【休載中】混沌の魔法騎士王   作:森雄

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ようやく六話目が出来ました。

どうぞ楽しんでください!


裏に隠れし火種

 "聖剣エクスカリバー"を構えたアルトはエルパに襲い掛かる。

 高速移動魔法だと勘違いしてしまうほどの身体能力による高速移動に驚くフェリア達を余所に彼はエルパに向かって一瞬で六回の剣撃を行なった。

 

 エルパは自身の肉体の炭素を硬質化させる様に調合して、ダイヤモンド級の硬度へと変えた。

 ダイヤモンドの皮膚に守られてアルトの連続の剣撃を受けても傷一つなかった。

 

 調合魔法=あらゆる元素を調合させて別の代物へと変える魔法。炭素を酸化させて一酸化炭素を作り出したり、空気をガスの状態にしたり、自身の炭素をダイヤモンドへと変えたりと出来る。

 

 つまり、調合するだけで、鉱石や毒なども作り出せる。

 

「‥‥」

「効いてない!」

「新人だけに戦わせるわけにはいかない!」

 

 ____炎魔法"火炎玉"____

 

 アルトだけに戦わせる事に嫌気を感じていたフォルティは炎魔法で出来た中規模の炎球体を数個エルパに放った。

 しかし、エルパが炎を消すために真空状態へと空気を調合させた事でフォルティの炎魔法がかき消された。

 

「クソッ!?」

「無駄だよ~さぁ実験の続きを‥‥「言った筈だ。もう喋るなと」」

 

 ____混沌光魔法"イクスティクション・レイ"____

 

 アルトの左手から放たれた極大の閃光がエルパに襲う。

 

「だから~無駄だって言って‥‥」

 

 エルパはアルトの魔法など効かないと考えていた。

 どれほどの魔法であろう自分の調合魔法ならば勝てると自負しているが故に彼女は人間を実体実験にしようと文句を言われないのだ。

 それは相手よりも自分の方が強いからだ。

 

 しかし、エルパはこの時、失敗した。

 今までの戦いで自分の強さを自負しすぎたが故に未知なる力への警戒と対処を疎かにしたのだ。

 

 まさか見下していた相手の魔法が自身の体を塵一つ無く削った事に彼女は死ぬまで理解できなかった。

 

 フェリア達の目に映ったのは足を残して消え去ったエルパだった。

 

「‥い、いったい何を‥‥?」

 

 フェリアは魔法を行使したアルトに質問した。

 入団したばかりの人物が最初の任務で敵を殺したのだ。

 あまりに殺害への抵抗がないアルトの行動に同じく新入団員のフェリアやガルヴァはアルトに恐怖を抱いた。

 

 混沌光魔法"イクスティクション・レイ"=あらゆる物質を分解させる閃光を放つ魔法だ。

 

 これにより、肉体の硬度をダイヤモンドにしようと、肉体の表面を鏡の様にしようと、分解されて貫かれるだけなのだ。

 

 その事を淡々と告げるアルトに恐怖の余り、何も言えなくなったフェリアとガルヴァ。

 

「なぜ殺したんだ?」

「あの女の調合魔法は複数の元素を調合して新たな物へと変換させる魔法だった。被害を最小限にするには殺すしかない。それとも敵に情けを掛ける必要があるんですか?」

 

 アルトは三人への被害も考慮してさっさとエルパを殺害したのだ。

 新入団員らしからぬ発言にフォルティは何も言えなかった。

 

「‥‥これで任務は終わりですか?」

「あ、あぁ」

 

 フォルティが任務終了を告げた為、今回の任務は終了した。

 四人はその後、エルパの遺体を回収して[紅蓮の獅子王]団アジトに帰って行った。

 

 ────────────────────────

 

 アジトへと戻ってきたアルト達はフォルティがフエゴレオンに任務の報告を行なった。

 

「そうか、国境にダイヤモンド兵が来ていたとなれば、ダイヤモンド王国との戦争も近い内に起きるかも知れないな」

 

 報告をフエゴレオンは最近にダイヤモンドとの戦争を行なっていた為、ダイヤモンドの更なる進行の対策を必要があった。

 そして、アルトの抵抗のない殺害。

 

 アルトの判断が悪いわけではない。

 しかし、新入団員が初任務で殺害を許容したという事が問題なのだ。

 

 まるで殺害になれているかのような行動が‥‥‥

 

