【休載中】混沌の魔法騎士王   作:森雄

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10番目は[混沌の王軍]団

 シェヴァが完全に消え去ると、シェヴァによって溢れていた破滅の魔力が完全に消え去った。

 

 これによって、アルトは覆っていた混沌の魔力を消した。

 

「凄いね凄いねぇ!!破滅の神の魔法を簡単に消し去るなんて────!!!」

 

 魔法マニアのユリウスがアルトへと近づいた。

 

「ま、魔法帝‥!!?」

「いったい、どんな魔法なんだい~~~?気になって仕方がないよ~~」

 

 マルクスが注意しようとするが、ユリウスが無視してアルトに質問した。

 

【混沌消滅創世魔法"理滅魔剣ヴェヌズドノア"。あらゆる理を滅ぼす我が魔剣だ】

 

 それを聞いて騒いだのはユリウスだけではなかった。

 賢い者ならば直ぐさま理解出来ただろう。

 

 "理滅魔剣ヴェヌズドノア"の前には不可避であると‥‥‥

 

 洞窟内での一件から僅か2日ほどの間に、悪魔と神の力へと覚醒し、理へと干渉し、世界の半球を破滅出来るシェヴァを相手に余裕綽々と勝利を収めた。

 

 余りな実力と成長速度に騎士団長や魔法に興奮しているユリウスが各々の気持ちを感じ取っていた。

 

 アルトが長剣を消しさると、自身の胸へと視線を向けた。

 今のアルトは以前よりも遙かに世界の‥‥いや、(マナ)の深淵へと近づきつつある。

 

【さて、仕上げとするか‥‥】

 

 __混沌生誕魔法"誕生命主"+混沌魔法"封呪解放"__

 

 アルトがそう言うと、先程のシェヴァを誕生させた魔法"誕生命主"と"封呪解放"を自身に掛けた。

 

 すると、アルトの身体から光と闇に輝く発光体が一つ解き放たれた。

 その光と闇に輝く二つの発光体がシェヴァの時と同様に姿形をなしていった。

 

 すると、二つの発光体の姿形がそれぞれ違う形へと変わっていく。

 一つはシェヴァと同様の魔力を発生させ、もう一つはアルトが出す禍々しい悪魔の魔力を発していた。

 

 すると、光の発光体から頭頂部と水平になるように光輪があり、純白のドレスを身に纏った豊かな胸部を持つ女性が生まれ、闇の発光体からは中年男性ぐらいの顔をした自身と同じ様な角と翼を生やし、尻尾を生やしていた存在が生まれた。

 

 アルトはシェヴァを倒した後に新たな神と悪魔を誕生させたのだ。

 アルトは神と悪魔の力を同時発動させた状態を解いた。

 

「目覚めた気分はどうだ?」

 

 アルトはそう訪ねた。

 

【これは‥‥】

【もしかして‥生誕を使ったの‥‥?】

 

 男女は自分達が生まれた事に驚いていた。

 

「そうだ。俺の中に封印された父さんを解放し、俺の中にある母さんの遺伝子から一つの命として生誕させた」

【アルト。神を生み出す事も出来るようになったのか?】

 

 封印から解放されたバヴェルは驚嘆していた。

 そんなバヴェルの言葉に、隣に立っている女性がピクリと反応した。

 女性はアルトへと視線を向けると、驚きを表す様に目を見開き、目尻に涙を浮かばせていた。

 

【アルト?アルトなの?】

 

 女性がワナワナと身体を震わせながら、アルトへと近づき続けた。

 

「あぁ」

 

 アルトがそう言うと、女性が両手を広げてアルトへと抱き締めた。

 女性はクスックスッと涙を啜っていた。

 

【こんなに‥‥‥大きくなって‥‥】

 

 ギュッと抱き締める女性こそ、アルトの母にしてバヴェルの妻。

 世界の生命の生誕の理を司る女性型の神、ビナー本人である。

 

【‥‥‥】

 

 そんなビナーにバヴェルは苦笑しながらも、眺めていた。

 他の魔法騎士団長たちやユリウス達も沈黙していた。

 バヴェルの話しを聞いて、母子の時間を許したのだ。

 

「‥‥‥母さん」

 

 アルトが抱き締めるビナーに感涙でも受けたのか、少しばかり声がくぐもっていた。

 彼にとっても母親の温もりを受けるのは初めてのことなのだから、彼が涙を流すのも無理は‥‥‥

 

「苦しいから離してくれ」

 

 ドタッ!!!

