【休載中】混沌の魔法騎士王   作:森雄

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果たされた約束

 100名の夜盗達を捕えたアルトとレオポルドは騎士団本部へと連れて行き、捕獲した。

 

 夜盗達を送った後、二人はフエゴレオンに報告していた。

 

「よくやった二人とも」

「ありがとうございます、兄上」

「‥‥」

 

 フエゴレオンの激励にレオポルドは返事を返すが、アルトは返事を返さなかった。

 

「どうしたのだ、アルト?」

「‥‥」

 

 レオポルドは返事をしないアルトに訪ねるも、彼は応えようとはしない。

 しかし、何かを思案する様なアルトの表情にフエゴレオンは先程、アルト達がアジトに戻った際に聞いた情報のことだと思い、話題を出した。

 

「殺された貴族の事を考えているのか?」

「はい」

 

 二人が倒した夜盗の雇い主である貴族が殺害され、遺体となって発見された。

 遺体には頭や心臓などを貫かれており、一撃で絶命されていた。

 

 それは即ち、裏で何者かが暗躍していたという事だ。

 それは貴族の男の罪状を知っている者ならば馬鹿でも分かる事だ。

 

 殺害された貴族の男は度々、侵略国家であるダイヤモンド王国と密会し、資金提供の代わりに、もしもの時にダイヤモンド王国への亡命を確約していた事が発覚。

 夜盗を使い、多くの未発見の貴重な魔導具や資金を強奪させていた。

 

 その為なら、多くの命を夜盗に奪わせていた。

 情状酌量の余地のない屑だ。

 

 そんな人物を殺害した存在。

 どう考えても、何かを隠すための口封じのため。

 

 それを思い立ったのは魔法帝や報告を受けた大魔法騎士ならば、すぐに気付いた事だった。

 それを魔法騎士団員になったばかりのアルトすらも感づいた。

 

 彼はどうしても胸騒ぎがしてどうしようもなかった。

 

 まるで大きな事件が起きる前触れ‥‥‥俗に言う。「嵐の前の静けさ」というべき何かが‥‥

 

「どうしても‥‥不安が過ぎってしまって‥」

 

 アルトは「嵐の前の静けさ」に不安を感じ取っていた。

 

「‥‥アルト」

「はい」

「あの時の約束を果たそう」

 

 フエゴレオンは席から立ち上がると、アルトとレオポルドを連れてアジトの近くにある、広い空き地へとやってきた。

 

「約束通り、お前と模擬戦をする」

「‥‥わかりました」

 

 どうやらフエゴレオンは入団試験後に行なった模擬戦でランドールに勝利した事でフエゴレオンとの模擬戦の許可を得ていたアルトとは、その際に模擬戦をしておらず、今その時がやってきたのだ。

 

「始めるぞ!!」

 

 ____炎魔法"大火炎獅子の顎(レオ・ストライク)"____

 

 炎魔法で創成された巨大な獅子が大きく口を開けて、アルトへと噛み付いて来た。

 

 "大火炎獅子の顎"=巨大な火炎の獅子を創成し、相手を噛み付き、炎で焼き切る炎魔法。

 

「ッ!? (早い!?)」

 

 アルトはランドール以上の速度で襲ってきたフエゴレオンの魔法に驚愕しながらも、後方にジャンプして回避した。

 アルトは魔導書を開き、魔法を行使した。

 

 ____混沌氷魔法"ニブルヘイム"____

 

 "ニブルヘイム"=領域内の物質を比熱、相に関わらず均質に冷却する氷魔法

 

 マイナス100℃近くの冷気をアルトは掌からフエゴレオンへと放出させた。

 しかし、フエゴレオンは炎で出来た螺旋の柱を作り出して防ぎきった。

 

 ____炎魔法"螺旋炎柱(イグニス・コルムナ)"____

 

 フエゴレオンの"螺旋炎柱"が"ニブルヘイム"を防ぐも、防御魔法の周りの大地や草木が凍り付いていた。

 アルトはそれを見るや、ある事を思いつき、更に強力な氷魔法を叩き付けた。

 

 ____混沌氷魔法"氷河期(グレイシャル・エイジ)"____

 

