CROSS OF WORLD   作:しきん

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皆様、初めて私の作品をご覧になられる方は初めまして、そうでない方はおはこんばんちわ、そして明けましておめでとうございます、しきんです。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

Yout○beで動画を見てたら思いついたので早速書きました。


第0話 目覚める少年

20XX年 10月22日 午前7時23分 武の自宅

 

「・・・・・・」

 

・・・・・・―――

 

「・・・うぅ~・・・・・・」

 

・・・目が覚める。意識が戻っていく。

 

なにか、悲しい―――いや・・・『悲しい』なんていう言葉だけではとても言い表せないような、途轍もなく大きな喪失感を感じながら、俺はゆっくりと目を開ける。

 

そして―――

 

「・・・?」

 

何故だろうか・・・やけに天井が低く感じた・・・・・・って、んん??

 

「はい?―――って」

 

思わず起き上がり、ベッドの下を見る。

 

どういう訳か、俺の部屋のベッドが二段ベッドになっていた。

 

「ヘアッ!?だ、誰だァ!?」

 

それだけじゃない。

 

下の段で見知らぬ男の子が寝ていた。俺より若干濃い茶髪で、見た感じは俺より一つ―――いや、二つ年下か・・・?

 

「・・・ん・・・兄ちゃん・・・休みなんだから、もうちょっと寝させてくれよ・・・」

 

寝惚けた様子で男の子がそう言った。そうか、眠っていたところを、俺が大声を上げちゃったんだな。なんていうか、ごめんな―――って、そうじゃなくて!

 

慌ててベッドから降りようとした、その瞬間・・・

 

「―――ッ!?」

 

強烈な頭痛が俺を襲った。尤も、ほんの一瞬の出来事だが。

 

この一瞬のうちに、色々な記憶のようなものが脳内にフラッシュバックした。

 

それに、訳の分からない状況に直面したのはこれが初めてじゃない・・・少なくとも、経験はある・・・筈だ。

 

並んで配置された二つの机を見る。上に置かれている物から、一目で右の机が俺の机だと分かった。違う点があるとすれば、置いた記憶の無い写真立てが置かれている事ぐらいか・・・ん?

 

その写真立てを見た時、違和感を感じた。写真には、俺と父さんと母さん、そして俺の知らない男女が写っている。1人は今、下の段のベッドで寝ている男の子、もう1人はピンクっぽい茶髪の女の子。ついでに言うなら・・・2人共、俺より背が低い。

 

「どういう事だ、これ・・・!?」

 

まるで家族写真じゃ―――待てよ?ベッドで寝ているこの子・・・『兄ちゃん』って言ってたよな?だとすれば・・・いや、俺には弟も妹もいなかった筈!

 

混乱して、周りを見る。

 

その時、壁に付いているフックに掛けられているカレンダーを見つけた。

 

カレンダーの上の部分には・・・

 

『2023 OCTOBER』

 

一瞬、血の気が引いたような気がした。恐らく、これは気の所為でも見間違えた訳でもない。

 

何故なら、カレンダーの一番表になっているページの上の部分にそう記されていたのだから。

 

まさか―――

 

そう思って、カーテンを開けると・・・。

 

「あれ?」

 

若干の違和感こそあるが、元の世界(?)の町の光景が広がっていた。

 

帰ってきた・・・のか?でも・・・だとしても何かがおかしい。写真の子、カレンダー・・・・間違いなく、何かが―――

 

そう思っていた時だった。

 

「ではでは、ちょっと入りま~す―――」

 

背後から、ドアが開く小さな音と共に女の子の小さな声が聞こえた。

 

振り向くと、そこにいたのはさっきの写真に写っていたあの女の子だった。

 

当然、俺と女の子の目が合って―――

 

「―――って、ええ!?」

 

見事に驚いた。

 

「た、武お兄ちゃん!?もう起きてたの!?」

 

そりゃそうだよな。お兄ちゃんがまだ寝ていると思ってたら、もう起きてるんだも・・・

 

・・・今この娘、何て言った?俺の事を『武お兄ちゃん』って呼んだ?俺が、お兄ちゃん!?