 

 

 

 

 

 

 ‥‥‥‥まったく違ったようだ。

 

 

 アルトの言葉にバヴェルも含めてアルトとビナー以外がずっこけた。

 ビナーに抱き締められた際の膂力があまりに強かった為、苦しくて声がくぐもっていただけのようだ。

 しかし、アルトがそういうのも仕方のない事だ。

 先程からアルトの身体からミシミシと音が鳴り響いていた。

 

 そんなアルトを見かねてバヴェルが離す様に告げた。

 

【‥‥‥ビナー。アルトを離してやれ。アルトの身体から不穏な音が鳴ってるぞ】

【ぁあ!?ごめんなさい!!】

 

 ビナーは慌ててアルトを離した。

 

 アルトは首を軽く回したり、肩を解す様に動かしていた。

 母からの抱擁力が強かった証拠だろう。

 

「‥‥ふぅ」

【大丈夫か?】

「あぁ」

【ごめんなさいアルト】

「気にするな母さん」

 

 アルトは両親からの心配に問題ないと告げた。

 

「そろそろいいかな?」

 

 そんな親子の会話にユリウスが話しに介入していいかを訪ねた。

 

【すまんなユリウス。いいぞ】

 

 そんなユリウスにバヴェルが肯定した。

 

「君がバヴェルの奥さんだね?」

【初めまして。クローバー王国現魔法帝ユリウス・ノヴァクロノですね?私が第3の理神(セフィラ)ビナーです】

 

 ユリウスの問いにビナーが自己紹介を行なった。

 

「ビナー神。君がバヴェルと接触した理由は聞いたよ。君のように僕たちに味方をしてくれる神とは誰何だい?」

「?どうしてそんな事を訊くんすか、魔法帝?」

 

 アスタがユリウスの質問に理解が出来なかった。

 

「敵味方をハッキリさせる為に確認しているだけだ」

 

 理解出来ていないアスタに説明するアルト。

 

【私以外の十二柱は全員。神々だけの世界を主張しています。ですが、セフィロトの樹を司る十一柱の三神だけは私と同じ様に、他の神々の意見を叛旗しています】

 

 アスタが理解した事でビナーが返答していた。

 

「因みに、君たち神々の理の基準はいったい何だい?」

 

 ビナーの話しを訊いて話しを続けたユリウスは新たな質問をした。

 

神々(われわれ)が司る理は一つの秩序の表裏に分れた兄弟姉妹の神なのです】

「秩序の表裏?」

 

 ビナーの言葉にシャーロットがそう呟いた。

 

【はい。私の場合は生命体の秩序の表に位置する理を司っています】

 

 ビナーはシャーロットの呟きに答えた。

 

「えぇっと‥‥どういう意味ですか?」

 

 馬鹿なアスタにはわからずだった。

 

「つまり、動物や植物などの生き物には生と死の表裏(おもてうら)があり、母さんは生の理を司っているという事だ」

「なるほどぉぉぉおお!!」

 

 アルトがアスタに説明した事で、漸く理解したのだった。

 

【秩序に反したらどうなるんだ?】

【‥‥‥】

 

 バヴェルの質問にビナーは頭を横に振った。

 

【わからないの】

「わからないだと?」

 

 ノゼルがそう呟いたため、頷いた。

 

「神が秩序を反した事がないからだろう」

 

 そんなノゼルの疑問にアルトがビナーの代わりに返答した。

 

「それじゃあ、どうなるか分からずじまいということですか?」

「いや」

 

 マルクスがそう呟いたが、それぞ否定するアルト。

 

「神々の中で、生命体の生誕を司る母さんだけが、十二柱の間で秩序を反した‥‥いや、母さんや終焉の神以外の神が秩序に反したという事だ」

【?どういうことだアルト?】

 

