艦娘とゲームをしよう 作:心折
「お前を殺す」
烈火のごとくほとばしるお世辞にも美しいとは言えない言葉の応酬。その言葉の主が本当なのかまだ信じられない。
「オマエヲ」
「コロス」
隠していたダイヤモンドをぶちまけたかのように、目も当てられない状況が目の前に広がっていた。
「榛名は大丈夫です」
「ぶちころしてやる」
「俺の部屋壊さないでね」
「はい!榛名は大丈夫です!」
「ああいや、そうだね。榛名はそうだろうな」
その中で1人、ぴょんこぴょんこと弾けるような笑顔をこちらへ向けてくる女の子がいる。金剛型3番艦の榛名である。
彼女が扱うミェンミェンに他の姉妹がボコられている。
「Shit!そのホットリングやめるネ!テートクが可哀相ネ!」
「俺そこまで老けてない」
「お姉様こそ崖際で空中ニュートラル振り回すのやめてください!」
「そのホットリングに首通して言う通りにさせてやるネー!」
金剛型1番艦金剛。彼女は白く染った髪をたずさえたガノンドロフを使用している。バーニングラブと毎度の如く飛び込んでくる様からキャプテンファルコンを使用するだろうと踏んでいたが、まさかのガノンドロフ。理由は私に似ているかららしい。私はまだ30も行ってない。
「むむむ…ミェンミェンは掴みが遅い…なるほど…」
「霧島ー、対策できそー?」
「いえ…そもそもお姉様達はつかみを多用してこないので対策するまでもなく…」
「霧島のリトルマックは処理されると」
「はい…」
金剛型4番艦の霧島。彼女が扱うリトルマックは見ている分にはリスク管理がしっかりとなされた綺麗なリトルマックなのだが、榛名の扱うミェンミェンの前には無力。崖外に出されて無料で処され、常に1番に脱落している。
ちなみにあの怨嗟の声はこの霧島と崖際後ろ投げドラゴンで処される金剛のものだったりする。
「比叡お姉様が1番勝率ありそうなのになぜ勝てないんでしょう…?」
「そりゃ霧島、比叡のキャラコンが全てを物語ってるじゃないか」
「…」
「司令身も蓋もないことを!霧島も黙らないで!」
「だってよ…」
「カービィ使って自滅は聞いたことないです…」
「ぬぐ…」
金剛型2番艦の比叡。カービィを使って連続自滅。さっきから反転上Bで崖を掴まないというオシャレ自滅を繰り返している。
実際ミェンミェンとまともにわたりあえるのはこの3名の内カービィだけみたいなところがある。空に逃げればミェンミェンにはできることがないのだから。
口を噤むしかない比叡に苦笑を浮かべていると、残存兵たちに動きがあったらしい。
「提督!殺りました!」
「oh…テートク…」
どの提督を殺ったんですかね。
目を輝かせて勝利報告をしてくる榛名は興奮からか距離感を測りかねているらしい。近いです。
「おーけーおーけー、榛名」
「はい!」
「大丈夫か?」
「…?」
脈絡がない質問に心当たりがないのか、小首を傾げる。その小さな動きが生んだたなびく風は非常に香りが良い。
「!…大丈夫じゃないです……」
しゅるしゅると小さくなって後ずさりする姿は目の保養です。
「テートクぅ…テートクがやられちゃったネ……」
「いや俺は健在だからね。死んでないから。あとそんな白髪あるかな俺」
それとなく後ろでキャラ選択をしているふたりに聞いてみる。目が合わないのはなんでかしらん?
