ルガーランスはぁ!こう使う!   作:ミツヒRo・バートランド

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赤くなるたび低評価に入れてくる勢力が我々にいるらしい
その時間で推しのSSに感想を書いていればいいのに
ほとんどの者(以下略)
我々も推しのSSには感想……書こう! 我々もやったんだからさ

オリ主がうだうだするだけの時間は結局カットです





再臨~こども~

 

 

 

――――やっぱり、何もできない。

 

 

 

 

家の窓から夜空を眺めると、雪が降っていた。

つまり。

大したことができぬまま、もう年末である。

 

総士は、原作通り左目に傷を負った。

できるだけ総士から目を離したつもりはなかったが、よりにもよって風邪で寝込んでいる日に起きたようだ。

 

なんとも言い訳がましい。

1日くらい大丈夫かなんて思ったのが原因なのに。

 

一方でクラスメイトとは良好な関係を築けていると思う、少なくとも上辺は。取り繕うのは昔から得意だ。

あとはさすがに、旬を過ぎたようで落ち着いた交友関係になりつつある。

 

ディスクも手元にあるままだ。

保さんやメカニックの人に渡したほうが遥かにいいなんてことはわかってる。

でも、手放すのがこわい。

なんの知恵も力もない俺にとって、洋治さんが渡してくれたアレは最後の砦みたいなものだ。

俺が島のためにできること。存在意義。そういったことを証明できる唯一のもの。

きっとそんなはずはないって頭では理解できる。

だから何度も母さんや大人に相談しようとした。けれどそのたび、口が凍ったように動かなくなってしまう。

なんと愚劣。なんと罰当たり。半年以上島で生きているくせ、まだ島のみんなに恐怖を抱いている。矛盾の塊。

だいたい、なんで俺は生きてるんだ?

死んだのだから死んでいればよかったのに。

 

引き出しを閉じる。

 

 

 

 

 

そうだ、死ねばいいじゃん。

 

 

 

 

 

 

 

家を飛び出して真夜中の道を走った結果、断崖の岩山――ひとり山にたどり着いた。

当然というか誰もいない。

一騎に手を打つのがいいんじゃないかと思って、ここにきてた時期もあったっけ。

無駄に終わってしまったが。

 

崖の上に立つと夜風が響いた。

季節が季節なので肌寒い。

 

月明りがわずかに照らす中で遠くに見える島は慶樹島、ファフナーが置いてある格納庫。

 

ああ、ファフナーがどんなものか理解していなかったころ、単純にすごいメカだと思って子供ながらに無双する夢を見ていた。俺ならもっと戦えるって調子よく思ったこともある。けれど、実際にファフナー世界に来たらどうだ。ファフナーに乗る以前の問題。

島の生活に、未来に、現状に対応も順応もしきれていない。

いっそ、ファフナーに乗る時だけ使われる――ミツヒロが言った電池だったらよかったんじゃないだろうか。

 

崖下を見つめる。闇の大顎が死人を招いているかのよう。

 

死んだら死ねるだろうか。

 

すでに転生なんていうものを経験している手前、ミジンコに生まれ変わって意識もあります、なんてことになったら目も当てられない。

 

でも、もし死ねたなら。

 

みんなに会えるといいな。

 

せーのっ。

 

 

 

 

 

 

▼△▲

 

 

 

 

 

セミの鳴き声が木霊する夏の夕暮れ。

遊び疲れた子供たちが去ったあとの公園に、2人の少年が残っていた。

 

「……どういうこと? 総士」

「どうもこうもない。言った通りだよ、一騎」

 

年相応の雰囲気を纏った少年と、どこか浮世離れした気配を醸し出す少年。

 

一騎、と呼ばれた少年は目の前にいる友人が話したことを半信半疑に聞いていた。

いや、話というより迫力を持たせた言い聞かせに近い。

 

