魔物王の道   作:すー

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第六話 決意

 人生初めての土下座を実行に移して数十分後、俺と女性店主――リズベットは《リードバルト》の酒場で少し早めの夕食を摂っていた。

 迷惑料込みの決して安くない黒炎の代金を支払わせ、更に夕食まで年下にたかろうするリズベットは本当に容赦が無い。抜け目が無いとも言う。

 しかし下手したら情報屋に窃盗犯としてリークされ、更には軍に捕まって《はじまりの街》にある黒鉄宮の牢獄に投獄されていた可能性を考えれば、俺を信じて待っていてくれたリズベットに夕食くらいご馳走するのは当然の事かもしれなかった。

 そう自分を納得させて料理を飲み食いすること数十分。

 現在はというと、

 

「じゃあ何よ、あんたってば《ルビークリスタル・インゴット》や《レインボーダイヤ》を持ってるって言うの!?」

「ちょ、声がでかいっ!」

 

 何故俺がポンと大金を支払えたのかという質問から、ジュエリーラット討伐の話をしているところだった。

 

「あ……ごめん」 

 

 プレイヤーの所有する稀少アイテムは基本的に秘密。

 所持している事が明るみになれば不要なトラブルを招きかねない。

 だからリズベットは自分の迂闊さに気付き、声のトーンを落としてみせた。

 バツが悪そうに視線を逸らし、その表情にうっすらと影が射す。

 そこまで気にする事は無いと思いつつ、彼女の気持ちを高揚させるため、鍛冶屋として無視出来ない妙案を提示した。

 

「もし欲しいなら売る。他の素材アイテムと一緒に」

 

 使い道の無い稀少アイテムを所持していてもメリットは少ない。

 俺にはMMO廃人特有のコレクター精神も無い現実主義者。

 奪われる可能性を考えればさっさと売却したいのが正直な気持ちだった。

 そう考えれば、鍛冶屋のリズベットに素材アイテムを売るのは妙案と言える。

 

「ありがたい話なんだけど……今はちょっと厳しいのよね」

「金が無い? 黒炎を売った分があるのに」

 

 黒炎を売った金はあるけれど、これは当面の生活費と商売をするための大切な軍資金。

 確かに欲しいが、武器製作スキルの熟練度の関係で今は使用出来ない――高確率で失敗する――素材をアイテムリストの肥やしにする金銭的余裕は無いという事らしい。

 このSAOというゲームは限り無くリアルに近い仮想現実。

 当然、装備品を製作するためには専用の工房が必要であり、未だ専用工房を持たない貧乏鍛冶屋のリズベットは《はじまりの街》にある貸し工房を複数の職人プレイヤーと共同で使用する程の貧乏だった。

 

「大変だったのよ。つい最近まで資金稼ぎや素材収集、スキルの熟練度上げに奮闘して、いざ商売を始めようと思ったらライバルが多いし、工房の使用料が馬鹿高いのなんのって。共同で借りているから譲り合い順番争いのオンパレード。やんなっちゃうわよ」

 

 これを作った茅場は精根が腐ってると乙女にあるまじき暴言を吐くリズベットは、実に男前な飲み方でジョッキのコーラを呷った。

 主街区には空き家が沢山あり、プレイヤーにも購入出来るよう売りに出されている。

 その家をリフォームすれば個人商店や鍛冶工房を作りたい放題、使いたい放題な訳だけど、残念ながら購入出来るのは大分先だ。

 なにせ家はアインクラッドで最も高価な代物の一つ。

 それまでは、せめて一人で工房を借りても赤字にならないレベルまで達しなければ競争から抜け出せない、と愚痴る彼女は想像以上にストレスが溜まっているらしい。

 まるで上司への愚痴を同僚から聞いているサラリーマンの心境で相槌を交えながら対応している俺は、椅子の横で物置と化しているクロマルを撫でながら心の中で溜め息を吐く。

 ちなみにポチはいつも通りテーブルの下で伏せている。

 一人ではなくリズベットがいるためか不用意に近付いてくるプレイヤーがいないのが救いだ。

 

(二匹目の飼い馴らし成功に関してはアルゴに伝えてあるけど……リズベットが一緒にいる間に噂が広まっていると祈ろう、うん)

 

 わざわざ俺に訊ねる必要が無い程メタルハードスライムの飼い馴らし方法が広まれば、少しはうざったい質問も消えると思うから。

 クロマルを仲間にした時点で群がるプレイヤーは増大すること確実だったので、このくらいの情報が広まっても大勢に影響は少ない。

 もちろん魔物王についての情報は伏せた。

 

「ちょっと、聞いてるのガキンチョ?」

「聞いてる。それとガキンチョは止めろ」

 

 酔っ払いかアンタは、という言葉を寸での所で飲み込んだ俺は人間が出来ていると思う。

 人の金で更に飲み物を注文し、更には口調が生意気だと頬を抓ってくる彼女とは正反対だ。

 

