作者自身予告していたの忘れて居たため、徹夜で書き上げました。
終夜が緊急速報を聞いたのと同時刻のことだった。
深夜たちはいつも通り、朝食を取って居た時緊急警報が情報機器全てから聞こえてきた。
『沖縄西方海域より、宣戦布告なしの侵攻。潜水ミサイル艦より慶良間諸島を攻撃。繰り返します――』
いきなりの警報の意味を直ぐに理解できるものは、数少ないだろう。
最初に我に返ったのは穂波と香波だった。
「真夜様に便宜を図って頂けるようにご連絡します」
穂波はすぐさま、真夜に連絡を入れ国防軍のシェルターに保護してもらう様に連絡を入れに行った。
そのすぐ後に、達也の携帯端末に通信が入った。
相手は数日前に基地見学でお世話になった風間大尉からだった。
内容を要約するならば、国防軍のシェルター内に退避しないかという、申し出だった。
「奥様、真夜様からお電話です」
「分かったわ。変わって頂戴」
そう言って、深夜は穂波から電話を受け取った。
「変わったわ」
『国防軍の方に姉さんたちを保護するように連絡したわ』
「そう、あの子にあった連絡はそう言うことだったのね」
『後、こっちが重要なんだけど、兄さんが今そちらへ向かっているわ』
「兄さんが!?」
『国防軍の方に超音速巡航機を用意させたから、あと一時間もしない内にそちらへと着くと思うわ』
「分かったわ。ありがとう真夜」
『姉さんも気を付けてね。もし姉さんや深姫、真姫の身に何かあったらその場の人に兄さんを止めるすべがないのだから』
「分かっているわ真夜。兄さんには、私達が付いていないといけない事位」
『兄さんのこと、くれぐれもよろしく頼むわね』
「ええ、じゃあ、切るわね」
深夜は電話を切ると、受話器を穂波へと渡した。
「大尉にお申し出お受けします、と伝えてちょうだい。その際迎えもよこして貰える様に言ってちょうだい」
「畏まりました」
達也は恭しく礼をすると、通信端末を取り出し連絡を取りだした。
「奥様、真夜様などのように」
「兄さんが来るわ」
「しゅ、終夜様がですか!?」
深夜の口から言われた言葉に穂波は驚いた。
穂波自身、深夜のガーディアンと言うこともあり、終夜とよく顔を合わせる立場にいる。
だから終夜が魔法を使うところを間近で見る機会も四葉の中でも比較的多き事に為る。
終夜ほどの絶対的力を持つ魔法師になると、一種の崇拝に近い形で見られるのは四葉家だからこそだろ。
その熱狂的信者とでも言うべき者が、穂波の妹に当る香波なのは何という皮肉だろうか。
「お父様が参られるのですか?」
「ええ、今此方へ向かっているそうよ」
「しかし大丈夫でしょうか?」
深姫の発した、この大丈夫を的確に理解できなかったのは、深雪と鋼也だけだった。
穂波、香波、達也はガーディアンであるが故にその実力を知っており、深夜は真夜が誘拐された時、深姫と真姫の二人は父である終夜に魔法を教えてもらっている時に実力を見せてもらっている。
と言っても、本当の実力を見たことのあるのは、深夜だけでそれ以外は、実力の一部しか見たことがないのだ。
つまり、深姫が心配しているのは襲ってくる側が自分達に怪我などを負わせて文字通り殲滅される恐れがある事だ。
相手が既に国際条約を無視して侵攻して来ている以上、こちらも遵守する必要がないと言う訳では無い。
しかしそれは国と国の取り決めで在って、国と個人で適用されるかというと悩まなければならない。
既に終夜の恐ろしさは二度証明されている。
一度ならば偶然と言えなくもないが、二度証明されているならば既にそれは必然であり覆ることがない事実なのだ。
それから少しして、国防軍の方から迎えが来た。
迎えに来たのは桧垣上等兵だった。
達也とは、比較的打ち解けている様子で、話し方も初めに会った頃に比べたらフランクだ。
四葉のガーディアンである達也が国防軍の軍人と仲良くなるのを深夜はあまり快く思っていないようだが。
