ルガーランスはぁ!こう使う! 作:ミツヒRo・バートランド
海で生まれ、地が育み、空へと羽ばたくザインってすごい経歴
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道生さんとの話から数日、俺は洋治さんを探し続けている。
彼との話し合いはかなり重要だった。特に今の段階で『ファフナー』の単語を聞き出せたことは行幸も行幸。本来は中学校になってからか、フェストゥムの来襲後なわけだし。
洋治さんとファフナーのことについて話せるならヒントを得られる可能性は十分だ。
…………希望的観測の域をでないが。
とはいえ時期的に早く島を出てもらいたい。正確なところはカノンを助けてほしいのだが、洋治さんと今会えないのも困る。
しかしこんなこともあろうかと。
家を直接聞くことはできなかったけど、アルヴィス以外で行きそうな場所なら調査済みだ。
毎日、朝と夕方にその場所を巡回している…………けど見つからないんだな、これが。
――――ワォン!
今日も捜索を続けていたら、犬の鳴き声が耳に届いた。
あまり描写されていなかったが、竜宮島は野良ネコや野良イヌを結構見かける。猫の小道なんてのがあるくらいだ。
ただ、どうも今回は気になって鳴き主の方へ体が引き寄せられた。
「プク、次はこの輪っかを回してみようか」
「オン!」
「よし、それっ!」
「さすがにこの程度は楽勝って感じね」
「ウァン」
「いい子だ、よしよし」
階段近くの広場にいたのはブリタニー・スパニエル――プクと、僚、祐未。
この時期はまだプクも若いし、2人とも変に気負ってないから自然な笑顔が見える。
「うおっ、今日は力比べもしたいのか? いいよ、やろう」
「オン!」
「プク、がんばれ~」
「祐未、プクばっかりひいきするよな」
「だって、僚が勝っても面白い反応しないんだもん」
「面白い反応って――うわぁ!?」
「ウォン!」
「今日もプクの勝ちみたいね」
「足使いがうまいからなぁ、プクは」
「ワッ、ワッ」
「どうどう、そろそろ離れてくれって」
「ヴゥ」
「僚、少し休んでから帰りましょう」
「ありがと、そうしたいかな」
跨ったプクが僚からどいて、祐未は僚の隣に座った。
木の陰で寝そべる僚と、彼に寄り添う祐未。
もう距離が近いな。いや、あの距離が普通だったのか?
見ていても絵になる2人だよ。
気づかれないうちに離れるとするか。
――――ザーッ ザーッ。
ふらふらと歩いてたどり着いたのは、海岸沿いの防波堤。
もう夕暮れになってしまった……。今日もダメか?
座り込んで、波の音をBGMに少し休む。
「波の音は落ち着くだろう」
「うん、耳に残るから」
「いい考え方だ。君は海が好きかい?」
「好きか嫌いかなら……好き」
「私もだ。自然の奏でるメロディーを聞きたいがために、時折出てきてしまうくらいでね」
「出てくるって、引きこもってたりするの?」
「引きこもり。なるほど、確かにそうかもしれない」
突然、海を眺める先客が話しかけてきたものだから答えてしまった。
この島の大人ってかなりフレンドリーなんだよな。東京――いや、前世の日本じゃ不審者扱いがオチなのに。
でも、どっかで聞いた声のような気がするな。
背は高く、髪の毛もふさふさ。低い声がスーツ姿の向こうから聞こえてくる。
もしやと思うけど。
「洋治さん?」
「おや、私の名前を知っていたのか」
「後ろ向いていたから気付かなかった」
日野家はなんだ、俺の意識外から出てくるジンクスでもあるの?
