ルガーランスはぁ!こう使う! 作:ミツヒRo・バートランド
今日明日は更新する予定。昼の部
早いもので、気絶してから1か月が経って夏に入り始めた。
タイムリミットは秋ごろまでのはずだけど、未だ総士の左目に関しての解決策は見えない。
代わりといってはなんだけど、監視が少し緩くなった。朝出歩くのと、少し遅く帰ってこれるようになったわけだ。
学校に行って、勉強して、クラスメイトと絡んで、放課後は寄り道しながら帰り、母さんと話をして寝る。
やっていることは、言葉で書くとこれだけ。
しかし、これこそが平和な世界そのものを竜宮島は保存しているということ。
…………。
やだなぁ。
このまま何も起きなければいいのに。
フェストゥムも人類軍もボレアリオスもエスペラントもアルタイルもなにもなければ、この生活が続く。
友達とバカ騒ぎして、大人に叱られる毎日を送るのは、罰当たりなことなんだろうか。
――――アズにゃんはさ~、大人になったら何がしたいの?
――ダメだ。許されない。
この平和を守るためにたくさんの人が死んでいく。すでに死んでしまった人も少なくないし、彼女たちだってもう居ない。
それを知ってしまっている以上、俺はやらなくちゃいけない。
でも今――――
――――
◇◆◇
竜宮島の中でひときわ目立つ存在は、新緑に染まった山だろう。
早朝、山の頂上で朝日を眺める案子がいた。
「あっれれ、案子ちゃんじゃん。朝早くにどうしたの?」
彼女に声をかけたのは、スポーツウェアに身を包んだ早苗。
「どうしたのって……早苗こそどうしたのさ」
「あたしは日課だよ~、走っていると気持ちがいいからね」
「ああ……そんな気がする」
「でしょ~? 案子ちゃんも一緒に帰り走らない?」
「検討しとくよ」
「うわ、また難しい言葉使ってる。そういうの煙に巻くっていうんでしょ? 誤魔化そうったってそうはいかないからね!」
「ぷっ……」
腰に両手を当てながら口を膨らませる早苗を見て、案子は思わず噴き出した。
「ちょっと! 笑うところあった!?」
「いや……たぶんないと思う」
「ならなんでよ」
「わからん、なんとなく?」
「じゃあ、気分で笑われたっていうの? あたし」
「そうでもあるが」
「そこは冗談でも違うって言ってくれない!?」
「いや、何言っても突っ込まれるなら隠す必要ないかなーって」
「あたしの気分を考えてって言ってるの~!」
たとえ本物ではなく、作り出された太陽だとしても。
竜宮島の朝日は、暖かく今日の「道」を照らしていた。
「無視? ねえ無視なの? じゃあいいよ、あたしにだって考えあるよ? ちっちゃい案子ちゃん運ぶのなんてよゆーなんだからね?」
「まて、違う。朝日が綺麗だったから見ていただけだよ」
「わかるよ、朝日って綺麗だもんね~」
「そうそう、だから早苗を無視していたわけじゃなくてな」
「でもそれとこれとは話が違くないかな~?」
「まて、やめるんだ。考え直せ。もっといい方法があるはずだ」
「もちろん! あたしにとっては1番いい方法だよ!」
指をくねらせながら近づく早苗の姿に、案子は嫌な予感がひしひしと伝わってきた。
「やめ、やめろ!」
「あっはっはっは! 案子ちゃんよわ~い!」
軽々と案子の体を持ち上げた早苗は、全速力で山を下り始める。
絶叫がひとつ、竜宮島の朝に響いた。
◇◆◇
日野博士の捜索だけど、こちらも芳しくない。
道生さんの家を知りたいから弓子さんのところに行ってるのだが、彼女、道生さんの話題を出した瞬間にのろけ始めてそれどころじゃなかった。なんだあれは……。
道生さんと何度か話はできてるけど、大体弓子さんがいるせいで話が持っていかれる。
それでもめげずに弓子さんのところへ行こうとすると、今度は小百合が「わたし以外のところにいくんですか?」なんて詰め寄ってくる。ちょっと怖い。
それ以前に、外でクラスメイトと会ってしまったら遊びに誘ってくるので行動自由はあまりない。彼らと遊ぶこと自体は楽しいのだが……。
結果として隠れながら町を歩いていたものだから、捜索が滞っていたわけである。
どうしたものか。
いや、でもさ。
母さんに聞けばよくない?