 フエゴレオンはその事を口に出すことはなく、アルト達を労った。

 

「任務ご苦労であった。十分休め」

『はい』

「フォルティ」

「はい」

 

 フエゴレオンの労いの言葉を聞いて、各々自室などに戻ろうとする中、フォルティは彼に呼ばれて立ち止まった。

 

「アルトの様子はどうだった?」

「[八輝将]のエルパの行動を聞いて殺すことにためらいがなくなったように思えます」

「理由によっては殺害を許容するということか」

 

 フエゴレオンはフォルティの報告からアルトの行動基準を把握する事が出来た。

 

「アルトの行動はわかった。ご苦労だったフォルティ。ゆっくり休め」

「はい」

 

 フエゴレオンはフォルティに労いを告げて休ませた。

 

「‥‥アルトが、あの時の膨大な魔力の張本人なのは確かだが‥‥行動基準を明確にしておきたい‥‥姉上に頼み込んでみるか」

 

 フエゴレオンはいったい何を懸念しているのか。

 

 それは今後のアルトに訪れる戦火にて明確になるだろう。

 アルトの行動基準を理解できるのは‥‥‥

 

 

 

 最低でも半月後といった所だろう。

 

 ────────────────────────

 

 四日後。

 

 アルトはフエゴレオンに呼ばれて団長室にやってくるも、そこにはレオポルドもいた。

 

「お呼びですか? 団長」

「来たなアルト。お前とレオに任務がある」

「「はい」」

 

 フエゴレオンは団長用の椅子に座りながら目の前にいるアルトとレオポルドに告げた。

 

「最近、クローバー王国内で100人以上の夜盗が行動しているらしい。その裏には貴族が関わっているとも言われている」

 

 フエゴレオンのその言葉にアルトとレオポルドも魔法騎士としてか夜盗を使って私腹を肥やす貴族に怒りを覚えていた。

 そんな2人にフエゴレオンはクローバー王国の地図と夜盗に関する報告書を出した。

 その地図には罰印が書かれていた。

 

「これが夜盗に襲われた村々の場所と、報告書だ」

 

 アルトとレオポルドはフエゴレオンが出した地図と報告書を見た。

 罰印が書かれている場所は疎らで統一性の無い襲撃場所だった。

 報告書を見るまでは‥‥

 

「無差別に襲っているのか‥‥」

「いや、人にランダムは作れない」

「? どういうことだ?」

 

 レオポルドは夜盗達の動きが無差別の様に思えていた。

 しかし、アルトはそうではなかった。

 

 どういう事なのか気になったレオポルドはアルトに問う。

 

「無差別に見えて、人は必ず規則性を作ってしまう。特に夜盗は盗む集団だ。盗む物があるから襲うという規則性が存在して居るんだ。そして、この夜盗が盗んでいるのは建物の破壊と食物と金品の回収の規則性に則っている」

「だが、それがわかっても次の襲撃場所がわからなければ意味がないぞ」

「規則性さえ分れば罠を張る事は出来るだろ」

 

 アルトの発言を聞いてレオポルドは成る程と思った。

 

「罠を何処に張るかだが‥‥」

「村から離れた場所に、俺の魔法で偽の財宝を作る。そこに『王族が隠し財産を隠している』と、偽の情報を貴族に漏らす。それによって、国の裏切り者は夜盗に連絡を取るはずだ」

「フム。では、アルトの策を実施する。貴族へのリークは魔法帝に頼み込もう。お前達はすぐさま現場へ向かえ」

「「はい!」」

 

 アルトとレオポルドは敬礼するとアルト考案の策に合う場所へとすぐさま向かって行く。

 

 ────────────────────────

 

 アルトとレオポルドは罠を張る為に、平界の村から離れた森にいた。

 

「ここら辺でいいか?」

「フム! ではさっさと建てるか、我がライバルよ」

「‥‥勝手にライバル呼びするな」

 

 ____混沌魔法"森羅の改変者"____

 

 

 アルトは"森羅の改変者"によって罠を張る場所を改変した。

 

 "森羅の改変者"=簡単に言えば、万物を改変させるだけの魔法だが、万物を改変するという時点で驚異的な魔法である。改変するという事は燃焼し、凍結したりなど出来る。

 

