昨年では病気に掛かったりして身体の状態が良くありませんでしたが、年始めに新作を出来て嬉しいです。
誓い
超新星爆発などによる星々の間に生まれた一つの意思を持つ力の塊。
その名も混沌。
混沌が星を生み出し、世界を構築し、生命を創造する。
神話の時代。
その混沌の力を得た1人の魔導士によってある大陸は四つに分けられた。
その力を宿した
魔導士はその四つから四大陸が出来上がった。
混沌の魔導士の魔導書の中央に描かれた記は陰陽が刻まれていた。
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人間は魔神に滅ぼされるかに見えた。
しかし、それを止めたのはたった1人の魔導士だった。
彼は魔神を倒し、"魔法帝"と呼ばれ、伝説となった。
その魔導士の持つ魔導書には四つ葉のクローバーが刻まれていた。
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魔神討伐、初代魔法帝誕生の一件から500年の月日が経ち、何人もの魔法帝が選出された。
現在の魔法帝はクローバー王国の隣国の侵略国家___ダイヤモンド王国との戦争を終え、信頼できる仲間達と共に帰国した。魔法帝と魔法騎士団が戻ってきたことにクローバー王国の三つに分けられた区分の内、一番区分が高い王族・貴族が住まう王貴界にて大騒ぎだった。
そんな中、一番区分が低い下民が住まう恵外界の最果ての村。嘗て国を滅ぼそうとした魔神の骨が一番近くにあるハージ村ではそんなお祭り騒ぎを知る由もなく、ハージ村では恒例と言わんばかりの言葉が村中に響き渡る。
「結婚してくださぁぁぁぁぁい!!!」
その声が聞こえたのはハージ村に建設されたたった一つの教会だった。
件の教会ではシスターに一輪の花を向けて告白する灰色の髪をした少年がいた。
彼の名はアスタ。シスターの名はリリィ・アクアマリン。
アスタはシスター・リリィがこの教会に来てから一目惚れしてしまい、約10年間も告白を続けている。
そして、告白を受けているシスター・リリィに関しては何度も何度も告白を断っていた。
しかし、アスタは一向に諦めず今尚プロポーズをしていた。
あまりのしつこさに業を煮やしたシスター・リリィは魔導書を開き、魔法を発動してしまう。
────水創成魔法"愛の正拳突き"────
水魔法によって出来た黄色い十字架を浮かべた水の拳がアスタを地面に叩き付ける。
魔法を発動してから気を取り直したシスター・リリィはアスタに大丈夫かどうかを尋ねる。
尋ねられたアスタはすぐさま、尋常な身体能力にて飛び上がり、リリィに迫る。
しかし、そんなアスタに一つの強風が襲い、空中に投げ出され、地に落ちる。
「いつまでやってんだよ」
「アスタらしいね」
そんなアスタに次々に言葉を告げたのはこの教会に捨てられた子供であるレッカとナッシュがアスタに行動に呆れていた。
そして、2人の隣にいたアスタと同じ15歳の高身長の青年___ユノが先程のアスタを風邪を発生させた張本人である。
アスタは告白を邪魔したユノや、年上に対しての口調が悪いナッシュに抗議する。
しかし、一切の魔法を使えないアスタを馬鹿にするナッシュ。
可愛げのないナッシュにグヌヌと唸るアスタ。
しかし、気を取り直したアスタが洗濯した洗い物を干そうと洗濯物に視線を向けると、既にユノが畦の魔力で乾燥させていた。
「わぁ! ユノ兄凄い!!」
「助かるわユノ」
「ねぇねぇ、アルト兄ちゃんが見当たらないよ?」
「アルトならそろそろ帰ってくる頃だと思うけど‥‥」
ユノが風の魔力で乾かしているのを見て喜ぶレッカ達だったが、そんな中、アルルがもう一人の最年長の少年の名を呼びながらシスター・リリィに話し掛ける。
シスター・リリィはアルルの質問に曖昧な返答をする。
ドスゥン!!