そんな桧垣上等兵の案内の元連れられたシェルターの中には、既に百に満たない程度だが、避難していた人たちもいた。
一切戦力にならない人間を保護して大丈夫なのだろうかと思う者もいるが、平常時は訓練するだけで多くの税金を消費しているのだ。
こういった時に役に立たなければ、この奇襲が終わった後のメディアが怖いのだ。
奴らは、ある事ないことを捏造したり、事実を着色したりすることで、とある国にとって都合のいいようにしているのだ。
とある軍人は言った、屈強な国を骨抜きにする近道は、歴史を捏造し、事実を捏造し、国民のより所を失くすことだ、と言った。
それが第三次世界大戦前の日本であり、第二次世界大戦で敗戦した大日本帝国である。
元々は、欧米諸国によるアジア圏内の植民地支配からの解放を目的とした戦争であった。
その時点では、某世界最大の戦力を保持し、世界の指導者を自称している国との決戦はまだ視野に入っていなかった。
だが、その国から事実上の
その結果、敗北。
日本は憲法を変えさせられ、大東亜戦争という名前の使用を禁止し、本当の日本国民を見せしめの為に処刑し、反日精神の持ち主に政治、大学などの重要なポストへ着かせ、長い時間を掛けて都合のいい歴史を教育することで日本は第三次世界大戦が始まってからも危機感を抱くことが出来ずにいたのだ。
人によっては日本は戦争アレルギー、核アレルギーと言うが、そのアレルギーを持たせたのは他でもない戦後すぐの教育なのだから。
そのアレルギーを克服しようと思うようになったのが、他でもない大亜連合による対馬侵略され、対馬の島民を虐殺された。
この事実には、反日の開戦反対を押し黙らせられ、日本が第三次世界大戦に本格参戦することになったのだ。
国防軍のシェルターで他の人達と同じように待機していた時だった。
達也がいきなり立ち上がったのだ。
その一拍遅れて、穂波と香波も椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。
鋼也もハッと何かを思い出したかのように立ち上がった。
「姉さん聞こえた?」
「ええ、達也君も?」
「はい。間違いなくこれは――」
「銃声ですね。それも基地内部から」
「連続的に銃声が聞こえています。銃は、アサルトライフルかマシンガンと思われます」
鋼也のことを無視しながら、僅かな銃声から達也は、相手の装備を割り出した。
「状況は分かりますか?」
「いえここからでは……、この部屋には魔法を阻害する効果があるようです」
「部屋の中で魔法を使う分には問題はないようね」
香波が簡単な魔法を発動し、魔法が使えるか確認した。
魔法が使えるのと使えないのとでは、取れる行動が変わってくる。
現状を認識することは、それだけ大切なことなのだ。
そんな時だった。
「き、君たちは魔法師なのかね?」
仕立てのいいスーツを着込んだ、如何にも社会的地位が高いと思わせる壮年の男性が声を掛けて来た。
「そうですが、何か問題でも?」
訝しげな表情で穂波は訊き返し、冷めきった目で香波は見返した。
「だったら、何が起きているか見て来たまえ」
まるで使用人に命令するかのように男は言い放った。
「私達は基地関係者ではありません」
穂波の表情からいつもの柔和な笑みが消えていた。
「そんなことは関係なかろう。君たちは魔法師なんだろう」
「ですから、わたしたちは……」
壮年の男性は穂波の言葉に一切耳を傾けず、一方的に自分の言い分だけを言った。
「ならば、人間に奉仕するのは当然の義務だろう」
男がそう言った瞬間、シェルター内の空気が凍った。
それでも男は止まらない。
「そ、そもそも魔法師は、作られた『もの』だろう。ならば、軍属など関係ない。それにどうせそこにいる小娘共も魔法師なのだろう、ならば私達人間の言うことを聞くべきだ!!」
そう男が深姫や真姫、深雪を指しながら言った瞬間だった。
