魔法、それが御伽噺や夢物語として語り継がれていた物が、現実の産物として早半世紀がたった。
特に最初の一年目は、あらゆる人々が喜び勇んだ。
自分達もあのようなことが出来るのだと。
しかし、そんな幻想は直ぐに打ち砕かれた。
必要だったのだ。
才能が。
魔法を操る才能が、必要だと分かった後は誰もが、魔法を使えると分かった人間に嫉妬した。
どうして、私が、僕が、俺が、自分が、負の連鎖は終わることはなく、永遠に続くだろう。
それこそ、人が一人としていなくなるまでは。
そして、在る人間が、気が付いたのだ。
使える人間がいないなら、”作ればいい”のだと。
それからが魔法が現実の産物となってから、一般人の知らない闇の部分の始まりだった。
望まぬ婚姻で、優れた血統を生み出すなど、当たり前。
倫理的に忌避されているクローン技術を使い、遺伝子配列を弄り、受精卵の状態から常時サイオンを浴びせることで馴染ませるなどをしてきた。
しかし、組織である以上物事を完全に隠し通せるわけもなく、内部からの情報リークにより10ほどあった、魔法研究施設の内大半がつぶれる事に為った。
その内の一つが第四研究施設。
死の研究所とまで言われる、最低最悪の研究施設で、道徳や倫理と言うものを総じて無視して研究している研究所だ。
そんな施設は、情報がばれた傍から形上、名目上ではあるが潰れている。
研究成果の身を残して――――
春、一つの家で新たな命が生まれ落ちた。
屋敷全体に響き渡る産声は、まさに生命を象徴しているかのようだ。
「元気な男の子ですよ。旦那様」
子供を取り上げた、助産婦は後ろでソワソワと落ち着きなく歩き回っている男性に声を掛けた。
「本当か!!」
男性は、一も二もなく駆け寄ると生まれたばかりの息子の顔を見ると、次に愛する妻の元へと駆け寄った。
「よくやった。よくやったぞ。元気な男の子だ」
「ええ、あなた」
男は、あまりの嬉しさに、厳つい顔に似つかぬほどの笑みを浮かべていた。
それが可笑しかったのか、男の妻は、ふふっと軽く笑った。
男も恥ずかしくなったのか、頭を掻いて誤魔化した。
日頃の彼を知っているものが見たら、誰だ!!と思ってしまうだろう。
それ程までに似つかわしくない光景だ。
特に、ここ”四葉家”では。
四葉家は、10ある研究所の内の第四研究所で生み出された家系だ。
第四研究所の研究テーマは、『精神干渉魔法を利用した精神改造による魔法能力の付与・向上』だ。
その研究成果が、四葉家であり、必然的に二つの系統の魔法を内包した魔法師を生み出すようになった。
一つは生まれながらに精神干渉系の異能を強化された者。
もう一つは強力で歪な魔法演算領域を備えて生まれた者。
この二つの系統が並立し、混ざり合い『四葉』を形成している。
そんな家系に生まれた新たな男児は、その二つをきちんと受け継いでいたのだ。
まさしく研究者たちが望んだもの以上で。
その事実を知るのは、両親としてもまだ後になるのだが、しかし世界各国の指導者やトップに立つべくして立った、本当のトップと言える存在達は密かに感じ取った。
これから、今以上に魔法の兵器的価値が上がると――
「そうだわ、この子に名前を付けてあげなきゃ」
「それなら、既に決まっている。この子の名前は、四葉終夜(しゅうや)。終わらぬ夜と書いて終夜だ」
「そう、終夜。私達の息子」
助産婦より、子供を抱かせて貰った子供は、女性にとってとても軽いが、だがとても重いものだった。
新たな命、それを改めて実感させられた女性は、愛する夫も我が子を抱くように言ったが、男は頑なに断った。
男は、自身の手が数多の血で汚れていることを知っているからだ。
「大丈夫ですよ。あなたが優しいことは私が良く知っていますから」
「そ、そうか」
日頃の威厳をこういった所でも発揮してほしいのにと、女性は思いながらも我が子を、愛する人に託した。
「奥様も出産直後ですので今日はもう休まれた方がいいですよ」
助産婦は、そう言うと女性を楽な体制にさせ、血で汚れたものを取り換えはじめた。
そこに一人の年輩の男性が襖を開け入って来た。
「元造殿、お生まれになられたか」
「これは、伯父殿。元気な男の子ですよ」
入って来たのは、元造の伯父だった。
「そうか、そうか」
頻りにうなずいた。
「私は、他の者達にも報告してきますので、今は奥方に付き添ってあげてください」
「ええ、そのつもりです」
そう言うと、伯父は直ぐに部屋を出て行った。
その日は、本家分家全てが集まって、盛大な宴が催された。
当主に子息が出来たのだ。
これで、四葉家の次代を継ぐ者が生まれた。
技術と知識、そして闇だ。
むろん、その子供がそれに相応しいかどうかは追々、図っていくところだが、子が居るのといないのでは、その意味合いが大きく違ってくる。
だからこそ、ここまで盛大な宴になったのだ。
「従兄殿おめでとうございます!」
「兄上おめでとうございます!」
「元造殿、おめでとうございます!」
「御当主おめでとうございます!」
「元造殿おめでとうございます!」
「当主おめでとうございます!」
宴が始まってから、元造は引っ切り無しに祝福の言葉をもらっていた。
妻と子供は、出産と生まれたばかりということで、この場にいないため難を逃れたが、この場にいたら、引っ切り無しに話され、休まる暇もなかっただろう。
幸せなことには違いないが、少し休ませてくれ、とついつい元造は内心吐露した。
それから二年後、終夜は二歳になり、二人の妹が出来た。
姉の深夜と妹の真夜だ。
双子だったそうだ。
歩きはじめ、好奇心旺盛な”魔の二歳児”だ。
冒険心や興味本位で、何をやらかすか分からない時だ。
想像力も養われ、決断力も徐々に育ってきている最も重要な時ともいえる。
そんな終夜は、産まれたばかりで二人そろってスヤスヤと寝ている妹を見に来ていた。
初めて自分より下の子を見た終夜は、とても興味深そうに観ていた。
四葉家が住んでいる集落は、元第四研究所の跡地ということもあり、四葉の者以外居ない。
終夜の周りには必然的に年上しかおらず同年代や、年下と関わる機会が一切なかった。
そんな中、妹が出来たのだ。
それも二人も、興味が湧かないはずもなく、終夜はトテトテと本人にとっての全力で、父の後を追って、妹たちの元へと来たのだ。
常日頃の元造なら、直ぐに気が付いただろうが、第二子、三子と双子ということもあり内心、ハラハラとしており、さらに自分の息子で殺気もないことから無意識下で警戒を解いていたというのもあるのだろう。
だから、終夜はあっさりと妹たちの元へと来られたのだ。
終夜は妹たちの柔らかな頬を軽く叩いたり、力の弱い手に自分の指を握らせたりと、年相応のことをして楽しんでいた。
一通りのことをやり終えた、終夜は満足気に襖を開けると出て行った。
完全に思いつきで書いた、悔いはない。
が、絶対批判着そうで怖い。
タグの通り、ヒロインは未定です。
暫くは、原作とは関係ない話が続きます。