 自身の足下を含む、広範囲に氷河期の世界へと変えるほどの冷却を一瞬でフエゴレオンに向けて放出した。

 すると、赤色に輝くほどの炎のような形をした氷像が出来た。

 

 "氷河期"=広範囲に氷河期の世界へと変化させるほどに物質の振動を停滞させながら、冷却させる

 

 

「兄上!!」

 

 レオポルドは凍らされたフエゴレオンを見てしまい、叫んでしまう。

 

 アルトはその氷像に向けて、両手を空に挙げると両手に大量の水の塊を作り出し、圧縮し始めた。

 アルトが次の攻撃の準備を行なっていると、氷像となったフエゴレオンから炎が漏れ出し、氷像が少しずつ解凍し始めるが、炎が勢い始めると、大量の蒸気が溢れ出した。

 

 アルトは"ニブルヘイム"を防がれた際に、炎で冷気が蒸発した事と、炎に触れていない場所が固体化した部分があった為、フエゴレオンを氷像にするほどの強大な氷魔法で凍らせれな、彼は炎魔法で自身凍らせる氷魔法を蒸発させるほどの熱気を上げるだろうと考えていた。

 

 そして、その熱気を使い、大量の水を叩き込んだ場合、一気に沸点まで水が蒸発してしまう為、その際の爆発力を利用しようとしていた。

 科学的に言えば、水蒸気爆発を引き起こそうとしていたのだ。

 

 しかし、それを読んでいないフエゴレオンではなかった。

 

 蒸気を発する氷像から小さな青白い熱線がアルトを襲う。

 

「ッ!?」

 

 アルトは大量の水を手放し、"神速の歩み"で回避した。

 

「読まれてた!?」

 

 水蒸気が晴れると、そこからフエゴレオンが現れた。

 

「お前の策ごと焼き尽くしてやろう」

「クッ!?」

 

 アルトは自身の策ごと破壊してきた事に苦渋を呑まされた感覚を受けてしまった。

 

「‥‥なら、こっちも焼き尽くす!」

 

 ____混沌炎魔法"流刃若火"____

 

 アルトは聖剣に炎魔法を纏わせた。

 その熱量は炎の領域を越えた正しく太陽の熱量を発しており、肉眼では熱気というよりも、火炎であった。

 

 "流刃若火"=武器に太陽の火炎を纏わせる魔法。一振りでさえも致命傷な熱量である。

 

 アルトが聖剣を一振りすると、圧倒的な熱量を秘めた膨大な火炎がフエゴレオンを襲う。

 

 ____炎創成魔法"大火炎獅子の咆哮(レオ・ルゼーナス)"____

 

 フエゴレオンは炎で形成された巨大な獅子を創成し、口から炎の息吹きを出した。

 

 "大火炎獅子の咆哮"=炎魔法によって創成された巨大な火炎獅子が口から膨大な炎の咆哮を放つ魔法

 

 2人の炎が衝突し、爆風消化の如く、炎が消え去った。

 

 爆風によって2人は後方に少し後退りするが、既にフエゴレオンが新たな魔法を発動していた。

 アルトの両手と両足を掴むように炎の獅子の手が現れていた。

 

 ____炎魔法"大火炎獅子の掌(レオ・パルマ)"____

 

 "大火炎獅子の掌"=複数の炎のライオンの手で相手の動きを封じる魔法。

 

「アルト。如何なる任務であろうと、不安は憑き物だ。だが、我々魔法騎士団は理不尽な相手を倒し、平和を示さねばならん!! それには強き心で、悪を打たねばならん!!」

 

 フエゴレオンは「嵐の前の静けさ」への不安を感じていたアルトの不安解消の為に、模擬戦を行なう事にしたのだ。

 故に、模擬戦にて一喝したのだ。

 死闘ではないとはいえ、戦いの中で成長しなければ、国を守れない事もあるのだ。

 予期せぬ状況の対処は無論の事だが、何時怒るか分からない不安に対する

 

 新たな魔法はその者の努力と才能、危機的状況での願いにある。

 

 アルトには魔法騎士団‥‥いや、魔導士の中では一位たる才能の塊だ。

 その才能を行使しながら、己の肉体や魔法を努力で修練し研鑽した。

 

