泥棒犯レブチが魔法騎士団の牢屋へと護送され、アスタやアルト、ユノは魔導書を手にした翌日から三人は各々魔法騎士団に入団するためにハージ村に近い場所にて修行していた。
無論、ライバルである三人が同じ場所にて修行することなどありえず、彼等は各々別の場所にて修行を行なっていた。
魔法騎士団に入団するために修行している一人であるアルトは既に修行を始めていた。
先ず彼が先に行なった事は聖剣エクスカリバーを使えるように剣を振っていた。
しかも、その聖剣はアルトが
そんな中、聖剣によって現われる無数の魔法属性から多数の種類の魔法が出来上がった。
カウンター系や高速攻撃系、拘束系など色々と魔法を作り出した。
特に聖剣を使った闘い方が多かった。
そんな中、アルトは聖剣に魔力をため込み斬撃として放つ魔法を模索して振っていた。
何度も何度も、まるで竹刀を振るかのように‥‥
しかし、聖剣に魔力を流し振っても1cm程の縦一線を木に傷つける事しかできなかった。
「‥はぁ‥はぁ‥はぁ‥‥上手くいかねぇな」
アルトは息切れを起こしながら斬撃を出せずにいる事に悩んでいた。
そんな時、ある1人の人物が声を掛けてきた。
「うぉぉぉぉおおおお!!!」
「っ!?」
突然の大きな声に驚き、声のする方へと視線を向けると此方に走ってくる。
白いモサモサの毛に二、三個のエンブレムを付け、身の丈ほどの赤いマントを羽織った灰色の髪色をした中年男性だった。
その男性は目を輝かせてアルトに切迫してきた。
先日のレブチの一件もあって驚きを隠せない中、警戒した。
そんなアルトの素人丸出しの警戒に中年男性は苦笑しながら話し掛けた。
「あぁ、ごめんごめん。驚かせたね。私はユリウスという魔法好きの魔法騎士だよ」
「アルトです。魔法騎士なんですか?」
「そうだよ、もしかして魔法騎士に興味があるのかい?」
「魔法騎士より、俺は魔法帝になりたいんです。その為に修行してるんです」
アルトはユリウスが魔法騎士だと知ると興味を持った。
ユリウスも魔法騎士に興味を持ったアルトに質問をするとアルトが自分の夢を語った。
「なるほど、君は魔法帝になりたいんだね」
「はい!」
ユリウスの質問にアルトは元気よく返事をした。
「そうか、それじゃ頑張って魔法騎士団に入らないとね。それで‥‥その剣は一体なんだい?」
ユリウスはアルトに激励を送ったあと、彼が切迫してきた理由であるアルトの持つ魔法剣‥‥‥つまり聖剣エクスカリバーについて話題を変えた。
彼の目は先程の切迫した際のキラキラとした目の色で見つめていた。
「(本当に魔法好きなんだな‥‥)エクスカリバーの事ですか?」
アルトはユリウスの変貌に本当に魔法好きなんだなと思いながら、手に持つ聖剣の名を告げる。
すると、その名にユリウスは驚愕したように目を見開いた。
そんな彼の変化に気になったアルトは声を掛けた。
「どうかしたんですか?」
「っ! いいや、何でもないよ。聖剣なんて創れるなんて君の魔法は一体何魔法なんだい?」
「混沌魔法です」
「混沌魔法!? あの神話の魔法なのかい? 凄いねぇ初めて見たよぉ!!!」
アルトに問われると何もなかったかのようにユリウスが返事をしたので追求することなく話しを続けた。
するとアルトの魔法が混沌魔法だと知ると先程以上に目の色を輝かせてアルトの魔法を褒めていた。
その後、ユリウスに聖剣に触らせて欲しいと言われて触らせるが、一切反応を示さなかった。
否、正確には反応はあった。
