ドールズフロントライン ~プレイヤーズフロントライン~   作:弱音御前

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ネット回線について色々と考えさせられる今日この頃。
こんにちは、弱音御前です。

プレイヤーズフロントラインもそろそろ折り返しに差し掛かりました。
テキトーな内容ですが、少しでもお楽しみいただけていれば嬉しいです。

それでは、今週もどうぞお楽しみください


プレイヤーズフロントライン 6話

 ここまでのプレイヤーズフロントラインは・・・

 

 

 

「・・・ごめんなさい。私のせいでアナタがこんな目にあった」

 

 

「では、1つお願いを聞いて下さい。・・・最終ステージのクリアまであなたが残る事。できますか?」

 

 

「まあ! ファマスったら、指揮官の裸体をご覧になった事がありますの!?」

 

 

「面白い事になってきましたね。戦闘準備といきましょうか、タボール」

 

 

「私達の冒険はまだまだこれからですわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Dive E PTS(惑星間運搬船)ヤヨイ 第2エアロック

 

 

 

 タボールが目を開けると、そこは数秒前まで居た場所とは似ても似つかぬような場所だった。

 

「あら? 今度はやけに現代的な場所ですのね」

 

 黄金やら宝石やらに囲まれた石室で、闇の世界を復活せんとする〝古の王〟とやらをファマスと協力してボコボコにしたところでステージクリア、と合いなったタボール。それが今は一転、床も壁も天井も暗く無機質な金属作りの部屋に立たされている、といった状況である。

 雰囲気からして、グリフィン基地の内部とは違うが同じような時代の基地施設内、といった装いのステージだ。

 

「タボール、これはもしかして宇宙船ではないですか?」

 

「なんですって!?」

 

 壁に設けられた窓を覗いているファマスの言葉を聞き、タボールは、まるで餌を見つけた犬の様な勢いでファマスのもとに駆けつけた。

 

「所々にエアロックなんていう言葉が書いてありますし、窓の外はこの有様ですからね」

 

「まあまあ! なんていう美しい光景でしょう! 地球は青かった、とはよく仰ったものですわね!」

 

 窓の外、漆黒のキャンパスに青と白のコントラストが見事な球体が浮かんでいる。

 別段、宇宙というものに憧れがあったわけではないが、未知の体験が出来た事でタボールの

テンションも鰻登りだ。

 

「ですが、所詮はシュミレーターですから。映像を見ているのと変わりませんよね」

 

「ちょっと! そういう雰囲気台無しな事を言っては、めっ! ですわよ!」

 

 勢いに任せて叱るも、ファマスは呆れた表情を浮かべている。

 もう、こんなリアクションをされるのも一度や二度ではないので、めげたりはしないタボールなのである。

 

「ですが、貴女の言うとおり、観光に来たわけではないですものね。ここでも何かをしなければならないのでしょう」

 

「ただ、今回は何の指示もありませんね。タボールは何か所持しているモノはありませんか?」

 

 前ステージではストレージを所持していて、その中に攻略に必要な道具がいくつか入っているという状況だった。

 今回も何か、とポケットを探って、身に覚えの無いカードが入っている事に気が付く。

 

「これは? ・・・〝惑星間運送企業ヤマト セキュリティーチーフ タボール〟ですって。私の顔写真もちゃんと貼られていますわ」

 

「この船内で使用するIDカードなのでしょうか? 私は同企業の支店長と書いてありますね」

 

「な、なんで私がセキュリティーでファマスが支店長なんですの!? 同じ戦術人形だというのに、この格差には納得できませんわ!」

 

「私に言っても仕方がないでしょう。とにかく、このエアロックエリアから出てみましょうか」

 

 まちがって宇宙空間に出てしまわぬよう、案内表示を確認して船内への隔壁へと向かう。

 スライド式の電動ドアは、紙の一枚すらも通らないような精度で頑強に閉じられている。その横には青色に光るコントロールパネルが設置されていた。

 