「だったらさ、持ってる素材アイテムは今後も全て格安で売るし、ジュエリーラットのドロップアイテムは全て渡すから、今後も俺の武器の面倒を見るってのはどう? 武器強化の際に使用する素材アイテム費用はそっち持ちで」

 

 SAOに存在する武器には強化試行可能数というモノが定められている。

 簡単に説明すれば武器を強化出来る回数は武器ごとに決まっており、強化に応じた素材アイテムを用いる事で武器の性能を高められるという事だ。

 この強化の成功率はアイテム数とプレイヤーの腕に掛かっている。

 出来るだけ最上の素材を使用限界数いっぱいまで使って武器を強化していきたいと考えている俺にとって、優れた鍛冶屋とのパイプは必須だ。アイテムを無駄にしないためにも。

 

「全額負担は無理よ。せめて半額……いえ、三割引き」

「オーケー。交渉成立」

 

 流石に全額負担は却下されたが元々要求が通るとは思っていなかったので、この程度が落とし所。

 あえて無茶な要求をする事で本命の印象を安くして要求するのは、誰にでも出来る詐欺師の手段だ。

 それが実戦で証明され、内心満足している俺を、リズベットは鶏肉もどきを頬張りながらジト目で睨む。

 それは、俺の真意を探ろうとする目。

 

「やけに気前が良いわね。ジュエリーラットのドロップアイテムっていえばランクは全てA。売れば一財産になるのよ?」

 

 甘い話には裏があるを地でいくSAOにおいて疑心暗鬼な眼差しを向けるリズベットの対応も至極当然。

 もしジュエリーラットが期間限定の出現Mobであり、ドロップアイテムが他では入手出来ない代物ならば、その稀少度は今後も跳ね上がる。価値など計り知れない。

 しかし、そんなこと俺には関係無かった。

 

「先行投資とでも思っといて。今後もリズベットには武器を見てもらいたいから」

 

 これは嘘偽りの無い正直な気持ち。

 そう思えば大金や稀少アイテムも惜しくない。

 それに最高ランクであるSでない事からも、おそらくドロップアイテムは今後もどこかで入手出来るだろう。

 他の素材と違って《ジュエリーラットの○○》という名称でない事も根拠の裏付けであり、そして個数限定の超稀少アイテムが十層という下層で手に入るとも考えにくい。

 あるとしても需要の高くて消耗品である素材アイテムではなく、何か装備品といった形で残す筈だ。

 なら、今は優れた鍛冶屋の確保を優先したい。

 

(リズベットみたいなプレイヤー、逃してなるもんか)

 

 攻略において最も必要なのは優れた装備。

 その核となるのはプレイヤーメイドとドロップアイテム。

 運任せのドロップアイテムを全面的に頼る事が出来ず、自分の生命線をなるべくなら大人に頼りたくない俺からすれば、中・高校生且つ信用に値しそうなリズベットは是非とも欲しい人材だった。

 俺が彼女の腕に惚れ込んだという理由が一番ウエイトを占めている訳だが。ともかく、そんな打算的な心情を察する事も無く純粋に喜んでいるリズベットには今後も腕を上げてもらいたい。

 

「商売初日にして固定客ゲット! こりゃあ、幸先良いわ」

「あ、やっぱり初めてなんだ」

 

 なんでも今までは、昼間は軍主催の雑魚敵討伐パーティーに参加して安全にコルを稼ぎ、レベルも上げる。

夕方以降は貸し工房で槌を振るってスキルの熟練度上げと、武器製作過程で入る経験値を利用してレベル上げに勤しむ毎日。

熟練度上げに武器修復で得た金で生活費と材料費を遣り繰りするという毎日を三ヶ月も続け、漸く今日、初めて商品を販売してみたという訳だ。

 

「任しときなさい。あんたの武器は責任持って、あたしが面倒見てあげるから!」

 

 今夜は飲み明かそうと満面の笑みで料理をNPCに注文するリズベット。

 ここの支払いが俺持ちだという事をそろそろ思い出して欲しい。

 

「ああ、それと、レインボーダイヤとかはちゃんと代金を支払って買い取るわよ。まあ、出来ればローンでお願いしたいんだけど」

「え? 別に良いって。言ったでしょ、先行とむぐぅっ!?」

 

 言葉の途中で白身魚のムニエルっぽいナニカをフォークごと口に突っ込まれ、中断させられる俺。

 限り無く味の薄いムニエルもどきを粗食する原因を作った張本人の顔は、どことなく赤かった。

 

「……正直言っちゃえばさ、嬉しかったのよ。あんたに褒めてもらえて」

 

 初めて武器を買ってもらえた喜び。

 最高傑作に対する惜しみない称賛。

 認められた力量。

 そんな誇れる武器を製作出来た達成感。

 武器が戦闘で役に立ったという事実。

 今日だけでどんなに嬉しい事があったのかは分からない。

 使用者の称賛する声と笑顔は大金にも勝らない代金。鍛冶屋冥利に尽きるとリズベットは締め括った。

 