「グヘッ!!」
男は、首を握りしめられたまま、壁に押し付けられたため蛙が潰れた時のような鳴き声を上げた。
その様子に一同が唖然とし、反応できなかった。
「わ…わたしを……だれだとお……もってい……る」
掠れた声ながらも、男は虚勢を張り己を解放するように言った。
「貴方が誰なのか私には関係ありません。私は使える主人にお嬢様方をお守りするように良い使わされています。そしてお嬢様方に危害を加える者は、排除しても構わないと言われておりますので」
男の首を締め上げながら香波は言った。
男の顔色が真っ青になり、白目を剥いて意識が落ちようとした時だった。
「辞めなさい香波」
そう言って穂波が香波の手を払った。
「私にこんなことをして許されると思っているのか!!私は国防軍とも繋がりが深い企業の役員だぞ」
男は香波の手から解放され、ゲホゲホとせき込みながら香波を指さしながら言った。
しかし香波は男の言っていることなど一切気にしなかった。
「そうですか。ですが、私がこの場で貴方を殺したとしても罪には問われなかったでしょうね。一介の企業の役員と災害どちらを優先すべきか、それが分からない国ではありませんから」
見下したように香波は言い放ったが、そのせいでシェルター内での空気がより一層悪くなった。
「達也、外の様子を見てきなさい」
悪くなった空気を収集するために深夜は、冷淡にそして端的に命令した。
「しかし、状況が分からない以上この場に危険が及ばないとも限りません。今の自分の力量では深雪を護ることは……」
「深雪?」
達也が深雪のことを呼び捨てにした時だった。
深夜の絶対零度のごとく冷たい眼差しが、スッと細まった。
「達也、身の程を弁えなさい」
あくまで深雪のガーディアンである達也が深雪を呼び捨てすることを深夜は容認しない。
基地に行く際は、深雪と二人っきりだったからこそ特別に容認したのであって、今の達也は四葉家のガーディアンだ。
「――失礼しました」
そのことを理解している達也は、直ぐに頭を下げた。
「この場は私達が引き受けておきますね」
穂波が口を挿んだことで深夜は興味を失ったかのように達也から視線を外した。
「わかりました。様子を見てきます」
それだけを言い残すと、達也はシェルターから出て行った。
達也が外を見に出て行って十数分経ったくらいだった。
銃声がどんどんと近づき、軍靴の響き渡る音も聞き取れるほど近づき扉の前で停まった。
この場にいる者達は誰もが不安を隠せず表情に出していた。
そんな中行動を起こしたのは、穂波と香波だった。
二人は、それぞれ守るべき対象を背にCADを構えいつでも魔法を発動できるようにした。
「失礼します。空挺第二中隊の金城一等兵です」
扉が開かれ、敬礼している金城一等兵が言うと、誰もが安堵した。
事実穂波も緊張を緩ませていたが、香波と鋼也は違った。
香波は、純粋に男と言う者を信じていないからだが、鋼也は原作知識で奴らが裏切り者だと知って居たからだ。
深雪の魔法によって一人倒されるが、それに激昂して乱射してくる。
それを防ぐことで、好感度を上げようと画策していた。
「皆さん地下シェルターの方にお連れ致します。着いて来てください」
「すみません。連れが一人外の様子を見に行っておりまして」
「しかし既に敵の一部が基地の奥深くまで侵入しておりまして、ここに留まるのは危険です」
本来、基地の内部に侵入を許すこと自体あってはならないことだ。
それが奥深くと言うことは、下手をしたら陥落間近だと言っているようなものだ。
そんな状況で地下シェルターに向ったらそれこそ逃げ道を失う事に為る。
「では、あちらの方々をお先にお連れ下さいな。息子を見捨てるわけにはいきませんので」
その言葉に、穂波と深雪は無言で目を見合わせた。
あの母が、達也を心配している。
そのことが深雪にはとても信じられなかった。