「このパネルがカードリーダーになっているようですね。開いてくれるでしょうか?」

 

「支店長なんですから、どんなものでも一発なのではなくて~?」

 

 やはり、ファマスの方が役職が上というのが気にくわないタボールは放り投げるように答える。

 もう、そんな様子のタボールもいつもの事と軽くいなしつつ、ファマスがパネルにIDカードをかざしてみる。

 ブー、といういかにもダメそうなブザー音と共にパネルが赤に変色した。

 

「随分と権限の少ない支店長もいたものですわね」

 

「いつまでも拗ねてないで、今度はあなたが試して下さい」

 

 ファマスに言われ、口を尖らせながらタボールがパネルに歩み寄る。

 IDカードをパネルに当てると、今度は軽いピープ音が鳴り、パネル色が緑色になる。

 明らかにイケた感じである。

 

「ふふん、セキュリティーチーフの肩書は伊達ではありませんわよ?」

 

「はいはい。セキュリティーチーフばんざ~い」

 

 ヤル気なさげながらもタボールの話しにのってくれたファマスに感謝しつつ、パネルに表示されたオープンのアイコンをタップする。

 甲高いモーター音をあげながら扉が左右にスライドしていく。

 船内の空気がエアロックエリアにも入り込んできて・・・その空気を吸い込んだところで

タボール、ファマス共に反射的に口元を手で覆う。

 

「うっ! なんですの、この匂いは」

 

「ヒドイ匂いですね。腐臭・・・でしょうか?」

 

 スライドドアが半分ほど開き、船内の様子が見通せるようになったところで、今度は口元から手を放し、2人同時に銃を構える。

 それは、悪臭よりも目前に迫る危険に対応するのが優先と判断した故の行動。

 ドアの先、横に伸びる通路は、まるでペンキでもぶちまけたかのように真っ赤な液体が飛び

散り、所々には赤黒い何らかの塊がこびり付いている。

 エアロックとさして変わらない、薄暗い照明に照らされたその光景は、現実世界の任務で目の当たりにするものよりもヒドイ有様だ。

 

「これは、いつの間にか現実に戻っていたというオチではありませんよね?」

 

「おそらく、ですけどね。ひとつ試してみますの?」

 

 シュミレーター内では痛みを感じない、という不変の理が存在する。

 横に並び立つファマスの脚を蹴り飛ばそうとして、でも見事に避けられてカウンターで蹴りを

お見舞いされる。

 痛みは無かった。

 

「ご安心なさって、シュミレーター内ですわ」

 

「それなら良かった・・・とは言い難い状況ですけどね」

 

 先の様子を確認しようと、どちらともなくゆっくりと前に進み出る。

 横に伸びている通路の先、死角になっている位置からの音は聞こえない。

 この船内の機器が駆動している、ゴゥンゴゥン、という低い音が四方から小さく、不気味に反響し渡っているだけだ。

 

「こちらはクリアですわよ」

 

 距離にして30メートルほどだろうか、真っ直ぐに伸びた廊下はやはり赤い液体まみれであるが、生物の気配は感じられない。

 シュミレーター内だという確証は得られたが、それにしたって、これはあまりにも酷い内容の

ステージだ。先にここを攻略している組の無事を確認したい、とタボールの気持ちが自然と逸る。

 

「・・・・・・? ファマス、そちらはどうですの?」

 

 ちょっと考え事をしている間、反対側の通路の様子を確認しているファマスからの返答が無かったので改めて尋ねてみる。

 

「え!? え、ええ、こちらも敵性反応はありませんですわ」

 

 なぜか、いきなり中途半端なお嬢様言葉を使われたものだから、自分のアイデンティティーが

穢されたのかと考えてしまうタボール。

 だが、どこかそわそわと落ち着かないファマスの様子を確認したのと、少しだけ思考を巡らせたところで、ある事に気がついた。

 

(たしか、ファマスって・・・これは言わないが華というやつなんですの?)

