【休載中】混沌の魔法騎士王   作:森雄

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無域異界ラグヴァベイン

 時は一週間ほど前。

 クローバー王国では魔法帝率いる魔法騎士団長達と、特殊な魔法を持つアスタと調査対象でもあるアルトを呼び出し、裏切り者の団長ゲルドルの確保・尋問、アルトの調査後に神の力へと覚醒した事で、神と魔‥‥相反する力に覚醒した事が、「姫」を刺激した。

 

「お呼びでしょうか、リアラ様」

 

 城や土地の形など異形な物が多く、形が定まらぬ無域異界ラグヴァベイン内にある神性と魔性を秘めたような宮殿があり、その中に巫女姫の如き綺麗な服装を着用した上で座しているリアラがいた。

 

 そんなリアラの前に、口元に長く垂れ下がるような髭を生やした老人を呼び出していた。

 

「遂に時が来ました」

「!では‥‥」

「はい、私はこれより、彼の者を迎えに参ります」

 

 そう言ってリアラは立ち上がり、呼びつけた老人に語りながら、宮殿の入り口たる門へと歩みながら告げた。

 

「ラグヴァギルズの覚醒元である‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

 

 

 

 

「──────────[混沌の王(カオス・アル)]に‥‥私の夫に会いに行きましょう!」

 

 男女問わず魅了してみせるかの如き可憐な笑みを浮かべて‥‥‥‥

 

 ────────────────────────

 

 リアラによって告げられた言葉は颯爽と無域異界ラグヴァベインに生まれる戦士・非戦士___ラグヴァベインに広まっていき、彼等の住まう異界内では、まるで政の準備をする様に、多くの者達が数日前から何かを準備し続けていた。

 

「おい、急げよ!」

「違う!そっちじゃねぇ‥‥!!」

 

 作業を急がせる者や、何かを間違えた者に対して叱責する者などがいた。

 

「張り切っていますね」

 

 リアラは淑女たる言葉使いで、準備を続行する者達を眺めながら呟いた。

 そんな彼女の言葉に呼びつけられていたご老体が相槌を打った。

 

「仕方なきこと。ラグヴァベインに生まれし我らラグヴァギルズにとって、リアラ様と[混沌の王]様の婚姻は待ち望んだこと。全ては先代‥‥‥いえ、初代[混沌の王]により生み出されし者の宿命です」

 

 ご老体の言葉にリアラは満足そうに微笑んだ。

 

「しかし、同時に彼の存在達を警戒する必要もありますよ。ダグヴァ」

 

 しかしながら、まるで自分達のみならず、リアラの夫となる[混沌の王]にまで危機を与えようとする存在を知っているかのような発言だった。

 リアラのその言葉に、ダグヴァは威圧感を醸し出しながら閉ざされたキツネ目の薄く目開きながら、その存在に対して、並々ならぬ敵意を示していた。

 

「混沌により最初に生み出されし二種族‥‥‥ですな」

「えぇ。魔族は当然ですが‥‥この頃、神側も神以外の存在を否定し始めました。来たるべき戦いのために戦闘用ラグヴァギルズ達には未覚醒ながらも最上位の憑き者達と渡り与えるでしょう」

 

 リアラはそう言って、政の準備をする様に準備を続ける者達を見ていた視線を外して、天地がひっくり返った化のような、演習場の様な広場に向けると、そこには十数人の魔力が荒れ狂っていた。

 その広場から所々に爆発や落雷などの魔法の効果が生じていた。

 

「ですが、やはり彼の存在と戦うには覚醒が必要不可欠」

 

 そう言ってリアラは何処かから取りだしてきた一冊の魔導書を手に取る。

 その魔導書の表紙の絵柄はなんと、アルトと似通っていた。

 

「急がば回れといいます。後手に回らぬよう、細心の注意を払いましょうリアラ様」

「‥‥‥そうですね」

 

 先を急ごうとするリアラに、ダグヴァは冷静になるよう、静かに促した。

 リアラも知らずに熱くなっていたのか、彼からの注意を素直に受け取った。

 彼女はこのラグヴァベイン内では長をも束ねる者とも云える人物だ。そんな彼女が冷静さを失いかねないほどの熱い感情に燃えかねなかった理由は、彼の存在達(・・・・・)にあるのは間違いないだろう。