「だから、これはお礼よ。まあ、お得意様へのサービスって思ってちょうだい」

「………………」

 

 はにかみながら告げるリズベットは、もう心の芯まで鍛冶屋と化している。

 心の有り様に仮想体が侵食し、現実世界の自分が塗り潰される事に危機感を覚える俺だが、今の彼女を見れば良い影響を与えている事も否定出来なかった。

 死神からの誘いが強く、不自由な生活を強いる世界。

 しかし新たな出逢いと現実では体験出来ない喜びを与え、人として成長させる幸福な世界。

 本来なら相反入れない二つが交わるという矛盾が内包される。

 

(ホント、嫌な世界だ……まったく)

 

 トラウマを幾つも刻んでも完全に嫌いに成りきれない世界は、本当に厄介この上ない。

 

「そういう事だから代金は払うわよ。その代わり、リズベット武具店の宣伝を忘れずに」

「あ、うん、了解」

 

 色々と考えていたため歯切りが悪い返答だったけれど、リズベットに不審がられる事は無かった。

 

「でも、知り合いか」

 

 フレンド登録している人達を頭の中でリストアップする。

 教会。風林火山。鼠の情報屋。テイマー少女。女神様。

 自分のコミュニティの狭さに軽く絶望するも、理由があるだけに仕方が無いと割り切る。

 それに充分過ぎるほど他プレイヤーと交流を持ってしまったと考えている自分もいた。

 我ながら寂しいとは思う。けれども、教会の家族以外であとフレンド登録するのは二・三人に留めておこうと考えているのも事実。

 コミュ障上等。

 広がりすぎた交流の輪は対人トラブルを招きやすいのだから。

 

(紹介するにもリク達にはまだ早いし、宣伝するとしたら他の面子。……ああ、そういえば――)

 

 

 

 ――アスナさんにメッセージを送らなければ。

 

 

 

 無事に帰れた事の報告。新たな仲間のクロマル。リズベット武具店。

 話したい事は沢山ある。

 

(くっそ……ああ、認めてやるさ。茅場晶彦)

 

 アスナさんに出遭えた事に関してだけは、神様と茅場晶彦に感謝していた。

 すると、どことなく玩具を見つけた子供のような声が耳に入る。

 

「ほほー。どうやら気になる子がいるみたいじゃない。ガキンチョの癖に生意気な」

「…………え?」

 

 たっぷり十秒経ってから間抜け顔を晒した俺は、正面に座ってニヤけているリズベットを見る。

 その気色悪い笑みは、クラスメイトの女子がたまに見せる、俗に言う恋バナをする時の笑みと同種の香りがした。

 否定が遅れたためか。

 勘違いは取り返しの付かない所まで進んでしまう。

 

「誰に紹介するか考えてくれていたんでしょうけど、その嬉しくて楽しそうな顔を見れば丸分かりよ。良かったわね。話すきっかけが出来て」

「…………はあっ!? 何でそうなる!? アスナさんはそういう人じゃないって!」

 

 ここまでくればリズベットが何を勘違いしたのか分かる。

 全くもってありえない。アスナさんはそういう対象ではない。

 

「アスナ『さん』……年上ときたか……やっぱりマセガキね」

「だから違うって!」

 

 からかう馬鹿者に水でもぶっかけてやろうかとコップを握った時、彼女は頬杖を付きながら割りと真剣な目でこちらを見てくる。

 その迫力に気圧され、思わず半身ほど下がってしまった。

 そしてリズベットは少し間を空けてから口を開く。

 聞き分けの無い子供を納得させるような口調は、やっぱり癪だった。

 

「じゃあさ、あんたはそのアスナさんと話したり触れ合ったりした時に、妙な恥ずかしさやドキドキを感じた事は無かった?」

「……………………あっ!」

 

 その時、脳裏に電流が走った。

 思い出されるのは解毒ポーションを飲ませてもらった時。

 その光景を、心情を思い出し、再び頬が紅潮するのが自分でも分かってしまう。

 動悸を抑える事も失敗した。

 

「…………確かに、あった。でもそれはっ!」

 

 アスナさんは俺にとって命の恩人。ヒーロー。女神様。

 彼女のファンになったと言っても良い。

 ファンなら憧れの人と仲良くなりたいと思っても不思議じゃないだろう。

 俺がアスナさんに抱くのはそういう気持ちの筈だ。

 納得する理由を見つけ、無自覚の理論武装を終える。

 

「自覚無しか……まあ、今はそれで良いかもしれないわね」

 

 その呟きは小さ過ぎて俺の耳に入る事は無かった。

 その後リズベットはしばらくの間黙りこくって何かを考え始める。

 時計の長針が五回ほど回って周囲の喧騒だけが酒場に響く中、ついに両腕を組んで閉じていた両目を開いたリズベットは――これ以上無いってくらい優しい双眸をしていた。

 それはもう不自然な程に。

 