 

目覚めてから感じていた違和感が、確信へと変わった。どうやら、この世界(?)の俺には弟と妹がいるようだ。

 

 

「ぐ へ え」

 

背後から聞き覚えのない声が聞こえてきた。

 

ま、まさか・・・。

 

恐る恐る振り向いてみると・・・前の男と同様、衛士強化装備とは違うパイロットスーツを着ている金髪の男が眠っていた・・・・・・ハァッ!?

 

「おまっ・・・な、なんだなんだ!?」

 

なんで・・・純夏でも冥夜でもなくて、見知らぬおっさん2人と一緒に川の字になって寝てたんだ―――って、冥夜?・・・純夏!!

 

あまりの事態に混乱していた。訳の分からない状況に直面したのはこれが初めてじゃない・・・少なくとも、経験はある・・・筈だ。

 

『次に、深海棲艦のニュースです。国連軍は東南アジアへの追加派兵を検討しているようです』

 

すると、さっき動いた時にリモコンの電源ボタンを押したのだろうか、少し小さい薄型テレビからニュースキャスターの声が聞こえるのを感じた。何やら・・・『シンカイセイカン』がどうのこうのと言っているが・・・シンカイセイカンって、何だ?

 

机には写真立てが置かれている。だが、違和感はあった。その写真には、純夏がいない代わりに、俺の記憶に無い人が、()()()()()2()()()()()()()点だ。

 

いや、今はそれよりも・・・。

 

兎にも角にも、現状を確かめなければ何も分からない。

 

そう思って、カーテンを開けると・・・。

 

「あれ?」

 

若干の違和感こそあるが、元の世界(?)の町の光景が広がっていた。

 

「帰ってきた・・・のか?でも、何だ?何なんだ、この違和感は・・・?」

 

元の世界の景色であって、元の世界の景色じゃない・・・そんな気がする。

 

何を言っているんだ?と思うかもしれないが、本当にそういう違和感があるのだ。

 

「・・・誰だ・・・私を足蹴にする奴は・・・・・・」

「うるさい、なぁ・・・スクランブルじゃないなら・・・もう少し、寝かせてくれよ・・・・・・」

 

と・・・ここで自分以外の声が聞こえ、現実に引き戻される。

 

ハハハ・・・駄目だな。焦ると視野が狭くなっちまうのは、あの戦いを経験しても全く変わらないみたいだ。

 

元の世界に戻りたい・・・その願いは叶わなかった(何故かそんな気がする)けど・・・俺は今、こうしてここにいる。

 

そうだ。まずは・・・この状況をどうにかしないと、な。

 

「・・・む・・・ここはどこだ・・・・・・?」

 

金髪の男が目を覚ました―――今だ!

 

「あの・・・いきなりですみません。貴方達は誰ですか?」

 

瞬間、俺は金髪の男に声を掛けた。

 

「む・・・?」

 

どうやら、この人もこの状況に戸惑っているみたいだ。訝しげな表情がその証拠だ。

 

何はともあれ、まずは分かりそうな事から解決していくのが得策だろう。

 

「・・・何故、アムロがここに!?」

 

すると、金髪の男が赤毛の男に気付いた。恐らく、『アムロ』というのが赤毛の男の名前なのだろう。だとすれば、この2人は互いの事を知っているのかもしれない。

 

金髪の男はすぐに冷静を取り戻したのか、俺の方に視線を戻した。

 

「・・・すまない、少年。少々取り乱してしまった。私は―――」

 

金髪の男は一瞬だけ間を開け、続けた。

 

「―――クワトロ・バジーナという」

 

名前を言う時に間があった事に俺は疑問を抱いた。記憶の混乱があるのかと思ったが、こういう場合は偽名を名乗ったりするパターンもよくある話だ。そして、金髪の男―――クワトロ(仮)という男はどう見ても外国人・・・それが、俺の金髪の男に対する不信感をより一層大きくさせるのだった。

 

・・・警戒しておくに越した事はないな。これは迂闊に大事な事を言える状況じゃなさそうだ。

 

