ルガーランスはぁ!こう使う!   作:ミツヒRo・バートランド

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先日はランキングの末席に入れたこと、感謝。
いきなりUAが増えたので震えていました(また制限つけちゃった……)
文才を渇望して止まないこの頃

三つ子の魂百までというように面倒くさい性格のオリ主ですが
我々は見守ってくれると嬉しい





知己~しった~

 

「ごめんくださいな」

「はーい」

 

ある昼のこと。遠見家の戸を叩く由紀恵の姿があった。

 

「あら、真矢ちゃん。本日はお日柄もよく」

「狩谷せんせ、どうしたの?」

「ええ、簡単なことよ。お姉さんは家にいるかしら?」

「いるけど……呼んで来たらいい?」

「そうね、お願いするわ」

 

家の中に引き返す真矢。

 

 

 

それから1分ほどして。半端に開けた扉から弓子は現れた。

 

「どうしたのよ、由紀っぺ……」

「随分やつれたじゃない、弓子。いつもの笑顔が恋しくなってしまうわ」

 

由紀恵の言葉に、弓子は半目で返す。

 

「ねぇ、そんな冗談を言いに来たのなら、今すぐ帰ってくれないかしら……」

「疲れているって?」

「そうよ」

「ふふ、安心していいわ。きちんと目的があって話をしているのだから」

「それなら、早く要件を言って欲しいものね……」

「当然。お望み通りにしてあげるから、あなたこそ早く着替えなさい」

「着替えって……外に? どうして」

「決まっているわ」

 

由紀恵はキメ顔で言った。

 

「――――飲みに行くのよ」

「はぁ?」

 

 

 

 

 

「誰もいないわね。昼間だから当然だけれど」

「ねえ、由紀っぺ。私はともかくあなたは未成年なのよ……」

 

由紀恵が弓子を連れ出したのは、島にひとつある酒場――辰馬や――だった。

 

「来年には成人なのだから、四捨五入すればわたしだって20歳よ。さあ、飲んで吐き出して吹っ切れる、それが大人の第1歩よ」

「無茶苦茶だわ……」

「うるさいわね。弓子こそ20歳だというなら根性を見せるべきでしょう」

「なによ、根性なんて単語が由紀っぺから出てくるとかどんな風の吹き回し?」

「風は吹くものじゃないわ。自分で吹かすのよ」

「何言ってんの……飲酒は健康にだって悪いし」

「理屈じゃないわ、今日は特に」

「…………」

 

痛いところを突かれた。弓子は渋い顔をする。

 

「あなたが苦しもうと悩もうと、道生が帰ってくるわけじゃないの」

「それは……わかってるわよ」

 

理屈じゃない。そうなのだ。

 

弓子にとって道生は幼馴染で、不器用ながら辛い時はいつも傍に居てくれた相手。どちらが先だったかは定かじゃないけど、お互いに惹かれあって今まで過ごしてきた。

ファフナーという危険極まりないものに仲間たちが奪われていく恐怖の中、いつも自分を気にかけてくれた彼を半身と呼べるくらい、弓子の心は道生という人間が占めていた。

 

その半身が居なくなったとあれば、平常で居られないのも道理。

 

しかし由紀恵は、そこで止まるのはダメだと弓子に言う。

 

「あいつが帰ってくるまでそんな辛気臭い顔で迎えるというなら、わたしは何も言わないでおくけれど?」

「そんなこと、誰も言ってないじゃない」

「あなたの顔に書いてあるからよ」

 

まっすぐ見つめてきた由紀恵にバツが悪くなって、弓子は目をそらす。

ため息の後、由紀恵も視線を下に落とした。

 

「……由紀っぺは、どうしてそう平気な顔ができるの? もう帰ってこないかもしれないのに」

「随分弱気ね。明日は雨かしら」

「茶化さないでよ」

 

至極真面目な問いをはぐらかされて、弓子の心は薄暗くなった。

濁った瞳で見つめられているにも関わらず、由紀恵は意に介さぬまま注文用紙を見ている。

それがまた、弓子の神経を逆なでした。

 

「どこかの馬鹿で単純で深く考えない、電気信号を特別なものと勘違いした男はいつも空回ってうまくいかず、出来もしないことをできると大口叩いて失敗する毎日を送っていたわね」

 

語りだした由紀恵の口調は断定的で、誰のことなのかは明らか。

しかもその口調は小馬鹿にする雰囲気さえ纏っていた。

 

「誕生日にプレゼントを渡そうとして、前日まで何を渡すか思いつかなかったり、いざ渡そうとしてもなぜか直前に壊すなんてのもあったわ」

 

――あとで直してくれたから問題じゃない。まだ大事に使っている。

 

「体を鍛えると宣って要さんの道場に殴り込んだけど、3日で叩きのめされて逃げたこととか」

 