アルトが渡した直後、聖剣が勝手に大地に突き刺さり、抜くことが出来なくなった。
突然に突き刺さったが為にユリウスは驚いてしまった。
「うぉっ!?」
「な、なんでいきなり刺さったんだ?」
「ん! ふん!! う~ん抜けないね」
突然に聖剣が突き刺さった事に使い手であるアルトですらわからずにいたが、ユリウスが試しに引き抜こうとするとしてみるが、いっさい抜けそうにもなかった。
そんな聖剣を感じて手を離したユリウス。
「ちょっとすみません‥‥ふん!」
代わりにアルトが聖剣の鞘を掴み、一気に抜くと、大地から軽々と抜かれた。
その光景を見て、所有者であるアルト以外が掴んだとしても使う事も、聖剣を持ったまま刀身を見ることも出きなことを知ったユリウスであった。
ユリウスはその後、アルトに刀身や聖剣による魔法を見せて貰い満足した。
満足させて貰った代わりに彼は出会う前にアルトが悩んでいた事の相談相手になった。
「ありがとうアルト君。そういえば、何か悩んでいた顔をしていたけどどうしたんだい?」
「っ! ‥‥‥実は────────」
アルトはユリウスに伸び悩んでいた事を相談した。
ユリウスは真剣に相談に乗ると、彼はある助言をした。
「覚悟が足りないんじゃないかな?」
「覚悟?」
「そうだね、剣に魔力だけじゃなく覚悟も入れるんだ。"自分が全てを守る"。"守る為に剣を振り続ける"とね」
「守るために‥‥剣を振う」
アルトは聖剣を見ながらユリウスが言った例えを復唱した。
一度目を瞑り、精神を集中すると、彼は突然、目をキリッと睨み付けて空へと聖剣を振い斬撃を放った。
すると、ズオッ!!! っという音が鳴るほどの巨大で強大な斬撃が放たれた。
その斬撃は天を覆った雲を完全に消し去った。
その所行にユリウスは先程同様に目の色を輝かせていた。
その斬撃が起きた後、魔導書のページが光り出し、文字が描かれていった。
文字が描かれるということは魔法が新たに生まれたという事だ。
そして、その魔法の名とは‥‥‥
「"月牙‥天衝"?」
「凄いね~! あんなに大きな斬撃を生み出す魔法だなんて‥‥新しく出来た魔法はきっと君に新たな可能性を生み出してくれるよ」
「‥‥‥ありがとうございます」
魔導書に描かれた魔法名にアルトは疑問詞を浮かべながら呟いた。
目の前で魔法を見たユリウスは感動とアルトに激励を送った。
新たな魔法を手にする切っ掛けをくれたユリウスにアルトは感謝を告げるのだった。
その後ユリウスと別れて、アルトは夕飯の食料を集めに行った。
そんなアルトの後ろ姿を見ていたユリウスは楽しく笑っていた。
「いや~面白い子がいたね。彼が魔法騎士になってからが楽しみだよ」
そんな中、ユリウスの顔面に魔法で起きた通信が送られた。
『魔法帝! 何処で油を売っているのですか?』
「やぁマルクス君。ちょっと変身ぶらり旅を‥‥」
『そんな事をしている場合ですか!? 昨日の強大な魔力の一件が未だわかっていないんですよ!?』
「あぁ、それなら大丈夫だよ」
『え?』
「もう解決したからね」
『ちょっ‥‥どういうことですか!?』
「さて、また新たな魔法発見に変身ぶらり旅をしようかな」
『話しを聞けよコラー!!!』
マルクスと呼ばれた人物の怒声が鳴り響いた。
────────────────────────
ユリウスと出会ってから数日後、300以上のページを持つ混沌魔法の魔導書に一属性魔法一ページとして魔法メイト効果が記入されていた。