 

 口に出そうとして、でも寸でのところで心の声に切り替える。

 確証もなかったので、もう少し様子を見る事をタボールは選択した。

 

「危険な予感しかしませんが、進んでみる他ありませんわね」

 

「見たところどちらも変わらないような風景ですが、どちらに進みますか?」

 

「う~ん・・・迷ったら左の法則でしてよ」

 

 適当に選んだ、と見せかけてファマスが立っている側をわざと選んだタボールである。

 

「さぁ、お先にどうぞですわ」

 

「・・・・・・何が出てくるか分からない場所ですし、2人で並んで進むのはどうでしょうか? そうすることでお互いの警戒範囲を明確にできますし、何よりも味方を誤射する危険性が下がるというのは大きなアドバンテージであると考えます」

 

「はいはい、良くってよ。では、並んで進みましょう」

 

 やたらと自分の正当性を主張してくるファマスの言葉を遮り、意見に同意してあげる。

 全周囲への警戒を怠らず、足音を殺しながら廊下を進む。

 廊下を10メートルほど進んだところで、どうしても言ってやりたいことがあったタボールが

ここで口を開く。

 

「ファマスさん? くっつきすぎですわ。くっつきすぎ」

 

 普通、横並びに進むのなら1人分くらいの間を空けて立つものだが、ファマスはタボールの身体にピッタリとくっついたまま歩き進んできていたのだ。

 これではいざという時に反応しづらいし、振りまわした銃身を当ててしまいそうだしで、さっきファマスが捲し立てた主張なんてどこへやらである。

 

「そう・・・ですか? でも、間を空けてしまうとそこに敵が飛び降りてきたりしたら不意を突かれてしまうと思うのですが」

 

「そうならないよう全周を警戒していますのよ。ピッタリくっつかれたら動きが遅れてしまい、

それこそ、いざという時に危険だと思いませんこと?」

 

「・・・・・・道理です。では、ちょっとだけ」

 

 タボールに論破されて反論の余地もないと悟ったのか、ファマスは俯きがちながらも言う事に

従い、本当に少しだけ、半歩くらいだけタボールから離れてくれた。

 もう、ここまでの様子を見てタボールの予想は確信に変わっていたが、あえてその事を言葉に

出すつもりはなかった。

 この先、ファマスがどんな面白いリアクションをとってくれるのかをしらばっくれたまま

見たい、というタボールのイタズラ心に火が付いてしまったのだ。

 ファマスが離れてくれた事で歩きやすくなり、廊下の突き当たりに差し掛かるのもあっという間の事だった。

 突き当たりには再びスライドドアが設けられており、横の操作パネルもエアロックを開けたのと同じものである。

 タボールがカードをかざすと、難なくドアが開いてくれた。

 ドアの先は一直線に伸びる通路。さっき通ってきた通路と違うのは、両側の壁に等間隔にドアが設けられているところだろうか。

 それと、あと一点。通路のど真ん中に白衣を纏った人物がうつ伏せに倒れているのだ。

 どれだけおバカな戦術人形が見たって分かる明らかな罠だが、それでも、情報が明らかに足りない今は突き進むしかないのである。

 

「はぁ~・・・調べに行きますわよ」

 

「い、いい行くんですか!? 私はここで警戒していますから、タボールお1人でどうぞ」

 

「一緒に居た方が安全だと思うのですが。まぁ、いいですわ。お好きになさって」

 

 わざとファマスを放り出して先に進むと、後から慌てた様子で追いかけてくる。

 笑いたいのを堪えるのに必死な性悪人形タボールだ。

 

「もし? 生きておられますか? それとも、すでにお亡くなりになってますの?」

 

 出来るだけ距離をとり、銃口で背中をつついてみるが反応は無い。白衣は血まみれで顔も見えないので、生死の判別はできない状況だ。

 

「ちょっと、ファマス! 押さないで頂けますこと?」

 