「ところで少年、私からも質問したいのだが・・・重力があるという事は、ここは地球なのだろうが・・・どの辺りだろうか?」

 

重力がある・・・ここはどの辺りか・・・なるほど。

 

「えーと・・・日本の横浜ですが」

「日本・・・?ああ、ジャパンの事か。しかし、あの状況で大気圏に突入して、よく無事でいられたものだ・・・我々を介抱してくれたのは君か?礼を言う」

「いえ、そんな・・・」

 

おかしい。ここはあの世界じゃない筈だ。なのにクワトロ(仮)はまるで桜花作戦(多分)の当事者のような口ぶりで話している。

 

ここは・・・揺さぶりをかけてみるか!?

 

「あの・・・貴方は、軌道降下兵団所属でいられるのですか?」

「いや、違うが・・・

 

アクシズはどうなったのかはわかるかな?」

 

・・・へ?

 

「え?あくしず?」

「む・・・?」

 

ん?どうなってんだ?アクシズって何だ??

 

話が噛み合っていないような気がするが・・・俺の気のせい、なのか??

 

「・・・少年、つかぬ事を聞くが・・・今は何年の何時だ?」

「ええと―――」

 

そういえば・・・テレビの後ろの壁に付いているフックにカレンダーが掛けられていたな。

 

そう思って見てみると・・・

 

『2023 OCTOBER』

 

一瞬、血の気が引いたような気がした。恐らく、これは気のせいでも見間違えた訳でもない。

 

何故なら、カレンダーの一番表になっているページの上の部分にそう記されていたのだから。

 

「2023年の・・・10月22日です。・・・多分」

 

何故に年の部分だけあんなに違っているのかは分からない。だが、声は変わってはいないし、身体にも変化は無い。少なくとも、身体は夕呼先生と霞と別れた時と同じ状態だ。

 

少し脱線しちまった。年の部分以外は俺の基点となるその日の筈だから、間違ってはいないと思う。だが、依然として話は嚙み合わないままだ。

 

でも・・・この部屋にいたって事は・・・もしかして、この人達も―――

 

「2023年・・・ッ!?まさか、旧暦にタイムスリップしたとでも言うのか!?アムロ!・・・ええい、いい加減に起きんか!アムロ!!」

 

突然、クワトロ(仮)が赤毛の男―――アムロという男を殴り飛ばした。

 

「ぐぅ・・・殴って起こす事はないだろうが、シャア―――シャア?何故、貴様が!?・・・いや、この感じ・・・まさか、地球か?」

 

アムロは目を覚ますや否や、クワトロ(仮)に殴り掛かろうとした・・・だが、何かに気付いたのか、慌てて窓に駆け寄った。

 

「アクシズは地球に落ちなかったのか・・・だとすれば、何故・・・俺達だけ地球に?」

「フッ・・・だが、アムロ・・・問題はそこではない。この少年の話によると、我々は今、ジャパンにいるらしい」

「・・・何だって?」

「問題はそれだけではない。曰く、今は旧暦の2023年だそうだ」

「何を言っている!?」

 

・・・2人の話を聞いて分かった。この2人はこの世界の人間じゃない。少なくとも、この時代の人間じゃないのは確実だろう。

 

聞く立場になって分かった事がもう一つある。前の世界に例えるなら、この2人は俺、そして2人の話を聞いていた俺は夕呼先生や皆と同じ立ち位置ってところだろうか。だが、今なら分かる。夕呼先生達が俺が喋っていた言葉(例えば『マジ』とか)を理解出来なかったように、俺が2人の話についていけていないんだ。そりゃ、『白銀語』と言われるのも納得だ。今更ではあるが、少し恥ずかしくなってしまった。

 

「さて、少年・・・話を戻すが、君は我々がここにいる理由を知っている様子だが、出来れば我々に説明してはもらえないだろうか?」

 

恥ずかしい過去を思い出していると、クワトロ(仮)が問いかけてきた。

 

