学校からの最寄りの駅は、身延線
身延線の電車に揺られながらボー…と
すること15分程で着いた塩之沢駅に、
高彦は降りた
駅から自宅までは自転車で10分
富士川に沿って何軒か並ぶ家の1つが、
彼の家である
自転車をガレージに停めて、
鍵を開け家に入ると
「ただいま」
「おかえり~」
台所から聞こえる母・刈谷美沙子の
出迎えの声を聞きながら高彦は靴を脱ぎ、
2階の自室に向かう
鞄などを置いて着替えてから再び1階に降り
リビングに入れば、母親は台所より顔だけを
覗かせて話し掛けてくる
「高彦、悪いんだけど
お米洗ってくれる?」
「うーい」
米を計って台所で美沙子と並ぶ
洗いながら高彦は、
今日あった事を話した
無論、彼女についてだ
「…母さん、浜松に住んでた時の
こと覚えてる?」
「うん?まあ、私の生まれ故郷だしね。
実家はもう無いけど」
母は静岡の浜松生まれだ。
だが母の両親、つまり高彦の祖父母は
刈谷家と一緒に県外に引っ越した
だがそれでも、
母にとって浜松は生まれ故郷に
変わりはない
きっと父の
「浜松がどうかしたの?」
「…なでしこ、って覚えてるか?」
「なでしこ?
…ああ、各務原なでしこちゃん?」
「うん、そのなでしこ
ほら、前本栖湖にキャンプ行った時に
遭難しかかってた子の話しただろ?
その子、今日学校で会ってさ」
「へえ!そんなんだ
あ、もしかして……」
「それ、なでしこだった」
「そうなんだ!
浜松から来たのかな?」
「そうらしい、
今日から転校してきたんだって」
「へぇ~、偶然ってあるのねぇ
私も会いたいなぁ~。
今度うちに誘いなよ」
「ダメに決まってんだろ
お互いもう高校生だぞ」
家に異性を、しかも同級生を
招くなどハードルが高すぎる
子供の時ならいざ知らず───
「…ねえ」「ん?」
「むかしのアルバムって、ある?」
翌日
土曜日の休日
高彦は家の中の押し入れの前にいた
「…ここら辺って言ってたよな」
襖を開けて、中にあった収納ボックス
を何個か出し物色する
探し初めて約30分後
目当ての物を見付けた
分厚い、アルバムを
高彦はアルバムを開け、中を見る
高彦がまだ幼かった時の写真が
沢山綴じられていた
それに若干の恥ずかしさを覚えつつ、
見続ける
「…いた……なでしこ」
高彦の目に止まったのは、
幼い自分と同じ年の幼子
なでしこの、子供の時の姿
自分とのツーショット
一緒に遊んでいる所や、
お互いの家にお邪魔して
ご飯を食べる所など……
幼稚園らしき所で一緒にいる所もある
「こうやって見ると、
俺となでしこ何時も一緒だったんだな」
人間とは不思議な物で、最近の事よりも
昔の事を覚えている事がある
高彦もなでしこの事を半ば忘れていたが、
再会してこうやってその時の写真を見ると、
この頃の事を思い出してくる
物思いに耽っていると、
高彦はまた何かに気付いた
それはなでしこと一緒に写っている写真に、
殆ど毎回一緒に写っている女の子
高彦はこの子供の事も思い出した
「確か…あやの、だっけ?」
その少女の事を思い出す高彦
引っ越しで別れる、直前の事も思い出した
「………………………………」
そっ…と目を閉じ、ついで眉間を抑える
そんな思い出した『最悪な記憶』に
溜め息を吐く
やや気まずい気持ちになりつつ、
アルバムを物色していく高彦
気付けば外は薄暗く、部屋は寒くなっていた
随分集中していた物だと苦笑いしていると
♪~♪~
彼のスマホが着信を知らせた
見てみると、
それは画像…写真付きのメッセージ
『リンちゃんと麓キャンプ中~!!』
満面の笑みのなでしこと、