「もうしわけありません。しかし、周囲をしっかりと確認しないといけませんので」

 

「だから、そんなにくっつく必要はありませんでしょう。と、何かポケットに入ってますわね」

 

 ファマスに押され、眺める角度が変わったことで白衣のポケットに入っている物が目についた。

 見たところ、小型のタブレット端末だろうか。白衣と違って汚れ一つ付いていないのは不自然

極まりないところだ。

 

(絶対に来ますわね、コレ)

 

 そう覚悟を決めつつ、タブレットに手を伸ばすタボール。

 

「平気なのですか、タボール?」

 

「来ますわよ。戦闘態勢で待機してなさいな、ファマス」

 

「来るって・・・ななな、何が来るんですの!?」

 

 銃を構えたままその場で慌てふためくファマスを横目でチラリと見て、ついに笑いが堪え切れなくなってしまう。

 笑って身体がブレた事で、タブレットを掴んだ手が身体に触れてしまう。

 大方の予想通り、それがスイッチだったのだろう。白衣の人物はいきなり動き出すと、タボールの脚にしがみついてきた。

 

「きゃあ!?」

 

「ぎゃああぁぁあぁぁあぁ~~~~~~~~~~~~!!」

 

 しがみつかれたタボールよりも大きな叫び声をあげるファマス。

 そんな彼女のリアクションを眺めていたいのは山々だが、このままでいるわけにもいかない。

 

「手を離しなさい、汚らわしい!」

 

 敵であると断定し、頭部に向けて銃弾をお見舞いする。

 セミオートの一発を受け、まるで水風船が破裂するような勢いで頭部が爆ぜた。

 

「いやぁぁぁあぁぁぁあぁ~~~~~~~~~~~~!!?」

 

 飛び散る赤黒い液体と固体を目の当たりにして、ファマスは更にワントーン高い大絶叫。

 しかし、しがみついている手は依然として外れず、身体はもがき動いている。

 

「頭を吹き飛ばしたのに!? お約束はちゃんと守りなさいな!」

 

 矢継ぎ早に両腕を吹き飛ばしたところでようやく敵の動きが止まってくれる。

 突然の事でタボールも少し慌てたが、右手にはお目当てのタブレットが収まってくれているので結果オーライである。

 

「ううぅ・・・タボール・・・タボールぅ~~」

 

 涙目でその場にへたり込むファマス。

 あまりにも可愛らしいその仕草を前に、思わず手を伸ばそうとした・・・その時だった。

 サイレンが鳴り響くと共に、通路を照らしていた照明が赤く変化した。

 

〝コード89が発令されました。繰り返します。コード89が発令されました〟

 

 女性のアナウンスがサイレンに混じって廊下に響き渡る。

 コード89とやらが一体どういうものなのかタボールには分からないが、このやかましい

サイレンと赤い照明から推測するに、かなりエマージェンシーな事態だということはなんとなく

理解できる。

 

「もう、今度はなんですの!?」

 

〝船内の全隔壁を解放します。隔壁付近の乗組員は注意して下さい。繰り返します。船内の全隔壁を解放します。隔壁付近の乗組員は・・・〟

 

 そんなアナウンスの続きと共に、タボール達が入ってきたドア、通路の先のドアはもちろん、

通路の左右に設けられたドアも一斉に開きはじめる。

 

「なにやら、すっごい嫌な予感がしますわね」

 

「タボールぅ・・・これって、もしかして」

 

 2人が恐らくは同じ予想をたてだろう、そんな矢先だった。ドアの奥から皮膚の腐った白衣の

人型、もとい、ゾンビが通路に這い出てきた。

 通路の中央に居たのが災いし、開いた扉の悉くから出てきたゾンビ達にあっという間に包囲されてしまう。

 

「こうなること、知っていましたわ!」

 

