ドールズフロントライン ~プレイヤーズフロントライン~ 作:弱音御前
新年、気分も新たに連載を頑張っていこうと思いますので、ぜひぜひ足を運んでやって下さい。
それでは、どうぞごゆっくりお楽しみを!
「ねえねえ、指揮官。この前に相談した件なんだけど、結果はどう?」
執務室へ戻る最中、廊下でバッタリと出会った戦術人形は指揮官にへの挨拶もそこそこに問いかけてきた。いかにも、期待しています、といった様子である。
「ああ、まだヘリアンからの返答がないんだ。分かったらすぐに教えるから」
「そっか・・・じゃあ、よろしくね!」
ちょっだけ残念そうな表情を浮かべると、彼女、アサルトライフル〝RFB〟はいつもの軽やかな笑顔を向けて去っていく。
そして、また次の日の一幕である。
「おはよう、指揮官。昨日の件はどう? 返答あった?」
「え? い、いや、まだ無いんだ。すまない」
「指揮官が謝る事ないよ。ヘリアンさんも忙しいから仕方ないよね」
昨日とほとんど同じような時間、同じような場所で出くわしたRFBは彼の言葉を聞くと、やっぱり昨日と同じような様子で栗色の髪の毛を靡かせながら去っていった。
その次の日の一幕も。
「指揮官、返答は?」
そのまた次の日も。
「ねえ、まだ分からないの?」
さすがに、同じ事を毎日続けているせいか不機嫌そうな様子を募らせながらもRFB恒例の挨拶は変わらない。
嫌がらせの為にRFBがこんな事をしているのではないのを理解している指揮官ではあるが、こうも毎日毎日同じ事をしつこく質問されては気持ちも参ってしまおうというものである。
「RFBの件かしら?」
指揮官のついた溜息を目敏く拾ったのは副官であるUMP45。こういった、精神面にまで気にかけてくれる戦術人形は彼女くらいのものである。
「うん・・・最近は毎日のように聞かれてさ。どう答えてあげたらいいものかと考えてた」
事の始まりは、1ヵ月ほど前に実施された模擬演習である。
その演習は、グリフィンの戦術人形でチームを組み、現実に模擬戦闘を行うという、グリフィンでは初となる戦術人形同士の戦闘訓練であった。
戦闘能力の向上はもちろん、レクリエーションの一環として戦術人形同士の交流を深めるという目的も含めて、模擬演習は成功としてグリフィン上層部は見てくれたようだった。
RFBは模擬演習が実施された当時、長期任務でグリフィンから離れていた為、この演習に参加できていなかった戦術人形の1人だ。後に他の戦術人形から演習の話しを聞いたのか、そんな楽しそうなイベントを私抜きでやるなんて信じられない! と、大層ご立腹な様子だった。
もう一度演習ができるようにかけあってみる、という話しでその場はRFBを宥める事が出来たのだが、その時のシワ寄せが、今、指揮官が陥っている状況である。
「ヘリアンはなんて言ってるの?」
「それなりの評価はもらっている演習だから、次はあるだろうって。ただ、そうやすやすと出来るようなものじゃあないってさ」
演習を行う為のコストの高さは理解しているし、あのフィールドは別のグリフィン支部でも使用するものなのでいつでも空いている場所ではない。年に1回とか2回やれれば良いくらいのイベントである。
「私から言おうか? わがまま言わないで1年くらい待ってなさい、って」
「ん~・・・いや、これは俺から言わないといけない事だから。それに、別の方法でなんとかしてあげられるかもしれないから、もう少し考えてみるよ」
RFBは〝ゲームマスター〟と自負するくらいゲーム好きな娘で、そういう気質もあって、見方によってはゲーム感覚だったあの演習に参加したくて仕方なかったのだろう。
明るくて素直な性格で、おまけに成績優秀な部下の為に尽力するのも上司の務め、というのが
指揮官の流儀である。
「ほんと、真面目っていうかお人好しっていうか。・・・でも、そんなところ大好きよ」
言って45は彼に歩み寄ると、椅子に座っている指揮官の膝の上にぽすんと腰を降ろした。背中を預けてくる45の身体の柔らかな感触と微かなコロンの香りが心を優しく撫でてくれる。
