ドールズフロントライン ~プレイヤーズフロントライン~ 作:弱音御前
相変わらず、外に出づらい毎日。ちょっとした暇潰しにでも読んでくれたらな~と思います。
それでは、今回もごゆっくりお楽しみください~
これまでのプレイヤーズフロントラインは・・・
「ゲームの世界で戦いたい、っていう事なのかな?」
「いつもと違う環境という風に説明したけれど、分かりやすいところで〝ゲームの世界〟を
シミュレーターで体験してもらう」
「俺もテストに同行する事になったから、みんなよろしく」
「これくらいの相手だったら、私1人でも問題なく・・・ふぇ!?」
「そのまま伏せてろ、41!」
「ご主人様は戦うのがすごく上手なんですね。普段のご主人様と雰囲気が違うけど、とてもカッコイイと思います」
Dive B エジプト地下遺跡
「ねえ、ファマス。指揮官はどれくらい御上手に戦闘が出来る方だと思います?」
すぐ横を歩くファマスに問いかけ、タボールは上前方に向けてトリガーを引く。
ヒラヒラ、と風に舞い上げられたチラシのように吸血コウモリが一匹、地面に落ちてきた。
「軍事組織の指揮官になるくらいですから、基本戦闘は問題なくこなせるのでは? しっかりした体つきですし、運動能力は良さそうに思えます」
すぐ横を歩くタボールに答えを返すと、ファマスは右前方から金切り声をあげて飛びかかってきた爬虫類のバケモノに向けてバースト弾を撃ち込んだ。
キュウ・・・、という倒してしまったのが申し訳なくなりそうな可愛らしい声と共に緑色の巨体が地面に倒れ込む。
「まあ! ファマスったら、指揮官の裸体をご覧になった事がありますの!? 私をさしおいていつの間にそのような仲に・・・」
「服の上からでもどんな体格かくらい見分けがつくでしょう? 全く、あなたはまたそうやって私の事をからかって」
よよよ・・・、と袖で涙を拭うような大げさなウソ泣きをするタボールを軽くあしらって、
ファマス達は石造りの壁で囲われた通路を真っ直ぐ進んでいく。
ファマスとタボールの2人組みは、このステージでは世界を股にかけるトレジャーハンターという役割であるらしく、今は地下遺跡に隠された秘宝とやらを探す任務の真っ最中だ。
秘宝というものが人間にとってどれだけの価値があるのかファマスには良くわからないが、そういう役割なのだから、という事で、様々な危険生物と罠がひしめくここを探索しているという次第である。
「ファマス、もっとこちらを歩きなさいな。そこの床、罠のスイッチのようですわよ」
「っと・・・ありがとうございます、タボール」
矢が飛んできたり床が開いて落とし穴になったり、この遺跡に足を踏み入れてから散々見てきたトラップなので注意深く観察したつもりだったのだが、タボールに指摘されなかったら、また面倒な事になっていたところだ。
ファマスとタボールは同じブルパップ機構のアサルトライフルという事もあって、出身は違えど、それなりに仲良くなれた間柄である。
そんな2人の事を指揮官も知ってか知らずか、同じ部隊で任務に就かせる事が多かったのも、
互いの信頼が深まる要因の一つでもあった。
タボールと一緒ならどんな敵にも負けはしない。
彼女の為なら、危険に身を投じる覚悟でいる。
今日もまた偶然なのか、共に戦える機会が与えられた事に、ファマスは表には出さずも大きな
安心と喜びを感じていた。
「・・・この先、どうやら開けた場所の様ですね」
「ようやくですか。いい加減、この狭い通路に飽き飽きしていたところですわ」
広い場所という事は、その分、潜んでいる危険も多いという事。2人揃って銃を構え直すと、より慎重に歩を進めて行く。
入口を仕切る格子のように垂れ下がったツタを払うと、その先には石室が広がっていた。
一体、なんの目的で使用されていたのか、広さ30メートル四方ほどの室内には瓦礫や人骨がちらほらと落ちているだけで、他には何も置かれていない。
「あら? もしかして行き止まりですの? ここまで一本道だったはずですのに」
「ふむ・・・もしや、どこかにスイッチがあって、作動させると隠し通路が開くのでは?」
「ゲームの世界というお話ですものね。それくらいベタな展開でもおかしくはありませんわ」
石室を左右に分け、2人で壁、床、天井、落ちている骨に至るまで、あらゆる場所をくまなく調べて周る。
「もし、少々お尋ねしたい事があるのですが。この辺りに隠し扉のスイッチなどありませんこと?