「理由は分かりません。ただ、貴方達の置かれている状況は、何と無くですが分かると思います。その前に、貴方達の事を聞きたいのですが・・・」

「ああ、いいだろう」

「・・・何が何だか分からないが、どうやら君に話を聞くしかなさそうだ。俺も構わないから、何でも聞いてくれ」

 

俺の問いかけに2人は了承してくれた。

 

「ありがとうございます。おかしな質問と思うかもしれませんが、必要な事なので助かります。まず・・・貴方達のいた時代は何時ですか?」

U.C.(宇宙世紀)0093だ」

「宇宙世紀?さっき、旧暦って言ってましたけど、西暦で言う何年なんですか?」

「確か・・・2138年になるか?」

「今で言う115年後ですか・・・地球にいる事に違和感を感じていたようですけど、もしかして、他の惑星とかで暮らしてたりするんですか?」

「いや、地球に住む人間は無論いる。だが、テラフォーミング技術の類は未だに確立してはいない。その代わり、スペースコロニーをラグランジュポイントに建設し、そこで生活する者も多くいる。基本的に、コロニーに住む者を『スペースノイド』と呼び、地球に住む者を『アースノイド』と呼ぶ」

「俺は・・・アースノイドなのだろうな」

 

何というか・・・さっきの話を聞いて予想していたとはいえ、SFチックな話が飛び出してきたな。しかもスペースコロニーって・・・本当に凄いな。

 

だが、疑問に思ったことがある。アムロさんが自分の事をアースノイドと言った時の雰囲気からすると、スペースノイドとアースノイドの間には差別が存在するのだろうか。宇宙に住むようになっても、そういうのは無くならないのか・・・無くならないんだろうな。人類が滅亡の淵に立たされても、人種間差別というものは無くならないのだから。

 

「それじゃあ、アクシズっていうのは何ですか?アクシズが地球に落ちるとかっていう、凄く物騒な話をしていたみたいですけど・・・」

「アクシズとは、小惑星基地の事だ。私はそれを落下させて、地球に巣食う愚民共を粛清しようとした。改めて言おう、私の名はシャア・アズナブル・・・ネオ・ジオンの総帥だ」

「情けない奴!こんな少年にそんな偽悪趣味を発揮しても仕方ないだろう!?」

「言ってくれる・・・」

「ちょ・・・ちょっと、喧嘩は止めてください!」

 

俺は火花を散らしているのが見えそうな2人の間に割って入り、何とか落ち着かせる。

 

「でも・・・宇宙に住むようになっても、人間同士の戦争は無くならないんですね」

「人は、それ程簡単には変わる事が出来ない・・・そういう事なのだろうな」

「それを分かっていながら、貴様という奴は・・・いや、今は止めておこう」

 

この2人は互いをよく知っているのだろう。だが・・・今は多分、敵同士なのだろう。なんとなくだが、委員長と彩峰を思い出す。

 

「次が最後の質問です。・・・『BETA』を知っていますか?」

 

この世界にはいない・・・何故かは分からないが、そんな予感がする。これは飽くまで念の為だ。

 

「「ベータ?」」

 

・・・

 

「ギリシャ文字のβ・・・の事ではないんだろう?すまないが、君の言うベータが何の事なのか、俺には分からない」

「ガルバルディβの事を言っているようにも見えない・・・私にも、心当たりは無いな」

 

これで確信した。この2人はBETAが存在しない世界の未来からやって来たんだ。

 

俺のいた元の世界の未来なのかってところまでは分からない。それでも、その未来には、人類が宇宙に進出する可能性がある。

 

並行世界の事を2人に説明すると、信じられないという顔をされた。まあ、俺も最初は、信じられなかったからな・・・そこら辺は仕方ない。そう割り切ろう。

 

「並行世界、か・・・俄かには信じられんな・・・・・・」

「そうだと思います。俺も、最初は信じられませんでしたから・・・」

「君も?それはどういう事だね?」

「ああ、すみません。その話の前にもう一つだけ・・・お2人がここで目覚める前・・・元の世界にいた時に、最後に何か見ませんでしたか?例えば、原因不明の光とか」

「・・・まさか、サイコフレームの光か?」

「しかし、あれは人の意思に反応するものだ。人間を並行世界に転移させる力はおろか、タイムスリップさせる力など、ある筈がない・・・」

「そうとも言い切れないだろう?・・・貴様に言われて思い出したが、俺もサイコフレームの光がアクシズを地球から引き離したのは感じた。質量を持たない筈の光の力が、あれだけの事をやってのけたんだ。俺達2人を並行世界に飛ばすなんて事が起きても、おかしくはないさ」

「・・・戯言だ」

「言ってろ・・・ところで君、話は分かったが、ここが俺達の世界ではないという証拠はあるのかい?

