな視線を‥‥‥
それを受けた二人はライバル心を沸騰させるかのように、好戦的な笑みを浮かべた。
「──────みんな、大義だったね。さて、これから簡単な席を設けてるから楽しんで行ってくれ。あ、そうそう‥‥今日は特別ゲストも呼んであるから大いに交流してくれ」
その後、残りの昇格する騎士団員達への称号授与が終えると、ユリウスは戦功叙勲式を終わらせた。
その直後、水色のキノコ頭の青年がユリウスに耳打ちするや、ユリウスの表情が一瞬険しくなるも、用事が出来たからといって、彼とキノコ頭の青年が部屋を出て行った。
彼等が出て行くのを見ると、呼応するかのように、アルト達は場所を移動し、ユリウスが言っていた席が用意された複数のテーブルに幾つもの料理が並べられた部屋へと案内された。
そこで、功績を上げた団ごとに分れていた。
ユリウスと共に来たアスタ達は授与された団員ではないため、団の垣根を越えて、同じテーブルで食事をし合っていた。
そんなアスタ達に話し掛けるために、アルトhあフエゴレオンに許可を求めた。
「フエゴレオン団長」
「どうした」
アルトはフエゴレオンを呼び、アスタ達を右手の親指で示しながら、こう言った。
「
「‥‥ふむ。よかろう」
「ありがとうございます」
アルトは頭を下げて感謝すると、アスタ達がいるテーブルへと近づいた。
「よぉ」
「おう、アルト!」
「元気そうだな」
「お前らもな。にしてもなんで魔法帝と一緒に来てたんだ?」
「あぁ、この前に
アルトの質問に答えるユノ。
「アルト! 必ずお前を追い越すからな!!」
「ありえねー。二人を追い越すのは俺だ」
「追い越されるつもりはないぞ」
幼馴染みであり、ライバルである三人は笑みを浮かべながら告げた。
そんな三人に‥‥正確にはアルトに話し掛ける者がいた。
「あ、あの‥‥お久しぶりです。覚えておられますか?」
頬を赤くして恥じらうようにアルトに訪ねてきた。
アルトは少しの間、思考の海に呑まれるが、すぐさま思い出し応答した。
「‥‥あぁ、フォーロン村に行った際に助けた」
「はい! あの時は助けてくださりありがとうござます!」
話し掛けた[金色の夜明け]団のローブを羽織った茶髪のおっとりとした表情の少女が歓喜の笑顔でアルトにサムズアップした。
いきなりのサムズアップにアルトは驚き、少し引いていた。
彼女の名はミモザ・ヴァーミリオン。
嘗て、アルトがハージ村の教会の神父の頼みでフォーロン村にある教会へとある手紙を渡すために向かい、渡した後で、偶然居合わせた盗賊に襲われていた者がいた為、助けた後教会へと帰宅したのだ。
その際、彼女は盗賊に襲われた張本人だったのだ。
ミモザはその時から、自身を助けたアルトの事を恋い焦がれ、今日この時に漸く再会出来たのだ。
彼女の反応は恋い焦がれる少女を対象とすると、なんら奇妙な事もなかった。
「アルト、ミモザと知り合いなのか?」
「あぁ2~3年ほど前に神父様に頼まれてフォーロン村に行った際に、盗賊に襲われているのを助けた事があってな」
「ああ、あの時の‥‥」
アルトの説明を受けてユノは嘗て聞いた事があったらしく思い出した。
しかし、同じく聞いた事がある筈のアスタが思い出せていなかった。
しかも、大食らいにテーブルに置かれた食料を食べながら‥‥
そんなアスタを見て、他の団員は下民など散々な罵倒を与える。
その言われようにミモザたちは沈黙するが、アルトはまるで、ゴミを見るような視線をアスタを罵倒した輩を見ていた。
「う~ん。散々な言われようですな。まぁもう慣れてるけど」
(な‥なんという器の大きさ‥!)