「あの女は危険なんだ。一騎には意味がわからないだろうけど、いずれ本性を現すに違いない」

「あの女って……年上だよ? 一緒に遊んでもくれるし、どうしてそんなこというんだよ」

「僕にはわかるからだ」

「だから、それじゃ言ってることがわかんないって言ってるんだよ」

「どうしてわからないんだ、一騎。僕は君のためを想っているのに」

「だったらもうちょっとわかりやすく説明してくれよ」

「ならこう言うよ。狩谷 案子は危険な、島を脅かす存在だ。そして一騎も狙っている。だから僕は一騎を助ける」

 

一騎は頭を振る。

 

「じゃあ総士はお姉さんがその……みんなを殴ったりするっていうのか?」

「それは違う」

「なら危なくないじゃんか」

「危険なのは確かだ」

「だからなんでそう言えるんだって」

「彼女の存在そのものがおかしいんだ。あれは人間じゃない、化け物だ」

「化け物って総士……言っていいことと悪いことがあるだろ!?」

「僕は嘘を言っていない」

「総士……っ!」

 

一騎はわずかに怒気がにじんだ顔で総士の肩を掴んだ。

しかし、相手の少年はそれを異に介さず話をやめない。

 

「一騎、僕は君が大切なんだ」

「ああ、俺も総士は親友だと思ってる。けど……誰かを悪く言う総士なんて見たくない……」

「悪くは言っていない。現実的な予測と根拠をもった事実だ」

「なら、せめてそう思った理由を教えて欲しい」

「それは……これ以上は話せない」

「どうして」

「一騎のためだからだ」

 

そこで会話が途切れる。過程を知りたい一騎と結論のみを語る総士。

お互いの主張は平行線だった。

このまま無言の時間が続くかに思われたが。

 

はっ、とした表情で振り返る総士。

 

「もう嗅ぎつけてきた……!」

 

一騎もまた、総士の視線を追う。

 

「案子さん……? どうしてここに」

 

話題にしていた人物が、公園の入り口に立っていた。

彼女は一騎の言葉にも答えることなく、ただ見つめるだけ。

 

「お前……お前、いい加減にしろよ!」

 

それに対して総士は立ち尽くすだけの少女に感情をむき出しのまま、一騎をかばうように両手を広げた。

 

「総士、何を言って」

 

「いつもいつも僕たちを追いかけて。一騎はお前のじゃない、お前がとっていい人じゃないんだ!」

「…………」

「お前はひとりで帰れ!」

 

やはり、少女は何も言わない。

 

「総士、何を言ってるんだ……?」

 

総士が言った意味を理解しきれていない一騎は、混乱しながらも少女の姿に違和感を覚えた。

 

(どうして裸足なんだ……?)

 

しかし、その疑問は総士が勢いよく肩を掴んできたことで流れ去る。

 

「一騎、あいつはお前を取ろうとしているんだ。その前に僕とひとつになろう! あいつに取られるくらいなら……僕と帰るべきなんだ。そうすれば、一騎は僕と消えないままになれる」

「総士……? どういう意味なんだよ」

「わからなくてもいい。でも一騎を僕は失いたくない。だからこうするしかないんだ」

「わけがわからないよ、総士」

「一騎、時間がないんだ。はやくひとつになろう」

 

質問に答えるよりも、総士は掌に翡翠色の光と――結晶を生み出すことを優先した。

それは当然、肩を掴んでいる一騎に刺さり。

 

「……いたっ!」

「ッ!」

 

一騎がとっさに手を振り払ったことで、結晶は弾けた。

ただ、それだけではなく。

まさか拒否されるなど考えていなかった総士は急に崩れたバランスに対応できず、地面に倒れた。

 

「ご、ごめん総士……」

 

いきなりだったとはいえ、突き飛ばした罪悪感と心配から一騎は倒れた親友に声をかける。

 

しかし。

 

「ぐぅ……あぁ……! いたい……いたい(痛い)いたい(居たい)いたい(痛い)!」

 