しかし、アルルの質問に答えるように空から光の槍で串刺し状態になっている二匹の猪が落ちてきた。
「今日のご飯を持って帰ったぞ」
「アルト兄ちゃん!」
突然の猪が落ちてきたことに驚いている教会の子供とシスター。
しかし、そんな彼等の驚愕など気にしていないのか、猪を落とした張本人である金髪で175cm前後の少年が上空に浮いていた。彼こそが先程、アルルが質問した際に出てきた人物であるアルトだ。
アルルはアルトを見ると喜んだ。
「まぁ!? 立派ね」
「後二匹捕えたから村中で食べよう?」
アルトは左手に浮かべさせている落とした二匹と同じ猪を浮かばせていた。
「そうね、今日は村中の人達と食べましょうか?」
『わぁ~い!!!』
村中で四匹の猪を分けながら食べる事になり、アルトとユノは手分けして村中に掛け合った。
アスタは魔法で役に立っている同じ日に捨てられたアルトとユノに嫉妬し、魔神の骨にて筋トレをしに行った。
2人はアスタを無視して村中の人達に向かって行った。
アルトとユノによる誘いに答えてくれたのは教会にボランティアで手伝ってくれている人達と教会近くで畑仕事をしている達が集まった。
四匹の猪をそれぞれ焼き肉や豚汁の様に様々な料理を作って食べていた。
この時の夕食は誰もが楽しく食していた。
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翌日。
15歳になった少年達は魔導書塔にやってきた。
この国では15歳になった少年達はその年で漸く魔導書を持つことを赦されている。
つまり、アスタやアルト、ユノもその赦された者となったのだ。
ハージ村に近い魔導書塔にやってきたアルト達。
そこには既に3人の他にも15歳になった少年少女がいた。
魔導書塔の脇には神父やシスター、子供達もおり、他にも付き添いの者達がいた。
魔導書塔内に一台だけ台座のような物があり、台座の上にこの魔導書塔の管理人が現われた。
管理人は魔導書に関する事を長々と説明していた。
しかし、誰1人として管理人の説明を聞き逃すことはなかった。
『────‥‥それでは、魔導書授与!』
声量を上げる魔導具から告げられた魔導書授与の言葉に反応するように魔導書塔内にある魔導書がそれぞれ青や赤、緑‥‥無数の色を輝かせて本棚から飛び出した。
飛び出した無数の魔導書がそれぞれ自身の持ち主の元へと向かって行く。
自身へ飛んで来た魔導書を手にした少年少女は各々反応は違ったが、歓喜に喜んでいた。
しかし、そんな歓喜の場に1人の呼びかけが聞こえた。
「あの~‥‥魔導書が来ないんですけど‥‥?」
呼びかけたのはなんとアスタだった。
アスタの呼びかけた内容は自身の元に魔導書が一冊もやってこない事だった。
魔導書内に静寂が襲い、管理人は前例のない事に戸惑い、また来年と言って諦めた。
管理人の言葉に驚愕するアスタだったが、魔導書を手にできないアスタを嗤う他の少年少女達。
アスタの住まいである教会の者達もあまりの事に言葉が出ずにいた。
誰もがアスタを馬鹿にしている中、二つの光が輝いていた。
一つは黄金に光り、もう一つは純白と漆黒に光り出していた。
その光を放つ魔導書を手にしていたのはアルトとユノだった。
ユノの持つ魔導書には気品を有した緑色の表紙に四つ葉のクローバーがあり、アルトの持つ魔導書には表紙に白と黒の渦巻き状の絵柄に陰陽マークと表紙の四角に四つ葉のクローバだけでなく、スペードやハート、ダイヤモンドのマークまでもが描かれていた。
「伝説の‥‥四つ葉の魔導書‥」
「神話の‥‥魔導書」
何故、アルトとユノの魔導書がそれぞれ伝説・神話の魔導書と言われているのか。
先ず、ユノの持つ魔導書が伝説になっているのか‥‥それはハージ村近くにある魔神を倒した初代魔法帝は"幸運"を宿した魔導書を手にしていたらしい。
しかし、彼と同じ四つ葉の魔導書を持つ者はいなかった。
つまり、ユノは初代魔法帝以来の四つ葉の魔導書に選ばれた存在であるという事だ。
次ぎにアルトが持つ魔導書は神話の時代に世界を、生物を創造し、大陸を四つに別け国を創った魔導士が持っていた魔導書は四つの国のマークが描かれていた。