 

クワトロさん・・・いや、シャアさん?は納得がいかない様子だ。対して、アムロさんは心のどこかで理解出来たのだろうか、俺に問いかけてきた。

 

「・・・白銀武です。すみません・・・貴方達の事が分からなかったので、今まで名前を伏せていました」

「ああ、構わない。君にも、事情があるんだろう?俺の名前はアムロ・レイだ」

「私はシャア・アズナブルだ。先程はクワトロ・バジーナと名乗ったが、君と同じ理由があったので偽名を使わせてもらった。許してほしい」

「そ、そんな・・・それこそお互い様ですから。それに、今度はきちんと本名を教えてもらえましたし・・・シャアさん、アムロさん、よろしくお願いします」

 

今更ながらにお互いが名乗りあって、俺が頭を下げると、シャアさんはバツの悪そうな顔をし、アムロさんはそれを見て苦笑いしている。

 

「・・・?あの・・・何か俺、おかしな事言いました?」

「いや、そうではないのだが・・・」

「クククッ、白銀君・・・確かにシャアもクワトロもコイツの名前ではあるんだが、本名はどっちでもないんだ」

「えっ!?名前が三つもあるんですか!?」

「正確には、四つだ。だが、本名は既に捨てたものであるし、例え捨てていなくとも並行世界では何の意味も成さない名だ。それに、二つ目の名も同様だ。なので、シャアと呼んでもらいたい。・・・アムロ、いつまで笑っている」

「は、はい?そういう事なら、分かりました」

「ククク・・・ああ、すまない。貴様のそんな顔を見るのは初めてだったものだからな。それで白銀君、どうして君は、ここが俺達のいた世界ではないと言えるんだ?」

 

シャアさんは唖然とした表情だけど、アムロさんが話を戻した。俺も、話を進める事にする。

 

「ああ、はい。それは、ここが俺の部屋だからです」

「「ほう」」

 

シャアさんとアムロさんが見事にシンクロした。

 

やっぱりと言うべきか・・・この2人は、委員長と彩峰に通じるものがあるようだ。どうにか、仲良くしてほしいな・・・。

 

そういえば・・・さっき、ニュースでシンカイセイカンがどうのこうのってのがあったな。あれといい、カレンダーといい、机の上の写真立てといい・・・あの世界とは別の世界なのかもしれない。

 

「そして、俺も並行世界からやって来たから、貴方達の状況が分かったんです」

 

その俺の言葉に、シャアさんとアムロさんは驚く。だが、次の瞬間にはその前の表情に戻す。

 

こういう切り替えの早さは、俺よりも余程立派な軍人なのだろうと思わせる。

 

この2人が俺の部屋に転移してきた、という事は何等かの意味がある筈。だとすれば、協力してもらえれば頼もしい。

 

「なるほど・・・それで、君の話は聞かせてもらえるのかい?」

 

アムロさんの問いに答えるべく、話す事を吟味する。

 

俺と同じように並行世界に転移した人達だからといって・・・それだけで信用して、すべてを話すという選択肢は無い。特に、オルタネイティヴ4に関する事は・・・必要な事なら夕呼先生が話してくれるだろうし、2人が先生と話す機会が無いとすれば、俺が話して良いという訳ではないからだ。

 

だから・・・ひとまずは、それ以外・・・あの世界の事、俺の体験、そして・・・オルタネイティヴ5の話をしよう。

 

例え、信用も信頼もされなかったとしても、納得してもらって力を貸してもらえるように話してみよう。

 