「いきなりどうしたんだ?」
「ふふ、知~らない」
ゴロゴロと甘えてくる45を優しく抱きしめ、執務の手をしばらく休める。
日々常々訪れる悩みと安らぎの中に自らの生きがいを感じながら、指揮官のグリフィンでの生活は流れていく
お昼休みは戦術人形達はもちろんの事、グリフィンの職員にとっても1日のうちで最も楽しみな一時と言っても過言ではない。
職員イチオシのAプレートを手にした指揮官は、混みあう食堂のなかでどこか空いている席はないのものか、と周囲の様子を伺う。
・・・と
「指揮官、座るところ探してるなら一緒に食べない?」
もう、すっかり耳に馴染んだ声を聞いて振り返ると、そこには案の定、RFBの姿。
「ん? ああ、そうだな。じゃあ、お言葉に甘えようかな」
手招きに誘われるまま、2人掛けの席に着く。
「いただきます」
「どうぞ、召し上がれ」
律儀に答えてくれたRFBの優しさに小さく笑みを零しながら食事に手をつける。
RFBはというと、購買で売っている簡易栄養食のスナックバーとエナジードリンクだけ、というなんともワイルドな食事である。
普段、指揮官を食事に誘うような事がないRFBが、今日このような場を設けたのはもちろん、例の件が気になって仕方がないというのが理由なのだろう。
ただ、そわそわと落ち着きなく食事を続けているRFBの様子から、今朝も今朝とていつもと同じやり取りを繰り返したばかりなので、もう同じ話を切り出しにくい、といったところか。
そうやって、気持ちも考えてくれる相手であれば尚更の事、指揮官も素直に話しをしてあげなければならない。
「あのさ、RFB、今朝の件なんだが・・・」
「進展あったの!?」
指揮官の言葉を聞き、輝くような笑顔でテーブルから身を乗り出すRFB。その勢いでエナジードリンクの缶が倒れそうになるのを2人して咄嗟に押さえ、2人で同時に苦笑いを零した。
「現実的な話し、あの演習はコストが高いしフィールドの使用状況に空きもないんだ。次があるのは確実なんだけど、たぶん、1年に1回やるので精一杯だろう」
「そう・・・なんだ。じゃあ、次は来年か」
RFBは今さっきの勢いから一転、肩を竦めてしょんぼりしてしまう。
話しをした指揮官の方がすごく申し訳なく感じてしまうくらいの落ち込みようである。
「だから、何かほかの方法であの演習の代わりが出来ないかな? って考えててさ」
「他の方法で・・・?」
俯き、しょんぼりしていたRFBだが、その話しでちょっとだけ持ち直してくれたようだ。
「そう。RFBはあの演習の何が気に入ってそこまでやりたいって思うの?」
「ゲームみたいなところ。損傷することも無く安全に、全力でお互いに戦い合って、仲間と勝利を分かち合えるのがすごく楽しそうだった!」
やはり、キーワードは〝ゲーム〟にあるらしい。守護妖精のシールドシステムはすごくゲーム
らしさがあるというのは他の戦術人形も言っていた事なので、間違いないのだろう。
「なるほどね。つまり、ゲームの世界で戦いたい、っていう事なのかな?」
「それだったら文句無しなんだけど、私だって、現実と非現実の境くらいはわきまえてるから」
RFBの言うとおり、それを実現させてあげられるのならこれだけ悩んだりはしない。
食事の手も止め、傍から見たら2人して仲良さそうに同じポーズでうんうんと唸り思案していた・・・そんな最中だった。
「随分とお悩みの様ね~」
「うぉあ!?」
「きゃあ!」
テーブル同士のセパレーションから覗きこんできた謎の人物の声で、2人して、これまた仲良く同じようなリアクションで驚いてしまう。
「失礼な、そこまで驚かなくてもいいじゃない」
「ペ、ペルシカさん? ここに居るなんて、珍しいですね」
グリフィンの研究部門、16Labの研究員ペルシカは一旦顔を引っ込めると、セパレーションを回り込んで2人の前に姿を現した。
