ゆるく行こう~野クルの男子部員~   作:Akila?

8 / 16
お待たせいたしまして…すみません!


温泉とボッチと山ごはん

『ほっとけや温泉』の、あちちの湯

 

看板にはそう書かれているが、

決して入れないくらい熱すぎると言う訳ではない

 

 

「「「はぅ~~~」」」

 

特に露天風呂は外気が寒い分、

温泉の温かさが絶妙で快適であった

 

 

「やっぱり良い景色だね~」

「だなぁ~」「冬の温泉たまらんわ~」

 

なでしこ、千明、あおいの3人は

揃って露天風呂に浸かっていた

 

湯船からは山梨の街並み、そして富士山と、自然の絶景が一望出来る

 

ここまで歩いてきた疲れ(特に千明とあおい)もあり、非常に気持ち良さを体感していた

 

 

「あきちゃん、ここから

キャンプ場までどのくらいあるの?」

「んー、一キロ位だったかな

管理人さんには昼過ぎに行くって言ってあるから、まだまだここでノンビリ出来るぞ~」

「そっかぁ~」

 

「あかんわぁ…悪魔のささやきやぁ~」

「ぐへへー」

 

「…はふぅ(リンちゃんはいまごろ…

どうしてるかなぁ…)」

 

なでしこが温泉にとろけながら想う、

自分達とは違う所へとキャンプしにいっているリン

 

そんな今のリンはと言うと

 

 

ビィーン

(…あと…40キロか…)

 

寒い中、まだ原付を走らせていた

 

 

走りながら脳裏に浮かぶ、

先程届いたなでしこからの連絡

 

 

────温泉入ってくるー

 

 

(───私もむこうに着いたら

ぜっっったい温泉入る!!)

 

気合いを込めて心の中でそう叫び、

リンは原付を走らせ続けた

 

 

(さむいぃぃぃーーー!!!)

 

 

 

 

 

 

「…はぁ……気持ち良かったなぁ……」

ほっとけや温泉の敷地内

 

外にある木製の席で、

温泉から上がった高彦は寛いでいた

 

火照った体は外でも上着が要らない程で、

気温で程よく冷めていく

 

 

「あ、いたいた~」「ああ、みんな」

 

と、そこへ同じく温泉から出たなでしこ達が

やって来た

 

 

「たかちゃん、そっちはどうだった~?」

「めちゃくちゃ良かったよ。

そっちは…聞くまでもないか」

「ふへへ~」

 

なでしこ達は高彦が座る席に、同じようについた

 

 

「あったまったわぁー」「ふえー」

「うへへ~」

「…見事なまでの寛ぎぶりで」

 

高彦が苦笑いするほど、彼女達はぐで~っとなっている

 

そんな3人を見ていた高彦もその空気に当てられたのか、身体中が脱力していった

 

 

「ここでごはんもたべられるみたいだねぃ」

「…だなぁ」

なでしこが売店を見付け、返事を返す高彦は

既に出来上がっていた

 

 

のっそりと立ち上がった四人は売店の券売機へと歩いていく

 

「わたしつきみそば~」

「あたしはつきみうどーん」

「…あ、ほうとうもあるなぁ」

「あたしはぁ~………」

 

 

 

 

 

「………って、ここで食べたらあかんやん!」

「!そうだ、キャンプご飯食べられなくなる!!」

「「はっ!!」」

 

正気を取り戻したあおいと高彦の言葉に、

なでしこと千明もはっとなった

 

「温泉気持ちよすぎて

思考停止しちゃってたよ!!」

「小銭出してもうてたわ……」

「危なかった……これが温泉パワーか………」

 

温泉の力に恐々とする四人

 

 

しかし、温泉の恐ろしさはまだ続いていた

 

温泉には………悪魔が潜んでいたのだ!