総士は左目を押さえた(抑えた)まま、起き上がれないでいた。

 

 

「大丈夫か……?」

 

そう声をかけようとして、一騎は伸ばした自分の右手に違和感を覚えた。

 

――――赤い。

 

夕暮れの紅ではない。

何かが零れ落ちている。

 

総士の近くには、先端の尖った結晶体が転がっていた。

 

――――それも赤い。

 

総士の手を見る。

 

――――やはり赤い。

 

 

「あ」

 

もう小学生を半分過ぎた一騎にとって、今の状況から何が起きたのかを予想するのは難しくなかった。

 

総士はまだ、痛みに呻いている。

 

「ちが、違うんだ……俺は……」

 

ふと、入り口に目を向ける。

じっと見つめる女の影が、まるで罪はお前にあるのだというようで。

 

「これは……こんなの……」

 

一騎が続けて何かを言おうとしたとき、総士が突然声を上げた。

 

「これが痛み……僕はいたいんだ……あは、あはは。あははははは! だから一騎を……そういうことなんだ」

 

「総士……?」

 

「ありがとう、一騎」

 

顔を向けてきたのはいつもの親友の笑顔。そのはずなのに。

 

「どうして……笑っていられるんだ、総士」

 

「生まれることは嬉しいからだよ」

 

朱に染まった左側が酷くいびつに見えて。

 

「そんな大けがしてるのに……意味わかんないよ……」

 

総士は地面に落ちた結晶を拾って、砕いた。

 

「痛い……そう、痛いのは人間だけなんだ」

 

「何言って……怪我したんだから、痛いのは当たり前だろ!」

 

「うん。当たり前なんだ」

 

押さえた左目から未だに水を零す総士。

その姿を受け止めて、ようやく一騎は何をしなければならないのかに思い至った。

 

「そうだ! 早く治療しないと……」

 

一騎はもう一度入り口を見る。

影は、総士に気を遣ううちに消えていた。

 

「ううん、大丈夫」

 

「どこが大丈夫なんだよ! その……目だぞ! 見えなくなるかも……」

 

「わかってる。でも一騎、君はもう帰って」

 

「どうして」

 

「必要ないから」

 

端的に放たれたその言葉は、一騎の心をひどく打ち据えた。

 

「必要……ない……?」

 

(俺がやったから……信用できないのか……?)

 

「うん。だからもう帰って」

 

「…………」

 

足が鉛のように重くなり、一騎はその場から動けなかった。

ほんの少し前までは――逃げたいと思っていたのに。

 

「また明日、一騎」

 

だから。去り行く親友の姿を、ただ見ていることしかできなかった。

 

 

 

独り残された公園の真ん中。

 

「なんだったんだよ、あれ……」

 

しばらく放心した後、一騎はようやく動きだした足で家に向かう。

肩を掴まれた時に脳裏を過った、不可思議な光景を思い出しながら。

 

「総士……」

 

 

 

 

 

 

▼△▼

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

何か今、変なことが起きなかったか?

そんなはずない。

 

早く終わらせよう。

 

一歩前に踏み出して、来るだろう浮遊感に身を任せる。

 

すると。

 

 

 

 

 

――――崖の上に立っていた。

 

 

「は?」

 

飛び降りる。

 

 

 

 

 

――――崖の上に立っていた。

 

 

 

は?????

 

 

 

 

 

 

????????

 

 

何が起きてる?

死に戻った? そんなはずない。

落下中の記憶が……ないんだから。普通それなら地面にたたきつけられた痛みを覚えているんじゃないのか? そんなものないぞ。

 

 

今度は助走をつけてみる。

 

 

距離を取って走り、崖の前で飛――――

 

 

 

 

――べなかった。

 

足が固まってつんのめる。

 

そのまま崖下に放り出されるのかと思った。

 

 

 

 

 

――――でも崖の上に立っていた。

 

 

 

 

 

「…………」

 

手が汚れている。

おいおいおい。

ねえ、冗談だろ?