 背後からのファマスの絶叫を耳にしつつ、タボールがゾンビ狩りをスタートする。

 頭を吹き飛ばしても動き続けるという先ほどの教訓を活かし、狙うは頭と両腕。攻撃手段を失わせる事が撃退の条件なのだろう、それでゾンビの身体は床にゴロリと転がり、急速に溶けていく氷のように姿が消えていく。

 代わりに補給用の弾薬が落ちていてくれるのはとても嬉しい点である。

 敵の数は多いが、3発の弾丸で倒せる事を考えれば2人でも十分に凌ぎきれる数である。

 ヨタヨタと歩いてくるゾンビを的確に倒しつつ、ドロップした弾薬を拾って補充するという

お手本の様な戦い方をみせるタボール。

 その一方で、タボールの背後はもう大変な事になっていた。

 

「来ないで来ないで来ないで来ないで~~~!」

 

 懇願しつつ、ファマスはフルオート状態で銃口を振りまわす。よほど怖いのか、目を瞑ったままそんな事をしているものだから、タボールよりも撃破効率は圧倒的に悪い。

 銃弾の雨を運良くかい潜ってファマスに襲いかかるゾンビだが、しかし、振りまわしている銃身でぶん殴られてあっけなくやられ、結局は無事に押し留められている、といった状況である。

 そんなこんなで戦況を巻き返し、敵の数も残すところわずかという楽勝ムードを確信し始めた。

 そんな時だった。

 

「お~い! みんな無事だった~?」

 

 タボール達が向かおうとした廊下の先から、聞き覚えのある声が響いてきた。

 さっさとゾンビを倒して周囲をクリアにすると、声が聞こえてきた方に目線を移す。

 通路の先から、ブンブンと手を振りながら元気良く走ってくるのは、黄色と黒のタクティカルジャケットに栗色のツインテールがトレードマークの戦術人形。サブマシンガン〝UMP9〟だ。

 

「9さんでしたか。頼りになる方に来て頂いて、嬉しい限りですわね」

 

 9に向けて手を振って答えるタボールの背後では、ファマスが弾切れ状態になっている銃をまだ振りまわし続けている。

 もう、めんどくさいので放置をきめこむタボールである。

 

「9さんもご無事そうで何よりですわ~! 他の方々はどちらにいらっしゃいますの~?」

 

「今はそれどころじゃないから、詳しい話しは後でするよ~!」

 

 それどころではないと言う割にはやけに明るい笑顔だな、とタボールが首を傾げる。

 疑問の答えが出たのは次の瞬間だった。

 突然の轟音と共に通路天井から降り立った〝何か〟が9の行く手を塞いだのだ。

 通路を完全に塞ぐほど巨大な黒い人型、というくらいしか遠目では確認が出来ない物体である。

 

「足下がガラ空きだよ~っと!」

 

 人型の両脚の間をスライディングで滑り抜け、9が再びタボールのもとに向かって走ってくる。

 

「ほらほら、タボールもぼ~っとしてないで早く逃げる。アレに捕まったらゲームオーバー

だよ?」

 

「その割には随分余裕に見えますが。ファマス、9さんの言うとおり、一旦退きますわよ」

 

 そうして振り返ってビックリ、ファマスはすでに通路の先へと一人で全速撤退していたのだ。

 あのまま喚き散らしながら銃を振りまわしているよりはマシか、ということで自分を納得させておく。

 

「そんなに急がずとも、あの巨体ではドアを通り抜けられないのではなくて?」

 

 謎の敵は通路を完全に塞ごうかというほどの巨体。対して、通路を仕切るドアは人が1人通るのでちょうどくらいの大きさだ。

 筋骨隆々な体躯ではあるが、それでも、船内の分厚い金属製の壁を破壊して突破できるようには思えない。

 

「そう見えるでしょ? でも案外器用なヤツなんだよ、これが」

 