つまり、アルトの魔導書は世界を創り出した神に等しき力を持った代物なのだ。
神話と伝説の魔導書が目の前に現われた事に言葉を失い呆然と見守る皆。
そんな皆に己の魔導書を手に持ったユノとアルトは告げる。
「俺は‥‥‥魔法帝になる」
「いいや、魔法帝になるのは俺だ!」
2人のこの言葉に歓喜の声が魔導書塔内に広がった。
神話と伝説の魔導書を手にした希望の星だと次々に告げる者達。
その中には下民が四つ葉や神話の魔導書を手に入れた事に現実逃避する者もいた。
そして、アスタは‥‥‥‥
「‥‥‥いいやアルト、ユノ。魔法帝はオレだ‥‥!!!!」
アスタは魔法帝になる宣言をした2人に競って自分が魔法帝になると告げる。
しかし、それを聞いた周りの者は爆笑し、アスタを嘲笑う。
そんな中、宣言された2人は‥‥‥
「‥‥‥ありえねー」
ユノはそう言ってアスタの隣を通り過ぎ、魔導書塔外へと歩んだ。
その言葉を聞いたアスタは呆然とするが、アルトはアスタの隣を通り過ぎた直後、ある一言を告げた。
「‥‥さっさと来いよ」
「っ! ‥‥おう!!」
その言葉だけでもアスタにとって十分に呆然から解放される言葉だった。
しかし、魔導書塔内ではアルトとユノの魔導書を見て不敵な笑みを浮かべる妖しい影がいたことに誰も気がつかなかった。
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魔導書を貰ったアルトは教会に帰ってくると料理を手伝おうとした。
しかし、今日は神話・伝説の魔導書を手にしたアルトとユノのお祝いである為、休めと神父に言われたアルトは教会の祭壇を掃除していた。
1人で掃除していたアルトは一通りの掃除を終えると食卓へと向かうとユノとアスタが帰ってきていなかった。
「あれ? アスタとユノは?」
「それがまだ帰ってきてないの」
「‥‥‥ちょっと探してくるよ」
「場所がわかるの?」
「検討はついてるよシスター」
アルトは食事の皿を食台に置き始めていたシスター・リリィから話しを聞き、2人を探し始めた。
アルトは教会から出て行くと先ずはアスタから探そうと思ったが、先程までいた魔導書塔から炎の魔力と風の魔力を感じ取った。
しかもその風の魔力はアルトがよく感じ取っていたユノの魔力だった。
「ユノは魔導書塔にいるのか。アスタは何処だ?」
ユノが誰かにいちゃもんを付けられて攻撃を受けて正当防衛をしたのだろうと考えたアルトは魔力を感じ取れないアスタから探そうと思った。しかし、ユノの魔力を感じ取った魔導書塔から別の魔力を感じ取り、ユノの魔力がまるで封じられたかのような力を感じ取った。
「ユノに何かあったのか!?」
アルトはユノに何かが起きたと感じ取り、すぐさま向かって行った。
アルトが魔導書塔に到着すると其処には鎖で拘束され魔導書を奪われたユノと、ユノの魔導書を奪った顔の左側が焼け爛れている犯人がいた。
その光景を見てアルトは怒りに揺れた。
「何してやがる!!」
アルトは真っ直ぐに魔導書を奪った罪人__レブチに向かって行く。
そんな愚直な行動にレブチはニヤついた笑みを浮かべながら魔法を放った。
___鎖魔法"魔縛鉄鎖陣"___
レブチは魔導書を貰ったばかりのアルト達を相手なら簡単に勝てると思ったのかユノに掛けた魔法と同じ魔法を使って攻撃する。
しかし、アルトは生まれつき行使できていたマナスキンを用いてレブチの魔法を柔軟に回避していた。
マナスキン____
「なに!?」
唯の魔導書を貰ったばかりの者が自身の魔法を回避したことに驚きを隠せずにいた。
そんなレブチの心象など気にしておらず、彼はそのまま拳に魔力をため込んだ。
「粋がるな!!」
___鎖魔法"鎖蛇の舞い"___
アルトに回避された事で驚愕していたレブチはアルトの行動を見て対等に闘えると思い込んでいるアルトに今度は攻撃性が高い魔法で襲った。
蛇のごとき動きをしながら攻撃してくる鎖魔法。
その鎖魔法に一切自惚れやいい気になっている分けではないアルトは上下左右から襲ってくる鎖を並外れた身体能力にマナスキンによる更なる身体能力向上も上乗せされて、早めに襲ってきていた右側の鎖から躱し初め、続く左・上・下からくる鎖魔法を全て回避した。