 よってアルトは、地上に平民的な家を創造し、地下に巨大なシェルターのような宝物庫を作り出した。

 空は認識阻害の罠魔法(トラップ)を創造した。

 

 3分ほどの創造によって、立派な偽の宝物庫を作り上げた。

 

「ガハハハハハ!!! 見事だアルト。流石は我がライバル!」

 

 レオポルドはアルトによって作られた偽物を見て褒めた。

 

「後は夜盗が来るのを待つだけだ」

 

 アルトとレオポルドは夜盗が現われるであろう時間まで、その周りで張り込んでいた。

 

 ────────────────────────

 

 時間が経過して、夜の23時頃。

 

 フエゴレオンの計らいで魔法帝によって貴族に嘘の情報をリークする事が出来た。

 張り込んでいたアルトとレオポルドは、襲ってくるだろう時間まで入れ替わりに休憩していたが、漸く、その夜盗が罠に掛った。

 

 アルトとレオポルドは、遠くからアルトが建設した場所を監視していると、約50名ほどの黒いスカーフによって顔を隠している夜盗が現れた。

 

 魔法で視力を上げていたアルトは100人の内、半分しかいない事から疑問に思っていた。

 

「‥‥50人。残りは何処に‥‥?」

 

 アルトは半分しかいない現状に悩んでいた。

 どう考えても、先発隊の様な者達だろう‥‥

 アルトはそう考えた。

 

「行くぞ、我がライバル」

「待てレオ」

 

 夜盗を倒しに向かおうとするレオを手を伸ばすことで防いだ。

 

「何故だ!?」

 

 レオポルドはアルトに抗議する。

 その抗議にアルトは答えた。

 

「やってきたのは約50人ほどだ。残りの50人が気になる」

「考えている間に罠である事がバレてしまうぞ!」

「問題ない。幻覚の魔法や罠魔法も付けてある。早々気付かれない。さて、視てみるか」

 

 アルトはレオポルドを落ち着かせると、彼はある魔法を行使した。

 

 ____混沌時間魔法"全智の未来"____

 

 

 アルトの瞳に時計のような紋章が現れた。

 

 "全智の未来"=これから起きるあらゆる可能性の未来を視認し、理解する時間魔法

 

 そして、アルトはこの魔法を使ってこの先の未来を、レオポルドと共に見た。

 すると、そこには夜盗が罠であることを知り、アジトへと向かう未来や、先発隊を捕えた後の未来などが視認できており、アルトは可能性の未来の中で一番効率が良い方法を取ることにした。

 その方法の中ではアルトとレオポルドも見た事がある人物が写っていた。

 

「先にアジトから潰しに行くか」

「フム! 先に親玉を叩いておくのだな!!」

「では行くぞ」

 

 アルトとレオポルドは先にアジトへと向かう事に決めた。

 アルトはレオポルドの肩に手を置くと、"神速の歩み"によって"全智の未来"で視たアジトまで、神速で駆け抜けていった。

 

 ────────────────────────

 

 アルト達が張った罠の場所から飛行魔法で30分は掛る平界近くの洞窟にて、人間の声が騒がしく響いていた。

 

『アハハハハハ!!!』

「────にしても、馬鹿だよな魔法騎士団もよ!」

 

 1人の男が酒の入った酒樽を掲げながらもクローバー王国の魔法騎士団を馬鹿にしていた。

 

「全くだ。あの貴族様が俺達に情報を流してるってのに、それに全く気付いてねぇんだからよ!!」

「全くだぜ! 魔法騎士団も大した事なかったですねぇ。ボス!!」

 

 魔法騎士団に対して酔いながら罵倒していた男に同調する様に他の野党の一員達が同意していた。

 そして同調を求める様に夜盗の頭に話し掛ける下っ端。

 

「お前ら、俺達が言い思いできんのは、この貴族様たちのお陰ってぇ事を忘れんなよ!!」

 

 下っ端に同調を求められていた夜盗の頭は部下達を諫めるように、このアジト内にいる情報をリークした2人の貴族に指さしながら告げる。

 

「いぃじゃないですか、魔法騎士団が間抜けなのは事実ですからね」

 

 部下を諫める頭に落ち着くように酒の瓶を持って盃に新たな酒を入れる、高級な服装を着用した男。

 その男の隣にはまるで魔法騎士団に怨みでもあるように憎々しい表情を浮かべる子供がいた。

 