そういう気質なのだろうが、いつも気だるそうなのは相変わらず、しわしわの白衣をだらしなく羽織ったその姿は年頃の女性としてどうなのだろう? と、ペルシカに会うたびに指揮官は思う。
ちゃんと身だしなみを整えれば結構な美人なのに、というのは心の言葉である。
「まぁ、たまにはちゃんとしたモノを食べないとだからね。私だっていちおう人間だし」
そう言いつつ、いつも手に持っているマグカップをグビリと一口。発言の真偽が良く分からない人物である。
「それはそうと、キミ達、なかなか興味深い話しをしていたね」
「私達が、ですか?」
あまり慣れていない相手を前に、RFBはおずおずと尋ねる。
「聞くに、ゲームの中に入りたい、とか?」
「ああ・・・まぁ、はい」
ペルシカ登場の衝撃で今しがたの話しも頭から飛んでしまっていたので、気の無い返事を返してしまう。でも、ペルシカはそんな様子を気にする風も無く、もう一度マグカップをグビリとして話しを続ける。
「しかし、ここは所詮現実。そんな非現実は望むべくもない、と」
「ええ・・・その通り、です」
なるほどなるほど、と頷くペルシカを前にいよいよRFBも不安を隠せない様子である。
「あの~、何か名案でもあるんですか?」
「いやぁ、名案ってほどのものでもないんだけどね。その悩み、解決してあげられるかな~?
ってところでさ」
うさんくせぇ~、と指揮官はなるべく顔に出さないようにしつつペルシカを警戒するのだが。
「ほ、本当ですか!?」
さっきまでの怪訝そうな様子はどこへやら、今の話しに思いっきり喰らい付くRFB。
彼女らしい言葉で表すならば、あまりにもチョロいヒロインである。
「まぁ、まずはRFBちゃん、だっけ? あなたから詳しい話しを聞いてみてからなんだけど、どうかしら?」
「ねえ、指揮官、この人とお話してみても良いかな?」
RFBはもう完全にペルシカの術中にハマっているし、ペルシカもせっかく喰いついた獲物を逃がすような人物ではない。もう、止めたくても指揮官に止められるような状況でもないのである。
「任務に差し支えの無い程度にお願いしますね」
「良しきた。じゃあ、場所を変えましょうか、RFBちゃん」
「は~い!」
手を繋いで食堂を去っていく2人の後ろ姿を見ていると、なんというか・・・とっても犯罪臭を感じえない指揮官であった。
「まぁ、RFBからの催促が無くなったんだから、いちおう解決って事でいいんじゃないの?」
RFBがペルシカに連れていかれた次の日から、RFBの毎朝の催促が無くなり、今日で一週間が経過した。不安事が1つ消えた事で執務の効率も上がり、副官である45の機嫌も良いので最近はとても平和な日々を送っている指揮官である。
「確かにその通りなんだけどさ。それはつまり、RFBを納得させられるような何かをペルシカが見事に提示できたっていうことだろう? それが何なのかっていうのはちょっと気になる」
日常生活の中でRFBと顔を合わせる事は何度もある。その際、ペルシカと何を話したのか探りを入れているのだが、どうやらペルシカが極秘扱いしている内容らしく、RFBは指揮官にすらもその話しをしてくれなかった。
権限を行使して口を割らせる事はできるのだが、それは一番やりたくない事だ。もし、RFBの身に危険が及ぶような事だと察した場合だけの緊急手段である。
「自分がRFBの悩みを解決してあげられなかったのが悔しいんだ?」
「べ、別に、そんな事ねえし・・・」
心に押し込んでいた考えをあっさりと45に発掘されてしまい、思いっきり動揺してしまう。
「あはは、指揮官もまだまだね。私の事だけじゃなくて、もっと他の娘の事も理解してあげなくちゃダメよ」
頭を撫でながら諭すその様子は、子供を宥める母親のよう。実際、子供っぽいリアクションをとってしまった方が悪いので、恥ずかしいがこれは戒めとして甘んじて受け入れておく。
「っと・・・ヘリアンからメールだ」
電子音と共にデスクのモニターにメールの着信を知らせるウィンドウが展開される。
