ちなみに、本文では生贄と言葉にしているキャラがおりますがカードテキストではリリースを使うことが多々あります。
これに関してはちょうどこの世界で書き換わってる時期とかなんかいい感じに補完しておいてください。
「──と、言う訳でここまで[墓地に送ったモンスターカードの攻撃力]と[リリースしたモンスターの攻撃力]、[除外したモンスターの攻撃力]における参照する攻撃力はいつの時点のものか、例を見てきました。
ではここで……三沢君、振り返りになりますが[墓地に送ったモンスターカード]の攻撃力を参照する効果はいつの時点のものか、回答をお願いします」
「はい、それは墓地に送られたあと、つまりはフィールドでの変化が消えた後の数値が参照されるものと思われます」
「ええ、その通り」
佐藤先生の抑揚のない授業が続く。内容は興味深いものを取り扱いつつもあまり工夫のない。彼が用意した、ルート通りの講義はあまりに平坦で驚きも薄い。
生徒の中には首をコクリコクリと揺らし眠気にあらがうものさえいる始末だ。
「(……イエローの生徒は後で叱っておくとして──それにしても相変わらず眠いわねこれ。せめてリリースしたモンスターの攻守参照効果はどうなるのかとか、墓地にカードを送れない状態ではどうなるのかとか解説しなさいよ……)」
そんな中、頬を噛む姿を吠え杖をつくことで隠す狡い者が一人。ルナ・ベルケットである。
自分が受け持たない授業に混ざっているのはとある事情の為だが、先輩先生に対してこの態度はいかがなものだろうか。
咎めようとする度胸のある者はいない。
「……しかし、問題を作ったら凡ミスをしたお嬢様にとっては基礎を学び直すのは重要では?」
「……うっさい」
一人いた。書き取りをしているお嬢様の横でなぜか懐中時計を磨いているメイド。セフィが磨けば磨くたびに金の懐中時計は輝きを増していく。
その光が強くなるたびに強く思い出していく、三日前の醜態。ヒソヒソ声で掘り返されていく。
自分フィールド上のモンスター1体を墓地に送る。そして自分フィールド上のモンスター1体を選択。
選択したモンスターの攻撃力は、発動ターンのエンドフェイズまで
フィールド上での数値は参考にしない。つまり妥協召喚で攻撃力が変化しているモンスターを送ったとしても変化する前。元々の攻撃力が参照されるわね。
……うん。
「危うかったですね、自信満々に生徒達に見せる前に気が付けて本当に良かった」
「……受け継がれる力のテキストを忘れてたのよ、うろ覚えのカードは二度と使わないわ」
墓地に送ったモンスターカードの攻撃力分参照効果を忘れていたお嬢様。おかげで修正前はどう足掻いても詰めない問題になっていた。
問題をホワイトボードに書き、生徒に出題しようとしたその一瞬で気が付き、慌てて「ち、ちちちちちょっと脱字があったわ! このカードを追加しなさい!」と攻撃力2500のエレキテルドラゴンを追加するハメとなったのだ。
なお、修正前では、自身の効果で攻撃力を2500に上昇させた神竜エクセリオンを解法に使用するものであったが先ほど語った勘違いにより、これを受け継がれる力で使用すると元々の攻撃力である1500しか上昇しないという結果に終わる。
「しかし、エレキテルドラゴンを生贄召喚し受け継がれる力で使えばいい。他のカードはスピリット・ドラゴンの攻撃力上昇に使えばいい。酷く簡単な問題になりましたね」
「……スピリット・ドラゴンの効果が複数回使えるなんてあまり知られてない効果だし。い、一応みんな苦戦したでしょ?」
「貴重な究極竜騎士が景品になっているにしては随分と簡単な問題でしたが?」
少しデュエルの勘があれば正解できるヌルゲー。それに十数万はくだらないカードを使うなんてとメイドはやや怒り気味だ。元々使わないカードの一部は処分してほしいと考えていた彼女だが……言外に、売ればよかったのにと伝えている。ルナでさえもそれはひしひしと思っている。テンションに任せてやりすぎた。