「ねえ、そのアスナさんと仲良くなる方法、知りたくない?」

「是非」

 

 その警戒心を煽る目について言及する前に悪魔の囁きを聞いてしまい、些細な事は綺麗サッパリ忘れてしまう。

 現実世界では姉ちゃん以外の異性との交流が無かった俺にとって、女性と仲良くなる方法は、ある意味SAO内の情報よりも価値のある代物だったのだ。

 その後三十分に亘り女性との接し方、注意事項、何が好印象を与えるか。そういったレクチャーを受け続ける。

 そんな第一回目の初級編授業を終えた俺は、

 

「……師匠って呼んでも?」

「オーケー」

 

 大した恋愛経験も無い自称・恋の伝道師の術中に、まんまと嵌っていたのだった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ピラミットのような石造りの迷宮区内を照らしていた青いライトエフェクトが静まった時、もうそこに敵は存在していなかった。

 アスナさん、クロマル、師匠といった面々と出逢って四日が経った今日、迷宮区デビューを果たした俺の足取りは軽く、大した疲れも無く散策を続けていた。

 その強固な身体を敵に晒し、身を挺して俺への攻撃を防いでくれるクロマルの参戦は非常に助かる。

 お陰で回避を気にせず力任せの特攻を仕掛けられる場面が増え、ヒット&アウェイ以外の戦法も可能としたのだから。

 回避に回す時間が減ったため攻撃の手数を増やせた事も大きい。

 

「あとはやっぱりコイツの働きも大きいか」

 

 それに黒炎の存在も忘れてはいけない。

 流石に迷宮区よりもモンスターレベルの低い地底街区のように一撃で敵を倒せる事は無かったけれど、大体は三撃、ソードスキルも使用すれば二撃で倒しきれる。

 プレイヤーメイドの中でも現時点でトップクラスの性能を持つのは明らか。入手出来たのは運が良かったと言わざるを得ない。

 あれから何度も試してみても、黒炎以上の武器は未だに作れないと師匠もボヤいてたのが黒炎の名刀ぶりを物語っているだろう。

 ポチの索敵にクロマルの防御力、隠蔽スキルを駆使した黒炎のバックアタック。

 正に、鬼に金棒。

 

「強いんだけど……俺の実力じゃない気がするのは何故だろう」

 

 両脇に従える使い魔達と、通路の燭台に灯っている火で刃をより紅くさせている短剣に視線を移して、そっと溜め息を吐く。

 もし二匹がいなくなり、黒炎が手元に無い俺など、中層プレイヤー以下の実力しか残らないのは自覚している。

 攻略組クラスの力を手にいれたのは幸運の要素が強い。

 しかし、今の俺は魔物王。

 使い魔の力は俺の力という幼稚なジャイアニズムで無理矢理士気を上げ、開き直る俺だった。

 

「クロマルはまだ大丈夫。ポチもオーケー」

 

 地底街区でのレベリングで一昨日の内に20レベルまで達した俺は、使用可能になったスキルスロットに躊躇いも無く魔物王スキルを入れた。

 やはり俺の推測は正しく魔物王スキル《意思伝達》で使い魔に簡単な命令を下せたので、使い魔交信スキルはその数秒後にこの世から抹消されたのは当然の結末だ。

 短剣、隠蔽、魔物王、そして使い魔交信の代わりに入れた《耐毒》スキル。

 これが俺の習得しているスキルであり、生命線の数々。

 

「あと習得したいのは投剣や体術ってところか。あったら戦術の幅が広がりそう」

 

 ソロプレイに必須な索敵はポチが、防御スキルである武器防御はクロマルが補っているため、あと必要なのは上記の二つか戦闘補助。

 もしくはパーティーに一人居れば便利と言われる罠解除や鍵開けといった盗賊(シーフ)プレイヤー寄りのスキルくらいしか魅力的な候補が無い。

 今回はグルガの件があったため耐毒スキルを優先したけれど、次回からは補助系スキルを習得していこうと思う。

 

「アスナさんはどんなスキルなんだろ」

 

 訊いてみたいがスキルの検索はマナー違反というジレンマに苛まれながら探索を続ける俺。

 その後もアルゴから買ったマッピングデータを頼りに未踏派の区間を重点的に歩き、危なげ無く幾つかの戦闘をこなしていく。

 アンデッド系と金属生物系モンスターを倒し、通算二〇個目になる師匠へのお土産素材を獲得した直後の事だった。

 いつも通りポチが唸り声を上げる方向から、ブーツが石畳を踏む反響音が響いてきたのは。

 

「プレイヤーが一人に使い魔が二体。やっぱりシュウだったのか。ソイツが噂の新しい使い魔なのか?」

「………キリト?」

 