それだ…………。
夕飯のときに聞いてみよう。
「母さん、道生さんの家がどこかって知ってたりする?」
「どうしたの、藪から棒に。知っているわよ」
「ちょっと教えて欲しくて」
「別に構わないけれど。何に使うの?」
「使うって程じゃないよ。弓子さんと最近話してたのは知ってるでしょ?」
「ええ、ずいぶん仲良くなったものね。近頃、家に帰ってくるのが遅くなっているのはそういうことだってわかっているわ」
「門限は守ってるから許してよ。それで、弓子さんの話に必ず道生さんのことが出てくるんだけど、どんな人か気になってきちゃったんだ」
「道生が? あの男はやめておきなさい。ろくでなしの、弓子しか見えてないどうしようもない奴よ」
とはいうものの、道生さんたちの話をするときは、母さんって珍しく楽しそうなんだよ。
「好きとかそういうんじゃないって。単純にどんな人なのか見てみたいの」
「……そういうことにしておいてあげるわ」
「ほんとに関係ないって。わかるでしょ?」
「ええ、もちろんよ」
翌日、道生さんの家に向かう道中。
「いたぁっ」
道を歩いていたらそんな声が聞こえたので振り向くと、小さな子供が足を抱えて座っていた。どうやら膝を擦りむいたらしい。
放置するのも……嫌だから声をかけてみる。
「大丈夫か?」
「ううっ……だいじょうぶ……だもん……」
「よし、泣かないのは強い子の証だ。ちょっと見せてみな」
「うん……」
ただの擦り傷ではあるけど、一応傷口は覆っておこう。
外に出たばかりだからまだ使っていないし、ハンカチを包帯代わりに巻き付ける。
「いっ……」
「ちょっとの我慢だよ」
すごい目に涙が溜まってるな……我慢してるとはいえ、痛いものは痛いんだろう。
「痛むのが嫌なら、お姉さんがひとつおまじないでもしてあげよう」
「おまじない?」
「ああ、古来から効果が約束されているすごい奴」
「それは?」
「単純だよ。痛いの痛いのとんでけ~ってな」
「…………」
「…………」
痛みも意識の問題だ。別のものにすり替えてやれば感じる暇がなくなるはず。
「どう?」
「うん……いたくない……」
「それはよかった。名前は聞いてもいいか?」
「りな」
「りなちゃんか、いい名前だ。お母さんは近くにいる?」
「……いない」
「それならお家に送っていくよ。家には誰か大人の人はいるかな」
「おばあちゃんなら」
「じゃあ大丈夫だ」
「おや、りなじゃないか。お帰り」
「うん」
「げっ、ばあちゃん」
「大層な言い方じゃないかい。今日はどうしたのさ?」
「あー、りなちゃんが軽い怪我したみたいでさ。お届けに?」
「日本語がおかしくなっているさね。言いたいことはわかるけれどね……りな、おいで」
「うん」
「それじゃあオレはこれで……」
「おや、お礼にお茶でも淹れてあげようかなんて思ったのだがね」
「今日は用事があるから」
「なるほどね」
「おねえちゃん」
「ん?」
「ありがとう」
「…………どういたしまして」
もしやと思ったが本当に里奈ちゃんだった。
今は物静かな印象だったけど、あのすごいストレートな言動をするようになるんだよな…………。
◇◆◇
立木 惇は初めて島外からの来訪者を見た時、その存在に目を奪われた。
過激な服から見える細くしなやかな肢体、綺麗さと幼さを両立させた顔たち、未熟な身長に対してアンバランスな発育、そして資料館で聞いたことしかない
どれもが惇の心を激しく動かす。
(なんだアレ……でかすぎるだろ)
中でも注目したのは立派な胸部装甲だった。
女性らしさの象徴であるそれは、揺れ動くだけで男子の視線を釘付けにする。
特に、惇は大きければ大きい程良いモノだという価値観の持ち主。
端的に言って、一般的な少年である惇は一目ぼれという言葉をその時実感した。
(あれは……あれは俺のお母さんになってくれるかもしれない女の子だ……)
どうも方向性は違うかもしれないが。
恐れを知らない年ごろの彼は、休み時間に入るや否や、少女を囲む輪に飛び込む。
目を細めて笑いかける姿は、獲物を見つけた蛇のように見えた気がした。
「俺、惇っていうんだ」
「よろしく、それじゃあ惇くんって呼ばせてもらうね?」