困り顔の志摩リンの写真
『お鍋美味しいよ~(о´∀`о)』
2人共湯気の立っているお椀を持っており、
幸せそうであった
「…仲直りは出来たみたいだな」
小さくそう呟いて、高彦は返信をした
『風邪引くなよ』
何気になでしこに送る初メッセージ
それにしては梅雨ほどの青春も無いが……
『わかった~!!』
律儀にも、なでしこはそう返してきた
「全く…いちいち連絡なんかしなくて良いのに」
言った言葉に反して
穏やかに笑う、高彦だった
『たかちゃん!』
目の前になでしこがいる
幼い頃の、なでしこが
『たかちゃん、あのね……』
なでしこは意を決した様に
自分へ顔を向けて───
『にくまんとあんまん、
りょうほうたべたいんだ!!!』
「…夢か……」
ぼんやりした意識の中で、
高彦は独り呟いた
「なんちゅう夢見てんだよ………」
時計はまだ6時を過ぎた頃
カーテンから漏れでる陽の光が、
若干眩しい
「変な時間に目が覚めて……ん?」
耳元で鳴るスマホのバイブ音
どうやらこの音で起きてしまったらしく、
まだ覚醒しきれていない中、高彦は
スマホを掴んだ
こんな朝っぱらから誰が…そう顔をしかめて
見ると
直ぐに笑みが、彼の顔に浮かぶ
送ってきたのはなでしこ
送られたのは───
朝の陽が照らす、広大な富士山の写真
それは夜の富士とは全く違う、
けれどまた美しい光景
目映い程に輝く富士の山は、
写真越しでもとても綺麗だ
「……やっぱ良いな…富士山」
また1つ、富士山の魅力に高彦は
心を引かれた
↓へやキャン△
「お姉ちゃん、お姉ちゃん!!」
各務原家にて、なでしこは姉の『桜』に
駆け寄った
「家の中で走るんじゃ無いわよ。
なに?」
「あのね!
この間本栖湖で助けてくれた子に
学校で会ったんだよ!」
「…へぇ…同じ学校だったんだ。
二人とも?」
「うん!女の子が志摩リンちゃん
でね、男の子の方は──」
「浜松の時のアンタの友達でしょ?
確か、たかひこ君」
「えっ!?
お姉ちゃん気付いてたの!?」
「本栖湖の時から気付いてたわ
と言うか、アンタも気付いてると思ってたわよ」
「えぇ~…だってぇ………」
「お友達忘れるなんて、薄情な女ねアンタ」
「うわぁぁ~ん!!!」
「……(さっき母さんと話してるの聞いてたのよ)」
高彦視点なので、ちょくちょくこうやってダイジェスト的な感じにしていこうと思います
オリキャラの高彦と両親の設定を少しだけ
刈谷高彦(15)
本栖高校1年の少年
突拍子も無く
思い立ったら行動してみたくなる性格
キャンプをしようとしたのも、本屋で偶々見付けたアウトドアの雑誌を読んで興味を持ったから
まさか一発でキャンプに填まるとは、
本人も思っていなかった
生まれは静岡の浜松で、なでしことは
幼稚園まで一緒の友達だった
(高彦曰く、幼馴染みと言うより昔馴染み)
同じく土岐綾乃とも仲が良かったが、
何かしらがあったようで………
派手さは無いが、顔立ちは良い
人畜無害とクラスメートの女子から見られている
刈谷美沙子(年齢⚫⚫⚫)
高彦の母親
ふくよかだが、美人に入る
穏やかで優しいが、怒ると鬼のように恐ろしい
それで高彦の反抗期は終わりを迎えた
料理上手で、高彦に手料理を教えた1人
刈谷勇
高彦の父親で、会社員
休日は妻の美沙子の手伝いをする等、
家族思いだが手際は良くない
負けず嫌いでたまに高彦とゲームをしたり、
運動するが、負けたら少し落ち込む
何事にも責任感を持つようにと高彦に教えた
本人も自分の仕事に責任を持ち、成し遂げている
本人には言わないが、高彦は勇を尊敬している
取り敢えず、大間かな設定です