 通路の曲がり角から現れたのはキリトだった。

 黒色革製防具を好むのは相変わらずのようで、以前見た時とは若干の違いがあるものの革製防具に身を包む姿は健在。

 元から警戒はしていなかったのか、右手に持つ業物っぽい片手剣――九層のクエストで手に入れた《クイーンズ・ナイトソード》――はダラリと垂れ下がっている。

 その姿を見て、俺も構えていた黒炎の切っ先をキリトから外した。

 

「久しぶり。息災でなにより……だっけか。こういう時に言うのって」

「難しい言葉をよく知ってるな」

「これでも読書家の一面もあったんだよ、俺は」

 

 感嘆の込められた声を掛けられながらその場で立ち止まる。

 立ち話には適さない場所なのは承知していても、多少の話をするくらいの余裕が俺達にはあった。

 

「迷宮区にいるって事は、もう攻略に入るって考えて良いんだよな? レベルはどのくらいになった?」

「一昨日20になった。キリトは?」

 

 この問いに対するキリトの答えは驚くべき数値だった。

 流石はソロの攻略組。レベルが常軌を逸している。

 最後に会ってまだ二週間程しか経っていないのに。

 

「……30? ここ十層だって本当に分かってる? 何そのデタラメな数値……」

「ジュエリーラットを三匹仕留めた。もう当分、レベルアップは望めないだろうな」

「三匹!?」

 

 現在第十層ではある噂がNPCから流れている。

 それはジュエリーラットが生息域を変えたという噂だ。

 これはおそらくジュエリーラットの出現が終了した事を示唆する内容で、おそらく上の階層でまた姿を見る事になるだろう。

 倒されたのは結局十匹。約1/3をキリトが一人で倒した計算になる。

 

「うわ、容赦ねー。自重しないキリトさん半端ないッス」

「……俺も、流石にやり過ぎたと反省してる」

 

 譲り合い精神の欠片も無い、全く自重しないその貪欲さに呆れてしまった。

 偶然出会い頭に遭遇して仕留められた幸運もさる事ながら。まるでジュエリーラットの出現を予見していたかのように偶然習得していた索敵からの派生である《追跡》スキルを習得していたのも、とても大きな幸運だ。

 追跡スキルはエンカウントしたモンスター種とフレンド登録してあるプレイヤーの足取りを追跡する事が出来る。

 熟練度が高ければ高いほど対象の移動ログを足跡という形で過去まで遡り、視覚情報を用いて知ることが出来た。

 この技能を持ってして、キリトはつい乱獲行動に走ってしまったのだ。

 

「シュウ、この先にはボス部屋しか無いぞ」

 

 ジト目で見る俺の視線に耐え切れなかったからこその話題転換。

 しかしそれは、俺を驚かせるには充分過ぎる一言。

 

「ボス部屋!?」

 

 キリトの言葉に驚き、思わず薄暗い通路の先に目を向けてしまう。

 当然その先に部屋は見えなかった。同時に思わず納得してしまう。

 だからキリトは引き返してきたのだ。

 一人で挑む馬鹿は攻略組に存在しない。

 というより、そんな命知らずはSAO初期にもう死んでいる。

 

「ボスは見た?」

 

 ボス部屋に入らなければ戦闘は起きないと聞いた事がある。ボスは部屋から出ないからだ。

 だからボス部屋の外から中を除く事で姿は確認出来る。

 情報を持ち帰るためにもキリトが確認している可能性は高いだろう。

 姿さえ確認出来れば相手の攻撃手段を予測し、作戦も立て易くなる事くらい攻略組のキリトは分かっている筈。

 子供の俺でも思い付くことなのだから。

 

「ああ、手が六本ある大型骸骨だ。それぞれの手に武器を持ってる」

「うぇ。手が六本か……面倒そう」

 

 予想以上に厄介そうなモンスターで、その姿を少しだけ想像する。

 剣や斧を持った巨大骸骨を連想して震えるのはただの武者震いだと思いたい。

 思考の海にどっぷり浸かる俺を見るキリトの目は、ナニカを諦め、決意している目だった。

 

「やっぱりボス戦に参加するつもりなのか?」

「勿論。当然」

「よりにもよって即答かよ」

 

 そう、俺が戦うのは確定事項。

 今の震えが恐怖だろうと武者震いだろうと関係無い。

 戦うために重ねてきた努力を、あの夜に抱いた攻略への決意を無駄にするのは、絶対に嫌だ。

 

「ハァ……やっぱり本気なんだよなぁ。そこまで好戦的にならなくても良いだろうに」

「舐めるなっつーの。それに好戦的じゃなくて、必要だからやってるだけ。心配なのは分かるけど子供扱いは無しの方向で」

 

 少し怒りを乗せてキリトを見上げる。

 そんな俺に悪かったと笑うキリトが罪滅ぼしに提示したのは、少々意外な提案だった。

 