 

 

口を開ける。

舌を歯の間にセットして、噛む。

 

ふにゃり。

顎に力が全く籠らなかった。

 

木から枝を折って首に向ける。

突き刺す寸前で手が止まった。

 

それ以上動かない。

 

 

「…………」

 

 

尖った岩場に頭を叩きつける。

ぶつかる直前で止まった。

 

 

「どうして」

 

 

上着を脱いで輪を作り、出っ張りに引っかけて首を吊る。

服を破いて地面に落ちた。

 

 

「……なるほど」

 

 

どうやら、自分で死ぬことは許されないらしい。

原因は全く不明だ。けど、俺の体が俺の意思に反して動いている。

なんてことだ……。勝手に死ぬなって言うのか?

傷は大丈夫だが、死にかねない行為は妨害される。ロッククライミングなんて誰がしろって言ったんだ。

何かありそうだとは思ったけど、そんなのありかよ。

 

「まだ、みんなのところには行けないのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなところで何しているのかしら」

 

崖で膝を抱えていると、声をかけられた。

 

「母さんこそ、何しに来たの」

顔を合わせたくなくて、前を向いたまま答える。

 

「勝手に家から飛び出した誰かさんを引っ張るためよ」

 

誰かが後ろに立った。それでも振り向く気にはならない。

 

「別に……そんなの求めてない」

 

嘘だ。本当は嬉しい。こんな俺でも、まだ探してくれる人がいる。けど俺にそんなことを言う権利はない。

 

「よく言うわね。置手紙なんて残したくせに」

 

「だって、あれは母さんが持ってたほうがオレより」

 

「そうよ、あなたより100倍は役立てることができるわ」

 

「…………」

 

ハッキリ聞くと、やっぱり傷つく。年だけ取った俺なんかより、生きるために必死な人の方が有能だ。当たり前のこと。

 

「でもね、こ(・)ん(・)な(・)も(・)の(・)を私が持っていると逆に怪しまれるのよ」

 

「そんなの……」

 

どうとでもなるでしょうが。というか新国連に流すんじゃないの?

もとよりスパイする目的で竜宮島に残ってるんだから、海にポイでいいじゃん。

 

「まずどこで手に入れたと言えばいいのかしら。拾ったなんて論外よ」

 

「オレが……」

 

「あなたが拾って渡してきた。でもそのあなたは死にました……と。ここで問題よ。わたしは周りにどう思われるかしら」

 

「どうって、それは」

 

「子供の意見は重要じゃないわ。大人は1割が可哀そう、3割が予想通り、6割が疑念といったところね」

 

「……だからどうしたっていうんだよ」

 

「初めに言ったわよ、わたしは信用を得たいのだと。あなたという子供を育てあげて、ね」

 

「そんなの……オレに関係ないだろ」

 

第一、原作だって俺がいない中でも重要情報抜き出したり、蓬莱島にいったり、新国連を呼び込んだり……やりたい放題やってるじゃないか。最後は同化されて死んだけど。

はは、俺がいてもいなくても変わんないな。

 

「そうね、あなたには関係ないわ。でもわたしには関係あるからここに来たの。あなたがこんなところで死んだりしたらいい迷惑なのよ」

 

「迷惑って……」

 

俺が必要なんじゃなくて、道具(こども)が必要なだけだもんな。しってた。

 

「あなたは甘い言葉を使う価値もないわ。だからそんなところでいじけていないで、さっさと立ちなさい」

 

「……やだ」

 

「なんですって?」

 

明らかに声音が変わった。

でも、立つなんて面倒なことしたくない。

 

「嫌だって言った」

 

「あなたねえ……」

 

「何やったって変わらないのなら、何もしたくない」

 