 

 

 

「おんたま揚げおいしいよ~買ってって~」

「「「「……………」」」」

 

 

 

 

 

 

「おんたま揚げだけ買ってこ!!」

「せやな!!」「ん!!」

 

(…これが悪魔のささやきか……)

見事にささきに呑まれたなでしこ達を眺めながら、千明は改めて温泉の恐ろしさを体感するのだった

 

 

「あきちゃん、食べないの?」

「食べるに決まってるだろ!!」

…彼女も手遅れだった

 

 

さて、それぞれ一個ずつ温玉揚げを購入して

休憩所に移動する四人

 

座席に座って、買ったばかりの温玉揚げの包みを開いた

 

瞬間立ち上る湯気

湯気と一緒に揚げ物の匂いが、鼻をつつく

 

「「「いただきまーす」」」「…いただきます」

 

3人仲良く並んで(なでしこ、千明、あおい)

一斉に一口パクり

 

 

「「「ん~まぁ~~~」」」

「…うめぇ………」

 

「卵揚げただけなのにうますぎるぞこれ~」

「黄身がとろける~~~」

 

 

「あかんわぁ~…これ湯上がりに

食べたらあかんやつやぁ~~~~」

 

あおいは温玉揚げの美味しさに脱力しきって、

温玉揚げを持ったまま横になった

 

「うんあかんやつや!!」「あかんあかん!!」

 

それに便乗してなでしこと千明も寝っ転がる

 

あかんあかーん、と楽しそうに寝ながら食べる3人

 

それを向かいに座る高彦は微笑しながら、

また一口

 

 

「………あかんわ、これ」高彦も手遅れになっていた

 

 

そんな堪能しまくっている野クル+1

 

そしてその頃の志摩さん家のリンちゃんはと言うと

 

 

「おいまじか」

 

棒立ちしていた

 

 

 

 

そんな事態になっている原因は1つ

 

今回、リンがやって来たのは長野県の高ボッチ高原と呼ばれている場所

 

知る人ぞ知る超絶景スポットで、

頂上からは松本市、諏訪湖、富士山と言った景色三点盛りが味わえるまさに絶景スポット

 

山梨の自宅から150キロの長距離を走りきったリンは、達成感を覚えるままに温泉へと向かった

 

冷えきった身体に染み渡る温泉……それを楽しみに更にプラス6キロの山道を進んでいったリンを待っていたのが

 

 

 

【10月をもって閉店致しました】

無慈悲な現実だった………

 

そして冒頭へである

 

涙目でそのまま登っていき、松本市が見えるスポットまで行ったが

 

 

「………曇っててなんも見えねー…」

見事なまでに雲が覆っており、それも見えなかった

 

踏んだり蹴ったり…そう思いながらも、折角来たし一応と高ボッチの山頂へバイクを置いて登っていく

 

(…ぼっちでボッチ山登り…)

 

楽しみだった温泉と景色が見えず、こんな事なら近くでキャンプすれば良かったかも……と落ち込んだままリンは山頂へと行き着いた

 

 

そこに広がっていたのは見事なまでの絶景だった

 

話に聞いていた景色三点盛り

山頂から見えるのは、雲に邪魔されない自然と街並み

 

 

「…何だよ…

こっちはバッチリ見えてんじゃん…」

 

綺麗なその景色に、リンの心は奪われた

 

 

来て良かった──そう感じた

 

 

(…うん、温泉は帰りに入ればいい!!)

 

ポジティブな思考が甦ってきた彼女は、気を取り直して今日の晩御飯を作ることにした

 

今日は初の手作りご飯を作るつもりだ

 

(作るぞーっ!!)

 

絶景を前に気合いを入れたリンは、

ご飯作り+食べる場所を求めて近くを周った

 

バイクに乗って、高原等周りを見ながら

場所を探す

 

やがて牧場(動物はいない)に着いたリン

 

付近に見付けた少し細道を抜けると

 

「…お」

 

開けた場所に出た

 

落ち始めた夕日を眺められる中々に良い場所だ

 

ここがいいとリンは愛用のイス、そしてコンパクトタイプの机を出し

 

「……よし」

今日の晩御飯作りを始めた

 

 

さて、今日のリンちゃんの晩御飯の献立はコッヘル(小さな鍋)一つで出来る簡単スープパスタ

 

初キャンプ飯作りと言うことで、

リンはお手柄なそれを選んだ

 