「なら、今からやる事は一つだ。このままじゃ少し不安だからな」

「何が?」

 

 レベルは充分足りている。何百と戦闘を重ねて経験も積んだ。装備も万全。情報収集にも余念は無い。

 他に何をすれば良いのか分からなかった。

 戸惑う俺を見てキリトは告げる。

 それはある意味当然の事であり、人間不信状態の俺では絶対に思い付かない大切なこと。

 

「集団戦での心得。連係プレイの練習に決まってるだろ?」

 

 

 

 ――すなわち、チームワーク。

 

 

 

「……なるほど」

 

 確かに、少しだけ不安だった。

 

 

 ◇◆◇

 

 

 唐突に始まった個人レッスンは迷宮区を出るまでの一時間、休む事無く続けられた。

 特訓と呼ぶにはあまりにも足りない僅かな期間。

 しかし、それでも特訓の成果は絶大。

 キリトの指導が的確だったという理由もある。しかしそれでも特筆すべきは俺の吸収力の良さだ。

 真綿に零した水のように、その柔軟な脳はキリトの技術を瞬く間に吸収していく。

 また一歩高みに昇れたと考えれば、口元が自然と緩んでしまった。

 

「なんて事だったらどんなに良かったか。ハァ」

 

 

 

 ――以上、俺の脳内妄想劇場。またの名を現実逃避とも言う。

 

 

 

「シュウの動きは悪くない。悪くは無いんだぞ。ああ、悪くない」

「そのフォローは俺の心を深く抉る」

 

 石造りの出口に射し込む夕日に目を細め、溜め息を吐きながら揃って肩を落とす。

 得物を鞘に戻して荒野を歩く俺の表情は晴れなかった。

 

「……あれ、誰に送ってんの?」

「アルゴっていう情報屋だ」

「キリトもアルゴの顧客だったのか」

 

 ダンジョン内でメッセージは送れない。

 だからキリトは迷宮区から出た途端、馴染みの情報屋へマップデータとボス情報を送っている。

 アルゴを介して攻略ギルドへ情報を流布するつもりなのだ。

 

「それにしても……あーあ、俺って不器用なんだな」

 

 メッセージを打っているキリトを横目に悔しさから唇を噛み締めた。

 キリトが認めてくれたように俺の動きは悪くない。

 単独で敵と戦う力は充分。風林火山という多人数での共闘を経験したので邪魔になるような動きもしない。

 しかし、言ってしまえばそれだけ。

 それは仲間に干渉しないというだけで本当の意味での共闘では無かった。

 

(スイッチかぁ……なんて厄介な技術なんだ……)

 

 スイッチとは便宜上そう名付けられた技術の名称。

 強力な敵や仲間と共闘する時に必要な技術だ。

 その実態はプレイヤー間の位置取り変更テクニック。

 攻撃の際に互いの武器が邪魔をし合わないように位置を譲り合い、矢面に立って戦っているプレイヤーと後方に控えているプレイヤーが位置を交換する技術。又はソードスキル発動後の技後硬直の穴を埋めるために仲間が追撃する戦法。相手の学習AIに負荷を掛けてミスリードを誘い、戦況を有利に働かせる。

 後者はもとより、俺は前者がかなり苦手だった。

 

「まあ、こればっかりは仕方が無いんじゃないか? シュウの戦闘スタイルを考えれば尚更、な」

 

 気にすんなと頭をポンポン叩くキリトの気遣いが心に響いた。

 今はその優しさが大槍と化して俺の心を抉っている。

 余計顔を顰め、苦虫を噛み潰すような顔をする俺をフォローする姿からは、年上としての優しさが滲み出ていた。

 

「……でもさ、仕方が無いで済まされるレベルの問題じゃないんでしょ?」

 

 スイッチを行うとき、戦っているプレイヤーの基本戦法はインファイトに限られる。

 後方にいる仲間の方へ敵を送らないため。不必要に敵を動かして場を荒らさないため。

 足を地面に固定し、相手の攻撃を武器で防御しつつ応戦、交換の際は強攻撃を叩き付けて相手が衝撃で動けない時を狙い、素早く仲間と位置を交換する。

 このスタイルが必然的に求められた。

 

(キツイってやっぱり)

 

 相手の攻撃を武器で受け止める。

 それはヒット&アウェイを信条にし、主な防御手段が全敏捷力を駆使した全力回避しか存在しなかった俺にとって未知の領域。

 そもそも耐久性の低い短剣で攻撃を何度も受け止めろというのが無理難題。

 風林火山やアスナさんとの共闘ではスイッチなど使用せず、各々が一対一に持ち込んでの各個撃破に努めていた弊害がここで浮き彫りになった。

 

「やっぱりスイッチが出来ないとボス戦に参加出来ない?」

「確かに色々と厳しいのは事実だろうな。……でも、よくよく考えてみればシュウなら大丈夫だろ、問題ない」

 