俺たちより上の世代は大分死んでしまったし、道生さんもアドバイスなんてしなくても行っただろう。総士は傷を負って一騎と若干疎遠になったまま。確かに細かいところは変わったかもしれないけど、大筋は変わらない。世界の修正力なんて言葉で片付けたくないが、とはいえ何かできたと語れることがないのも事実だ。

 

「そうやって逃げて、どうする気なの」

 

「しらないよ。どうでも……」

 

どうでもいい。早くみんなのところに帰りたい。

 

「……くだらない子供の癇癪ね」

 

「そうだよ。どうせ……母さん(あんた)にはわからない」

 

先のことを知っているのは恐怖でしかないんだ。希望なんてなくただ自分の無力感に打ちひしがれるだけ。どうしろっていうんだ。

 

ファフナーに乗ってフェストゥムと戦うことになれば、今度は居なくなる恐怖と戦わなきゃいけない。ファフナーはただのロボット兵器じゃないんだから。

 

生きるも地獄。考えるも地獄。

 

生まれなきゃよかったんだよ。ずっとこんな苦しみ続ける人生なら最初から。

 

「ええ、わからないわね。いつもぼんやりしているくせ、時々動き出しては落ち込んで帰ってくる子供のことなんて」

 

「じゃあ放っておいてよ」

 

「わたしの思う通りに動いてくれるならそうするわ。でもじゃじゃ馬娘は肝心なところでそうしない……まさに今よ」

 

「疲れたんだから……いいじゃんか」

 

「この程度で疲れた? 甘ったれるんじゃないわよ。さっさと立ちなさい」

 

「いや」

 

「そう……ならわたしにも考えがあるわ」

 

母さんがこちらに近づいてくる。すっ、とした浮遊感。

突き飛ばされた?

いや、持ち上げられたんだ。わきに手を通して。

意外と……力持ちなんだな。

 

そう考えていたら、再びの浮遊感。

一拍遅れて背中に衝撃が走った。

 

「……?」

 

ベンチの方に投げ飛ばされた?

痛いなぁ……。

 

「立ちなさい。死にたがりの面倒を見るのは好きじゃないの」

 

「どうせみんな死ぬんだよ」

 

「勝手に死んだことにしないでくれるかしら」

 

「それに……嫌なら機関の人に預ければいいんだ」

 

「あなた、話聞いていなかったのね」

 

母さんが詰め寄ってくるけど、動く気になれない。

冬の土は冷たい。このまま溶けて土になるのもありか。

 

「もういいわ。歯を食いしばりなさい」

 

無理やり立たされる。

でも、俺に立つ気がないのですぐに崩れ落ちる。

それを2,3回繰り返すと、母さんはため息をついた。

 

片手で襟を掴んで俺を持ち上げ、片手を振りかぶる。

 

予想通りの、頬に鋭い痛み。

体も倒れ、土に沈んだ。

薄皮を切ったようで血の味が口内を占める。

 

こんな面倒な奴、俺だって殴るわ。

でも、痛み程度で心が変わるなら人間じゃないんだよ。

 

「……まだ立つ気にはならないのね」

 

「……」

 

「黙っていたって変わらないわ」

 

「話しても変わらない」

 

「そうやって口答えばかり。変にわたしの真似をしても、経験の少ないあなたがうまくいくはずないじゃない」

 

真似? 真似だと? 俺が? なんでそんなことを。

 

「あなたはまだまだ小娘なの。それをわかりなさい」

 

「母さんこそ、小娘のくせに……指図ばっかり」

 

「そういうところが小娘なのよ」

 

「親と同じ年の男に夢中な奴の方が小娘だろ」

 

「……」

 

「大人たちが言ってた。あいつは裏切ったんだ、みんなを」

 

「違うわ。人類のためにあの人は外に行ったのよ」

 

そしてその結果がマークニヒト。フェストゥムに奪われて島の人をたくさん殺す。やっぱり裏切者だ。

 

「子供を捨てる奴が人類のためなんて思うはずがない。あいつはクズ――――」

 