「司令、髪で全てが決まる訳では無いので」
「気合い、入れて、染めます!」
俺は激怒した。滂沱の涙を胸中で垂れ流しながら、怒りを面に出さないようにしながら。
いっその事白く染めあげてやろうか。武蔵あたりに聞いて、髪型何かも何もかもやってもらおう。
「白髪おじさんもテートクもカッコイイデース!」
馬鹿にしてんのか。
枯れ専なのか。
「俺もお前らのことを愛してるよ」
何事も無かったかのように再戦しようとする彼女たちの傍らに腰掛け、俺は迷うことなく射撃Miiを選択した。
なぜか完封した。
*****
結局夕暮れまで戦いは続き、最後はほとんど俺に対する姫プレイのようになっていた。すること無かった。アピールや屈伸煽り、シールドグルグルなんかしかしてない。俺と2人になった暁には馴れ合い厨の成れの果てみたいな地獄が始まる。X時代を彷彿とさせた。
魔人拳共鳴は少し楽しかった。
「昼を抜いてまでやるべきではなかったな…」
あの後結局姉妹で飯を食うとの事なので、俺は退散。夕暮れまで相手してもらっておいて晩飯までご一緒なんて不躾な真似はできない。
「久しぶりに鳳翔さんのとこに行くか」
(夕暮れ時なら飲兵衛共もまだ居ないだろうしな)
鎮守府に併設されたこじんまりとした小料理屋。年季が入っているが清潔に保たれた暖簾に手をかける。
「またテートクをディナーに誘えませんデシタ…」
「今回はいい感じに流れを取れたんですけどね…」
「遊びすぎたんでしょうか…」
「計算通りには行かないものですね…」
(何やら金剛型4姉妹が話している。あの流れは社交辞令ではなかったのか。これは申し訳ないことをしたな…)
小耳に挟んだ事実に、謝罪と感謝を告げようと暖簾をくぐろうとする。
「提督の話ですか?」
珍しく鳳翔さんがその話に加わった。というかあまり自分の話題で盛り上がらないで欲しい。盛り上がってる中に本人が入ったら空気悪くしちゃうでしょうが。
「ハイ…スキンシップは出来てるとは思うのデスが、食事だけは上手くいかなくて…」
「あらら…そういえば最近めっきりいらっしゃらないですし…」
「寂しいデース」
「寂しいです」
「店変えよう」
そう思い、踵を返す。が、
「あれ、提督?」
「瑞鳳…」
そのやり取りが聞こえたのか、店からも増援がやってくる。
「テートクっ?!」
「提督!」
「「司令!」」
「提督…」
5人一斉に名前を呼ばれ、背筋が伸びる。
別に悪いことなんてしてないのになぜか悪い気がしてならない。
「お、おお、さっきぶりだな」
「Yes!さっきの話聞いてたデスカ?聞いてたなら分かるネ?!」
「いや、悪かった。社交辞令だと勘違いした」
「社交辞令なわけないデス」
いつもの朗らかとした笑顔とは異なる真剣な眼差し。後ろで控える姉妹もおなじ目をしていた。
「悪かったって、ありがとうな。鳳翔さん、席空いて…る」
じっ、と肌寒くなるような強く訴えかける瞳に閉口する。
「…私には何もなしですか。いけずです」
「ご無沙汰しました…飲兵衛共に巻き込まれると厄介でな…」
「この時間に来たのはなぜです?」
「ぐぅ」
「だからいけずなんです」
「申し訳ない」
いつもより押せ押せな鳳翔さんに圧倒される中、控えめに肘をつつく指の感触。
「どうした瑞鳳」
「なんかあったの?」
渡りに船だ、助け舟だ。瑞鳳をだしにここは切り抜けよう。
「いやまぁ、さっきまで一緒に遊んでたんだが、俺の思い違いで気分を害させてしまってな。せっかくだ、瑞鳳も同席しないか?奢るぞ。もちろん全員分」
「!…へぇ」
聡いやつだ。もう気づいてるなこれ。戦艦に軽空母となるとそれなりの出費にはなるが、致し方なし。あとはお前が乗るだけだ瑞鳳。頼むっ!
「そーね、ご一緒させてもらおっかな」
「お、おお。そうか。すまん鳳翔さん、席に」
「ふぅ…かしこまりました。案内しますね」
鳳翔さんもここらで矛を収めてくれるそうだ。もともと分別のいい人だし、非常に助かる。
「テートク!どーして今まで食事に来なかったデース?!」
「お姉様がいい感じにお誘いしていたのに!」
「毎度遠慮なされて…少し寂しかったです」
「司令の考えを先読みしても無意味でしたからね…」
こいつらとは違って。
「まぁまぁ!提督も反省してるんだし、次からはもっと気軽に来てくれるって!ね!」
「お、おお、もちろん」
「ムゥ、ならいいデース」
珍しくフォローしてくれるじゃないか。そう感嘆していると腕が引っ張られ、体勢を崩す。右肩が下がったくらいで耐えられたが、耳元で囁かれる。
「だしにしたツケは高いよー?」
直ぐに体勢を正して乱れてもないシャツを整える。いたずらに成功したガキんちょみたいな顔をしやがって。ただ今回ばかりは何も言えん。奥歯を噛んでこらえるしかないのだ。
「えへへ、顔真っ赤ー!」
「うるせぇ!」
にへらと笑って店内に駆け込む。
今晩は酒が進みそうだクソが。
*****
「Simon sais !!」
「えーっと、提督は何かひと品作る!」
「なんで俺限定なんだよ!」