「ほ、ほら君、あちらさんもそう言っていることだから我らを先に連れて行きたまえ」
香波に首を握りつぶされそうになった男は、そう言って早く避難したいと顔にありありと出ていた。
金城たちは、深夜の発現が予想外だったのか少し待ってくれと言うと小声で話し合いだした。
「……達也君でしたら風間大尉に頼めば後で合流できたのでは?」
僅かな隙をついて穂波は、深夜に問いかけた。
「別に達也のことを心配などしてはいないわ。あれは建前なのですから」
「では?」
「勘よ」
「勘、ですか?」
「ええ、あの人たちを信用すべきでないという直感ね」
そう聞いた瞬間、穂波は緊張感を取り戻した。
「やはり、この場に皆さんを残すわけには参りません。お連れの方は責任を持ってお連れ致しますので、ご一緒に着いて来てください」
言葉使いは同じだが、脅しつけるような雰囲気で言った。
そのさまは、まるで何かが近づいて来るのに焦っているかのようだった。
「ディック!!」
金城一等兵が、声の主である桧垣上等兵に向っていきなり発砲した。
マシンガンを装備していた金城一等兵の仲間も桧垣上等兵の居る方向へと発砲し、残りの者達は銃口をこちらへと向けていた。
穂波と香波が敵と認識し魔法を発動しようとした。
しかし魔法は、頭の中でガラスが引っ掻き回さたかの様な耳障りなノイズの所為で発動することが出来なかった。
「何故だ、何故群を裏切った!!」
「お前こそ何故群に義理立てする」
「日本は俺たちの祖国じゃないか」
金城一等兵と桧垣上等兵が言い争ってる時だった。
銃弾が切れたためか、銃声が止みマガジンを取り換えるために若干意識を外したため、キャストジャミングが弱まった。
この程度のことでキャストジャミングが弱まると言うことは、相手は非魔法師。
その僅かな隙をついて深雪は魔法を発動した。
精神凍結魔法『コキュートス』
それによって、アンティ・ナイトを持っていた兵士は永遠に動くことはなくなった。
人を止めてしまったと言う後悔、まだ中学生になったばかりの子供にはとても荷が重いものだ。
しかし今後悔するべきではなかった。
何せここは戦場なのだから。
仲間の異常を察知した金城の仲間がマシンガンで一掃射した。
香波はとっさに振り返ると深姫と真姫の頭を抱え込む形で押し倒した。
発砲と同じタイミングで鋼也と穂波は魔法を発動したが効果を示す前に霧散した。
深姫と真姫は、香波のおかげで手足を穿たれる程度ですんだが、香波は背中に数発銃弾を受けた。
深夜は穂波の背後に居たため無傷ではないにしても軽傷だった。
しかし、穂波と深雪、鋼也は銃弾に穿たれた。
穿たれたところからドクドクと血が流れ、命が削れていく。
「深雪!!」
達也は天井を分解し、反乱兵を分解し深雪の元へと急いだ。
そして深雪へと左手を差し出すと達也の魔法演算領域の大部分を占めている魔法の一つ『再生』を使った。
深雪の受けた痛みを何百、何千倍となり感じながらも顔を顰めることなくただただ、深雪の意識が回復するその時まで不安気で満たされていた。
「お兄様」
天井がなくなり青空が視界の端に捕えながら深雪は達也を見上げながら、呟いた。
「よかった……!!」
達也は確りと深雪を抱きしめながら呻く様に言った。
その時だった。
達也ははっと空を見上げ、それにつられる様に深雪も青空を見上げた。
空には、とても早く飛んでいる飛行機が有り、それから何かが落とされた。
(まさか、爆弾!!)
そう思っても仕方がなかっただろう。
何せここは国防軍の基地だ。
攻撃しない理由がない。
しかし達也は、その存在を認識すると握っていたCADの引き金から手を引いた。
降って来る膨大な存在感、だが何かを大声で言っているような気もしなくもない。
それの存在が何かを知るのに数秒と掛からなかった。
肉眼で視認できる距離になると、深雪はその正体を悟れた。
(お、伯父様!!)