アスタの態度に同じく、[黒の暴牛]と[金色の夜明け]のテーブルにいた水色髪の眼鏡を掛けた青年___クラウス・リュネットが驚いていた。
そんな中、叙勲式を受けた方の[金色の夜明け]のいるテーブルにレオポルドが近づき、口撃を仕掛けた。
「下民なら貴殿らの団にいるではないか‥‥」
「!」
「四つ葉の魔導書を持ち、祭り上げられ、図に乗っている下民がな‥‥! 先の魔宮攻略任務‥俺の方が上手くやれた!」
その言葉にアレクドラは‥‥
「大した自信だな、紅蓮の小僧────別に我々はあのような下民に気体などしていない。ヴァンジャンス様の‥[金色の夜明け]団の理想を体現するのは我々だ‥‥!! 況してや、混沌魔法を手にして祭り上げられ図に乗っている下民がいる紅蓮に言われる筋合いはない」
アレクドラはユノの事など仲間としてみて居らず、いない者扱いのようにしており、下民という事で混沌魔法を持つアルトの事を先程のレオポルドの発言への意趣返しを行なった。
そんな発言にアルトとユノは気にしていないが、アスタは苛立ちを見せていた。
「──────‥‥お言葉ですが‥‥」
クラウスが口を開くも、
「お前もダクラウス! お前程度の実力の者が此処に居て恥ずかしくないのか」
「‥‥‥‥はっ‥‥‥」
アレクドラの言葉に開いた口を閉ざさざるを得なかったクラウス。
ユノやクラウスのみならず、残りのミモザにまで、アレクドラは文句を告げた。
「ミモザ! 魔宮では最初に脱落したとの事じゃないか、王族のヴァーミリオン家が笑わせる」
「‥‥申し訳あr「くだらん」えっ?」
「なにっ?」
ミモザが謝罪をしようとした際に、アルトが話しに割って入った。
アレクドラは自身の言葉をくだらないと告げたアルトを睨んだ。
「なにを言うのかと思いきや、他の者と大差ない思想持ちとは、呆れて物も言えん」
「黙れ! 下民が貴族である私に口を挟むな!」
「その程度でしか価値観も見えんか、節穴も良いところだ。流石自称の"理想の体現者"だ」
「貴様‥‥‥‥っ!!!?」
アレクドラはアルトの言葉に怒りを我慢の限界だと言わんばかりにアルトを睨み付けるが、そんな2人を無視して、右側の側道部を掻き上げて、十字の様な二つのヘアピンで留めた、ちぢれ前髪の銀髪の男がアスタの後方にいたノエルの頭に水の入ったコップを上から溢す様に掛けた。
その行為にミモザとクラウスは驚愕し、ノエルは恐る恐ると背後に立つ彼の名を呼んだ。
「‥‥ソリド兄様」
「シルヴァ家の恥曝しであるお前が、なんで此処にいんだ?」
戦功叙勲式に表彰者であった[銀翼の大鷲]団の団員であり、ノゼル・シルヴァの弟であり、ノエルの二人目の兄である。
そんなソリドによるノエルの罵倒に参加する様にもう一人のノゼルやソリドと似た髪型をした女性が同じくノエルを罵倒し始めた。
最後には、[銀翼の大鷲]団がいたテーブルにて立ちながらも、ノゼルはノエルに辛い一言を告げた。
「‥わざわざシルヴァ家の名に泥を塗りに来たのか? この場はお前に相応しくない。去れ」
ノゼルのその言葉を聞いて、ノエルは去ろうと踵を返すが、そんなノエルの腕を掴み、止めた者がいた。
「こんな奴らから逃げる必要ねぇ!」
「アス‥タ‥‥‥」
その者はアスタだった。
アスタは怒りの表情に染まりながら、ノエルを引き留めた。
アスタは自分達が食していたテーブルの上に立ち、この部屋内にいる者達に向かって叫んだ。
魔法騎士団を尊敬して、職に就いたにも関わらず、見下したり、差別を行なう他の者と何ら変わらない事に怒っていたのだ。
「────いいか! 俺は‥」
アスタが怒鳴っている際に、アレクドラが魔導書を開き、アスタを砂で覆い尽くした。
しかし、アスタは魔導書から反魔法の片手剣を取りだして斬り裂き、魔法を無効化した。
己の魔法を無効化された事に驚くアレクドラ。
アスタが新たな力を手にしている事にアルトは不敵な笑みを浮かべる。
「俺は必ず実績を積んで、魔法帝になってお前ら全員‥‥黙らせてやる!!!!」
アスタは堂々と魔法帝になると宣戦布告した。
次回~王都襲撃~