件名が赤文字なのは重要案件だという証。半日以内にメールチェックを済ませないと、次に彼女と会った時には、それはもうゴミを見るかのような視線で睨みつけられる事請け合いなのだ。
「シリアスな内容みたいね。ついに、鉄血を纏めて叩き潰す大規模作戦発動! とか?」
「こんな通常回線でやりとりするような内容じゃないだろう、それは」
メールを開き、内容を確認する。
形式張った言いまわしの社内メールであるが、要約すれば、グリフィンに在籍する戦術人形から11人を選抜。選抜された戦術人形は3日後、指揮官と共に指定された場所へ出頭する事、という内容である。
「ふ~ん? なんか珍しい指示ね。武装の指示が無いから戦闘じゃあないんだろうけど、選抜って事は高戦績の娘を連れてこいって事でしょ?」
「大規模作戦の事前ミーティングというのも考えられるな。大まかな人選はお前に任せる。FAL達の作戦進捗はどうだ?」
「〝Valkyrie小隊〟はまだ時間がかかる。緊急で撤収させれば間に合うだろうけど、お疲れの娘達を駆りだすのはアナタの望むところじゃないでしょ?」
彼が率いる精鋭部隊は長期作戦の真っ最中である。重要作戦であれば、ぜひとも活躍してもらいたいところだったのだが、彼女達に無理を強いるわけにもいかない。今回はタイミングが悪かったと割り切るしかないだろう。
「分かった。俺の方でも良い組み合わせをリストアップしてみよう。・・・くれぐれも、私情は挟むなよ。俺が言ってる事、分かるな?」
「えぇ~~? ヤダぁ~~」
すっごい嫌そうな表情と言い方で抵抗する45。もう、2人はこれだけのやりとりで誰を使う使わないが伝わるほどに以心伝心なのである。
その日のうちに2人で選抜したメンバーには次の日の午前中に召集通達を出し、重要案件当日に向けての準備は速やかに、滞りなく進む。
「待ってたよ~、指揮官」
「おはよう、指揮官!」
選抜した11人の戦術人形を引き連れ、メールで指示された日時、場所に行ってみれば、そこに居たのはヘリアン・・・ではなく、やはりいつもと同じ風体のペルシカといつも以上に元気一杯な様子のRFBであった。
予想外の展開を受け、扉の前で立ち尽くしたまましばしフリーズする指揮官。
「ちょっと、どうしたのよ指揮官。・・・ペルシカとRFB? ヘリアンは??」
「まあまあ、事情はちゃんと説明したげるから。まずはみんな中に入りなさいな」
不思議そうな表情を浮かべながら入室する45に続き、次々と戦術人形達が入室してくる。
「指揮官以下、戦術人形11名。申し出通り伺いました」
会社の形式として指揮官を先頭として11人が綺麗に一直線に並んでビシリと姿勢を正す。
「ああ、そういう堅苦しいのはいいから楽にしてよ。それにしてもまた精鋭が揃い踏みだねぇ。
良きかな良きかな」
指揮官の合図と共に姿勢を崩す面々を、ペルシカはまるで値踏みするかのようにじっくりと眺めていく。
「あうぅ~・・・」
そんな視線に怖さを感じたのか、怯えた声を漏らしてG41は隣に立つUMP9に身体をすり寄せる。
「平気だよ、41ちゃん。この人は基本的には優しい人だから」
「そだよ~。よろしくね、おチビちゃん」
9の言葉に合わせるように笑顔で手を振るペルシカだが、41の恐怖は全く払拭出来ていない
様子である。
「そろそろ事情を説明してもらいたいのですが」
これ以上41が怯えないよう、強引に話しを振るとペルシカはコホンとわざとらしく咳払いを
一つついて話しを始めた。
「本日、皆様にご足労いただいたのは他でもない。私ども、16Labが開発した新設備のテストへの協力をお願いしたくてね」
「んで、その後ろにある仰々しいシミュレーターが件の新設備ってことかしら?」
「その通り。さすがは優秀な副官、話しが速い」
演技っぽい身振り手振りを交えて返され、45も少し呆れ気味に溜息をつく。
「シミュレーターというと、模擬訓練に使用されるものなのでしょうが、いつものと形が少し違うようですね」