パラシュートもつけず、いつもの高価な和服を着こなしている伯父、終夜だったのだ。
終夜が深夜たちのいるものへと着地し、その場を見渡した。
傷つけられた、妹、娘、部下。
これだけで、終夜が切れるには十分だ。
「大丈夫か、香波?」
「も、申し訳ございません。お嬢様方を護るように言われておりましたが」
「いや、お前は良くやってくれていた。何せ生きているのだから」
そう言うと、終夜は香波たちに右手を翳し、指を鳴らした。
簡単な動作だが、変化は劇的に表れた。
香波、深姫、真姫三人の傷が何事もなかった様に綺麗に消失したのだ。
達也の魔法が、外的な要因により損傷を受ける前のエイドスをフルコピーし、それを魔法式として現在のエイドスを上書きする魔法であるのに対し、終夜のは外的要因により受けた損傷そのものを削除し、なかったものとするのだ。
通常であれば復元力によって魔法による改変から元に戻ろうとする力が働くが、達也はエイドスそのものを上書きしたため復元力が働かず、終夜のは復元するべきエイドスそのものが消失しているため復元しようにも出来ないため、傷を治すことが出来るのだ。
終夜が三人を治している間に、達也は深夜と穂波を治していた。
鋼也を治す時は、あまり表情に出さない達也でさえ嫌々やったと言う表情であったが。
「さて、状況を説明してくださいますよね」
終夜はいつの間にか入り口に居た、風間大尉に向って言い放った。
「ええ、分かっております」
そう言うと風間大尉は連れて来た部下に一般人たちを地下シェルターに避難させ、終夜たちだけになると現状を説明しだした。
説明を聞いている間終夜は不気味なまでに静かに話を聞いていた。
「ふむ、その程度か」
敵方に上陸を許してなお、その程度と言えるのは実力に裏付けされた自身がある終夜だからだろう。
「まあいい、俺の目的は妹と娘たち、姪を護ることだけが目的だったが、奴らは傷つけた。ならば殲滅する。たとえ相手が戦意を失ったとしても最後の一兵まで殺し尽くすだけだ」
「しかし投降してきた者まで殺すのは国際条約で禁止されているはずです」
「何を言っている。俺は兵器で災害だ。人が天災に対し許しを請うたところで収まるはずがなかろう」
終夜はいつも通りの自然体で、だが体面にいる風間たちはその存在感に呑み込まれまいと意識を強く持つだけで精一杯だった。
風間はなまじ終夜の実力を見知っているからこそ受けるプレッシャーは、実力を聞き知った者以上に受けていた。
そんな中達也は一歩前に出て、風間の眼を見ながら言い放った。
「風間大尉お願いしたい事があります」
「こちらは、反逆者をだし君の身内を危険にさらすどころか傷つけ殺めかけたのだ、何なりと言ってくれ」
「でしたら、アーマードスーツと歩兵装備一式を貸してください。貸すと言っても消耗品はお返しできませんが」
「それは構わんが、何故かね?」
「彼らは深雪に手をかけました。その報いを受けさせなければなりません」
風間は、身内の恥もあったためか、簡単に達也の願いを許可した。
それを聞いた瞬間終夜は、大いに笑った。
自分も達也と同じ年頃の時に同じ無茶をした。
まあ、相手が一国そのものか、その国の軍隊かの違いでしかない。
「でしたら、俺もお願いします」
あくまでも下手の態度で鋼也もお願いした。
ここで、不遜な態度を取っては後々の関係に傷を付けることになるからだ。
「面白い、実に面白。若い頃は無茶を買ってでもやるべきだ。上が何か行って来たら俺の名を使っても構わん貸してやれ」
「分かりました。達也君、鋼也君、非戦闘員や投降してくる者に対する虐殺は認められない、そんなつもりはないだろう?」
「投降する暇を与えません」
「当たり前です」