――無茶したことを叱ったら子犬みたいに縮こまって可愛かった。そのあとはペースも覚えたみたいだし。

 

「海で泳いだ時も張り切ったせいで溺れかけたり、日焼けがひどくてのたうち回ったり」

 

――あの時はすごい焦った。持ち上げるのも2人がかりでようやくだったから。

 

「卒業式のときは変なポエムを詠んで後輩たちも困惑させるとか」

 

――聞いているこっちが恥ずかしかったくらい。事前に話してくれればよかったのに。

 

「銭湯にいくなんてすれば覗こうとして頭を打ち、全治2週間の怪我を負ったことは今でも笑い話よね」

 

――それは擁護しない。私以外を見ようとしたのが悪い。

 

「だいたい行動に結果が伴ってなかったわ」由紀恵は他にも誰か(みちお)の話題を語った。

 

 

 

「……それ、今話してなんの意味があるの? あてつけ?」

 

一方の弓子は眉間のしわが深まるばかり。

確かに思い出はあるだろう、一緒に育ったのだから。けれど、どうも今の弓子には由紀恵がマウントを取ってきているように感じてしまう。

 

「わからないのかしら」

「わからないわよ、ふざけないで。私は由紀っぺみたいに他人の頭を覗き込んで知った風な口で喋れるような人間じゃないわ」

「随分な評論ね。わたしはそんなことができるほど万能じゃないのに」

「だったら……だったら、どうして今私を連れ出してきたの!」

 

机をたたき、弓子は立ち上がった。

 

「そっとしておいてよ! わかってるんでしょ? 私は限界なの。つらい現実から逃げて、甘い思い出に浸っちゃダメだっていうの? そんな権利が誰にあるっていうのよ!」

 

ヒステリックな叫び。それは、弓子の本心だった。

島の真実を知らない子供――真矢は見透かしたように悲しまなくていいよなんて言ってくるし、千鶴も千鶴で今日は休んでいていいわよと腫物を触るように語りかけてくる。自分を見ているようでかみ合わない家族との関わりに限界を感じていた。

 

その上、一部の人が道生たちは島を売って新国連に媚びた売()奴だ、なんて言っているのも聞いてしまった。

 

(そんなことないのに。みんな勝手な想像で乱暴なこと言って……島のために島を出たのよ。あの人みたいに、島を実験場としか思ってなかったクズとは違うんだから)

 

ただ、それを100%信じられるかと聞かれればわずかに賛同できない部分もある。

道生は何も言わずに出て行ってしまった。だから、心の弱さからくる疑心暗鬼に負けてしまいそうになる。表面だけ自分と仲良くしておいて、実はとっくに愛想をつかしていたんじゃないかという。そんなことはない、違う、想い合っていると言いたい。けれど、それを確かめる手段はもう、思い出の中にしかない。本物は手の届かない遠くに行ってしまったから。

 

(いっそ、私も連れて行ってくれたら――――)

 

ゆえに。弓子の心は内側に向かってしまう。席に座りなおして、俯いた。

 

 

 

弓子の心が荒れているのを知りつつも、島の大人たちは弓子ら3人の背景を知っている上、自らの行いが彼女たちの同級生を奪ったことに自責の念があるからこそ、深く踏み込めないでいた。

3人がいかに危うい精神状態の上に成り立った関係かを杞憂し、均衡の崩壊を恐れていたのだ。

 

 

 

だが、当事者であれば話は違う。

 

 

「――――ダメに決まっているでしょうが」

「……っ」

 

由紀恵の鋭い口調に一瞬、弓子は体を震わせた。

切れ長の目が弓子を射抜く。

 

「もう1度言うわよ。道生は島を出て行った、その結果は変わらないの。弓子が現実逃避したってどうにもならないわ」

「だから、知ってるわよ」

 

理解している。しているけど、して居続けたくない。

由紀恵は、顔を振って子供のように逃げ道を探す弓子を狩り立てる。

 

「わかっていないわね。わかった気になって自分の心を縛っているだけよ」

「どういう意味なの」

「知れたこと。あなたを追い詰めているのはあなた自身よ、弓子」

「……」

「誰もあなたを責めてなどいない。つらい辛いと言って逃げる時間は終わったの。いい加減、向き合うことを覚えるのね」

 

そう、心配する人はいても責める人など居なかった。苦しい言い訳を続けていたのは自分自身に他ならない。

だけど、それを指摘されると――

 

「うるさい……」

「なによ」

「うるさいって言ってるの! 由紀っぺに何がわかるの、恋もしたことがないくせに! こんな……こんな、失うのが怖いなんて思いもしなかった!」

 

我慢していても、目が潤んでしまう。

 