後々知ったことだが、ずうずうしく話しかけるのは女性にとってあまりよいものじゃないらしい。ところが彼女は嫌な顔ひとつしなかったのだ。
如何に自分のどこが優れているのかという自慢話をすれば、すごいすごいと褒めてくれる。しかもその声は、催眠音声じみた効果をもって不思議と脳に響いた。
(これが……母性……これが……)
頭がくらくらする。話せば話すほど、この少女から目が離せなくなる。
褒めてくれることが嬉しくて、もっと見栄を張りたい、いいところを見せたいと思うようになった。
というのも彼は男手1つで育てられた経緯があり、母親という存在に憧れのようなものを持っていた。たまたま彼の、母親はこうだ、という雰囲気に彼女がマッチした形である。
それから、惇は休み時間に少女――案子を遊ばないかと誘いだすようになった。断られることもあったが、乗ってきたときは基本的に自分が得意な外での遊びを提案する。
当時の惇はガキ大将のような立ち位置にいて、それも都合がよかった。取り巻きの男子を(結果的に)当て馬のようなものとして、自分がうまく立ち回ってアピールしようとした。
誤算だったのは、少女が惇の知る
しかし、それはそれで競い合うということもできたし、悪いことばかりじゃなかった。
「案子、今日はバスケでやるぞ」
「いいね。メンバーはいつもの?」
「その通り。先生に体育館の許可は貰ってるし」
「段取りいいじゃん」
「当然」
彼女が動くとなると多くの人はある部分に目を向ける。当初は惇もそうだったものの、関わり始めて揺れることに慣れたころ。少し彼女の体を注視してみたことがあった。
「いくよ転校生ちゃん。僕のボール捌きが見えるかな~?」
「毎度毎度、調子に乗ると痛い目見るって教えてあげるぞ。さあ!」
「それじゃあ……ねっ!」
「相変わらずこざかしいっ」
確かに、彼女の運動能力は女子の中では高い部類になる。
(けど、その下地はなんだろう)
友人とボールの取り合いをする案子を見ながら、惇は推測する。
(純粋な筋力とは思えない。それだったら早苗化する*1だろうし、彼女は集中し始めると決まって
「幸弘、こっちだ!」
「ッ!」
「りょうか――――なんちゃって」
「うわっ、オレを騙したとでも!? 卑劣な……」
「そんなことするわけないじゃーん。僕らは転校生ちゃんに速度で勝てないんだもん。だからこそ先手を打ったんだよ。はい2点」
「詭弁だろ!?」
「でも得点は得点さ」
「ぐぬぬ……」
(こうして、声だけの情報にも引っかかる……と。「あ! UFOだ!」っていうと「どこどこ!?」って返してくる奴に近いかな)
とはいえ。その時の惇にとってみれば、単純な速度域の問題か、過度な集中のせいか、あるいは身体的要因かまでの判断はできなかったが。
「絶対にやり返すぞ……タケちゃん!」
「ユルシテ……ユルシテ……」
「何人来ようと同じことだよ~。勝ったら今日も見せてもらうからね」
「合意の上でパンツ見れるってマジ?」
「マジなわけないだろうが!」
「なん……だと……」
「幸弘、話が違うぞ?」
「口でああ言ってるだけだから平気平気」
「幸弘、お前は何を吹き込んだ!?」
「案子ちゃんの、なんだっけ……よくわからないけど見れるって聞いてきたよ~!」
「げぇっ、鏑木!」
「悪魔が来た……もう終わりだ……」
「幸弘! あいつ来ないって言ってたじゃないか!」
「あれれ~? おっかしいなあ。これは《人》使いを見*2誤ったってことかな~」
「言ってる場合かよ!」
「それそれそれ~!」
「うわーっ!」
阿鼻叫喚となった体育館を離れた場所から眺めれば、彼女もクラスメイトたちとずいぶん仲よくなったらしい。
(そんな顔もできるのか)
困惑した様子で早苗の凶行を見守る案子の姿。
自分以外と話しているのは気に入らないところだったが、他人と話しているときに見せる彼女の顔もまた、素敵なものだと惇は思った。
「ねぇ、惇君。聞きたいことがあるんだけど、いいかな? かな?」
「あっ、はい……」
ただ、その対価は支払うことになりそうだ。
現時点で当初の予定から一番乖離してる幸弘
次回 野道~ふせき~
我々がオリ主を乗せたいもの
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