GOD EATER -The Frontier Spirits-   作:フェンリル北米支部

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EPISODE19:極東支部

 

 

 無人神機兵のニュースは、極東支部の元にも届いていた。自室で動画をサンフランシスコからの生中継を見守るペイラー支部長の隣には、ツバキやソーマ、サクヤの姿もある。

 

 

「これが噂の新型無人神機兵『パトリオット』か……」

 

 にわかには信じがたいといった顔のツバキ。

 

 

「人的被害はゼロで、命令にも絶対服従、量産可能な上に汎用性も高い……まったく、北米支部がこんなバケモノを隠し持ってたとはな」

 

 唸るツバキの横で、ペイラーも嘆息した。

 

「バケモノ、って表現は言い得て妙かもね。先ほど基礎スペックが送られてきたけど、反応速度も判断力も生身のゴッドイーターに比べて遜色ない仕上がりになっている。むしろ将来的な発展性を考えれば、ゴッドイーター以上だ」

 

 

 放送された映像を見てみたが、パトリオットの反応速度とパワーは尋常ではない。ヴァジュラを上回るスピードに、ハンニバルを超えたパワーを誇る。強化されたゴッドイーターといえど、生身の人間の細胞では耐えられないほどだ。

 

 その上で最新のAIを応用した人工知能からもたらされる判断力は、けっしてベテランのゴッドイーターにも引けを取らない。

 

 これに整備性と生産性、コストパフォーマンスまで加わっているというのだから、歓迎するなという方が無理である。現時点での性能も脅威だが、将来的なポテンシャルまで計り知れないのだから。

 

 

 もしかしたら近い未来、ゴッドイーターは退役して悠々自適の年金暮らしをしているのかも知れない。

 

 

 ツバキが嘆息する。

 

「まったく、世の中なにが起こるか分からんものだ……」

 

「同感だよ。でも、これが嘘ならサンフランシスコでは大勢の人が命を落としてただろうし、アリサちゃん達だって死んでいたかもしれない」

 

 ペイラーは『パトリオット』の功績を認めた上で、あくまで冷静に思案する。うまい話には裏がある、というのが前支部長にして友人のヨハネス・シックザールから学んだ事だった。

 

 

「少々、気になる点もあるね。北米支部が高性能の新型神機兵を開発できたことはともかく、何故あのタイミングで都合よく実戦投入できたのか」

 

 

 北米支部は、今では数少ない「民主主義」が生き残っている地域だ。サンフランシスコ・コロニーが壊滅するようなことになれば、支部長のフランク・アーヴィングら現首脳部にとっては大ダメージだ。

 

 だからこそ何が何でも、そのような事態は防がなければならない。

 

(あの国は昔から、見切り発車で結果を急ぐ傾向がある。石橋を壊れるまで叩いて動こうとしないこの国とは、良い意味でも悪い意味でも反対だけど……)

 

 

 それが吉と出るか、凶と出るか。

 

 

 ―――審判は、まもなく下される。

 

 

 **

 

 

「しかし、無人神機兵か……」

 

 ポツリ、とソーマが呟いた。

 

 

「そんな便利な代物があるんだったら、北米支部のゴッドイーターは何をするんだろうな」

 

 食事をとる必要も、休息をとる必要もない、夢の兵器。そんなものがあるとすれば、休暇に給料にメシにいちいち煩く食ってかかるゴッドイーターはお払い箱になるだろう。

 

 

「サクヤ、リンドウから何か聞いてないか?」

 

「一応、メールでね……新型神機兵のおかげで開店休業中らしいわ」

 

 北米支部の前線部隊は着々と神機兵に更新されつつあり、お払い箱となったゴッドイーターたちは後方勤務に飛ばされているという。

 

 無人神機兵のオペレーターになる者もいれば、書類仕事へ回される者もいるとのこと。リンドウの話では、既に北米支部のゴッドイーターの中からエンジニアやサラリーマンへ転職した者もいるらしい。

 

 

「おい……今の話は本当か?」

 

 何か引っかかるものを感じて、ツバキが口を挟む。

 

 

「ツバキさん、それはどういう……?」

 

「私はてっきり、無人神機兵はゴッドイーターと共にアラガミと戦うものだと思っていた。あくまで補助戦力、数に限りのあるゴッドイーターを補うための兵器だとばかり」

 

 

 だが、サクヤの話を聞く限り、北米支部がやろうとしていることは違うらしい。スペンサー博士たちは戦場から人間を追い出そうとしている。その上で、全ての戦いを無人神機兵に肩代わりさせようとしているのだ。

 

 

「たしかにサンフランシスコ防衛戦での活躍は見事だったが、無人神機兵は結局のところ一種のロボットなのだろう? 古今東西、機械にはトラブルが付き物だ」

 

 どんな精密機器も、ゼロリスクはありえない。故障はつきものであり、本来はそれを前提として運用すべきものである。

 

 そして機械が複雑になればなるほど、かえって故障の原因は分かりづらくなり、しばしば人間の予想や思考を超えてしまう。ブラックボックスが増えていく。だからこそ、機械はそれを理解できる人間が常に傍で控えるべきではないか。

 

 

「アラガミとの戦いは辛く、厳しいものだ。多くの犠牲だって出るだろう。そこから逃れたい気持ちも分からなくはない。だが、全てを自動化して機械に丸投げするというのは少々、無責任だと思う」

 

「ですが、北米支部の発表によると故障の可能性は極めて低く、エラーがあっても常にネットワークを通じてアップデートするから問題ないと……」

 

 ヒバリは手元のパソコンをスクロールし、北米支部のホームページにあるスペンサー博士のコメントを読み上げる。その後にはずらずらと専門的な解説と実証データが乗せられており、論文へのリンクまで張ってあるという充実ぶりだ。

 

 

「私もその論文は読んでみた。一部の隙もないよ。同じ研究者として、たしかによく検証されてると思うけど……」

 

 何事にも完璧は無い、というのがペイラー榊の信念だった。想定外の事態は常に起こりうる。

 

 

「こんなことを言うと科学者失格かもしれないけど、やはりツバキ君の言う通り、戦場というか現場から人を追い出しちゃいけないと思うんだ」

 

 

 どんなに危険でも、理不尽でも、やはり最後に責任をとれるのは人間だけだからだ。科学技術がどれだけ進歩しようと、厳しい現実から目を背ける社会に未来は無い。

 

 

「人の未来を創るのは、同じ人の理想だ。他力本願で機械に任せきりにしていたら、いつかしっぺ返しがくる」

 

 

 たしかに無人神機兵のスペックは照明された。量産体制も軌道に乗りつつある。しかし、耐久性と信頼性は時間をかけて検証されなければならない。にもかかわらず北米支部は早々に量産に乗り出し、防衛体制の更新を推し進めている。

 

 

「ちょっと性急すぎるね。何か嫌な予感がするな……」

   

 





 過去にちょいちょい自動化、機械化の現場にいたことあるんですが、想像以上にトラブルだらけで驚いた記憶があったりします。
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