理解が出来なかったのなら簡単に説明しよう。
簡単に言うと広辞苑のように「○行の名前と意味」=「○魔法の魔法名と効果・絵」が一ページに簡略化した状態で複数個も刻まれているのだ。
その時点でアルトの魔導書が他の魔導書以上に異なっている事が分かってくれるだろう。
そんな中、アルトは教会に住むアスタ達の魔法属性と参考の為に見せて貰ったユリウスの魔法属性を使用して新たな魔法に
しかし、そんな時だった。
アルトが魔法を木を相手に放ったとき、一つの悲鳴が起きてしまった。
「きゃあ!」
「え?」
突然の悲鳴に驚いたアルトはすぐさま悲鳴がした場所へと向かうと、木の破片が数個、身体に刺さった状態で傷を負っている、身長160cm前後で黒髪にフード付きの黒いマントを羽織った豊満な胸を持つアルトと同じ位の年齢の少女がいた。その少女はダイヤモンドの紋章に似たボタンのような物がマントに付けられていた。
その傷を見て自分が負わせてしまった代物である事に気付いたアルトはすぐさま治療を行なった。
___混沌回復魔法"再生"___
魔導書に記された回復魔法を行なった。
アルトが右手を彼女に向けると、彼女が負った傷が完全に無くなり、まるで傷を負う前の状態へと戻した‥‥いや、魔法名通りに再生したのだった。
「んっ‥‥うぅん‥‥」
そして回復魔法を受けた少女は声を漏らしながら閉じていた瞼を開きだし、倒れていた身体を起こし始めた。
自分が何故倒れているのか理解できていなかった少女は記憶を遡っていた。
しかし、その前にアルトが話し掛けた。
「大丈夫か?」
「‥‥貴方は?」
「俺はアルト。ごめん、魔法の練習で木に魔法をぶつけた際にお前に傷を負わせてしまったみたいだ」
アルトに警戒心を向ける少女に先ず最初にアルトは謝罪をした。
謝罪内容を聞いて、自分に起きた事を思い出した少女。
「つまり、私は貴方の魔法で傷を受けたと?」
「そういうこと。本当にごめんな‥‥えっと‥‥‥」
アルトは謝罪しながら少女の名を告げようとするが、名を知らない為、告げることが出来なかった。
「マリエラです。謝罪は受け取っておきます」
少女___マリエラはアルトの謝罪を受け取った。
しかし、自身の身体に傷を与えた木の破片による痛みがない事と傷跡もないこと、そして自分が倒れた際に横に転がっていた数個の木の破片を見て、コレが自分の身体を傷つけた物だと思ったが、その破片には一切の血液が付いていなかった。
例え回復魔導士によって肉体を回復されても、傷を負わせた破片などが未だに刺さったままだった状態ならば血液が付着しているはずなのだ。
しかし、アルトの回復魔法はその状態が一切見受けられなかった。
故に何故血が付着していないかをアルトに尋ねようとした。
「貴方が治療してくれたのですか?」
「あぁ、そうだけど‥‥それがなにか?」
マリエラは自分を治した人物がアルトであるかを確認した。
彼女の問いにアルトは肯定するが、何故そのような質問をされたのか理解できなかった為、問い返した。
マリエラはアルトの回復魔法の異質さに気付いていた。
よって彼女は是が非でもその異質さを知ろうと思い、アルトに話し掛けた。
「回復魔導士として随分と優秀なんですね」
「俺は回復魔導士じゃねぇぞ」
「え?」
回復魔導士じゃない。
そのアルトの返答にマリエラは思考が止まってしまった。
回復魔導士ではない者がこうも完全に回復させるなど出来るのだろうか?