 

 最初に生み出された二種族。

 その言葉から察するに、恐らくあの二種族なのだろうが、それが正解であるのか、はたまた不正解であるのか、それは後々に真偽がわかるだろう。

 

「他の[長老]達はどうですか?」

 

 リアラは一度開いた目を閉じて冷静さを取り戻すと、ダグヴァへと顔を向け直しながら、彼に質問をする。

 彼女の質問に、ダグヴァは申し訳なさそうな表情に変わった。

 

「申し訳ございません、リアラ様」

 

 頭を下げて謝罪するダグヴァ。

 どうやら表情のみならず、態度ですら謝罪している事から、どうやら不穏な出来事が起きているようだ。

 

「やはり認めてくれようとはしませんか」

「あのアホ共は昔の栄光に拘る事しかできませぬ」

 

 リアラは落ち来むような呟きが木霊し、ダグヴァは己の不甲斐なさを悲観しながらも、他の長老達を貶していた。

 他の長老達が何を認めようとしないのか、そして彼等のとっての栄光とは‥‥‥

 

「そんな事を言ってはなりませんよ、ダグヴァ」

「しかし‥‥‥」

 

 リアラは他の長老達を罵倒するダグヴァを勇なめた。

 

「長老は幾度の実績によって手にしたラグヴァベインを率いる五人。しかし、私が‥‥[混沌の姫]がうまれた事で、率いし者は強制的に変わります」

 

 そう、無域異界ラグヴァベイン内に住まうラグヴァギルズ達を率いる者達___長老は実績によって、「長」の名を持つ者として選抜された五人の事をいう。

 簡単にいえば、魔法帝を選抜する様なものだ。

 

 そして、リアラはダグヴァに他の長老達はと訪ねた。

 つまり、ダグヴァも「長老」の一人であるという事なのだ。

 

 しかし、それは「混沌の姫」が生まれるまでのこと‥‥‥‥

 

 無域異界ラグヴァベインは初代「混沌の王」によって創り出され、ラグヴァギルズはラグヴァベイン内でしか誕生しない。

 新たな「混沌の王」が誕生せし時、彼の者の為に闘い、彼の者に付き従う者とならん。

 それこそが、ラグヴァギルズの掟にして絶対なる呪いとも云える。

 

 そんなラグヴァギルズを束ねる長老達は、初代「混沌の王」の死から、数百年以上も長老達によって無域異界ラグヴァベインを守護しながら、ラグヴァギルズを束ねていった。

 しかし、新たな「混沌の王」が誕生する事を知るために、初代「混沌の王」がラグヴァベイン内に施した設定(システム)が束ねし者が変わる。

 

 それこそが、「混沌の姫(カオス・プリンシピッサ)」であり、姫が生まれし時、長老達すらも束ねては、王の妃となり、全てのラグヴァギルズが宿し魔法属性に随する魔道階域を、彼等の姿なども真の‥‥本来のモノへと覚醒させる。

 その覚醒は理に順次、理に背理する。

 混沌とした、形無き矛盾した力を宿す。

 

 それが姫の役割であり、その姫がリアラなのだ。

 

「彼等はそれが許せないだけなのです」

 

 つまり、長老達は幾ら「混沌の王」の創作した設定で生まれた姫であろうと、彼等からすれば、生まれたての子供が、一切の実績無しに自分達も含めたラグヴァギルズを統治すると言われれば、不満を抱き、徐にそれを出して、協力を無視しているのだ。

 

 五人の長老の中で、ダグヴァを除く四人が協力を無視した事で、ラグヴァペイン内の統治はあまり良くない状態にあった。

 リアラやダグヴァの懸命な統治によって、リアラが物心が付いた頃よりも、マシな統治になっていた。

 

「しかし、あの頃よりも遙かに安定した治安になったのは、リアラ様のお陰」

「いえ、ダグヴァ達の助力のお陰ですよ」

 

 彼女が物心が付く前、ダグヴァを除く長老が治安放棄した頃は魑魅魍魎が跋扈するかの様な、ラグヴァギルズ同士の戦闘、利益欲しさの犯罪行為は見るのも悍ましい治安の悪さだ。