また殴られた。

瓦礫の上を転がるわけだから全身が痛い。

けど、体の痛みなんてなんだかどうでもよくなってきた。

 

「……死にたいなら望み通りにしてあげる」

 

あはは。

母さんの顔に青筋が浮かんで、どうみても怒ってる。

まあそうしたんだけど。

 

母さんは俺を両手で掴み、壁に叩きつけた。

 

「グッ……」

 

肺から空気が飛び出す。

俺の足がつかないくらいの高さに持ち上げると、両手で首を締め始めた。

 

「あ……ぅ……が……」

 

脈を止められ、血液の循環が滞る。そうなると酸素もいきわたらず、脳に血も酸素も運ばれない。いずれは虚血やうっ血で意識を失う。

よくある気道をふさぐやり方はかなり難しかったりする。

あ? このやり方って死ねたっけ。

 

血流を阻害されているのがわかる。手足の感覚が薄くなってきた。

 

それにしても母さんが怒ってる顔、レアじゃない? そんなことない?

 

「そうやって、へらへら笑っていれば責任から逃げられるとでも?」

 

「せき……にん……?」

 

「誰かと関わるたび、何かをするたび、責任は生まれるのよ」

 

「し、らない」

 

「あなたの意識に関わらずそうなの。そして逃げられない」

 

苦虫をつぶしたような表情のまま、母さんは手を離した。

重力に従い、俺の体も落ちる。

 

「ぅ……げほ……っ」

 

呼吸困難とはまた別種の苦しさ。自由になってからも頭はふわふわする。

血の巡りが戻るまでは少し気分が悪くなりそうだ……って死ねてないじゃん。

 

「わたしもそう。あなたに関わったおかげで、責任が生まれてしまった」

 

知るか。たまたま前にいたのが母さんだっただけのことだ。

 

「殺して……くれないんだ」

 

「残念だけれどね」

 

挑発するように言ったが、あんまり効果はなさそう。

視線的に、母さんが俺を見下しているように思える。

 

「それで、まだあなたは死にたいって?」

 

――――君たちが生きることで証明される。

 

そんなことはわかってるんだよ。でも、生きることすら俺には苦痛なんだ。

 

「……そうだよ」

 

顔をそらして答える。

それがいけなかったのだろうか。

腹部に何かが突き刺さった。

 

「あっ……が……」

 

息が漏れる。

つま先で蹴られたらしい。後ろに壁があるせいで衝撃も逃げないから余計に痛い。蹲るくらいには。しかも呼吸が乱れる。横隔膜をやったな?

 

「簡単に死にたいなんていう子はお仕置きが必要だと思わない?」

 

「暴力は……」

 

「違う。これはしつけよ」

 

どこが違うんだよ。くそ……涙腺をやられたのか涙が出てくる。

 

「んぎ……っ」

 

また首絞めて来た。

体格差があり過ぎて簡単に宙吊り状態にされる。

 

「わたしはあなたが必要なのに、勝手に死のうとするなんてひどいわ」

 

「うそ、つきが……」

 

思ってもないことを言いやがる。

ああ、くそ。

意識が雲の上にあるようにぼんやりしてきた。

 

「嘘じゃないわ。誰もあなたが必要ないだなんて言っていない」

 

……たしかに、言われた覚えはないけど。

だがそれとこれとはなしがべつだ。

 

べつだよ。

 

「ふぐっ……」

 

ついに気道も圧迫しはじめた。物理的に呼吸が苦しくなる。

体は勝手に酸素を求めて口を開くけど、取り込める空気の量が少ないせいで酸欠の魚みたいに口をぱくぱくさせてしまう。

顔も熱くなってきた。

死にたいのに。死にたいはずなのに、手足をばたつかせようとしている。

わからない。俺は何をしたいのかわからない。

 

「これでもまだ、死にたい?」

 

母さんが耳元で囁いてくる。

しかも意図的に声を弄って。

 