否、不可能である。
どれほど回復魔法に適性を持つ者でも欠損すれば治せない。
しかし、彼の魔法はそれを可能にしているとマリエラは血が付着していない破片からみて考察した。
そんな思考の海にいるマリエラにアルトが告げた。
「俺は回復魔導士じゃないし、まだ魔法騎士団にも入ってねぇ唯の下民さ。まぁ、この国の魔法帝になる男でもある」
アルトは自分が魔法騎士ではないクローバー王国の下民である事を告げながら、自身の夢を独白する。
彼の夢など興味がないマリエラにとって彼の独白は少しばかりどうでもいいと思ってしまった。
「それで‥‥お前は此処で何をしてたんだ?」
「ただの旅人ですよ」
「ふぅ~ん」
今度はアルトがマリエラに質問をすると、マリエラは旅人だと告げた。
それが嘘だろうとアルトは思っていた。
何故なら、彼女の持つ魔導書鞄にはダイヤモンドのマークが刻まれていたからだ。
故に彼女はダイヤモンド王国の人間であると思った。
同時に何が目的でやってきたのか気になった。
マリエラの動向を知りたい欲求。
アルトの魔法をもっと知りたい欲求。
二人とも知るという欲求の中にいた為、どうすれば相手を知ることが出来るのかを考えていると、マリエラが話し掛けた。
「貴方の家は近くにあるんですか?」
「簡易的だけど、木造の家を造ったから‥‥ほら、あそこの家だよ」
マリエラからの突然の家の所在を聞かれると、アルトは自身の混沌の魔力で生み出した。木造の家を指さした。
因みにこの家は修行にやってきた際にすぐに建てた建造物である。
彼は食料を取ってはこの家で調理して過ごしていた。
薪を使った風呂などもある為、とても古風的な家であるが、修行期間だけの家な為、これぐらいでいいだろうと考えての建築である。
「‥‥けど、それがどうかしたのか?」
「いえ、少しの間、貴方の家に泊めさせて頂けないかと思いまして‥‥」
「旅をしてるんだろ?」
「はい。ですが‥旅先で数日滞在してから旅を再開するのが一般的なんです」
「フム‥‥別に構わないけど、薪割りとか協力してくれよ」
「はい(上手くいきましたね)」
「(何を狙ってるんだ)」
マリエラはアルトといる口実を作る事が出来たことに内心でほくそ笑み。
アルトは自身と異様とするマリエラの狙いを考えていた。
それから彼等は5日間。共に過ごしてきた。
共に食料を取りに行ったり、互いの魔法の上達の為に訓練したり、たまに口喧嘩したりと互いの思惑を疑いながらも生活している内に、仲良くなっていった。
旧友というよりも夫婦に似た雰囲気の醸し出していた。
六日目の早朝、マリエラの持つ通信魔導具に通信が入ったのだ。
マリエラは焦りながら家から飛び出て、通信に出た。
様子のおかしいマリエラが気になり、アルトは気配を消しながらマリエラに近づいた。
マリエラから少し離れた場所にてアルトはマリエラの魔導具から聞こえる音声に耳を澄ませた。
『マリエラ、明日の夕方にはファンゼル・クルーガーを捕えろ』
「わかりました、ガレオン中隊長」
マリエラは通信相手の名前を告げながら了承した。
彼女は通信を切るが、その表情は優れたものではなかった。
アルトは漸くマリエラが何者なのかを知ることが出来た。
そして、彼女の表情からそれを行ないたくはないと心の底で思っている事に気付いた。
何故、その様な事に気付けたのかというと、この五日間でそれを知るには十分な日数であった。
アルトはマリエラが戻る前に家に戻り、考えていた。
「‥‥‥」
「戻りました」
「あぁ、お帰り」
アルトは平然を装ってマリエラを迎えた。
マリエラはアルトの様子に気付くことなく、本題を話した。
「アルト。急で申し訳ありませんが、旅の仲間が準備を終えたらしく今日にでも旅を村から出る事になります」
「‥‥随分と急だな。わかった。それで持っていく物はあるか?」
「いえ、私が持っていた物で十分です。お世話になりました」
マリエラはマントを手にし、感謝を告げてから家を出たのだった。
そんなマリエラを見て、少し遅れてアルトも家を出た。