「そうですわね。戦闘以外の訓練も出来るようになってくれていると嬉しいですわ。お稽古事のシュミレーションとか」
見た目の感想を漏らしたのはアサルトライフル〝FAMAS(ファマス)〟と同じくアサルト
ライフル〝TAR-21(タボール)〟である。普段から組んで任務に就く事の多い2人なので、こういう会話の息もぴったりだ。
「おっと、そこの2人も鋭いところを突くねぇ。そう、見た目が少し違うのは、いつもと違う環境をシミュレーション出来るようになったせい、と考えてくれていい」
大きく変わった点、と言えばシミュレーターの大本と言えるメインユニットの大きさくらいだろうか。使用者が身体を横たえる寝台なんかは新品になっているだけで、形状に違いは見受けられない。
普段から使用していない空き部屋と思いきや、いつの間にかこんな大規模な設備を取り入れていたのだから、やはりグリフィンは侮れない企業だなと思い知らされる。
「いつもと違う環境という風に説明したけれど、正確には外部から様々な環境データを入力できるようになった、という事だ。いつも同じような風景でみんな飽きてた頃なんじゃないかな?」
ペルシカの言葉に指揮官を除いた一同が揃って頷いたので、そういう事のようである。
「まずはテストとして、分かりやすいところで〝ゲームの世界〟をシミュレーターで体験してもらう事にした。入力するゲームデータを提供してくれたのが、ここにいるRFBってわけさ」
「黙っていてゴメンなさい、指揮官。ペルシカに秘密にしておいてほしいって言われたから」
「気にしなくていいさ。それよりも、願いが叶って良かったじゃないか」
「うん!」
元気に頷くRFBを見て、抱いていた不安も霧が晴れるように消えてくれた。本当は指揮官自身で彼女の悩みを解決してあげたいところだったのだが、それは次の機会に持ち越しである。
「ゲームというものはやった事がないのですが、私なんかが参加して大丈夫なのでしょうか?」
「心配はありませんよ、C。RFB様がお持ちのゲームでしたら、恐らくはアクション系のもの、特に銃を使用したシューティングが多いはず。それなら、私達でも十分に活躍できます」
アサルトライフル〝G36〟は妹分であるサブマシンガン〝G36c〟を勇気づけるようにして宥める。
今は慣れない事に挑戦するというので弱気な様子のG36cであるが、G36とコンビを組んでの戦闘は他の追随を許さないほどの華麗さを見せる。非常に頼りになる姉妹である。
「G36さんの言うとおり、アクション系を多く選んだから、みんな安心してくれていいよ」
「アクション系が多めという事は、頭を使わなければいけない場面もあるのでしょうか?」
「何人かで組んでステージに挑む事になるのだろう? それなら適材適所で動けばいいさ」
「銃で戦うのも良いけど、私は乗り物が運転できるステージが良いな。せっかく指揮官に教えてもらったんだから、少しでも練習しておきたい」
会話の順に、ショットガン〝M590〟 ライフル〝SVD〟 ハンドガン〝グリズリー〟と、口では言いづらいが、確かに、考えるよりも先に突っ込んでいく方が得意そうな面々である。
「じゃあ、ハイスコアを出した娘には何か景品を出すっていうのはどうかしら? 指揮官とお揃いの指輪とか」
「また恥をかく事になりかねないんだから、余計な事は言わない方が良いわよ。ネゲヴちゃん」
「くっ・・・今日こそは目にもの見せてやるから覚悟しておきなさい、UMP45」
1ヵ月前の演習でよほどの事があったのだろう、以来、45とネゲヴは事あるごとにバチバチと火花を散らすような関係になっていた。
相性最悪なのは彼も理解していたが、今回は精鋭を揃えろという話しだったので、45には我慢してもらってのネゲヴ選抜である。