 アルトが何を言っているのか理解できなかったバヴェルは訪ねた。

 

「つまり、母さんの生誕は全ての種族に当てはまる。だが、他の神々の思考は神以外の種族の生存のみだった。それは母さんの理と秩序に反するモノであり、母さんにとっては異端だったからだ」

 

 アルトの説明に誰もが耳を澄ますように聞き入っていた。

 

「母さんは理に反しておらず、生命体の死・終焉の理を司る神にとっては、神以外の死は理に反してなどいないという事でもある。逆に言えば、死ぬ存在が神以外も含まれているということだ」

【確かにそうだけど‥‥】

「母さんは生命体の第3の理神(セフィラ)。神以外の種族も含めて生誕してこその理、終焉の神は生命体が死ぬ事が理。つまり、終焉の神が、神を含む生命体が何人死んだとしても、理に反していないため、叛旗しなかったんだ」

「なるほど。つまり、神々の理は条件によって、神々の意志によって敵対するわけだね」

 

 アルトが告げた言葉は正しい理解だった。

 

 ビナーは生命体の生誕。

 つまり、全ての種族の誕生こそが、彼女の理なのだ。

 これに、一種族だけの生誕は彼女の理に反し、秩序に不安定な状態をもたらす。

 

 よって、ビナーはそんな不安定な秩序を発生させない為に、行動したのだ。

 

 

 終焉の神が動かないのは、その神の理が生命体の死であるからだ。

 その中に、人間や動物たちの死が含まれているため、一つの種族が消えるのではなく、生命体が死ぬ事が理な為、不安定な秩序が起きる事がない。

 故に行動する必要がなかったということだ。

 

「でも、それがどうして秩序に反したのが他の神々になるの?」

 

 ドロシーがアルトへと訪ねた。

 

「母さんが死んでから、生まれた命があるからだ」

『!!』

 

 アルトがビナーが死んだにも関わらず生誕があった事を指摘した。

 

「神の理は死ねば消失する。ならば何故、第3の理神(セフィラ)が死んでも新たな命が生まれた?答えは簡単だ」

 

 アルトはまるで確信しているかのように、告げた。

 

「全ての神々を操る神がいて、ソイツが理を知り、能くする。謂わば、全知全能の神が裏にいるということだ」

『!?』

 

 アルトの言葉に誰もが驚いた。

 星にとって世界の成り立ちとなる六つの秩序。

 その秩序の表裏たる理を司る十二柱の神をも操る神。

 

 正しくその存在は、全てを知り、全てを能う神の王だ。

 

 そんな存在が人間や他の生命を殺そうと画策している事をアルトに指摘されるまで一切気づけなかった第3の理神(ビナー)消滅の悪魔(バヴェル)、魔法帝ユリウスと側近のマルクス、そして魔法帝によって最強の称号を与えられた団長たちに特異な(アンチ)魔法を持ったアスタ。

 

「母さんのみならず‥‥」

 

 アルトは壁に向かってただの(・・・)魔力弾を撃った。

 

 すると魔力弾は壁を壊した。

 

「世界の破滅の理が消えたのならば、壁が壊れるはずもない」

 

 アルトはそう言うと、彼の仮設に立証性が増した。

 

「これで、神々を操る神がいる事が分ったな」

『‥‥‥‥』

 

 アルトの言葉に誰もが沈黙に染まった。

 

【となると、魔法騎士団には神々に関する調査を行える団を作ったほうがいいだろうな】

「そうだね」

 

 バヴェルの言葉にユリウスが了承した。

 

「し、しかし、調査が出来る団なんて‥‥」

「アルト君がいるだろ?」

 

 講義するマルクスにユリウスが名指しする。

 ユリウスはアルトに身体を向けた。

 

「アルト君。君を大魔法騎士を授与し、10番目の団長として神々の調査を命ずる」

 

 ユリウスは魔法帝としての態度で、そう言った。

 

「ええええええぇぇぇぇぇ!!!大魔法騎士ぃぃぃぃっ!!?」

 