まず、俺の元の世界の事・・・ある日、突然あの世界に転移してしまった事・・・一度目と思っていた世界を、知らない間に繰り返(ループ)していた事を前置きとして簡単に話した。

 

それから、俺の元の世界、そして2人の世界とも違う筈の、この世界の分岐点・・・BETAの襲来・・・そこから辿る人類の敗北の歴史・・・逼迫した当時の状況・・・人類を救う為のオルタネイティヴ計画・・・その第四計画を完遂させる為に魔女と呼ばれるようになった恩師の事。

 

そして、前回の二度目の世界について。

 

そこで知った、戦う事の本当の意味・・・戦う人達の気持ち・・・大きすぎる犠牲を払い続けながら、ようやく掴んだ勝利・・・未来への光。

 

だが、俺はその世界での役目を終えてしまい、残る事を許されなかった。そうして、元の世界に還る筈だった。目が覚めたら、少し違うこの部屋にいて、現在に至ると。

 

・・・ざっと2時間近くは話していただろうか。

 

「―――という訳で、俺が認識している限りでは、この世界が一度目と二度目の世界と関係しているのかは分からないんです」

「・・・何というか・・・凄まじいな」

「・・・・・・」

 

俺の話が終わると、アムロさんは息を吐き出すようにそう言った。

 

一方で、シャアさんは何か、考え込んでいるようだ。ぶっ飛んでいたからだろうか・・・。

 

「あの、シャアさん?」

「・・・ああ、すまない。君の話を聞いて、自分という人間の矮小さを自嘲していた。しかし・・・同時に、滅亡に瀕しているにも関わらず、なおも理解し合えない人の業を聞くと、やはり人類は地球の重力から解き放たねばならない・・・という私の考えは誤っていなかったという事が改めて分かった」

「貴様は・・・白銀の話を聞いても、まだそれを言うか!」

「仕方あるまい・・・これが私という人間だ」

 

シャアさんの言葉を理解出来た訳ではない・・・だが、言いたい事は分かる気がする。

 

一度目の世界で、オルタネイティヴ4の中止が決まったと聞かされた時。そして、最後の反抗作戦に出撃して・・・それが失敗に終わった事の喪失感を、二度目の世界で目覚めて感じた時。俺は、オルタネイティヴ5を・・・それを実行しようとしている奴らを憎んだ。BETAを倒す為に人類が纏まらなければならないのに、何故、こうも纏まる事が出来ないのかと。

 

だが、それは結局のところ、自分勝手な考え・・・傲慢で、自分の考えとは違う人の思いを無視して、強要しようとしている事に他ならないんだ。

 

今の俺には・・・もう人類の勝利だけを目指して進む事は出来ない。シンカイセイカンというのがこの世界の人類の敵なら、ソイツ等を倒す事は大前提・・・そこは、倒す対象以外は殆ど変わらない。だが、それだけじゃ駄目なんだ。二度目の世界を救えたのは確かだけど、あんなんじゃ駄目なんだ。皆と笑って暮らせるような・・・そんな未来を勝ち取らなければならないんだ。その為なら・・・例え自分の手を汚す事になっても構わない。

 

そして、俺に託して逝ってしまった皆の願いも叶えてみせる。

 

人間がどんなに利己的で、滅亡に瀕していても、一眼となって力を合わせる事が出来ない愚かな種族だったとしても・・・皆は滅亡なんて決して望んでいなかったのだから。人類の勝利を、信じていたのだから。

 

だから、シャアさんも・・・。

 

だから、俺は言おう。

 

「あの、シャアさん。俺は世界を繰り返しているといっても、貴方から見ればまだ若い。貴方の世界の事も分かりませんし、その世界で貴方が何を経験して、今の考えを持つに至ったのかは分かりません。でも・・・いや、だからこそ言わせてもらいます。貴方は、間違っている」

 

続けてこう言う。

 