その光景に魔法騎士だった頃の自身の魔法が通用しないアルトに苛立ちを浮かべるレブチは魔力弾を撃ちながら鎖魔法を行なおうと考えた。
しかし、その思考は不要のモノとなった。
その理由は魔導書塔の入り口までにある左右に同じ高さの壁がある。
その壁に向かってアルトの背後で衝突した者がいた。
その者が衝突したことで壁が陥没した際の音が強烈だった為、レブチから視線を離してしまったアルト。
アルトの視線の先には何とアスタが壁に衝突していた。
「アスタッ!!?」
「アスタ‥‥」
壁に衝突した人物がアスタだと知るとアルトとユノは驚愕した。
そんなアルトの行動を見逃さなかったレブチはユノに掛けた魔法を‥‥‥つまり"魔縛鉄鎖陣"を掛けた。
「ッ!! しまった‥‥」
「痛たた‥‥ッ!? アルト、ユノ!?」
アスタは壁に衝突した痛みから立ち直るとアルトとユノの現状を確認し驚愕していたが、すぐさま2人を襲っているレブチに目を付けて、二人を助けるために向かって行く。
しかし、アスタの動きはアルトと違い、唯々猪突猛進に駆け抜けるだけでレブチから放たれた"鎖蛇の舞い"によって身体を傷つけられ壁に激突させられた。
あまりの攻撃の重さにアスタは壁に背を凭れさせて動けずにいた。
「良いことを教えてやる、お前には魔力が一切ない。生まれつきだろうな。生まれながらの負け犬君」
レブチはアルトとユノがアスタに隠していた真実を告げてしまった。
その真実にアスタは絶望の淵へと叩き落とされてしまい、彼の精神は諦めの二文字へと変貌し、闇が覆い尽くそうとしていた。
しかし、そんな彼を光へ、希望へと変えた者がいた。
「おい、誰が負け犬だ?」
声を発したのはユノだった。
「アスタ、お前が魔法帝になることはねぇ」
ユノのその言葉は魔力が無いアスタへのダメ押しだと思ったレブチは更にアスタに罵倒しようとするが、ユノは自分が魔法帝になると告げ、続いてこう言った。
「────‥‥アスタはオレのライバルだ」
「は?」
ユノの言葉にアスタは目を見開きレブチはユノの言っている言葉に理解が追いつかなかった。
しかし彼の言葉を真に理解できたのはこの場にいる者で二人だけだった。
「さっきも言ったろユノ。魔法帝になるのは俺だ! ライバルのお前とアスタじゃねぇ」
アルトもユノの言葉に感化されてライバルへの「魔法帝になる」宣言を告げる。
ユノに続いて理解不能な事を告げるアルトに怪訝な視線を向けるレブチだったが、そんな彼は次ぎに思わぬ事が起きた事で驚愕・恐怖を覚え後退りするのだった。
何故恐怖したのか。
それはレブチがアスタの肩を踏みつけていた足をアスタが掴み、彼の努力によって得た膂力による痛みが彼を襲い、同時にアスタの気迫に恐怖したのだ。
「まだだ‥‥‥!」
先程まで諦めと絶望に変えられたとは到底思えぬ気迫だった。
「情けねぇとこ見せたなアルト、ユノ‥待ってろ。すぐに倒して助けてやる」
アスタが片膝を地に着けながら立ち上がろうとすると彼の意志に応えるように魔導書塔の外壁を突き破ってボロボロな魔導書がアスタの前に現われた。
「‥‥魔導‥書‥‥」
「‥‥‥やっぱりな、アスタが選らばれぇなんてありえねー」
「漸くスタートラインに入ったな、アスタ」
ユノとアルトのその言葉に、二人は最初からアスタが魔導書に選ばれる存在である事に気付いていた。
故に、魔導書授与の際に魔導書が手に入れられなかったアスタをユノは否定したのではなく、魔導書に選ばれない事を否定したのだ。
そして、アルトも例え魔導書に選ばれずともアスタは限界を超えて魔法騎士になろうとすることに気付いていた。
各々違う思いだったが、一つだけ同じ部分があった。
それはアスタが必ず這い上がってくること‥‥‥‥‥
アスタの前に現われた魔導書は自ら本が開き文字が描かれたページへと開くとそこからボロボロな大剣が顕現し、アスタはそれを手にした。
レブチは魔力のないアスタが魔導書を手にした事に困惑しながら、アスタの背後から見える禍々しい人の物ではない幻覚に恐怖し、魔法を放った。
三つ葉クローバーにはそれぞれ「誠実」「希望」「愛」が秘められている。
四枚目には「幸運」が宿り、五枚目。つまりアスタの魔導書には‥‥‥