「ならば良し、達也君、鋼也君、君たちを今から我らの戦列に加えよう。もとより我らの任務は侵略者の撃退、もしくは殲滅だ。降伏勧告してやる必要はない」
(よっし、これで見せ場を手に入れられた)
「よろしい。真田、アーマースーツと白兵戦装備をお貸ししろ。空挺隊は十分後に出撃する!!」
それだけを言い残すと風間大尉は出て行き、達也と鋼也は真田に連れて行かれた。
十分後、アーマースーツを身に纏った達也と鋼也が現れた。
空挺隊も全員アーマースーツを身に纏う中一人、和服のままの終夜は異常なまでに目立った。
「出撃する。第一第二中隊は、――」
風間は、すぐさま全部隊に指示を出した。
達也と鋼也は同じ小隊に割り振られた。
そんな中終夜のみ単騎でいや、それ以前に終夜に指示を出すべき立場の人間などこの世のどこにも存在しない以上、同じ戦場で共通の敵がいるだけで、国防軍の見方である訳では無かった。
だが、状況を把握するために国防軍の無線を受信できる専用の端末だけは借り受けたが。
「しかし、ぬるいな。これなら、まだ俺が大漢に攻め込んだ時の方が愉しめた」
終夜に襲い掛かる敵を潰し、破裂させ、穿ち、吹き飛ばし、窒息させ、毒に侵され、蒸発させた。
敵の攻撃は悉く、逸らされ、防がれ、跳ね返されると言うまさに悪夢としか言いようのない状況だった。
逃走も投降も許されず、ただただ目の前で仲間が殺され、次の瞬間には自分と言う一方的な虐殺。
「まるで、天災ではないか」
敵兵の中の誰かがそう呟いた瞬間、その身が炭化しボロボロに崩れ去った。
ワンサイドゲームと化した戦場は、無双ゲーの方がまだ楽しめると終夜は思ったそんな時だった。
『司令部より全部隊へ。敵艦隊と思われる艦影が粟国島より接近中。航空母艦一、高速ミサイル巡洋艦二、駆逐艦四。補給艦二、攻撃型潜水艦一による空母打撃艦隊、高速巡洋艦二、駆逐四の分隊一、僚軍の迎撃間に合わず、至急湾岸部より退避せよ。繰り返す――』
空母打撃艦隊の編成できている。
つまり相手は、本気で戦争を望んでいることに為る。
これが、ただの艦隊ならば軍の一部の暴走と言い訳する事も出来ただろうが、空母が出て来たと言うことは、余程上層部が首を突っ込んで来ていることになる。
そして、その空母を撃沈すると言うことは、そのまま両国間で戦争を開戦させることになるため高度な政治的決断が必要になる。
そんな中更に通信が入って来た。
『敵艦隊を破壊する手段があります。ただ、部隊の皆さんに見られたくはありません。ですので、真田中尉のデバイスを置いて、この場を移動していただけないでしょうか』
『……いいだろう。ただし、俺と真田は立ち会わさせてもらう』
『……分かりました』
その後直ぐ、また通信が入り全部隊に指示を送ると、柳と言う者に部隊指揮権を委譲した。
「……確か、アイツには」
いつの日か小耳にはさんだ情報だが、達也は戦略級と言って差し支えない魔法が使えたはずだ。
威力、性能はどちらとも実証実験を行っていないため論理上でしか存在しなものだ。
だが、この目で見るだけの価値はありそうだ。
そう思った瞬間、終夜は無線機に向って言い放った、「俺も行く、場所を教えろ」と。
終夜が射撃ポイントについた時には、丁度達也が一度試射を試した後だった。
「駄目です。二十キロが限界の様です」
「まだ無事でいたと言うことは、艦載機による爆撃は行われていないのか」
「!!……今御着きに?」
「ああ、そうだ。それで達也援護は必要か?」
あくまでも今回の目的は、達也の魔法が使い物になるのかの実証を兼ねているので終夜は裏方に徹することにしていた。
まあ、その後大亜連の空母打撃艦隊を殲滅する予定が在るのだが。