 

 

 しかも、無域異界ラグヴァベインから現世に出るためには、自然的な雷轟が発生している場所でなければ、二度と外には出られない。

 ラグヴァギルズは、命そのものが通行のチケットである為、何一つの準備無く出入りしている。

 

 そんな変わった転移門(ゲート)から現世に出て犯罪を行ない程に治安が悪かったラグヴァギルズの統治は九割から三割まで減少したのは、彼女達の努力によって得た結果だ。

 

 リアラの発言で準備をしている者達も嘗ては犯罪者だった者達も含まれている。

 リアラは夫の迎えに行く為に準備しているわけではなく、ラグヴァベインの治安を良くするとい目的も含まれていた。

 

 しかし、彼女は彼女自身で、長老達を説得する事を考えていた。

 反抗的な態度と行動を諫め、咎めなかればならないことも‥‥‥

 自身の利益を残しておこうとする欲深さが出ている長老達との蟠りは「混沌の王」を引き連れただけで解決できるわけがないことも‥‥‥

 

 故に、リアラは先ず、ある存在への対抗策だけでも準備を終えておくために、夫を迎える方向に持って行った。

 

 それこそが、今尚ラグヴァギルズを束ねるリアラの最善策なのだ。

 

 リアラとダグヴァの会話に割り込むように報告へとやってきた腰に剣の業物を修めた紫色のポニーテールの髪型をした女性が現れ、片膝を着き、頭を下げていた。

 

「何ようだシドイン」

「はっ!歓迎の準備は八割完了しましたので、そろそろお迎えに上がるべきかと」

 

 シドインはまるで、堅苦しい男の様な発言で報告と自身の考えを述べた。

 

「‥‥‥‥さて、我々の王を迎えに参りましょう」

 

 リアラは、転移門である雷轟を通して、外界を見つめていた。

 その瞳に映る光景には四つの国があり、北方は冬の地、東方は鉱山の地、西方は自然的な地。そして南方は膨大な魔力に包まれ、ハッキリとした地形が見えず、膨大な魔力が他国へも侵食しようとする様な地だった。

 

「南方の国[クローバー王国]‥‥‥王が座す[永劫の混沌城(キャメロット)]」

 

 彼女には視えていた。

 いや、彼女しか視えなかったというべきか。

 

 クローバー王国を包むほどの膨大な魔力から神すら崇める清廉潔白なる神聖な光の魔力と、魔すら畏れる暗黒よりも暗い闇の魔力が入り混じった純粋な力たる混沌が溢れる、クローバー王国へと慈しむかのような表情を浮かべて、シドインやダグヴァに告げたのだった。

 

 ────────────────────────

 

 そして、雷轟という転移門の前で、外出する装飾を着飾ったリアラと、彼女の防衛としてシドイン含む三名のラグヴァギルズが立っていた。

 

「政の用意は調えておきます」

 

 ダグヴァが頭を下げながら、彼等の帰還。

 並びに自分達の王の歓迎の準備を整えることを告げる。

 彼等の準備は殆ど最終局面にいる為、ほんの少し準備すれば終わるところにまで完成していた。

 

「よろしくお願いしますね」

 

 リアラはダグヴァ達に期待と信頼の笑みを浮かべて頼んだ。

 その笑顔にダグヴァを除く多くの老若男女たちが魅了されウットリとしていた。

 そんな中、彼女の笑顔に魅了されていないダグヴァはシドイン達に視線を向けた。

 

「シドイン、アキランダー、カルスノン。リアラ様の護衛を頼む」

『御意(はっ)!』

 

 リアラの護衛を務める三人に彼女の安否を頼んだダグヴァ。

 三人は言われるまでもないと言わんばかりな表情を浮かべては了承したのだった。

 

「それでは‥‥‥」

 

 リアラはラグヴァベインに背を向けて、転移門へと歩を進めていった。

 

「参りましょう」

『ご武運を!』

 

 リアラ達四人を見届けるダグヴァ達だった。

 

 これが、リアラ達が[混沌の王軍]アジトへと向かう事になった出来事であった。

 




次回~いざ、ラグヴァペインへ~
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