‥‥‥「悪魔」が棲む。
アスタへと魔法を放つレブチだが、アスタが手にした大剣を一閃すると彼の鎖魔法は簡単に消え去った。
その光景はレブチに更なる驚愕を与えるには十分なことだった。
「おい‥‥相手がアスタだけなわけねぇだろ」
「あん?」
アスタの手にした力に驚愕し怯えるレブチにアルトが話し掛けた。
アルトは掛けられた魔法を魔力を上昇させる事で魔法を壊そうとしていた。
アルトの行なおうとしている行動が読めたのかレブチは自身の魔法が掛けられた状態から魔力を放つことなどできないと高をくくる。
それもそうであろう。
彼は魔法騎士としてこの魔法で魔力を封じ、自身の魔法が無敵だと息巻くほどなのだから‥‥‥
しかし、彼のその自信はアルトの前では何一つとして役に立たない。
何故なら‥‥‥
‥‥‥彼は混沌の魔導書に選ばれたのだから。
「‥‥‥う、嘘だろ‥‥!?」
レブチはアルトの鎖魔法が少しずつひび割れていき、同時にレブチの魔法で封じられていた魔力が漏れていき、その魔力量はこの国の王族を総動員しても及ばないほどの魔力量だった。
その魔力量の絶大さと重圧感にアルトの近くにいるレブチやユノは冷や汗を流していた。
況してや、アルトに睨み付けられているレブチは水分の全てが放出されるかの如く滝のような汗を流していた。
「ハァァァアアアアアア!!!!」
ギシッギシッと音を鳴らしながら鎖が鳴り響き、ヒビ割れが酷くなり遂には鎖が壊れた。
鎖魔法で僅かに封じられていたアルトの魔力も解き放たれた事でアルトの持つ本来の魔力量が放出された。
その魔力量はこの国に住む魔力を持つ者全員が感知した。
しかも先程までユノやレブチが冷や汗を流していた重圧は更に増加した。
国そのモノを押し潰さんとする程の重圧が国中で襲い掛かった。
そんな重圧を出してしまったアルトはすぐさま放出した魔力を抑える。
そして、彼は自身の魔導書を開き、魔法を一つ使用した。
その魔法は魔導書から剣の柄らしき柄頭が菱形になっていた。
アルトはその柄を掴むと引き抜いた。
すると、柄しか見えなかった代物は鍔と刀身を顕わにした。
柄は黄金に輝く勾玉に似た形状に天使の翼が付いており、刀身は白い刃に剣先が無数の天使の一対両翼が出ていた。
___混沌魔法"聖剣エクスカリバー"___
アルトの感情によって光の白や闇の黒に刀身が変化するが、唯一無二の生命・世界創造を行える聖剣。
一言で言えば万能剣だ。
そんな聖剣からは先程のアルトの魔力も秘めており、壊すことは不可能に近い。
そしてそんな聖剣を手にしたアルトはアスタに話し掛けた。
「行くぞアスタ」
「おう‥‥!」
「クソがぁぁぁぁあああああ‥‥‥‥!!!!」
レブチは自棄になり鎖魔法を放つがアスタが一閃すると鎖魔法は消滅した。
アスタがレブチの魔法を無効化するとアルトは聖剣を振った。
するとレブチの四肢を四属性‥‥‥つまり、火・水・風・土の枷によって拘束される。
突然の枷に驚愕し慌てるレブチだが、そんなチャンスを見ぬがさないアスタは彼の努力によって得た身体能力による高速移動で近づき、レブチに一閃した。
大剣と言ってもボロボロである為か強力な打撃としてダメージを負わせるほどの威力しかないアスタの剣によって腹に強烈な打撲を受けたレブチは壁にまで吹き飛ばされた。
その一撃だけでレブチは意識を失いユノに掛けられた魔法は解かれた。
その後、魔導書塔の管理人が呼んだ魔法騎士がやってくる前にアルトがレブチを拘束した。
ユノは奪われた魔導書を拾うと魔導書を手にできた事に歓喜しているアスタに近づき、彼等二人に交された約束を確認し合っていた。
二人は笑みを浮かべながら握り拳を互いにコツンとぶつけ合う。
「ほら、アルトも来いよ」
「俺もか?」
「ライバルって言ったのはお前だろ」
アスタとユノからアルトもするように告げられると彼は仕方がないと言わんばかりに頭を掻きながら近づき、頭を掻かなかった方の手をぶつけて、三人は約束を告げる。
「「「誰が魔法帝になるか、勝負だ」」」
三人の約束‥‥いや、誓いは魔神の骨の頭から照らす夕暮れが三人を照らしていた。
その後、アスタは教会の皆に魔導書を手にできた事を報告するのだった。