 気休めなら結構。

 そう不満顔を晒す俺を笑い、キリトは黙って俺の横を指差す。

 

「シュウは一人じゃないんだろ?」

「あ、そっか」

 

 気付けば簡単な事だった。

 一人でダメなら他で補えば良い。

 それは俺の持論でもある。

 先程は訓練の意味もあってポチ達を参戦させずに二人でスイッチの練習をしていたため気付かなかった。

 そう、俺には信頼できる頼もしい相棒がいた。

 

「クロマル……だったか? ソイツと一緒に攻撃を防げば問題ない。それに、後は逆の発想だ」

「逆?」

 

 今問題になっているのは俺の防御性の無さ。

 ならば、

 

「防戦に回らなければ良い。攻撃される前に攻め続けろ」

 

 なんとも俺好みの妙案を出すキリトの強さは、パラメータに左右された強さだけではない。

 この柔軟な発想と閃きが、彼を攻略組と言わしめる理由の一つだと実感した。

 強く、優しく、他の人には無いナニカを持つ黒の剣士。

 人を惹き付けるナニカを持つ、俺が目標にしている攻略組の一角。

 

「まあ、シュウなら大丈夫だろ。期待してるぜ、魔物使いさん」

「任せといて」

 

 まさかの経験・筋力値不足でボス戦参加が危ぶまれていた俺は、冷や汗を拭いながら安堵の息を溢す。

 不安は消え去り、今心を満たすのは絶対の自信。

 目標とする人物に認められたという事実は、これ以上無いと思うくらい気持ちを高揚させた。

 

「……あ、そういえばコレ、返さないと」

 

 自然に腰元へ武器を収めていたけれど、この武器が俺の物でないことを唐突に思い出す。

 黒炎は攻撃力が在り過ぎて特訓にならないという事もあり、ワンランク攻撃力が下の短剣をキリトから借りていたのだ。

 刃渡りは黒炎と同じくらいの長さ。

 相違点は全身が群青色なのと、柄を握った際に指と手の甲を守るように鍔の一部が下へ伸び、楕円盾となっている点。鍔に僅かながら盾補正が入っている短剣の名称は《スクトゥム・ダガー》。

 攻防一体のトレジャーボックス品は、スイッチの練習をする上で最上の相棒だった。

 その別れを少し名残惜しく思う。

 その顔色を察したのか、短剣を差し出す俺に、キリトはゆっくりと首を振った。

 

「それはやるよ。俺からの攻略組デビュー祝いだ」

「そんな!? 流石に悪いって!」

 

 この一時間で更に打ち解ける事が出来たキリトに、これ以上貸しを作る訳にはいかない。

 わざわざスイッチの練習に付き合ってくれて、更には明日の正午に開かれる攻略会議への出席にも便宜を図ってくれるキリトに迷惑を掛けたくなかった。

 しかし、どうやら俺の考えはよく表情に出るらしい。

 キリトの言葉は素っ気無い態度ながらも気遣いの色が見て取れる。

 

「それにシュウが強くなってくれれば俺達も助かるんだ。強いプレイヤーは何人いても困らない。あと――」

 

 

 

 ――それで誰かの命を守れるなら惜しくない。

 

 

 

 キザったらしい台詞だ。

 しかしキリトが言うと様になるのだからアラ不思議。

 正真正銘の強者が言う台詞だからこそ貫禄があり、重みすら感じてしまう。

 何かとお節介を焼いてくれるキリトの顔を見て、ある想いが脳裏に住み着く。

 

「どうした?」

「……いや、なんか兄ちゃんみたいだなって……」

 

 最初の頃はさておき俺にスイッチを仕込んだ辺りから、キリトは俺を子供扱いしなくなった。

 年下の子供だから世話を焼くのではなく、攻略組の先輩として、対等な立場から面倒を見てくれる。

 周囲の人達は大半が過保護だ。

 その最たる例はサーシャ先生とアスナさんで、その姿勢は普段俺を『ガキンチョ』『チビ弟子』と称する師匠にも窺える。

 程度の差はあれ、それは風林火山でも変わらない。

 

(キリトだけなんだ。対等に扱ってくれるのは)

 

 しかしキリトは俺を一人の剣士として扱ってくれた。

 子供扱いしない姿は今も元気に槍や薙刀を奮っているだろう、兄貴分である道場の人達を連想させるのだ。

 

「キリトって兄弟いる?」

 

 思わず訊いてしまってから、直ぐに自分の迂闊さを恥じた。

 現実世界について――それも家族について訊ねるのはSAOで最大禁句の一つだ。

 

「ごめんっ、今の質問は忘れて」

「……いや、別に構わないさ。いるよ、妹が一人」

 

 歳は一つ下。

 ゲームの類はやらない剣道少女で、自分のようなゲーマーとは違う優秀な妹。

 妹さんの事を話すキリトの顔は悲しそうで、どこか寂しげ。

 