ご存じない? それでは、ごめんあそばせ」
ファマスを和ませるための冗談なのだろう、落ちていた骸骨から情報収集してみせるタボール。
戦場みせる彼女のこんなユーモラスなところも、ファマスが彼女と一緒に居て心地良さを感じるひとつである。
自分も彼女にとってそんな存在でいるのだろうか? と微かな不安を抱きつつ壁を観察していると、明らかに周りの壁とは違った造りの一角を見つける。
「タボール、こちらの壁にスイッチの様なモノを見つけましたよ」
「私に構う事はありませんわ、見つけたもの片っ端から押してしまいなさい。さぁ、ポチっとどうぞですわ」
「簡単に言ってくれますね。さっきまでのような罠だったらどうするんですか」
押す前に自分の周囲を確認する。石の継ぎ目からノコギリが飛び出してきたり、床が開いて
落とし穴になったり、罠があるとしたらそんなところだろうか。
すぐに逃げ出せるよう身構え、違和感のある石壁を押してみる。
ズズ・・・と渋い手応えと共に完全に押し込まれたのを確認するや否や、ファマスは立っていた位置から後方に大きく飛び退いた。
何かを作動させたのは間違いないが、何かが襲いかかってきたりどこかが開いたりといった
アクションは今のところ石室内のどこにも見受けられない。
「・・・何も起こりませんわね。フェイクのスイッチで弄ばれたのではなくて?」
「いや、そうでもなさそうです。・・・この音、聞こえますか?」
ファマスの言葉にタボールも口を閉じ、息を殺す。
静寂が支配する石室の中に、ファマスが微かに捉えた異音が際立って聞こえてくる。
カサカサカサ・・・カチカチ
「何ですの、この音? 金属音ではないようですが、何か硬いモノが当たるような」
「壁の向こうから聞こえてきますね。それも、段々と大きくなってきている」
カサカサカサカチカチカチカチカサカサカサ
カチカチカチカサカサカサカチカチカサカサ
言い知れぬ不安を覚え、2人して自然と壁から離れるが、それもあまり意味は無い。音はこの
石室の全周360度から聞こえてきているのだ。
「っ! ファマス、入口がありませんわ!」
タボールの慌てた声を聞いて、ついさっき通ってきたばかりの入口に目を向けると、そこは一面石の壁になっていた。
これで2人は密室に閉じ込められた事になる。
「なかなかどうして、面白い事になってきましたね。戦闘準備といきましょうか、タボール」
「ええ、よろしくってよ。これこそ、私たち戦術人形の本分ですものね」
背中あわせに立つタボールからの了承を受け取ると、ファマスはポケットから予備のマガジン
2つと接着テープを取り出した。
銃に刺さっているマガジンに取り出したマガジン2つを上下逆向きにして挟み、接着テープでしっかりと固定する。こうすることで、リロードの為に外したマガジンをそのままひっくり返せば、横に固定した新しいマガジンをリロードできる。
いわゆる〝ジャングル仕様〟と呼ばれるものだ。
謎の敵が部屋の四方八方から大物量で襲いかかってくると、そう見越しての作戦だ。
「マガジン2本纏めで間に合うのですか?」
チラリと後ろを見やれば、タボールもファマスと同じ事をしている。しかし、マガジンは2つ纏めである。撃破数を気にする割とアグレッシブな彼女にしては控えめだ。
「私、3つも纏めるとマガジンがお胸に当たってしまって銃を構えられませんの。お淑やかなお胸のファマスさんが羨ましいデスワ~」
「さすがにブン殴りますよ?」
にっこりと笑って返してやると、タボールは乾いた笑いを零した。
本気で怒った、という旨を理解してくれて何よりである。
