グリット・スクワッド! 〜超人ヒーロー達が、元社長令嬢の私を異世界ごと救いに来ました〜   作:オリーブドラブ

18 / 54
第16話 拳と異能と嵐と翼

 

「オラァアッ! テメェらの住所、月にしちまうぞッ――ん? なぁ、この世界に月とかあんの?」

「あるよ! この世界ではムシェルヴェと呼ばれていて、大昔から神様が住む星と言い伝えられて――」

 

 そんな中――鋼鉄食屍鬼達の奇襲を受けていた輝矢君の側では、桃色の髪を振り乱しながら拳を振るう魔法少女が、可憐な容姿に反した戦い振りを披露している。

 

 ……さっきジークロルフさんに1匹当たったのも、多分あのパンチで……。

 

「くたばれザコがァッ!」

「――ねぇ聞いてる!? 君が振った話なんだけど!?」

 

 ゴーイング・マイウェイ、と言わんばかりに。彼女は焦燥を露わにツッコむ輝矢君をスルーしながら、矢継ぎ早に鬼達を叩きのめしていた。

 ……ちょっとだけ、鬼達が可哀想に見えてしまう程に。

 

「――妨害思念(ジャミング)ッ!」

 

 その頃、火弾さんの近くでは青い甚兵衛を着た茶髪の少年が、彼ならではの「異能」を駆使して戦っていた。

 彼が両腕を翳した瞬間、近くの鋼鉄食屍鬼達が次々と昏倒し――まだ倒れていない他の鬼達が、ひとりでに動くおかっぱ人形達と、火弾さんの鉄拳に打ちのめされて行く。

 

「へぇ、大した能力じゃねぇか! ……でもよソレ、俺達は大丈夫なのか?」

「御心配なく。誰彼構わず眠らせてるわけじゃ――」

 

 だが、彼の異能の余波は――鬼以外にも及んでいたらしい。気を失った鋼鉄食屍鬼達に混じり、ジークロルフさんが可愛い寝息を立てて横たわっている。

 

『ポピ?』

「おい」

「……ごめん。悪人ヅラだったから、つい」

「……お前ら、足元に気をつけて戦えよ! ハゲが転がってる!」

 

 どうやら、人相のせいで間違われてしまったらしい。強面な外見とは裏腹に、安らかな寝顔ですやすやと眠っているジークロルフさんに対して、何とも言えない眼差しを向けながら――火弾さんは周囲に注意を呼びかけていた。

 

 そんな彼らを他所に、叢鮫さんはあの大柄な女性と共に、魔人への道を阻む鬼達と戦っている。数の暴力で叢鮫さんを押し倒した鋼鉄食屍鬼達は――トドメを刺そうとする瞬間、彼女の豪腕によるラリアットで跳ね飛ばされていた。

 女性は近くの悪鬼達を一掃すると、その体躯からは想像もつかないほどの優しい手つきで、叢鮫さんを助け起している。

 

「手を貸してくれるのか」

「……うん。私、頑張る。何をしたらいい?」

「敵は俺達だけでなく、広場から逃げている民衆にも狙いを定めている。まずは奴らの攻撃から、民間人を守らねばならない。数で劣るこちら側が奴らを撹乱するためには、派手な『陽動』が必要となる」

「……」

「要するに――暴れろ」

「……わかった!」

 

 そして、叢鮫さんから「作戦」を伝えられた瞬間。彼女は勇ましく頷くと、その圧倒的な体躯と膂力を活かして、さながら重戦車のように鋼鉄食屍鬼達を蹴散らして行った。

 彼女の激しい攻撃は、比喩ではなく――本物の「嵐」となり、戦場に渦巻く竜巻を生み出して行く。その猛風に吹き飛ばされて行く鬼達に混じって――ジークロルフさんまでもが、すやすやと眠りながら舞い上げられていた。

 

「おいおい! 誰かあのハゲ拾えるか!?」

「任せてくださいッ!」

 

 混戦の渦中、その竜巻とジークロルフさんを目撃した火弾さんが、声を上げた瞬間。彼の頭上を、天使の如き翼をはためかせる少年が、優雅に通り過ぎて行く。

 彼は竜巻の勢いに飲まれることなく、猛風を潜り抜けジークロルフさんをキャッチする。だが、その重さで僅かに、彼が低空飛行になる瞬間を――鋼鉄食屍鬼達が狙っていた。

 

「この人だけは絶対に守るッ! 武装召喚――ソルブライトソードッ!」

 

 しかし彼には、それすらも織り込み済みだったのだ。少年はジークロルフさんを右手1本でぶら下げながら、左手の装甲を一振りの「剣」に変形させる。

 

「ソル・スラッシャーッ!」

 

 そして、眩い一閃の斬撃を以て――自身を狙い、地上から飛び掛かってきた鬼達を、纏めて斬り裂いてしまうのだった。少年は鋼鉄食屍鬼達を斬り倒すと、そのままジークロルフさんを安全な場所まで運ぶべく、この大広場から翔び去って行く。

 

『ポピポ!』

「おいおい……ありゃあ『滑空』の類じゃねぇ、マジもんの『飛行』だ。どんなオーバーテクノロジーだっての……!」

 

 私達がいた世界では考えられないような、超高次元の技術。その一端を目の当たりにして、火弾さんは目を剥いていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。