「まず、キミ達13人を5つのステージに振り分ける。先にクリアした組が未クリアの組に増援として向かい、5ステージ全てクリアした時点でファイナルステージが解放される。全員でここをクリアすれば、それで全ステージクリア。晴れて現実へ戻ってこれると。まぁ、脱落したって無事に戻ってこれるのは変わらないから気楽にやってみてよ」
「13人? 12人ではなく?」
ここにいる戦術人形はRFBも含め12人。ペルシカの言い間違いと思った指揮官が指摘する。
「いや、13人だよ? 1人、2人・・・」
「ちょ、ちょっと待った!」
1人、の段階で早くも指をさされた彼が大慌てで口を挟む。
今度は何? と言いたげに怪訝そうな表情を浮かべるペルシカだが、今の指揮官はそんな相手の気持ちを考えてあげられるような余裕はない。
「俺が参加できるんですか?」
「そうだよ?」
「・・・なんで?」
「なんでって・・・ああ、さっき言い忘れてたっけ。この新型は人間も使用できる事を目指したものでね。詳しい方法は極秘なんだけど、もう実用段階には達しているから、テストとはいえそこは安心してくれたまえ」
これまでの実績を考慮してみれば、ペルシカという女性の技術は十二分に評価できるものである。しかし、今回は状況が状況なだけに、いくら有能な人物の言う事であってもさすがに不安は拭い去れない。
戦術人形の模擬訓練は電脳世界においての経験を現実の身体にフィードバックすることで能力の向上を図る、というのが指揮官が理解している大体の概要である。
生体である人間が電脳世界に入りこむ事も、現代の技術力をもってすれば可能なのかもしれない。しかし、聞いたところでどうせ理解出来ないだろう謎技術を施されるのは、恐怖以外のなにものでもないのである。
「何? もしかして、やりたくないのかな?」
「ぅ・・・これはさすがに・・・」
無理をする必要はない。大体、12人いれば参加人数として十分に足りるだろうし、ペルシカと一緒にみんなが戦っている様をモニターする、というのは実に指揮官らしさがあって良いじゃないか。
よし、断ろう。ぜひとも断ろう。
決心を固め、ペルシカにハッキリと答えようとするのだが。
「指揮官と一緒に戦えるんだ!? 私、そんな時が来たら良いなってずっと思ってたん
だよね~!」
「主様と共に戦場を駆ける事ができるだなんて・・・メイドとして、これ以上に光栄な事はありません」
「ふふ、良い機会だ。私の指揮官がどれだけ有能な男か見定めさせてもらおうか」
「指揮官に直接私の活躍を見せつける事ができれば・・・UMP45に勝てる!」
各々、言いたいように彼へ期待を向けてくるものだから、ついつい言葉が引っ込んでしまう。
プライド、というものはこういう時に実に厄介なモノである。
「あ~あ、これはもう引っ込みがつかないわね、指揮官?」
言われ、45に肩をポンと叩かれたのがトドメ。もう、完全に断れない雰囲気になってしまう。
「重ねて聞くけど、指揮官の安全は確実に保証してくれるんでしょうね?」
「もちろんだとも。万が一の事があれば、私を煮るなり焼くなり好きにしてくれていいよ」
ペルシカの返答を聞いて45は満足そうに頷く。
本当に万が一の事があれば、その時は45が彼の仇をとってくれそうなので、少しは楽な気持ちでテストに向き合えそうである。
「じゃあ、そういう事で俺もテストに同行する事になったから、みんなよろしく」
指揮官がそう宣言すると、戦術人形みんな揃って喜びの声をあげてくれる。
「愛されてるねぇ、指揮官くん」
肘でわき腹を突っつきながら、ペルシカはからかうような口調で言う。
こんな感じでからかわれるのなんてもう日常茶飯事のようになっているので、今更、どうということもない。
「そりゃあどうも」
あっさりとした答えだけ返し、指揮官と12人の戦術人形は電脳世界へのダイブ準備に取り掛かるのだった。
新章いかがでしたでしょうか?
当方の好みでレギュラーは固定ですが、できるだけ、以前とは違った娘を起用するよう意識しました。
みなさんのお気に入りの娘が活躍・・・できたらいいですね!
次回より戦闘開始となりますので、ご期待下さい!