「僕を魔法騎士団に入れなかったゴミ共なんて、こうやって騙されていればいいのさ」

 

 その子供の顔は、約一週間前の魔法騎士団・入団試験で、アルトに敗北した貴族の子供だった。

 彼は自身を倒したアルトを憎み、魔法騎士団に入れなかった魔法騎士団長達を怨んだ末、彼の父親がやっている悪行を手伝う事にした。

 彼等が平界や恵外界などの村々に、夜盗を襲わせて家や食料を奪っているのは、魔力の高い貴族達の思想による行動だった。

 

 王貴界に住まう王族・貴族達は魔力の低く、身分も低い存在をゴミの様に思っていた。

 況してや、何故その様なゴミが生きているのか? という自惚れた疑問を感じていた。

 

 この夜盗は本来なら他の貴族などを襲わせて、その資金源を自分の者にする事がこの貴族の家の犯罪理由だ。

 にも関わらず、彼等が今回の行動を行なったのはアルトと魔法騎士団への復讐だったのだ。

 

 アルトへの復讐はアルトが恵外界出身である事。

 魔法騎士団へは国家に対する資金源の簒奪だった。

 

 故に夜盗と貴族はそんな事を理由に今まで平界や恵外界を襲っていた。

 

 彼等の行動は必ず報いを受ける事になる。

 

 何故なら、彼等のアジトの扉に突然、赤く燃え広がる様な熱によって融解され、爆音と共に壊れた扉から溢れた炎が、アジト内にいる夜盗へと襲った。

 

『うぁぁああああ!!!』

「な‥何だ!? 何が起きた!?」

「て、敵襲!?」

 

 炎が数名の夜盗達を襲い被害を与えた。

 炎に当たっていない夜盗達は酔いが覚めぬ中、椅子から立ち上がり、敵手に備えた。

 そんな中、壊れた扉から現れたのは2人の少年だった。

 

「ワハハハハハハ!!! どうだ、我がライバルよ」

「奇襲は成功だな。後は実力で潰すだけだ」

 

 2人の少年とは勿論、アルトとレオポルドだった。

 彼等は此処から罠の場所まで30分も掛る場所から、2分もしない内に、このアジトへとやってきた。

 それは"神速の歩み"がそれを行なうほどに高速で光速であったから‥‥としか言えない。

 

 扉を破壊し、夜盗の数名を焼いた炎魔法を放ったレオポルドはアルトに感想を聞くが、アルトは奇襲が成功した事ぐらいしか、気にしていなかった。

 2人の着用したローブを見て夜盗達は騒ぐ。

 

「[紅蓮の獅子王]団だ!」

 

 1人の夜盗の言葉に反応した残り39人の夜盗達。

 そんな中、夜盗討伐にやってきたアルトとレオポルドはというと‥‥

 

「アルト、どちらが多く討伐できたか競おうではないか!」

「遊びじゃないんだぞ」

 

 アルトはレオポルドの発言に呆れてしまっていた。

 レオポルドの発言は自分達が雑魚扱いされているも当然の評価だった為、夜盗達は怒り心頭だった。

 

 しかし、夜盗が怒りを表す前に突如、アルト達に襲い掛かる炎魔法。

 

 ____混沌反魔法"幻想殺し(イマジン・ブレイカー)"____

 

 襲い掛かる炎魔法を相手に、アルトは右手で殴りつけた。

 すると、ガラスの割れる様な音を出しながら、炎魔法が掻き消えた。

 

「ワハハ! 新たな魔法を使うか。流石、我がライバル」

 

 レオポルドは既に炎魔法の事など気にも止めて居らず、止めたアルトの力にライバル心を抱いていた。

 アルトはそんなレオポルドを放っておいて炎魔法を出した者に視線を向ける。

 しかし、見えた人物がアルトにとっても驚くべき人物だった。

 

「お前は確か、入団試験の‥‥‥」

「出てきたな下民!!」

 

 先程の炎魔法は貴族の子供が放った魔法だった。

 魔法騎士団・入団試験で初めて出会い、実戦相手として戦った2人が夜盗のアジトで、それぞれ、国と民を守る者・国と民を傷つける者として‥‥

 

 平和の為に闘う者と、私欲の為に他人を傷つける者。

 善と悪に分れた同じ年頃の人物が、夜盗のアジトにて出会ったのだった。

 




次回~嵐の前の静けさ~
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