予め切って持ってきた具材を炒め、コンソメスープで煮て2つ折りにした乾麺を

 

「…ていっ」パラパラ…

 

麺が水分を吸ってきたらスライスチーズ、

牛乳を加えてもう少し煮て

 

最後に黒胡椒とパセリを散らせば…

 

「できた(初めてのまともなキャンプごはん……)」

 

早速手を合わせて心の中でいただきますを言い、一口

 

 

更に一口、そしてスープをゴクリ……

 

 

「………は―――っ………」

 

色々なバタバタがあったものの

 

 

「うまっ」

 

リンのこの一言が、今回のキャンプの満足度を物語っているだろう……………

 

 

 

ヴーヴー

「?」

 

所は変わって山梨県

 

鳴った携帯の着信で起きたなでしこ

 

見ればそれはリンから

 

内容は「ボッチ山で食べるスープパスタうまー」のメッセージと絶景を背景に撮られた美味しそうなスープパスタ

 

 

 

りんちゃんスープパスタ作ったのかー

おいしそーと寝起きでぽわぽわしながらそれを見るなでしこ

 

 

 

 

 

しかし次第に彼女の顔が強張った

 

画面の左上、時間を見て

 

 

「……ん、あぁ寝ちゃってた………」

テーブルに突っ伏して寝ていた高彦がここで起きた

 

「(リラックスのオンパレードでついつい眠っちゃったんだな……)あ、なでしこ起きてたのか。今なんじ?」

 

 

 

 

 

 

「……4時」「…………はい?」

 

 

 

「16時………」「……………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

まじかっ!!?!?」

「あ、ああああきちゃん!!あおいちゃん!!

もう4時過ぎてるよっ!!」

「びゃっ!!?」

 

高彦となでしこの大声に飛び起きた千明

 

そして今が夕方4時だと知ると

 

「ギャーーー!!

思いっきり寝過ごしたぁーッ!!」

 

大慌てで飛び上がる

 

かくかく慌てる中

 

「あかんてあかーん………うふふふ………」

 

幸せな夢でも見てるのだろう……

微笑みながらぐっすりなあおい

 

「犬山さん!起きて!!

起きてくれーー!!」

高彦の声が、ほっとけや温泉に響いた────

 

 

 

その後

 

休憩所から大慌てで飛び出した四人

 

そのまま一キロ先のキャンプ場へ直行…………

 

 

 

 

「おんたま揚げ揚げたてだよー

買ってってー」

 

 

「「「「………………」」」」

 

暫し足を止める四人であった

 

 

 




『わん』だふる3

声に振り返ると
そこにいたのは桜色の毛の色をした




犬だった

「…………」



「たかちゃん?どうしたの??」
「…………えぇと………もしかしてなんだけど」「?」


「…なでしこか?」「?そだよ??」


「…なんで犬?」「ふえ?なにかへん?」

「いや何かって言うか…全部なんだけど」
「ええーー!!?」


「いや……犬だし…喋ってるし……」
「たかちゃん、私が分からなくなっちゃったの…?」

うるうるした目で、此方を見上げるなでしこ?

「そんな目で見られても………」
「うぅ……じゃ、じゃあさ!」

徐にお座りの状態から立ち上がったなでしこは、林の中へ走っていった

少しして

「ふぁふぁひゃーーん!!」
戻ってきたなでしこ
口に木の枝を咥えている

「はいこれ!」「へ?」

「投げて投げてーっ!」「え…こ、こうか?」

ポーンッ、と高彦は木の枝を投げる

「わーーいっ!」
なでしこ?がそれを追い掛けてダッシュ

トコトコトコーッと戻ってきて、高彦の足下に取ってきた木の枝を置く

そして此方を見上げてキラキラした目を向ける
尻尾はフリフリーッ

高彦は再度木の枝を投げた

なでしこ?はそれをまた追い掛け、取ってきて戻ってくる

投げる、取ってくる戻ってくる、またまた投げる───それを繰り返していく

「……(ああ……間違いないな………)」
高彦はループを繰り返しながら感じた

この犬は、なでしこだと
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。