2人が立つのは石室の中央。背後をタボールに任せ、視界内のあらゆる場所を注意深く
観察する。
謎の音が耳を覆いたくなるほどに大きくなった時点で、ファマスの上前方、天井の穴から黒い
染みのようなものがブワッと染み出てきた。
「な・・・!?」
あまりに気味の悪い現象を目の当たりにして言葉を失うファマスだが、良く見れば、それは染みなどではなかった。
あまりにも密集しすぎて黒い染みのように見える虫の大群である。
「きゃあ!? なんか、黒い墨のようなものがあちこちから出てきましたわよ!?」
「墨ではなく、虫の大群です。応戦しますよ!」
ファマス達に向かって広がってくる大群に向けて弾丸を撃ち込む。
着弾した部分から、子供の握りこぶし大の昆虫がボロボロと床に落ちていくが、
バーストでは大群を一掃しきれない。
「ちぃ!」
セレクターをフルオートに切り替え、トリガーを引きっぱなしで弾幕を展開する。
マガジンを1つ使いきったのと同時に群れを一掃すると、ファマスの目の前、床に転がっていた虫の亡骸が石の床に溶けるように消えていった。
「なんですのなんですのこの虫は!? もしや、噂に聞くカブトムシというやつなんですの!?」
タボールの言うとおり、黒く艶やかな硬い外皮に覆われたこの虫は、かつて世界中に何百という種類が生息していたカブトムシに近い見た目をしている。
だが、これは資料で見たその品種とは所々で相違のある虫だ。カラダは大きく、移動速度も速く、なにより、他の生物に襲いかかってくるような凶暴性は非常に特徴的である。
「違いますよ、タボール。これはたぶんスカラベです」
「すからべ・・・とは?」
「詳しい性質や原産は忘れましたが、厄介な性質として言えるのが、凶暴な肉食性の昆虫だという事です。まぁ、私も映像作品で見た事があるだけなので、実在した生物なのかも分かりませんが」
「うぇ・・・お肉を食べる昆虫ですの? ああ、でもそれなら私達は安全ですわね。なんたって、戦術人形にお肉はありませんから」
「本来ならばそうですけどね。ただ、ここはシュミレーターの世界ですから。主人公を襲わない敵、というのはまさに本末転倒というものです」
再び、カサカサというスカラベの足音が大きくなってきたのを受けてファマスはマガジンを
リロードする。
「また来ますよ」
「正体がわかってしまえば、もう怖くなんてありませんわ。今度は本気でお相手いたしますわよ、ファマス」
言って、タボールが部屋の奥に向かって駆けだした。
部屋の中央に留まっての防戦ではなく、駆け回って相手を撹乱させての迎撃戦に持ち込むつもりである。
そう理解するや、ファマスもタボールと反対側に向けて走り出す。
正面、行く先の床からスカラベの大群が這い出てきたのを視認して左に大きく迂回する。
すると、その行く先の床ところどころから黒い染みがどんどんと沸き出してくる。
いよいよもって、プレイヤーを殺しにきているような激しさだ。
「ふっ!」
大群に踏み入れるまであと一歩、という所まで走り込み、前方の壁に向かって大きく跳躍。
スカラベの大群を飛び越えた。
5メートルは越えようかという大跳躍の先に待ち受ける壁を足で蹴飛ばすと、三角飛びの要領で更に高く舞い上がる。
鮮やかな赤色のジャケットを翻し、優雅に宙を舞うファマス。その真下には、目標を見失った
スカラベの大群が続々と集まっている。
中程度の塊が部屋中に点在するというのは非常に厄介なものだが、こうして一カ所に纏まってくれれば話は別。美味しいカモだ。
空中で射撃姿勢を整え、眼下の大群に向けてフルオート射撃をお見舞いする。