「確かに、滅亡の危機に瀕していても人間は利己的です。あの時、まだBETAの侵攻を受けていなかったであろう国には下らない陰謀を企てている人達だっていたでしょう。いや、最前線だった日本にも同じような人間がいたでしょう。でも・・・そうやって全体を見て、人間の汚い部分ばかりを挙げる事に、一体何の意味があるんですか?もっと身近な人の事を見てください!貴方の周りにいる人達の事を考えてください!あの世界の人間たちがそうであったように、今、この世界の人達も生きる事で精一杯なんです!1年後、1ヶ月後、1週間後、明日・・・最悪、今日死んでしまうかもしれないんです!それも、兵士だけでなく、民間人までもが!そんな人達に・・・人類が愚かだから、人類の敵に滅ぼされてもいいって、仕方のない事だって、そんな事を言えるんですか!?そんなの、俺は認めません!絶対に認めない!だから、俺は人類の敵から地球を・・・未来を取り戻す為に戦う!人類の為にって訳じゃない。以前まではそうだったけど、今は・・・俺の大切な人の為に、大切な人達を死なせない為に戦うんだ!だけど、俺一人だけじゃ、皆を守り通す事は出来ない。どんなに戦術機の操縦が上手くたって、未来を知っていたって、たった1人で出来る事なんてほんのちっぽけなものだって事を、嫌と言う程味わされた!この手で皆を守るんだ・・・そう決めていたのに・・・皆の命が散っていくのを、結局・・・俺は止められなかった!だから・・・貴方達の力を貸してください!シャアさん、アムロさん・・・お願いします!!」

 

捲し立てるように話し、頼み込む俺・・・その言葉を、シャアさんもアムロさんも真剣に聞いてくれた。

 

・・・なんだろうな。途中から熱くなっちまったのか、俺でも自分の話した内容が、途中から分かんなくなっちまった。

 

「・・・すみません。こっちの事情で、勝手な事を言ってしまって・・・おまけに、『力を貸してくれ~』なんて・・・・・・」

「「・・・・・・」」

 

・・・・・・

 

―――沈黙が重い・・・。

 

シャアさんはまた考え込んでしまっているようだ。アムロさんの方は目を閉じている。シャアさんが話すのをじっと待っているのだろう。

 

自分が勢いで話してしまったからなのか・・・そう思うとこの場に居づらい。夕呼先生にも言われていたな。熱くなる癖を直せって・・・。

 

「あの―――」

「白銀武君、私は君に協力させてもらおう」

 

突然、シャアさんが話し始めた。

 

「えっ?」

「私は、この世界では根無し草だ。する事も無ければ、しなければならない事も無い・・・ならば、君に力を貸そう」

「ほう・・・」

 

シャアさんの返答に、アムロさんが意外だ、とでも言いたげな表情になった。

 

「なんだ、アムロ。私がこんな事を言うのは意外か?」

「ああ・・・意外だ。俺はてっきり、貴様ならこの世界での目的を探して、独自に行動するだろうと思っていた」

「フッ・・・愚問だな。白銀君曰く、この世界の事までは分からないらしいが、BETAとかいうものに近いものが存在するかもしれないという。そして・・・恐らくは、このままでは人類が敗北し、一度目の世界の二の舞になりかねない、といったところであろう。それは、私の望むところではない。しかし、我々は異邦人・・・しかも、下手をすれば、一度目と二度目の世界同様、時間が無いという事態もあり得る。ならば、この少年に力を貸すのは道理というものではないか?」

「・・・世界が変わっても、そういう物言いは変わらないな」

「言ったであろう、これが私という人間だと」

「フッ・・・違いない。そういう訳だ。白銀君、俺達は君に力を貸そう」

 

・・・正直、アムロさんが言ったように、俺もシャアさんが協力してくれないんじゃないか・・・そう思っていた。だから、シャアさんの言葉がいまいち理解出来なかった。

 

でも、地球の為に協力するというシャアさんの言葉は、どこか納得出来るような気がした。




という訳で、本作の主人公はタケルちゃんに決定致しました!!

そして、いつもと違うタケルちゃんの部屋が示すのは・・・?

次回予告

この世界で何が起こっているのかを知る為、行動を開始する武とアムロとシャア。果たして、彼らを待つのは―――?

次回『行動開始』
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