「ええ、出来れば敵の砲撃を防いでいただけ「そんな必要はない。俺が全部ぶち壊してやるからな!!」」
達也が、言い終わる前に鋼也が話に割り込んできた。
どうやら鋼也も着いて来ていたようだ。
「ほう、なら見せてもらおうか」
そう言うと、終夜は一歩引いた。
まあ、こちらに砲弾が来たら無条件で落とす予定なのだが、そんなことを気にする鋼也ではなかった。
(やっと見せ場だ。さっきは全部達也に持って行かれたが、ここで俺の力をアピールすれば)
そう思いながら、汎用型CADを操作し、詠唱しはじめた。
「契約により我に従え、高殿の王。来れ、巨神を滅ぼす燃え立つ雷霆。百重千重と重なりて、走れよ稲妻。『千の雷』」
艦砲射撃によって打ち出された砲弾めがけ、鋼也は膨大な雷を広範囲に渡って放った。
(これが神から貰った力の一つよ。気と言う概念がないこの世界で虚空瞬動や無音拳は場違いだからな。精霊がいるって設定が在る以上ネギま!の魔法全部の方が全然違和感ないしな)
全く考えてないように見えて、古式魔法や精霊魔法が存在するこの世界で精霊を媒介にするネギまの魔法は規格外であっても異常ではなかった。
流石に仮契約は無理だったようだが。
「何と!!」
「ここまで大規模な精霊魔法があるとは……」
風間と真田は見た目はあれだが、ここまで実力があるとは思いもしなかったため、かなり驚くことになった。
それは、現状をモニターで見ている真夜たちも出会った。
いつも傲岸不遜で厚顔無恥、傲慢無礼、誇大妄想、自己顕示欲が強いと人に好かれ、褒められるような要素が一つとしてない精神の持ち主だった。
そのため誰もが見向きもせず、技量を知ろうとしなかったが為に、鋼也のことを誰もが侮っていたが、現実はそうではなかった。
この一件で鋼也の評価が、地中にめり込み、天元突破していた評価が地中にめり込む位置まで戻って来た。
まあ、地中を突破するギリギリの辺りだが。
その後射出された、銃弾は敵艦隊頭上にたどり着くのを確認した達也は、銃弾をエネルギーへと分解した。
質量分解魔法『マテリアル・バースト』が実践で初めて使用された瞬間でもあった。
水平線に閃光が生じ、爆音が轟いた。
それに一拍遅れて爆風が突風となり終夜たちへと襲い掛かった。
蒸発した海水を補うため、潮が引きそれが今度は津波として襲い掛かって来た。
「津波だ!!退避!」
激しい勢いで襲い来る津波に誰もが避難していく中、終夜のみ平然とした態度で右手を向けると、指をパチンッと鳴らした。
その音を合図にするかのように、終夜を中心に気温が下がり大気さえ凍りつき液体窒素を生み出し始めた。
振動・減速させる領域魔法『ニブルヘイム』
しかし、その範囲精度はばかげており、襲い掛かる津波全てを凍りつかせたのだ。
それも勢いがある所のみで生態系を崩さないためにも、凍りつかせた海は直ぐに振動系魔法で粉々に砕け散った。
「さて、ここからが俺の仕事だな」
そう言うと、終夜は崖から飛び降りるように跳ぶと、飛行魔法を発動させた。
目標は大亜連、空母打撃艦隊。
終夜としては、別段大亜連を滅ぼす名分が在ればそれでいい。
大義なんてものは、所詮国民を納得させるためにあるもので、実際には存在しないのだから。
航空母艦内に置かれる指令室――
高波が襲い掛かり、しりもちをついた酷く太った男は立ち上がると行き成り地団太を踏んだ。
「くそ!!どういうことだ、敵の迎撃は間に合っていなかった。なのになぜ防空レーダーを破壊する筈がこちらの艦隊が壊滅させられている」
今回の作戦行動に必要な権限を与えられている少将は、この結果に歯噛みしていた。
このままおめおめ帰ったならば軍法会議者だ。
今まで得られていた、賞賛の数々、地位、名誉、そして膨大な富を失うことになる。