「……おそらく俺は、シュウと妹を重ねていたんだ。ここ数年、兄貴らしい事を何もしてやれなかったから」

 

 妹さんの代わりとして面倒を見る事で自己満足に浸る。そうする事で慰みにしていた、という事だろう。

 今の状況では過去の接し方を後悔しても妹さんに何もしてあげられないのだから。

 そして一度語り出したキリトの独白は止まらない。

 

「最初の時だってそうだ。仲間と一緒に強くなる事を選んだアイツを置き去りにして、βテスターとしての知識を生かす事で他プレイヤー全員を見捨てる選択をしたから……罪悪感から少しでも逃れたくて……あの時、シュウの役に立とうと思ったんだっ」

 

 MMOとはリソースの奪い合い。

 モンスターの出現数には限りがあり、一度出尽くすと再出現に時間が掛かる。

 俺達はその限られた時間と資源を共有しながら自己強化に努めているのだ。

 βテスト参加者としてスタートダッシュを決行し、テスター以外のプレイヤーが来る前に最も効率の良い方法で敵を狩り、経験値を荒稼ぎする。

 キリトのレベルアップの影にはレベル上げに苦労し、そのレベルの低さから死んでしまった者がいるかもしれない。

 あくまで他プレイヤーの事は気にかけず、自分の強化に努める利己主義者。

 だから自分はビーターと呼ばれる存在だと、最後にキリトは自嘲した。

 その独白を聞いて生まれるのは、

 

「……そんなの気にすること無い。自分の知識を最大限利用する事のどこが悪いんだよ。それに弱々しいキリトなんてキリトじゃない」

 

 僅かに燻っていた怒りに火が灯る。

 それは理想を勝手に押し付ける行為だろう。理不尽な気持ちだというのは承知済み。

 それでも俺は、泣く一歩手前まで表情を歪めているキリトを見たくなかった。

 目標にしていた人の背中が脆くて弱いと、その人を目標にしていた俺まで弱くなる気がしてしまうから。

 

「生きるために必死に考えて、強くなる努力をする事の何が悪いんだっつーの」

 

 キリトのようなβテスターを罵倒するのはただの嫉妬。弱者のやっかみに過ぎない。

 情報の開示なら既に攻略本(ガイドブック)という形で行っている。

 不幸中の幸いとも言うべきか。執筆者であるアルゴの善意のお陰でキリトの罪は帳消しにされている筈だ。

 俺自身も打算で動く利己的な部分があるからか、キリトの考えを否定する気にはなれなかった。

 

「それにキリトは強くなった分、ちゃんと攻略に貢献してる。今回だって情報をタダでアルゴに渡した。ちゃんと責務は果たしてる」

 

 これが自分の安全を買うだけの自己強化なら、それは批難されるべき振る舞いだと思う。

 しかしキリトは常に最前線に立って死と隣合せの冒険を三ヶ月も続けている。文句を言われる筋合いは無い。

 だからキリトは胸を張って攻略に励めば良いと思う。

 まあ、それでもジュエリーラット三体はやり過ぎ感が否めないが。

 

「……あとさ、俺だってそうなんだ。誰かと誰かを重ねて、それで何とか頑張っていけてる」

 

 キリトが俺と妹さんを重ねたように、俺も先生を家族の身代わりとして見ている。

 キリトを責める資格が無ければ、否定する事も出来はしない。

 

「だからさ、俺は早く現実世界に戻りたいんだ。皆をちゃんと個人として見て、接していきたいから。いつまでも代用品にするのは嫌だ」

「……そうだな、俺もスグと話したい事が沢山ある」

 

 スグ、とは妹さんの事だろう。

 物思いに耽るキリトの邪魔をしたくないので尋ねるような事はしない。

 お陰で乾いた風が吹く音と歩く音しか聞こえない無言の行進となってしまったが、特に嫌だとは思わなかった。

 今は、湧き上がってきた気持ちを整理するのにお互い必死なのだから。

 

「シュウ」

 

 しばらくお互い無言で歩き《リードバルト》が見える頃に漸く、キリトが無言関係に終止符を打つ。

 その瞳に新たな決意を宿して。

 

「強くなろう。力も、心も。こんなゲームに負けずに、早くクリア出来るように」

「当然」

 

 そのためにも、ボスは俺達の踏み台。

 こんな所で苦戦する訳にはいかない。いや、苦戦する筈が無い。

 俺の戦闘技術と掛け替えの無い相棒達に敵はいない。

 この層での戦闘経験に基づく理論武装。

 絶対の自信。持てる力を駆使して大型骸骨を粉砕するイメトレを続けながら、俺とキリトは帰還への道のりを進む。

 

 

 ――その自信が、粉々に打ち砕かれるとも知らずに。

 

 




迷宮区近くの村のクエストでボスの情報って手にはいるんですね
この情報、次から生かしたいです

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