声が出ないから頷きで返す。

 

涙が止まらない。口を閉じれないせいで顔がぐちゃぐちゃだ。

母さんは何がしたい? 殺すなら殺してくれよ。

 

「そう…………」

 

「げほっ、がっ……はぁっ……」

 

気を失うなと思ったら、開放された。

 

倒れこむ前に暖かい毛布のようなものに包まれる。

 

何も見えない。息も絶え絶え。体に力だって入らない。

 

でも、音が聞こえる。規則的で、優しい音が。

 

「難しいことはもう考えないでいいのよ」

 

髪に指を通される。

 

「辛いことも考えないでいいの」

 

頭の輪郭に沿って、優しく撫でられる。

 

「わたしの言う通りにしていれば悩む必要もないわ」

 

これは、人を堕落させる声だ。俺を……俺を騙そうとしている。

そんな手に乗ってたまるか。

 

「よーし、よーし」

 

こんな、手に…………。

 

撫でられるたび、心が熱くなる。

鼓動を聞くたび、力が抜けてしまう。

 

「そのままわたしに身を任せなさい」

 

人に抱かれるのは心地いい。

けど、これは……。

 

「あなたも楽しくて、優しいほうがいいでしょう」

 

声が頭に響く。ずっとぐるぐるして……。

なんでこんな。

 

俺だって楽しいほうが――違う、そうじゃない。

 

「みんなと笑って、たまに泣いて。そういう生活を望んでいるのよね」

 

やめろ。違う、そんなものを俺は。

 

「ほんの少し頭を使えるだけで、あなたは子供なのだから」

 

泣いた赤子をあやす様に背中を叩いてくる。

 

撫でるな、子ども扱いするな。

そんなもので…………。

 

「苦しみたくないんでしょう?」

 

…………。

 

「わたしのために生きるなら、安らかに過ごせるわ」

 

それは、自分の言葉に自信を持っている声。

 

抱く力を強めてきた。

冬なのに暖かい。頭を揺らす脈動が眠気を誘う。

 

口が……勝手に動く。

 

「ほん……とに?」

 

「ええ、本当よ」

 

だから安心してこっちに来なさい、と母さんは言う。

 

そんな声で誘うなよ……。

 

「やさしく、する?」

 

体が、心が――――その気になっちゃうだろうが。

 

 

 

 

 

「もちろん、かわいい娘だもの」

 

 

 

――――娘は母に従うもの。

 

 

 

ああ、そうだった。

おかあさんのいうことにしたがわなきゃ。

 

 

 

「わたしはあなたのために生きて、あなたもわたしのために生きる。ひとりが2人のため、2人がひとりのため。いうなれば運命共同体。わたしたちはたった2人の家(・)族(・)なのだから」

 

「か、ぞく」

 

「そう。わかるでしょう?」

 

家族。かぞく。カゾク。

 

「ワ、かる」

 

「いい子ね」

 

「えへへ……」

 

もっとなでてほしい(撫でてくれる指が気持ちいい)。

 

ぎゅってするけど(意識を肌に集中させていると)、ぎゅってしてくれない(抱擁が少し緩んだ)。

どうしたの?(なにごとかと視線を合わせる)。

 

あ、おめめすごいきれい(母さんの瞳が妖しく光った)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして――――わたしが良いと言ったら死になさい」

 

 

 

わかった? とおかあさんがいうから(唆す声に)頷く。

 

その時に見せたおかあさん(母さんの顔は)、すきなかおしてた(ひどい悪役のようだった)。

 

 

あたりまえだよね(なんでだろう)。

 

 

 

 

 

――――だってかわいいもん(胸が高鳴った)。

 

 

 

 

 

 

 

おかあさん(だから母さん)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――はやくぎゅってしてほしいな(俺以外を見ないよね?)

 

 

 

 

 

 

 








やったねオリ主ちゃん。




Q.ところでファフナーはいつ出るの?


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