何故、アルトまで家を出たのか。それはマリエラの通信を聞いた後に、家の中で考えていた間に決めた覚悟を実行しようとしていた。
「(マリエラを救う!)」
アルトはその覚悟を元にマリエラの後を追っていく。
数分間、マリエラの跡を追っていると、川岸に建てられた一軒家があった。
その一軒家にはアスタと赤見の掛った茶髪の老けたおっさんがいた。
マリエラとそのおっさん____ファンゼル・クルーガーは知り合いだったらしく、彼の話では婚約者を見つける為に代わりに探らせていたらしい。
しかし、それと先程の通信との内容が合致せず、更に様子を見続けていた。
すると、マリエラが懐から杖頭に球体型の水晶がついた紫色の杖を取りだした。
話しによると、どうやらファンゼルの婚約者の杖らしい。
それを受け取ったファンゼルは一人にして欲しいと告げると、家の中へと入っていった。
そんなファンゼルに留めを刺すと許りにマリエラも後を追った。
マリエラが動いたことで必ず、彼を動けない状態にしてから、襲う気だろうと思考できたアルトはすぐさま、気配を出して、アスタと接触した。
「アスタ!」
「アルト!? なんで此処に?」
「要件だけを言うぞ。実は‥‥」
アルトがアスタに説明しようとしていると、窓ガラスが壊れた様なガシャンっという音が家の中からした。
しかも、その音は一つではなく複数だった。
よって二人は説明よりも、先に身体が動き、家の中へと突入した。
突入した二人は各々の武器を構えながら家の中を探していると、声のする部屋があった為、そこへ扉を壊しながら突入した。
すると二人の視界に入ったのはダイヤモンド兵に拘束されたファンゼルと、そのファンゼルを見て平然としていた。
「おっさん大丈夫か!?」
「マリエラ‥」
「‥‥アルト」
アスタは拘束されているファンゼルの心配をし、アルトはマリエラの名を呼んだ。
呼ばれたマリエラはアルトがこの場にいる事に内心、驚愕しているが、何故此処に来たのかという困惑の気持ちが大きいようだ。
そんな中、二人の雰囲気に気付いていないアスタは、マリエラに抗議した。
「マリエラ! おっさんに感謝してるんじゃなかったのかよ!!?」
「感謝してますよ、だから言い方も注意したじゃないですか」
マリエラは冷静にアスタの怒りの言葉を受け取りながらも平然と言葉を返していた。
二人の言い争いに否定し始めたのはファンゼルだった。
彼はアルト達を逃がそうと必死に説得するが、アスタは退くつもりはなく拒絶するが、ファンゼルが自分1人で逃げてみせると告げると、アスタは信じたようでアルトを連れて扉から姿を消した。
‥‥‥‥ように見られたが、アスタとアルトはすぐさまファンゼルを拘束していたダイヤモンドの魔導士をそれぞれ1人に斬りつけた。
「ぐぁっ!!?」
「そらぁ!!」
アスタは更にファンゼルの近くにいる魔導士に大剣を振う。
大剣にぶつけられた人物は悲鳴を上げながら倒れる。
「いいんだアスタ。私には生きる希望がないんだ。理由がないんだ」
「くだらん」
『っ!?』
ファンゼルが絶望し、この状況に諦め受け入れようとしていた。
そんなファンゼルが独白にアルトはくだらないと冷たく一蹴した。
あまりの冷たさにアルトと五日ほど同居していたマリエラや教会で暮らしていたアスタですら驚くほどの冷徹さであった。
「生きる理由? 俺もアスタも教会に捨てられた子供だ。両親も知らず、同じ教会に住む家族は最果てで貧しい者は夢を、生きる理由を持てずにいる。何故俺が‥‥俺達が生きる理由を誰かに決めつけられなければいけない。生きる理由なんて、俺自身が決めることだ!」
アルトの言葉は分かりやすく言えば、自分で希望を理由を探すものだと言っていた。
そのことを理解できたのは幼馴染みのアスタだけだった。
だがら、彼も便乗して告げたのだった。
「俺もだ! 生きてく希望なんて、理由なんて‥‥自分で見つけていくもんだろうが!!!!」
アスタのその言葉にファンゼルとマリエラは自分が間違っている事を指摘された感覚だった。