完全に気を抜いてたけど、ここで会えたなら……周りに人はいないし大丈夫だろう。
「海はいいぞ、少女よ。私たちの生まれた場所であり、寄る辺でもある」
「そういうのって普通は大地じゃ?」
「確かに、足をつけているのは大地だ。だが、私たちの祖先は海からやって来たという」
「共通祖先ってやつ?」
「授業はきちんと聞いているようだね。しかし、海が不変ということもない。温度次第で無くなってしまうくらいに、儚い存在でもあるのだ」
「でも、普通は海が消えるなんて起きないよ」
「そうだ。かといって、それを当たり前のことだと受け入れるのもまた健全とは言い難い」
この世界の人類は、超古代ミールが原因で類人猿から進化したとされている。
なら、情報体であるミールがほかの生物にも介入したのではないか、と考える学説が起こってもおかしくない。
前世でも共通祖先という単語は聞いた覚えがあるけど、立証しきれてなかった。
「じゃあどうするの? 海をどうこうなんて、オレたちにできる範囲じゃないよ」
「すべてを為そうと、難しく考える必要はない。当然、個人の行為でやれることなど限られているからね。だから、私たちは感謝すればいい」
「感謝って、海に?」
「それもあるが、もうひとつ。この海を守り続けてきたものたちにだ。その者たちがいたからこそ、私たちは海の恩恵に与ることができている」
「それ、すごく抽象的じゃ」
「仕方ないさ。私たちは、彼らの名前を知らないのだから。ならばこそ、私たちの知る者がいた場合、その名前を忘れてはならないのだ」
その考え方だと、洋治さんはフェストゥムや新国連に奪われた命をすべて覚えているのだろうか。
きっと、覚えているんだろうな。
竜宮島の灯籠流しもそんな思いで行われている気がする。
「……おっと、すまないね。おかしな話をしてしまった。年は取りたくないものだ」
「大丈夫、ためになったから…………たぶん」
「ほう。君は聡明な子のようだ」
「そんなこと。ただのズルだよ」
「ズル、か。君が何を悩むかは自由だし、私もそのことに口をはさむつもりなどない。だが、得た分岐の可能性を捨てることはおすすめしないよ」
「可能性?」
「探していたんだろう? 私を」
「…………」
洋治さんは立ち上がり、俺を見つめてきた。
ばれてたらしい。
そりゃあ、お気に入りの場所に誰かいたら気にもなるわ。洋治さんならどこの誰かを調べることなんて簡単だろう。ここは田舎なのだし。
波の鼓動だけが俺たちを包む。
「そう警戒しなくてもいい。私はこのことを誰にも話すつもりはないし、また誰も知ることはないだろう」
「なんでそんなこと」
「それが私の可能性だからだよ。ミツヒロは選び、私もまた選ぶ時がきた。それだけのことだ」
「……何を言ってるのかわからない」
そんな、俺に都合がいい状況だ。よすぎるくらいに。何を考えてるんだ? 洋治さんは。
とはいえ……この機をみすみす逃す手も愚策過ぎる。きっと原作開始まで洋治さんと話をする場所なんてもうないと確信できる。今回は洋治さんが気まぐれを起こしただけなんだから。
「――私たちは近々この島を去る。君も共に来る気はないか?」
なんと言おうか考えていた俺に、洋治さんはそんなことを言った。
…………L計画までの時間を考えれば、戻ってくる時間がないと言い切れるわけじゃない。
もし帰ってこれたなら、不足している実践データを得ることもできるはずだ。
そうすればシミュレーションもマシになるだろうし、パイロットたちの練度も上がる。
問題は、まず戻ってくるまで生きていられるのか。戻ってきても信用してもらえるのか。信用してもらえたとして……ティターンの特性が改善されるわけじゃないってことだ。
そうなれば…………結末は変わらない気がする。
そして、この世界に来てからやりたいことは決まってる。
「オレは――――まだ、ここでやるべきことがある、と思ってる」
脳裏に浮かんだのは、居なくなる級友たちと、両手を振り上げるニヒト。
「そうか」
洋治さんの返答は、意外にもそれだけだった。
「脅すとか、しないの?」
「ほう、なぜそう思うんだい? そんなことをする必要性が私にはないよ。まず、子供を脅して無理やり従わせるなんて言語横断だ。それとも、君の中だと私はそんなこともする人間だったのかな」
「いや、そんなことは……」
洋治さんは、人類軍に行った後も一騎に大人として接してくれるくらいの人格者だ。そのくらい、俺でもわかってたはず。
「私もだめもとで聞いただけだよ。安心してくれ」
「そういうことなら」
「さて、私は質問をした。君もひとつどうかな?」
……やられた、これが年の功か。断るとわかったうえで聞いてきたな?