この授業の後に校長からあまりに貴重なカードをプレゼントしたことで怒られる予定なのだ。
せめて十代の様な自分が使わないカードしか狙わない人間が回答してくれたらよかったのだが。
「……ま、まぁちゃんと優秀な子が勝ち取ったんだからよしとするわ」
誰か解くものはと尋ねた際に鬼気迫る勢いであげられた挙手の数と言ったら。考えに考えたルナは……「仮に究極竜騎士をゲットしてもまぁ納得できる」人間を指した。この時に三沢が手を上げてさえいれば彼にしていたというのに。何故かこの時は参加せず授業の行く末をじっと見つめていたのだから腹の立つ瞬間だったと彼女は思っている。
そんな苛立ちを三沢にやりつつも、ルナはふと視線を後ろにやった。
「……」
青い制服がどこか誇らしそうに輝く。
退屈な授業、理解していると言わんばかりに腕を組み机をじっと彼は見ていた。
その先にはテキストではなく、一枚のカードが置かれていることだろうことをルナは知っている。
「メジョっち、すっかりあのカードに魅入られちゃったみたいね。まあホログラ仕様の究極竜騎士なんて綺麗だし」
「彼が使用するカードは地獄、ヘルと付くものが多いですがひねくれた格好良さ好きというわけではないようですね」
カードは彼に渡された。万丈目グループならば資産を使い手に入れることも可能かもしれないが、それでも貴重なカードだ。
究極竜騎士にカード効果耐性はない。デビル・フランケンといったコストを支払いエクストラデッキから特殊召喚……することも、究極竜騎士の[このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない]という制約によって不可。
更にはよりにもよって、融合素材に青眼の究極竜(世界に現在三枚しかない青眼の白龍を三体が融合素材)を指定しているせいで融合召喚だってしづらい。
「(せめて、せめてもうちょっと出しやすかったら使いやすかったんだけど)」
はっきりいってルナにとっては完全に観賞用カードだ。それでも、時として圧倒的なステータスとイラストは浪漫として人を魅了することがある。
電流が走る、という奴だ。ルナにとっても何枚かあるが、このカードでデッキを作ろうと思い立つ。多少使いづらさはあるがこれを使いたい。デュエリストとしてはよくあることだ。
だからこそ、だからこそルナは少し不安に思っていることがある。
「(まさか……今度の試験で使う気じゃないわよねメジョっち?)」
あの目は明らかに、どう使うかを考えている目だ。彼の頭の中は授業ではなく、デッキレシピで埋め尽くされているに違いない。
しかし、あまりにもそれは無謀だ。ルナは考える。
「(まだ明かされてはないけど……アンタの相手は、遊城ちゃんよ?)」
ブルーの生徒でトップ、そんな彼は……とある教師の思惑により彼に見合った強さである……オシリスレッドの十代が当日の試験相手となっている。
それだというのに使いづらいエースを仕立てたデッキにいきなり変更しようものなら、扱いきれず惨敗する恐れすらある。
「(E・HEROデッキの強みは応用性。綿密な戦術を企てないと翻弄されるわ。そしたら……)」
そうなれば色々と不味い事になる。きっとルナはそれを心配しているのだ。
まず万丈目はいくら強者とは言えオシリスレッド相手に惨敗。周りからの評価低下は激しいものとなるだろう。特にブルーの、ひいては寮の、この学園に根強くある階級意識に傷をつけたとして、今まで彼を煽てはやしていた者達は彼を責めるに違いない。
プライドが高い、大手グループの三男という恵まれた地位で育ってきた万丈目にそれが耐えられるのか、先生としてしんぱ──。
「(そしたらっ、ルナ先生のカードを手に入れても強くならないとか思われかねないじゃない!!?
