グリット・スクワッド! 〜超人ヒーロー達が、元社長令嬢の私を異世界ごと救いに来ました〜   作:オリーブドラブ

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番外編 オタク達の22世紀

 

 ――2121年、9月。この世にある現象のほぼ全てを科学によって解明して来た22世紀の地球に、かつてない「衝撃」が走っていた。

 例え、地球を破壊しかねないほどの巨大隕石が観測されたとしても。それが科学的にあり得ないことではない以上、これほどの動揺が広がることはなかっただろう。

 

 それほどまでに――東京の秋葉原に出現した「(ポータル)」は、既存の常識を崩壊させる存在だったのだ。

 21世紀の頃からは想像もつかないほどの発展を、人工知能やサイバネティクスをはじめとする科学技術によって成し得てきた、この時代の人間達だからこそ。剣と魔法(ファンタジー)の異世界という、文字通りの「異次元」から来た人々の文明に、鮮烈な印象を受けたのである。

 

 当然、この一大事に日本全国はもとより、全世界からも有識者や政治家達が続々と動き出し――いつしか秋葉原は、地球と異世界を繋ぐ「国境線」としての立場を担うようになっていた。

 無論、突如として東京に現れたセイクロスト帝国の使者も、平和的な外交を目指していたが。彼らの尽力だけでは、現地人との友好的な接触を果たすことは叶わなかっただろう。

 

 そう。最初に無関係な一般人として、彼らと遭遇した秋葉原の人々は。

 その姿にこれ以上ないほどに感激し、歓待し、彼らが世界各国との外交を始めるまでの間、地球のイロハを教え込んでいたのである。

 

 彼らは、分かっていた。彼らが何者なのか、どこから来たのか。その全てを、たちどころに看破していたのである。

 

 ――21世紀の文学に激震を齎し、一世を風靡した「ライトノベル」。その中においても、歴史の教科書に名を残すほどの名作を数多く生み出して来た、「異世界モノ」。それら全てに精通した研究者達にとって、この秋葉原はいわば聖地であり。

 その住民達は皆、100年もの年月をかけて築き上げられた「異世界モノ」の「お約束」を、完璧に熟知していたのである。そんな彼らにとって、いざ異世界人が現れた時のために、地球案内の手際を妄想(シミュレーション)しておくことは、必須技能だったのだ。

 

 かくして、その必須技能を遺憾なく発揮した秋葉原の人々は。来日して間もないセイクロスト帝国の使者達に対し、地球での常識や世界中の地理、国家、世界情勢や経済状況に至るまで、ありとあらゆる基礎知識を叩き込むことに成功し。

 その後に始まった世界各国との外交において、多大なる貢献を果たしたのである。後の世の帝国に、彼らという影の英雄が讃えられていたことは、言うまでもない。

 

「た、たまりませぬな先生、このドゥージンという書物は……!」

「デュフ、デュフフフ! 外交官殿、して、例の文書は……!?」

「無論、用意してありますぞ! 過去1000年に渡るエルフの歴史を記した、古文書です! いやはやしかし、先生の勤勉さには感服するばかりでありますな……!」

「コポォ! 何を仰いますか、外交官殿! あなた方には遠く、デュフ、及びませぬデュフフフ!」

 

 当然、2124年の現在においても。秋葉原を中心とする外交は継続しており、今日も青空の下――研究者達は、帝国の使者達と朗らかに語り合っていた。

 

「……っていうことがあっちゃうんだから。世の中、何が役に立つかなんて分かったもんじゃないわね……」

『グゴゴ!』

「あ、あはは……」

 

 そんな中。ABG-06こと「レム」のマスターとして、そんな彼らの警護を任されている篁紗香(たかむらさやか)刑事は。

 お忍びで様子を見に来ていたハナ・ホナミ・セイクロストと共に、なんとも言えない表情を浮かべるのだった。

 

荻田(おぎた)警部補、これで全員です!」

「よし、連行しろ。……念のため、警戒範囲を広げるぞ。風花(ふうか)、周囲の確認を頼む」

「はぁい。全く、誠史(せいじ)ったら人使いが荒いんだから」

「聞こえてるぞ!」

「聞こえるように言ったのよ」

 

 一方。彼女達2人の後ろでは、イリーガルな手段で異世界人との接触を図ろうとしていたスパイやテロリスト達が、続々と警察に連行されている。彼らは全員目論見を見抜かれ、紗香とレムに捕縛されていたのである。

 

「篁警部、周囲に潜んでいた怪しい連中は全員身柄を確保しました。我々はこれより奴らの護送に向かいます」

「分かったわ、気をつけてね荻田警部補。……06(レム)もお疲れ様。やっぱり機甲電人(オートボーグ)の探知能力に掛かれば、生身のスパイなんて一網打尽ね」

『グゴ!』

 

 機甲電人とのコンビネーションを武器に、数多の悪党と渡り合う敏腕女刑事として。紗香は亡き父に代わり、今日の平和を守り続けていた。

 苦笑を浮かべる彼女の眼差しは、珍妙な話題で盛り上がる要人達へと向けられている。その瞳は理解できないなりに、見守ろうとする優しさの色を湛えていた。

 

「正直、ああいうのはよく分からないけど……感謝くらいはしてあげましょ。竜吾も好きそうだし」

「……うん。そうだね」

 

 そして。蒼く澄み渡る、22世紀の青空の下。

 かつて「オタク」と蔑まれていた、新時代の先駆者達は今、地球と異世界を繋ぐ架け橋となっている――。

 

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