それだけは何としても阻止しなければならない。
「全艦に通達このまま作戦を実行する。艦載機は順次発進させ先制爆撃、防衛施設の破壊をさせろ」
「りょ、了解しました!!」
若い兵は、全艦に作戦実行の暗号を打電、空母ではサイレンが鳴り、艦載機のパイロットたちは慌ただしく自機に乗り込み、次々と発射していく。
攻撃型潜水艦は浮上し、巡航ミサイルを次々と陸地に向って発射し、高速ミサイル巡航艦も対地用ミサイルを次々と射出していく。
そんな中突如異変が起きた。
「み、ミサイル全弾消失、艦載機も応答がなくなりました」
レーダーで常時状況を監視していた兵が、強張る様な声で言った。
「どういうことだ!!」
「と、突如レーダーより反応が消失、通信にも一切応答が……!!レーダーに反応有、一機のみですが敵機と思われます!?」
「さっさと迎撃させろ!!」
少将が怒鳴るように言うが、そのような事言われずとも既に迎撃している。
しかし対艦、対空ミサイルは悉く落とされ、潜水艦は既に撃沈、空母を護衛するための陣形は崩れ艦隊は一隻、また一隻と確実に潰されてきている。
そんな情報を理解できない、いやしたくない少将は空母だけは死守する様に言った。
空母を撃沈させたなど、汚名どころではない。
下手をしたら死刑だ。
この時点で尚、自身は生き残れると思う辺り心臓に毛が生えているや神経が図太いと言う次元を超えている気がする。
「儂は何れなる身だぞ!!こんなところで死んで――」
それが最後の言葉となった。
「そこそこ楽しめたな」
空母が炎上し沈んでいくさまを見ながら、敵機、終夜は見下ろしながら言った。
終夜が帰投すると深姫と真姫が走って来た。
出迎えのハグと思った終夜は、両手を広げ笑顔で待ち構えた……後悔するとも知らずに。
走ってくる娘たちはそのまま終夜の第二ボタンの近くにある急所を貫き、男の急所を蹴り抜いた。
空母打撃艦隊の防衛網を物理的に破壊突破し、艦隊を殲滅した男は娘たちの手によってあっさりと撃沈された。
これこそ、双子であって双子ではない、産まれた時から一緒に学び、育ち、鍛えあった、互いのことを知り抜いた二人だからこそできるコンビプレーだった。
「「お父様、お聞きしたい事があります」」
「お、おう。何を聞きたいんだ」
痛みを我慢しながら、終夜は聞いた。
余談ではあるが、終夜が蹴り抜かれるのを映像や直接見ていた、達也や鋼也、風間や真田たち軍基地に所属する男性は全員ある一部を覆ったと言う。
「達也のことについてです」
深姫がそう言った瞬間、終夜は真面目な顔つきに変わった。
ただ、内また状態であまり締まりはなかったが。
「誰から訊いた」
「叔母様からです」
「深夜が……」
終夜は、そうかと頷くことしかできなかった。
「やはり事実だったのですね。否定してほしかったのですが」
真姫は顔を俯かせながら言った。
「でしたら、お父様と暫く一緒にお風呂に入りません!!」
「私も暫くお父様と一緒に寝てあげません!!」
その瞬間空気が凍った。
終夜は、宣告により絶望し固まり、周りの者は聞いてはいけないことを聞いてしまったと思い気まずくなってしまったからだ。
後日終夜の手によって物理的に記憶を消される羽目になったものは大勢いたらしいが、それを知るのは今となっては終夜のみだ。
「「お父様、反省してください!!」」
そう言うと、固まった終夜を置いて行き基地内に戻って行った。
終夜は深夜が呼びに来るその瞬間まで固まっていたという。
次は一気に原作に入りたいと思います。
やっとここまで来たよ、パトラッシュ。
危うく二分割しようとしていたから、初めて一万文字超えたし、もう来週休んでも良いかな?と、思いつつも頑張って書きたいと思います。