ファマスが華麗な着地をみせる頃には、池のように広がっていたスカラベの大群はキレイさっぱり消え去っていた。
「ファマス~! こちらに手を貸していただけませんこと~!」
焦りの様子が滲み出ている声を聞いて、タボールの方に目を向ける。
ついさっき見た時は上手く立ち回っていたようだが、どこかで手順を違えたのだろう、タボールは部屋の角に追い詰められ、その周囲はスカラベの黒色で完全に染まっていた。
ファマスがあの立場に追いやられたとしたら、もう声が震えそうなくらいの大ピンチである。
「お胸のお肉を千切って囮にしたらどうですか~? 私のようなお淑やかなお胸の戦術人形にはできない芸当ですけどね~」
言われて本当にイラッときていたネタでタボールに仕返しをしてやる。もちろん、タボールがまだギリギリのところで凌げていると分かっていての仕打ちだ。
「そ、その件に関しては心より謝罪致しますわ~! ですから、ホントに早く助けて下さい~!」
足元まで攻め込まれ、いよいよもって防衛も限界だとみるやファマスはタボールの救出にとりかかる。
ファマスを足止めするかのように沸いてくるスカラベを一掃しつつ、部屋の中央に差し掛かったところでポケットから〝とっておき〟を取り出した。
「タボール、これが見えますか?」
もう、部屋の3分の1を覆ってしまっているスカラベを一掃するのはアサルトライフルの制圧力では難しい。ファマスの榴弾を使用すれば広範囲を吹き飛ばす事も出来るが、持ち弾1発だけではまだ足りない。
そこで登場するのがこれ。倒した敵が消え、代わりに出現する補給用の弾薬の中から、こんな事もあろうかとくすねておいた12ゲージバックショットだ。
「見ている暇はありませんが、いちおう見えますわ~!」
「そっちに放りますから、適当な位置で撃ちなさい!」
鷲掴みにした4つのショットシェルをスカラベの大群の頭上、等間隔に放り投げる。そうして、まるでシンクロしたかのようなタイミングでお互いに2つずつショットシェルを撃ち抜いた。
石室内の空気を揺さぶる爆音をあげ、ショットシェル内のペレットが床に向けて降り注ぐ。
スカラベからすれば、さながらクラスター爆撃を受けているかのようなものなのだ。
一瞬にして広範囲のスカラベを殲滅するその光景は、見ていてとても気持ちの良いものである。
「ふぅ~・・・これで全部ですかね」
砕けた床の粉塵が晴れると、床に掌ほどの大きさの円盤が落ちているのが目についた。
スカラベを全滅させた事で現れたのだろうそれは、すり傷だらけでくすんだ金色の円盤。拾ってくれ、と言わんばかりに存在感を強調している。
きっと、これがこの遺跡の秘宝というものだろうと理解したファマスはその円盤を拾い上げる。
「ファマスぅ~!」
「ちょっ! タボール、いきなりなんですか!?」
粉塵に紛れて突っ込んできたタボールが勢いもそのままに抱きついてくる。いきなりの衝撃で
倒れそうになるが、寸でのところで踏みとどまった。
「散弾を誘爆させて敵を一掃するだなんて、やっぱりファマスの悪知恵は頼りになりますわ!」
「それは褒めてるのですか? それともけなしているのですか?」
「うふふ、もちろん褒めていますわ。戦闘においては私もまだまだ貴女には及びませんもの」
からかって言っているのではない事は、長い付き合いだかこそ分かってしまう。
一番に信頼している仲間から真っ直ぐな感謝の気持ちを向けられ、とても嬉しい反面、気恥しさが込み上げてきてしまう。
だが、恥ずかしがっている事がバレたら何を言われるか分かったものではないので、ファマス的には頑張って隠し通すつもりである。
「あら? もしかして、それが目的の秘宝というモノですの?」