「でも、あなたはまだ失っていないわ」

「そんな、わからないじゃない」

「いいえ、わかるわ」

「何を」

「あいつは、必ず帰ってくる」

「――どうして、言い切れるの」

 

私にもわからないのに――。そう続く言葉を飲み込んで由紀恵を見る。

すると、彼女はなんてことのないように笑って言った。

 

「――道生は弓子が好きだからよ」

 

あまりにも単純な答え。思考停止ともとれてしまう。

 

「それだけ?」

「それだけよ。ほかに何が必要なの? 論理や定義なんてものをすっとばした人間の感情を区切ることなんて、できないのだから」

「道生は……」

「今更何を怖気づいているのかしら、あなたは。誰がどう見ても道生は弓子を好いてるわよ」

「……」

 

そうなのだろうか。断言する由紀恵を見ていると、弓子は本当にそうなのかもしれないと思い始めた。

 

「それともあなたは嫌われたいの?」

「……やだ」

「別の女とあいつが結婚してもいいのかしら」

「……嫌」

 

そんなの、想像もしたくない。

 

「ならあいつを信用しなさい。そして自分に言い聞かせるの」

「言い聞かせる……」

「『道生が好きになるのは私だけ』ってね。弓子はいつもの自信過剰なくらいが丁度いいわ」

「うん……」

「あいつはいろいろ残念な男だけど、大事な場面で裏切るなんてしなかったでしょ」

「そう、よね」

「それに、わたしが何回相談されたと? そのたびに惚気られてね、堪ったものじゃなかったわ」

 

女心が分からない道生のことだ。身近な人に助けを求める姿は容易に想像できる。

そんな、自分のために走り回る彼を考えると心が温かくなってきた。

 

「ふふっ」

 

「笑えるくらいにはなったわね。もし、帰ってきたときにあの男が別の女に揺らいでいたら奪い返せばいい話よ。それくらい、できるでしょう?」

 

「……当り前よ。あいつのこと、全部知ってるんだから」

 

そう、ぽっと出の女に負けるつもりなんてなかった。

 

(いつだって、あいつはわたしのものよ。誰にも……誰にも渡さないわ)

 

「だったら、どっしり構えて待ってなさい。年ごろの男がええ格好しいなんて当然のこと。帰ってきたら1発ぶん殴って許せばいいの」

「そうね……でも、ええ恰好しいなんて言葉、今じゃ聞かないわよ」

「茶化さないでくれるかしら」

「むぅ…………」

 

反論など許さぬ由紀恵の目力。

 

「由紀っぺのくせに」

「ふん、いつもわたしばかり貧乏くじを引かされるからよ」

 

 

数秒、顔をそらした後に見つめ合う。

お互い、口元が緩んだ。

 

 

「それで、調子は戻ったかしら」

「おかげさまでね」

「それじゃあ、飲みましょう」

「え、今から?」

「当たり前じゃないの。そのために来たのよ」

 

机の上には、グラスが2つ置かれている。

 

「いつの間に……」

「どうせ叫ぶなんて酔ってないとできないのだから。はい、あなたはこっち」

 

自然に由紀恵が渡してくるものだから、弓子も思わず受け取ってしまった。

 

「それじゃあ、道生の旅の安全を願って。乾杯」

「か、乾杯……ってそういうのは神社でやるんじゃないの?」

「あとでやるわよ、あとで」

 

1口飲んでみて。

 

まずい(酒じゃない)わね、これ」

「ほら、言わんこっちゃない……」

 

 

 

 

 

「道生の馬鹿―!」

「もっと言ってやりなさい」

「みちおのばーかー!」

「もっと大きく」

「ヴァああああか!」

出来上がった状態のまま叫ぶ弓子の表情は、楽しげであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酔っぱらって動けなくなった弓子を、由紀恵は彼女の自宅まで送った。

 

「ありがとうございます。まさかこの子が酔いつぶれるなんて……」

「この程度、感謝されるほどのことでもありませんよ」

「しかし……」

「用は済みましたから、私はこれで」

 

過去の事件が原因で、由紀恵は島の大人を信用していない。それでも、表面上はそうと思わせないのが彼女のうまいところである。

ただ、気が付いている大人――千鶴などは、その冷たさをどうにかしてあげたいと思っているのもまた事実。

にべもなく帰ろうとする由紀恵に、千鶴は待ったをかけた。

 

「改めて、ありがとうございました。狩谷先生」

「…………当然のことをしたまで」

 

――――そう、友達なのだから。

 

頭を下げる千鶴を背に、由紀恵は去っていった。

 

 

 

 

 




高評価は我々もうれしい
コメント制限は解除したので、よければ入れてもらえるとモチベになります


なお、当SSは未成年に飲酒を推奨するものではありません。
実際、由紀恵はちゃっかりノンアルコールを飲んでいます

我々がオリ主を乗せたいもの

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