 ようやくタボールのもとに辿りついた9がうんざりした表情で言う。

 船内が揺れて感じられるほどの音と振動をあげながら、巨体が件のドアに差し掛かる。

 タボールの予想ではここで行き止まりとなるのだが・・・驚いた事に、走ってきたままの勢いを落さず、あの巨体はドアを通り抜けてきたのだ。

 

「んな! なんですの、あれは!?」

 

「だから言ったでしょ? 撤収撤収~!」

 

 例えるなら、小さな筒に押し通されるスポンジといったところだろうか。

 あれだけ頑強そうな身体からは想像できない異様な動きを目の当たりにして、タボールは度肝を抜かれてしまう。

 同じ通路区画まで迫られた事で、ようやく怪物の全貌が明らかになる。

 姿は人間に近いが、走り方や身体つきを見ると、体表が焼け爛れた猿やゴリラといった表現が

適切か。

 なんの対策も無しにあのような化け物とは戦えない、と判断したタボールは9と共に駆けだす。

 敵の脚も巨体に似合わず速いが、それでも戦術人形の全力には追い付けないようだ。

 

「アイツから逃げる為に隔壁を全開放しちゃったんだ。それで閉じ込めてたゾンビ達も出てきちゃったと思うんだけど、危ない目に合わせてゴメンね」

 

「お気になさらないで、9さん。あんな雑兵、私の敵ではありませんから。・・・ただ、おかげでファマスが御覧の有様なのはいただけませんが」

 

 通路区画を2つほど抜けて、怪物とはかなり距離を離した。先行しまくっていたファマスとの

距離も今や声をかけられるほどだ。

 ただ、相変わらずファマスは周りに目もくれず走り続けていて、このままだと永遠にどこまでも走っていってしまわんばかりの様子である。

 

「ファマス、どうしちゃったの? こういう時は真っ先に敵に切り込んでいきそうな娘だなって思ってたんだけど」

 

 もしかしたら、ファマス本人はこの事を他言されるのを嫌がるかもしれない。だが、共に戦う

仲間である9には本当の事を言っておいてあげないと、不信感を煽ることになりかねない。

 決して、ファマスの面白いところを共有したくて9にバラすというわけではありませんわ!

というのがタボールの言い訳である。

 

「普段は凛とした勇猛果敢な戦術人形なのですけれど、あの娘、ホラーやスプラッターが大の苦手なのですわ」

 

「へぇ~? それで、ゾンビの大群とあの化け物を見てビックリしちゃったんだね」

 

「ええ、とても可愛いところがおありでしょう? お前を喰ってやるぞ~、がお~!」

 

「私を食べたって美味しくありませんよ!? もっと肉付きの良いタボールの方をどうぞ~~!」

 

「まあ! 怖さのあまり私を贄に差し出してしまうなんて、タマリマセンワ~!」

 

「あははは! あなた達ってとても仲が良いんだね!」

 

 もう背後からの追っ手の姿が消えている事にも気が付かず、3人の疾走はその後、5区画ほど

通りすぎたところまで続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぇぇ~~ん! もうイヤです! 宿舎に帰りたいです~~!」

 

「もう怖いのは追いかけてこないから安心して? ほら、い~こい~こ」

 

 部屋の隅に座り込み、子供のように大泣きするファマスを9が撫で撫でしながら宥める。

 恐らくは、この様子を見たら戦術人形の誰もが驚くに違いない。

 

「はぁ~、良い目の保養ですわ~」

 

 ほっこりとした表情を浮かべながら、タボールは冷蔵庫から出したばかりでキンキンに冷えた

ミネラルウォーターをくぴりと一口。

 怪物に追いまわされた末に食堂へと逃げ込んだ3人はここでしばしの休憩、というか、ファマスが落ち着くまで時間を置く事にしたのである。

 

「では、そろそろこのステージの状況を教えていただきましょうか。9さんのお仲間はどちらにいらっしゃるの?」

 

「ステージ開始時のメンバーは私とG36、G36cの3人。でも、もう2人共やられちゃった。今は私だけだよ」

 