タボールの興味が円盤に移ってくれたのが幸い、とファマスは心の中で安堵の息をついた。
「これまで、敵を倒してもこんなもの出てきませんでしたからね。間違いないでしょう」
「では、これで晴れて任務完了・・・と言いたいところですが、どうやって帰りますの?」
「う~ん・・・どこかに入口が現れるような様子もありませんね」
2人で周囲を見まわすが、石室は依然として密室のまま静まり返っている。
入口を開くスイッチは別にあるのだろうか、という考えが頭をファマスの脳裏を過った。
・・・そんな矢先だった。
「あら?」
「へ?」
ガコン、と重い音と共にいきなり石室の床が傾いた。ちょっとだけ角度がついた、程度の話しではない。底が抜けたのかと勘違いするくらいの急斜面に変化したのだ。
「あららららららら~~!?」
「きゃああぁぁぁぁ~~!?」
咄嗟の事で面食らった2人は止まる事も出来ず、成す術なく床を滑り降りていく。
石造りだというのにやたらと摩擦係数が低いという謎性質のおかげで、自動車がちょっと頑張って走っているくらいのスピードが出てしまっている。
「あははは! これ結構楽しいですわね~!」
「笑っている場合ですか! いつまでも滑り降りているわけにもいきませんよ!?」
何が楽しいのか、タボールはキャーキャーとはしゃいでいるが、行く先が真っ暗な中を滑り続けるのは危険以外の何ものでもない。
高速で背後に吹っ飛んでいく景色の中で、ファマスは打開策を見つける為に思考を巡らせる。
「・・・そういえば」
身体を捩らせると、ファマスはストレージの中から一本のロープを引っ張りだした。
ステージ開始時、ファマスとタボール共に幾つかの装備が入ったストレージを所持していた。
タボールはピッキングツールやバールなど、少し考えれば何に使えそうか想像がつくモノが多かったが、ファマスは古びた手帳やメガネなど、深く考えても何に使うのやらさっぱりな物ばかりであった。
だが、これはそんな中でも唯一、利用方法が丸分かりのお役立ちアイテム。ライフルグレネードを改良した射出型アンカーである。
アンカーの後端にはフック付きの長いロープが結び付けられているので、アンカーを撃ち込んだ先と自分の身体を繋ぐ事も出来るという優れモノだ。
「ゲームというのは都合よく出来ているものですね」
フックを自分のベルトに掛け、アンカーをマズルに差し込もうとするが、雑なハンドメイド
仕上げのせいでなかなかマズルに刺さってくれない。
「ファマスファマス! 先に光が見えてきましたわ。どこかに出られそうですわよ!」
タボールの言うとおり、目下に煌めく小さな光がどんどんと大きくなってきている。
このまま安全な場所に飛び出てくれれば結果オーライなのだが・・・嫌な予感がビリビリと奔るファマスはアンカーを取りつける手は止めない。
そして、やはり当然の如くというか、嫌な予感は的中してしまうのだった。
「こ、この先ってもしかして・・・崖ですの~!?」
滑ってきた勢いそのままに、まるでダストシュートに放り込まれたゴミのように揃って宙に投げ出される。
流転する景色の中で、広大な地下洞穴だということだけは確認する事が出来た。
「タボール、私の身体に掴まりなさい!」
「よくってよ~! 私たち、死ぬ時も一緒ですわ~~!」
自由落下の最中、死ぬつもりでタボールはファマスの脚にしがみついてくる。けれど、ファマスはここで終わるつもりなど毛頭ない。
宙に放り出される直前に装着完了していたアンカーを正面の岩壁に向け、躊躇なくトリガーを引いた。