無論、ありがたい提案だから乗らせてもらう。
「ファフナー」
ああ、言ってしまった。誰かに聞かれてたらあまりいいことになるとは思えない。
けど、ここで言わなきゃ来た意味もなくなってしまう。だから無駄じゃないはずだ。
「……その名前を出すとは、少し驚いた。どこで聞いたんだい?」
「道生さんから」
ごめん、道生さん。約束数日で破っちゃった。
「――そういうことか。やはり、君は頭が回る子だよ」
「……それで、教えてくれるの?」
「急かさなくとも私は逃げないさ」
つい、前のめりになってしまった。だって、
「ただ、君の質問は少し範囲が広い。成り立ちなどを聞きたいのか、特定のことなのか、どちらだい?」
「後者だよ」
「即答か。ではどんな」
落ち着け、得られた情報を組み合わせて祖語のないようにすればいいだけだ。
たぶん、洋治さんも細かい理由とか、経緯が気にならないわけじゃないだろうけど、重要だとは思ってないはず。
「とても怖いものだって聞いた。でも、守る力だとも。オレはそれを使いこなしたい」
「その力で、君はどうすると?」
「みんなに笑顔で居て欲しい。そのために――戦う。害するものすべてを消して、平和を取り戻す」
「……君の瞳は彼にそっくりだ。いい志しだが、戦いは新たな戦いを呼ぶのも事実」
「…………」
「そして、戦いが起きれば犠牲になるのは力なき者たちだ。もちろん、戦う者も例外ではない」
洋治さんは、間違えた生徒を諭すように口を開く。
「君の欲しい力というものは、本当にそんな力かね? 願いのまま振るう気なら、その先にあるのは出口のない行き止まりだろう」
「けど、何もしないわけにもいかない」
「そうだ。選ばなければ進むことはできない」
「進むには、力が必要でしょ」
「否定はしない。だが、君は何と戦うつもりでいる? 何も知らぬままなら足をすくわれてしまうぞ」
「そんなの――」
「もしかしたら君は知っているのかもしれないな」
フェストゥムだと言おうとして、遮られた。
「それでも、やはり君は
「そんなことしてたら、間に合わないよ」
「時間は確かに有限だ。しかし少女よ、時間でしか開けない扉もある。なにより、事情があろうと君はまだ子供だ。子供がそんな生き急ぐ必要もない」
「生き急いでるつもりはないよ」
「君にとってはそうかもしれん。ただ島がここにある理由くらいは知っておいたほうがいいな」
「その間にも人は死んでる。目をそらしてのうのうと生きろっていうの?」
「ある意味ではその通りだ。彼ら彼女らの戦った意味は、君たちが生きることで証明される」
「生きることが義務だと?」
「ああ」
「そんなのきつすぎる」
「必要以上に乗り越える必要はない。ただ受け止めてあげればいい。そうすれば彼らも報われるだろう。そして残されたものは痛みを記憶し、次の扉を開く。その繰り返しが人類そのものなのだ」
「言葉ではわかるけど」
「そもそもの話になるが、君の言うみんなはどこまで手を伸ばすつもりかね。世界中を救いきるというのは、今の人間には起こせない。もちろん、目標として目指すものではある」
「そのくらいは、オレもわかってる。ただ、今見ているものくらいは守りたい」
「そうか。なおのこと君は周りを見る必要がありそうだ」
「周り?」
「君は強情な部分がある。悪いこととはいわないが、視野を狭めているからね。今を生きる存在であるならいつかより今を見るべきだ、ということだよ」
「短絡的な」
「ほとんどの人間はそうしている。君もまた、そこから始めてみるのもいいだろう」
「…………」
「さて、話がそれてしまったな。結論を言うと、君に力を与えることは私にはできない」
「――どうして。資格がないから? 子供だから? 半端ものだから?」
「落ち着き給え。詰め寄らなくても理由は話すさ。なに、簡単な話だ。ファフナーの力は人間に与えることなどできないし、ファフナーを使うための力も同じこと。精々が力を利用するに過ぎないのだ。今の人間ではね」
「じゃあ」
「しかし、何もできないわけではない。私にも分岐を促す程度のことはできる」
――洋治さんがポケットから取り出したのは、ディスク型のデータ端末。
「これを君に渡しておく。本来は私がやらなければならないことだが、新たな可能性を芽生えさせるためにもここを離れねばならん。それは、時が来たら使うといい」
「……オレに?」
「君にだ。それをどうするかは君次第だが、私は君に渡すことを可能性としたい。生と死を知る子供に」
「期待に添えるかわからないよ」
「何もすべてやる必要はない。いや、むしろできないだろう。そういった場合は周りを見るといい。君が正しい時の流れを掴んでいるなら、助けてくれる者が近くにいるはずだ」
「……わかった」
「ここまでの賭けはミツヒロの勝ちだが……せめて、最後の扉を叩く者は君であってほしいものだ」
「――――アルヴィスの子よ」
「おや、時間か。それではまたどこかで会うまで息災にな、案子君」
「え?」
「我々は、私によってこの場所を後にする」
そうして、洋治さんと道生さんは島を離れた。
手には、確かにディスクがある。洋治さんが残したもの。問題のカギになりうるもの。
中に何が入っているか分からないが、託された事実は変わらない。
届いたんだ……思わずにやけてしまう顔を抑える。
ああ、でも、無理だ。
これを喜ばないでいられる者がいるだろうか? いや、いない。
はっ、あはっ。あははっ。
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
――――しかしまて、何かおかしい。
さっきのは誰だ?