「あのG36姉妹が!? 一体、何がありましたの?」

 

「さっきのデカイ奴、あいつと初接敵した時にG36が。次に接敵した時にG36c。スタート

から20分と経たない間にね」

 

 確かに、巨大な身体を持ちながら敏捷性もなかなか。あの剛腕で殴られでもしたら、一撃で

リタイアは免れないだろう。

 しかしそれでも、任務において並ぶ者無しとまことしやかに囁かれるほどのコンビであるG36姉妹をそんな簡単に倒せる程とは思えない。

 

「コードネーム〝ガレオン〟。軍が開発した生物兵器っていうのがこのステージでの設定みたい。これ、ガレオンのデータが入った携帯端末だよ」

 

 さきほど、白衣ゾンビから盗んだのと同じタイプの端末を9から受け取る。

 ディスプレイから、件の怪物、ガレオンの姿や様々なデータがホログラムで浮かび上がる。

 

「パワー、スピードはもちろんだけど、一番厄介なのは身体の柔らかさを変えられるっていう

ところ」

 

「ドアを潜ってきた時にぐにゃってなったアレですわね。器用なことですわ」

 

「その特性のおかげで弾丸が通らない。銃での攻撃が効かないとなると、私たちじゃあお手上げなんだよね」

 

 柔らかい物体は弾丸で貫きやすいと思うかもしれないが、必ずしもそうとは言えない。

 高速で進む物体は、横からの力にとても弱いという性質を持つ。それは弾丸にも当てはまる事で、直進方向から少しでもズレた軸からの抵抗を受けると、弾丸はあらぬ方向へとすっ飛んで行ってしまうのだ。

 弾丸が触れた瞬間に表面が変形して、貫通する前に弾道を逸らし、明後日の方向へと弾き飛ばす。身体の硬度を自由に変えられるという事ならば理論上は可能なのだろうが、ゲームの世界でもなければこれほどまでに上手く実現はできない芸当だ。

 

「死角からの狙撃はどうですの? 攻撃をしてくると気付かなければ、体質を変えている暇もないのではなくて?」

 

「それはG36cと実証済み。死角から撃ち込んでも自動で変化するみたい」

 

「じゃあ、無敵に近いような敵ですもの。そもそも倒さなくても良い敵だという事はありませんの?」

 

「それもダメ~。この宇宙船を航行可能にして基地に帰還するっていうのがクリア条件なんだけど、そいつがうろつき回っているせいで、航行機能がロックされちゃってるの」

 

「はぁ~・・・難儀ですわね」

 

 クリア条件であるガレオンとの勝負に挑むには勝算が足りない、ということで話しはそこで区切りをつける。

 次に、タボールは自分が持っていた端末を取り出して起動してみた。

 ホログラムで映し出されたのは、この船の全体図。指で映像を弄くってみると、エリアから部屋の1つ1つまで詳細が確認できる。

 

「お? これはお役立ち情報だね。全体マップがあれば、捜索もガレオンからの逃走ルートも組み立てやすいよ」

 

「全体像も分からずに、今までよくアレから逃げ回っていられましたわね」

 

「えへへ、45姉に鍛えられてるからね。生き残る事に関しては、グリフィンでもトップクラスだって言いきっちゃうよ!」

 

 胸を張って自慢げに言いきる9も可愛いが、そんな9に抱きついて、鼻をぐすぐすさせているファマスに目がいってしまうタボールなのだった。

 

「唯一、指揮官と誓約している優秀な方ですものね。一体、どうやってあのお堅い指揮官との誓約を成し遂げたのか、教えて頂きたいものですわ。私なんて、重傷にかまけて何度も誘惑していましたのに、あのお方は手もお出しにならなかったのですわよ?」

 

「あ、それ私も見た事ある。すっごい攻め攻めなポーズだったよね~。45姉、悔しそうに遠くから眺めてたんだよ?」

 