 しかし、今までの任務では、人への攻撃理由による憤怒や正義感のみで行なっていった。

 だが、先日の一件に起きた「嵐の前の静けさ」による不安を覚えた。

 

 しかし、フエゴレオンによって自分が今、何を行なっているのかを改め知る事が出来た。

 それが、アルトに新たな覚悟を示す事になるのだった。

 

 ____混沌炎魔法"卍解・残火の太刀"____

 

 先程まで聖剣に宿っていた"流刃若火"の炎が消え去った。

 その代わりに、聖剣の刀身が焼け焦げたボロボロな刀身へと変化した。

 

 "卍解・残火の太刀"="流刃若火"の進化‥‥真価の魔法。太陽の炎と熱を刀に収束させて出来た圧倒的な破壊力を秘めた、見た目とは裏腹な魔法。

 

 その魔法と、アルトの目つきが変わった事から、フエゴレオンは不安が解消された事い気付いた。

 

「不安は解消できた様だな」

「はい。俺が何を成すために魔法騎士団に入ったのか‥‥それを思い出したお陰で、俺は成長できました。ありがとうございますフエゴレオン団長」

「では、お前が魔法騎士団に入った理由とはなんだ?」

「理不尽を滅ぼす事です」

 

 アルトは何ともないかの如く告げた。

 その言葉にフエゴレオンもレオポルドも普通に思えた。

 しかし、普通なのではなかった。

 

「快楽のために、実験のために、私利私欲のために‥‥そんな事のために、どれ程の被害が生まれたか‥そこに人道的な思考などない。何故そんな理不尽を許容する必要がある。いや、許容などする価値もない。悩み苦しみながらも人は生きている。何気ない理不尽で生きようとする意志を奪うならば、俺が全て滅ぼす」

 

 この時、フエゴレオンは初めてアルトに恐怖を感じた。

 

「平和を手にするなら理不尽のない、笑い合う世界であってこそだ。それを邪魔する者は‥‥魂すら滅ぼし、消し去るだけだ」

 

 アルトの異常性が漸く分ったのだ。

 フエゴレオンも民を思い、悪を撃つ正義感の強い男だ。

 しかし、アルトはそれとは別だ。

 

 今のクローバー王国の状況を滅ぼし、苦しみも悩みもない、平和な国へと変えようとしている。

 彼の理想に、一切の理不尽が許容されていない。

 この世界では魔力が全てでありながら、この国では、魔力が劣っていようと、身分だけで優劣を決める。

 一種の理不尽である。

 

 アルトはそれすらも許さない。

 それを許容させようとする者、理不尽な行為を行なおうとする者をアルトは滅ぼし、勝利し、理不尽を消し去る。

 

 それがアルトの魔法騎士団に入った理由。

 それを証明する為に、実績を積み、魔法帝になり、理不尽を悉く消し去ろうとしているのだ。

 

 平和の為に‥‥‥

 

 

 それを知ったフエゴレオンは開放している魔力を収めた。

 

「ならば、実績を出し、お前の理想を叶えてみろ。だが、魔法帝になるのならば、私ともライバルだ!」

 

 フエゴレオンはそう言うや、アジトへと帰っていった。

 アルトは開放した魔法を止めて、魔力を収めた。

 

 アルトは自身の成すべき事を改めて知ることが出来た事に、そして、その機会を与えてくれたフエゴレオンに感謝の気持ちで頭を一度下げてから、アジトへと戻った。

 

 先程までの戦闘を見てレオポルドは実兄とライバルを越える為に、努力することを改めて炎の如く心を燃やした。

 

 ────────────────────────

 

 フエゴレオンとの模擬戦から四日後。

 

 更なる任務を熟したアルトは、フエゴレオンに休暇を与えられていた。

 そんな中、[紅蓮の獅子王]団の先輩団員に、ブラック・マーケットを教えられて、地図を貰った後、一度そこへと脚へと進めていた。

 そこで、思いがけない人物と再会するのだった。

 

「‥‥‥マリエラ」

「‥アルト」

 

 ブラック・マーケットに入ったアルトは街を見学していると、嘗て出会ったダイヤモンド王国の暗殺部隊の1人であるマリエラと再会したのだった。

 




次回~再会~
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