絶対それだけは嫌! せめて使うにしてもちゃんと使いこなしてもらわないと! 元は私のカードだから!)」
全然違った。相も変わらず最低であるこの先生。少しぐらいは生徒に対する気配りというものをしてほしいものだ。
「セフィ、メジョっちがちゃんとしたデッキを。それに向いたカードを今所持していると思う?」
「む……それは難しいでしょう。プライドを捨て彼の舎弟たちから集めたとしても厳しいです」
この学園で暮らす、ブルーの生徒ならばそれなりのカードを。万丈目ならばより強いカードを持っているかもしれないが……究極竜騎士などというカードに似合うものを持っているとは考えづらい。
「……普通に考えれば、明日の試験に間に合うはずもない。か」
──考え方を変えればそれはとてもいいことだ。万丈目とてデュエリスト。まともなデッキも組めなければ流石に使うことはしない。一番に面倒なのは中途半端に組めてしまった時だから。このままいけば万丈目は元々のデッキを使う事だろう。
……しかし、ここに一つの問題がある。
実はあるのだ。生徒である彼が……カードを大量に入手する手段が。
明日に控える昇格試験……実技試験に不安を覚える生徒達の為に用意された救済が。この学園にしては珍しく存在してしまっている。
「……
デュエルモンスターズの生みの親であるペガサス・J・クロフォード。彼をトップとするアミューズメント企業。そことの協力により成しえたデュエリストならば手をだす他ない爆アドバンテージイベント。ルナはこの行事をそう評している。わなわなと震える指からも、そのイベントに参加したいという欲望がありありとみて取れた。
……昨年、生徒を押しのけ購入しようとして校長に叱られていたのも今となっては懐かしい出来事だ。メイドは遠い目をした。
「……去年までと何一つ変わってなければ、整列もくそもない。最初にレジにたどり着いた人間から。購入数制限もなし、財布が許す限りの争奪戦」
「万丈目さんの財力、取り巻きによる数。買い占めて渡せば……当日入荷されるカードにも寄りますが、中途半端でも完成してしまうかもしれませんね」
当事者だからこそわかる。恥じて欲しいが。
あの競争は一見弱者の救済に見せかけていて本質は強者が総取りするもの。万丈目が参加すれば結果は火を見るより明らか。
ルナには明日の今頃、万丈目の前には大量のレアカードが集められているのが目に浮かんだ。彼はそれらと究極竜騎士を合わせて作ったデッキを実技試験に持ち込むことだろう。
……自分の相手がオシリスレッドとも知らずに。
「──冗談じゃないわよ、中途半端なんて許さない」
授業の終わりを鐘が告げる。佐藤先生が次回迄の予習を生徒に求めているが、ルナを含めて多くの者が聞いていない。
ペンが今にも折れそうなほど握りしめ、指針を決めた。
全ては自分の為、ラーゴールド計画の一環である「ルナ・ベルケットについて行けば強くなれる」という風評の為。
彼女は考える。もはや来ないお小遣い。手持ちのコレクション。どうすれば彼のデッキを作れなくするか、それか完璧なものにするか。
「セフィ、知恵を練るわよ」
昼だ昼だと購買や食堂にかけて行く生徒達を後目に、ルナは宣言する。
セフィもまた、少し小さく息を吐いて。
「かしこまりました、お嬢様」
わがままなお嬢様を支えると言ってのけた。
・イベントデュエル「疫病により衰える魔法の国」
勝利条件:このターンを耐え抜け
効果は全てOCG準拠のものである。
また問題のため、やや現実ではありえない盤面であることに目をつぶること。
禁止制限は遊戯王GX開始当初、2004/10/6時点のものを採用しているが、エラッタされたものはエラッタ後を採用している。
三沢のLP :1100
フィールド :なし
-モンスター:
・ジャイアントウイルス(表側守備/攻・守 1000・100 デッキ残りゼロ)
・怨念のキラードール(表側攻撃/攻・守 1600・1700)
・魔王ディアボロス(表側攻撃/攻守 2800・1000)
-罠 :
・闇のデッキ破壊ウイルス(伏せ中)
・死のデッキ破壊ウイルス(伏せ中)
-魔法 :
・エクトプラズマー(発動中)
手札 :0枚
墓地 :複数(うち一枚、闇黒の魔王ディアボロスが存在。他省略)
融合デッキ :0
デッキ :14枚
メスガキLP:2400→4800
フィールド :魔法族の里
-モンスター:
・魔法の国の王女-ピケル(表側攻撃/攻・守 2000→2800・0)
・白魔導士ピケル(表側守備/攻・守 1200→2000/0)
-罠 :
・エレメンタルアブソーバー(発動中。闇属性モンスター、魔法の国の王女-クランをコストに使用。)
・ピンポイント・ガード(伏せ中)
-魔法 :
・ディメンション・マジック(伏せ中)
・魔術師の左手(発動中)
・一族の結束(発動中)
手札 :1枚
・ブリザードプリンセス
墓地 :複数(省略、モンスターは全て魔法使い族)
融合デッキ :0
デッキ :17枚(詳細無し)
フェイズ:メスガキお嬢様のスタンバイフェイズ。ピケルたちの効果は発動を成功。
彼女はブリザードプリンセスをアドバンス召喚しようと考えているため、このままメインフェイズに移行しようとしています。
「墓地送りカードで何送ったか確認できないの不便で仕方ないわね……まっ、ブリザードプリンセスを召喚してエクトプラズマ―で焼却するもよし。少し賭けに出てディメンション・マジックでディアボロスを破壊して殴りこむ……のもなくはないわね。
魔術師の左手があるからトラップも一回は防げる。
……あれあれぇ、三沢お兄ちゃん。これってもしかしてルナの勝ちって奴なのかなぁ? ねぇねぇ、どうしたのぉ?」