 食堂は補給ポイントになっていて、敵は侵入してこないというルールになっている。敵を警戒する必要がないので、タボールと9は談笑を交わしながら船内マップに目を通していく。

 

「船体の半分は貨物室になっていますのね? 惑星間運搬船っていうくらいですから当然ですか」

 

 船はレベル0からレベル4までの5層構造になっており、船体の半分を占有しているレベル0が貨物室になっているようだ。

 

「ああ、そこは入れないんだよね。IDカードのクラスが低くて弾かれちゃうの」

 

「9さんのクラスはなんですの?」

 

「一般セキュリティー」

 

「私はセキュリティーチーフですので、たぶん入れると思いますわ。参考までに、そこで泣きベソかいているお方は支店長、だそうですわ」

 

 貨物エリアにある積み荷の詳細まで確認できてしまう便利仕様は、ぜひともグリフィンでの導入を進めて貰いたいものである。

 

「う~ん・・・何やら色々と積んでいるみたいですが、目に付くようなものはありませんわね。

広いので、ガレオンとの決戦の場にはちょうど良さそうですけど」

 

「レベル1から4までは、幾つかの部屋を除いてほぼ見て周ってるから、ひとまず、タボール達のカードで入れる部屋を捜索するのがいいのかな?」

 

 言うとおり、未捜索エリアをあたって新しい情報を仕入れるのが順当だとタボールも考える。

 

「あの・・・タボール? 貨物室の拡大図を見せてもらっても良いですか?」

 

 その作戦でいこう、とタボールが言おうとした矢先、ファマスが控えめな声をかけてきた。

 

「あら? もう復活されたのかしら。私としては、もう少しだけよわよわなファマスちゃんでいてくれてもよかったのですが」

 

 タボールがからかうように言うと、ファマスは顔を赤らめて俯いてしまう。

 自身、恥ずかしい事をしているという自覚はやはりあったようである。

 

「その件でお2人に迷惑をかけたのは謝りますので・・・」

 

 相変わらず控えめに言うファマスに満足しつつ、タボールは再び貨物室の拡大図を表示させる。

 そこからはファマスが手を出し、指で拡大図をどんどんとスワイプしていく。

 

「これ、ガレオンとやらの撃破に使えないでしょうか?」

 

 ファマスが指を止めたのは貨物室東側の一角。

 筒の様なものが何本も立てられている様子がホログラムで映し出されており、表面には〝Nitrogen〟と表示されている事まで確認できる。

 少しだけ考えて、ファマスが考えている事を察したタボールの表情に笑みが浮かぶ。

 一方の9はというと、まるで子リスのように可愛らしく首を傾げている。

 

「さすがはファマスさん。戦闘時の悪知恵に関しては右に出る者はいませんわね」

 

「ねえ、どういう事なの? 私にも分かるようにちゃんと説明してよ~」

 

 ファマスの考えを9にも話すと、ちゃんと理解してくれた上で同意してくれる。

 3人は、一見して無敵とも思われるモンスター、ガレオン討伐に向けて動き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ~NEXT プレイヤーズフロントライン~

 

 

 

 

「弾がまるっきり通ってなかったさっきとは大違いだよ! でも・・・

 

 

 生物兵器の恐怖

 

 

 

(まぁ、ツイていない時はこんなものですか)

 

 

 四面楚歌に立たされる少女

 

 

 

「相応の報いを受けてもらいます」

 

 

 怒りの炎を纏う獅子

 

 

 

「トマホーク? ミサイルでも飛んでくるのか?」

 

 

 そして、舞台は新たな局面へ

 

 

 

 

 プレイヤーズフロントライン 7話 Coming Soon

 




ゲームでよくあるSFホラーな雰囲気を出してみました。
ベースは、工具を手にクリーチャー達を解体してまわるエンジニア、でお馴染みの某洋ゲーです。
個人的には2が一番面白かったですね。
3は、まぁ・・・うん。

というわけで、来週もどうかお楽しみに!
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