全員にいい感じに酔いが回った頃、とんでもないゲームが始まった。その名もSimon says まぁ、船長さんの命令みたいなもんだ。なぜかさっきからリンチにされている。
「うふふ、私も味見してみたいです」
「ええ…俺そこまでじゃないんですが…」
「榛名は提督が作ったものなら大丈夫です!」
「いやそういう事じゃなくてさ」
「私の言うことが聞けないのー?」
「このガキ…」
Simon役をしている瑞鳳はかなり酒が回っている。ベタベタと擦り寄ってはイタズラをしてくる。まぁ、ここから逃げられるならひと品くらい構わないか。
「くそっ待ってろ」
「やったー!」
「テートクが作ってくれるんデスカ?」
「楽しみですねお姉様!」
「何をお作りになられるのでしょうか…?」
大したものじゃありません。
「これは…」
「oh…」
「だ、大丈夫…大丈夫」
「「司令…」」
なんだ文句あるのか。ちゃんと作ってきたぞ1品。
「提督、料理名は?」
「見てわからんか」
「言いなさーい!」
そんな怒らんでも。ちょっとした1品という枕詞を欲しいままにする有名料理だぞ。
「冷奴だ」
「ばかー!」
包装を破って皿にのせ、醤油なりなんなりを横に添えたら完成だ。料理って楽しい(適当)。
「私は提督の愛情がこもった料理が食べたかったー!」
「愛情は込めてるぞ。皿に載せる際、崩れないように細心の注意を払った」
「そういうことじゃないー!」
まぁ、これくらい言われる分には予測していたけど。そもそもSimon役がことごとく俺を指名しては、撫でろやらハグしろやら熱いベーゼやらと散々なんだよ。俺がSimon役をできない点には別に文句はない。他意に取られそうだから。
「さて、最後は鳳翔さんですね」
「あら…ついにですか」
「やったれ鳳翔さん!提督を泣かせろー!」
瑞鳳がなにかほざいている。金剛姉妹は皆酔ってふらふらだ。1部元気な奴もいるが、厨房にさえ足を向けさせなければ特に問題は無い。
「では…その敬語をとっぱらってしまいましょうか」
「え?」
「皆さんには呼び捨てにされているのに私だけまだ敬称がついてます。いけずです」
「いやしかし…正規空母達になんと言われるか」
「黙らせるので大丈夫です。さぁ」
「ぐぅ」
鳳翔さんを、か…。すげぇ気が引ける。初期の頃からお世話になって、艦隊運営のことも教えてくださった先生みたいな人でもあるのに…ぬぬぬ。
「ふ…」
「「ふ?」」
「2人の時、限定で…」
・・・
「皆さん店仕舞いの時間ですよ。金剛さん?皆さんをお連れくださいね」
「い、Yes、MAM!」
「ひぇ〜…」
「榛名は…榛名は…」
「これは…すごいですね」
なんかやばい言い回しをした気がする。2人の時って…2人きりのことやんけえ!
「クズ、スケコマシ」
「うるさいわ!」
「さぁ、瑞鳳ちゃん」
「ぅー、提督、手ぇ出したら許さないかんね」
「出すわけねぇだろボケ」
「あらら、振られちゃいました」
「「鳳翔さん!?」」
*****
『絶対てぇ出すなよ!絶対だぞ!』と瑞鳳に何度も念押しされたが、そもそもそんな度胸持ち合わせてないし、そんな器でもない。全く失礼な奴だ。
「さて。提督?」
「…はい」
「2人ですよ?」
「はい」
「呼んでくださいますよね?」
「はい…鳳翔」
「!」
「…さん……ヒィ」
刹那背筋が凍るような圧力を感じた。かなり小さな声で付け足したが、聞こえたようだな。これは。
「やりなおしです」
「ほ、鳳翔…」
「…」
「…」
「よし、ですね」
「はぁぁ、緊張しました…」
「全く、指揮する者なんですからこれくらい軽くこなしてくださいね?」
「善処します…、っと、そろそろ俺もお暇しますね」
「あら」
おや、鳳翔さんから妖艶な雰囲気が…?
「まだ何か用事が…?」
「提督の番、お忘れですよ」
「っ!」
嘘だろ。いや、無難なところで終わらせよう。そうすれば向こうも気が晴れるだろうし。
「で、では」
「鳳翔さーん!」
…飲兵衛たちのお出ましだ。ナイスタイミングというか、バッドタイミングというか。しかしまぁここは便乗しておこう。
「またの機会にしましょう」
「…はい」
「それでは」
「よい夜を」
あの後それとなく飲兵衛達に今日は鳳翔さんも酒が入ってるから迷惑かけすぎない程度にして帰れよという旨を伝え、帰路に着いた。奴らは鳳翔さんにはそういう配慮がしっかりできる奴らだから片付けとかもやってくれるだろう。冷奴作った時にある程度片付けはしたし、そんなに後始末で苦労することも無かろう。
「提督」
自室に戻ろうと言う時に後ろから声をかけられた。
「瑞鳳か、まだ起きてたのか」
「うん、お風呂行ってきた」
「そーか、それでなんか用か?」
「いや、提督にも順番回してあげようと思って」
「…」
「Simon役、どーぞ?」
熱っぽい表情で見上げてくる。悪いがそのネタはもう古い。
「寝腐れ」
驚愕の声がこだました。
金剛型回かと思いきや鳳翔さん回だと思った次の瞬間瑞鳳回ヤッターのフラグをつぶつぶにする。
ちなみにSimon saysの詳細はしらん。違ったらすまん。
Elonaたのちぃ