同時に冷徹に一蹴したアルトの言葉を理解し、心に刺さりもした。
二人の少年の言葉に動かされたファンゼルは婚約者の杖を持ちながら立ち上がる。
「わかったらさっさと手を貸してくれ!」
「借りるまでもない。全て倒す!」
ファンゼルに助力を頼むアスタとそれを否定し自分だけで倒そうとするアルトだったが、アルトが魔法を使う前に敵の数が増えるが、突如ファンゼルを中心に風が吹き荒れる。
__風創成魔法"
婚約者の杖に纏った風の白剣。
ファンゼルは剣先を敵に向けると、次々に風の刃が射出されていき、倒していった。
「大量の[ザッキーさん]を飛ばす‥‥‥通称[飛ぶヤツ]だ」
「いい! ネーミングだぜ!!」
「何処がだ?」
ファンゼルのネーミングに感動するアスタとネーミングセンスが分からないアルト。
「すまなかったね、私はもう大丈夫だ。君もありがとう」
「おう!」
「そいつはどうも」
「油断するな!」
ファンゼルはアスタ達が壊した扉の影に隠れたマリエラの奇襲に注意する。
無論そんなことはアスタとアルトも気付いている為、油断することなく対処した。
アスタとアルトに向けられた二本の氷の刃は各々の武器によって無効化されたり、消滅したりした。
「魔力の無効化‥」
そんな中でマリエラはアルトとの生活ですら見た事がない[魔力の無効化]の魔法を有するアスタの大剣に驚いていた。
彼女の攻撃に続くように倒したと思えば、更に敵が増えていき、三人は互いの背を守る様に体勢をとる。
三人は敵を倒そうとするが、マリエラが撤退のするように指示した。
あまりの予想外の言葉に唖然とするアスタ達だったが、ファンゼルによって教わった戦闘方法に従って行動していただけだった。
マリエラは負惜しみのような言葉をファンゼルに言うも、彼も負けじと婚約者を探し続けると告げた。
アスタもマリエラに覚悟するように告げるが、その際にファンゼルを傷つける言葉を無意識に言ってしまう。
マリエラはアスタ達に背中を向けて帰って行くが、一瞬だけアルトを見てから撤退した。
その後、ファンゼルは婚約者を探しに旅をすることになり、アスタとアルトは一日残った修行日で出来る事をしようとそれぞれの修行場所へと向かった。
特にアルトはマリエラとも同居していたあの家を壊す必要がある為、向かって行くと、なんと其処にはマリエラが既に居たのだった。
アルトとマリエラは家の前で対面した。
「‥‥‥何故、私の後を追ってきたんですか?」
マリエラはアルトが自分の後を追ってあの場所へとやってきた理由がわからず質問した。
「‥‥お前と生活した五日間で、お前に送られた指令に嫌気を感じていたのは分ってた。だから助けたいと思った」
「どうしてですか? 貴方は既に気付いていた筈です! 私は犯罪者なんですよ!!?」
「関係ないだろ、俺がお前を助けたい気持ちに犯罪者や善人なんて関係のないことだろ?」
アルトがそう告げると同時に一風が吹き荒れた。
その際にマリエラの表情はまるで乙女心をつかれたかのようなものだった。
彼女は俯きながらもアルトに歩み寄っていき、話し掛けた。
「貴方は本当のバカですね」
「うるせぇ」
マリエラの罵倒にアルトは怒りなど感じて折らず、熟年夫婦のような会話で受け流していた。
「ですが、先程の言葉は惹かれました。格好良かったです‥‥それじゃあ」
マリエラはそう告げるとアルトとは二度と会わないような雰囲気で去って行く。
しかし、アルトがそれを赦すはずもなく、彼はマリエラに告げた。
「次に出会ったら、今度こそ俺がお前を助ける。絶対に」
「っ! ‥‥‥」
アルトの言葉を聞いて表情は見せなかったが、マリエラは驚きと歓喜に包まれながら、ダイヤモンド兵の元へと向かった。
マリエラが見えなくなると、アルトは家の中へと入り、水筒などを持ち物を整え、家を出て魔法で解体した。
家を解体した後、アルトは教会へと帰宅した。
帰宅してから翌日。アルトとアスタ、ユノは魔法騎士団入団試験の為に平界へと向かっていくのだった。