炸裂音と共に撃ち出されたアンカーが岩壁に突き刺さった事を遠目に確認、ロープが瞬く間に伸びていく。
そうして、ロープが完全に伸びきったところでファマスの落下に急ブレーキがかかる。
「くっ!」
「きゃあ!?」
ガクン! と落下の勢いを急に止められた影響で身体に強い衝撃がかかるが、シュミレーターの中では痛みがないのは幸いだ。
タボールも衝撃で少しだけ脚からずり落ちるが、なんとか堪えてくれたようである。
しばらくの間、振り子のようにロープの先で揺れる2人。ようやく揺れが落ち着いてくれたところで、揃って大きく息をついた。
「ふぅ~・・・貴女には助けられてばかりですわね」
「困った時はお互い様ですよ。崖伝いに降りられますか?」
「ええ、これくらい造作もありませんわ・・・っと」
2人がぶら下がっている位置から地上までは目測で20メートルほどあるが、タボールは臆する事も無くファマスの脚から崖にひょいと飛び移る。
起伏に富んだ崖なので、伝い降りるのは難しくなさそうである。
タボールが難なく降りている事を確認して、ファマスも崖に身体を移してロープを切り離す。
危なげなく崖を降りること数分。先に着地していたタボールに並んで周囲の様子を確認する。
「これは・・・シュミレーターとはいえ圧巻ですね」
「戦闘訓練だけではなく、指揮官様との観光で訪れたいものですわ」
地下洞穴内には、地上の主要都市に勝るとも劣らないほど広大な都市が広がっていた。
古い造りの都市群ではあるが、それらは外壁、路地、モニュメントに至るまで全てが金色に染まっており、火も電灯も無い広大な洞穴を明るく照らしあげている。
自生の発光コケを光源として周囲の金色がそれを反射、照明とする原理なのだろう。現代では考えられないシステムである。
「エルドラドというものでしたか。資料で見た事がありますわね」
「黄金郷・・・私達にはよく分からないモノですが、きっと、人間にとっては理想の都なのでしょうね」
まだステージが続いているということは、秘宝を手に入れる、というクリア条件を達成していないという事になる。
さっき手に入れた秘宝らしきものは残念ながらハズレだったわけだが、この先に進むのに必要なアイテムという可能性もあるだろう。
「さて、早いところあの黄金郷の捜索といきたいところですが・・・」
「まずは、あの方達を始末してからですわね」
ファマス達の前方、黄金郷へと伸びる一本道を悠然と歩いてくるのは、これまた黄金一色の
歩兵軍である。
鎧兜姿に剣と盾を携えたその一団は、さしずめ、ここを護る黄金像の軍団といったところか。
「私達の冒険はまだまだこれからですわ!」
なんとなく縁起の悪い台詞と共に特攻をかけるタボール。
「本当に、あなたと一緒だと退屈しませんね」
もう、これまでに何度も呟いた言葉。タボールと一緒に居る事に心からの喜びを現す言葉を
呟き、ファマスもタボールの後に続くのだった。
~NEXT プレイヤーズフロントライン~
「今日この場で叩きのめしてやるわ、UMP45!」
逆襲の桃色と
「はい、ネゲヴぼっち~」
煽ってくるスタイルの正妻
「えへへ、ご主人様の香りがしますぅ」
無邪気なる小悪魔に癒されて
「なにやってんだお前らぁぁぁあぁぁ!!」
指揮官怒りの咆哮
プレイヤーズフロントライン 4話 Coming Soon
ファマス&タボールのコンビ、いかがでしたでしょうか?
ファマスはもともと好きな銃だったという事もあり、ゲームでも早々にLv100まで育てた思い入れのあるキャラだったりします。
ちょっと忖度してますけど、しかたないですよね、うん。
ということで、次回もどうかよろしくお願いします