◇◆◇
「親父、どこに行くんだよ」
「道生、お前も来るんだ」
「どうして……島を捨てる必要があるんだ」
「竜宮島は楽園だ。しかし、その楽園創りには禁止されていた技術が多く使われている。それはわかるだろう?」
「けどよ、俺たちは何も」
「そう、何も悪いことはしていない。ただ生きようと模索し、苦渋の果てにたどり着いた結論だ」
「だったらよ」
「だが、新国連は――人間はそう考えまい。自分たちが世間的に使えない技術を独占する危険な島、とみるだろう。10年もしないうちに島を焼きに来るのは旧日本国の時から明らかだ」
「……」
「わかるだろう、道生。だからこそ必要なのだ。島の外で竜宮島が人類に仇名す存在ではないと示す人間が」
「ああ、わかるぜ。わかるけどよ」
「私だけでいいかもしれない、確かにそうだ。しかし、残念なことに私は年を重ね過ぎた」
「なるほど、ファフナーか……」
「その通り。お前も厳しい時期にあるが、私などよりは乗りこなせるはずだ」
「こんなこと、他の奴に頼めねえもんな」
「すまないな、道生。だが、島の平和を……弓子君の幸せを願うなら避けて通れぬ道だ」
「おうよ……弓子の名前を出されたんじゃ、断るわけにもいかねえ。それに俺も、親父の仕事を手伝いたいと思ってたんだ」
△▼△
ダブリンはフェストゥムの大攻勢により、都市機能を喪失していた。
街は荒廃し、人は明日のために野党紛いの略奪を繰り返す。助け合いなど望めず、暗澹たる雰囲気が漂うのみ。
年齢も性別も関係なく、寄る辺を失った彼らは生きることに必死だった。
崩れた礼拝堂を仮の住処としていた少女も、また同じ。
だが、その日はいつもと違った。
大空を飛ぶ飛行機の群れと、見慣れない服の大人たち。
それでも、少女の毎日は変わらない。適当に食べ物を得てその日を生きるだけ。いつ死ぬともしれぬ生き方だが、頼るものを失った彼女はそうするほかなかった。
ジンルイグンの来訪は人々にとって良いこともあった。彼らは豊富な物資を持っていたのだ。
広場へ降ろされていく食料に人々は我先に飛びついていく。
もっとも、利益を享受できたのは大人だけで、年端もいかない彼女はひっそりと
そして目を付けたのは、バンダナの男。横に置かれたバッグから携帯食料が覗いている。
崩れた銅像に背中を合わせているが、明後日の方を見つめて油断していた。
難民の少女はひっそりと男の背後に回り、猫のような身のこなしでバッグから食料を盗むと、そのまま物陰に隠れた。
気づかれなかったらもうひとつ獲ってやろうと様子を窺えば、男は頭をかいている。
「まさか本当にいるなんてな……これも運命か」
あいつは何を言っているのだろうか。油断しているなら都合がいい。
少女が物陰から足を踏み出した途端。
「なあ、ひとつふたつでお前は満足するのか?」
男の視線が少女を射抜いた。
少女は足を止め、どう逃げるか検討する。
だが、男は自分のものを盗まれたにも関わらず、怒るどころかバッグをこちらに差し出してきた。
「食べ物が欲しいのか?」
「ほしい」
当たり前だ。生きるためには食べる必要がある。
「仇が取れるとしたら、とりたいか?」
「…………とりたい。お父さんとお母さんを殺したあいつらがにくい」
……取りたいに決まってる。あいつらさえ来なければ、今頃幸せに暮らしていた。
「それなら、俺についてこい。お前に過酷な運命と戦う気があるなら、食べ物に困らないようにしてやる」
「わかった」
男が伸ばしてきた手を取る。すべて、すべてのあいつらを殺しつくしてやる。そのためなら何を失ってもよかった。
――――その日から、カノン・メンフィスの運命は動き出した。
我々がオリ主を乗せたいもの
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