 ライバルであるアルトが突如大魔法騎士となり、クローバー王国10番目の騎士団長として任命された事に盛大に驚愕するアスタ。

 唯でさえ、アルトの出生が驚くきの連発であり、目の前で破滅の神を殺し、第3の理神(セフィラ)を誕生させ、消滅の悪魔の封印を解放した。

 

【それって、凄いの?】

 

 全てを知っているわけではない為、ビナーはアスタが驚いている事に、どれ程の凄いことなのかを夫に尋ねた。

 

【大魔法騎士はクローバー王国を守る騎士団を纏める最強の称号を与えられた長達の事だ。しかも、アルトの様に一年も待たずに大魔法騎士になるのは特希なんだ】

【そうなんだ】

 

 神々の呪いによる暴走の一件を差し引けば、アルトは危うい魔法属性を持つ者を相手に何度も倒した。

 その中には、先程の破滅の神シェヴァも含まれている。

 そんな存在を倒していったアルトは神と悪魔‥両方の力を宿した混沌を司るからこそ、ユリウスは彼に調査を頼んだのだ。

 

「了解した」

 

 アルトは親指と小指をくっつけるようにして数字の3を指で表した状態にすると、その手を胸に置くように敬礼をした。

 

「バヴェル。君はどうするんだい?」

【息子を手伝うとつもりだ】

【私もです】

 

 二人の返答を聞いたユリウスは頷いた。

 

「では、アルト君の新たな団名は後で話すとして、[白夜の魔眼]と神々の対処を考える必要がある、先も言ったが、団員に反政府と繋がりがないか確認し、神々と戦えるように、鍛える様にしてくれ」

『了解!』

 

 ユリウスの命令に魔法騎士団長とアスタ、アルトは敬礼して承った。

 

 ────────────────────────

 

 ユリウスの言葉を最後に、アルトとバヴェルとビナー。ヤミとアスタを除く魔法騎士団長は各々のアジトへと帰還した。

 しかし、一人の魔法騎士団長の姿がボロボロと、魔力の粒子が消えていくと、その中から現れたのはなんと、[白夜の魔眼]の<三魔眼>が一人。

《不実》のライアだった。

 

「いやぁ。ウチ良い演技したわぁ」

 

 そんなライアは背後などを気にしながら独り言を呟いた。

 

「にしても、まさかあんなにヤバい子に転生しているとはね。こりゃ、彼がいないように仕向けた方が良さそうだね」

 

 アルトの事を聞いていたのか、そう結論づけると、空間魔法によって開かれた黒い穴へと歩を進め、その場を去った。

 

 ────────────────────────

 

「ゲルドルの件は悲しいね。一緒に戦ってきた仲間が裏切っていくというのは‥‥僕は全力で走ってきたが、たくさんの間違いを見落としてきたのかもしれない」

【そんな話しをするなら、俺一人にしろ】

 

 別室へと呼ばれた5人。

 

「先ずはアルト君の魔法騎士団の名前を決めよう。何か提案はあるかい?」

 

 ユリウスはアルトに団名に関して尋ねた。

 

「そうですね。簡単に[混沌の王龍]団でいいでしょう」

 

 そう言うと、彼は創成魔法を駆使して、自身の[紅蓮の獅子王]団のローブの色を渦巻き状にした白と黒色へと変色させ、胸にある獅子のエンブレムが互いの尻尾を加えて円を描く様に創り変えた。

 

「それじゃあ、そのローブで発注しておくよ」

 

 アルトが創り変えたローブを見て、ユリウスは団員用のローブの発注を告げた。

 

「他の団長の許可を貰えば、団員を連れて行く事も出来るよ。どうする?」

「では、マリエラとファンゼル・クルーガー、そしてドミナント・コードを連れて行かせて貰います。(約束もあるしな)」

 

 アルトが名指しした人物を聞いて頷くユリウス。

 

「それじゃあ、アルト君への要件は終わったよ」

「では、帰らせて貰います」

 

 そう言うと、アルトが空間魔法で[紅蓮の獅子王]団アジトへと両親を連れて転移した。

 




次回~新たな道のり~
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