魔法科高校の劣等生~世界最強のアンチェイン~   作:國靜 繋

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かなり久しぶりの投稿になります。
エタらせないので安心してください。
まあ、一気にお気に入り数が減りそうな気はしますが……
後半は、書き方が別の作品の影響を受けてる気がするのは、作者の気のせいでしょうかね……


最近自分付の従者が厳しくなってきてる気がする……絶対気のせいじゃないと思うのだが

新入生総代で、深雪が生徒会長である真由美の祝辞に対しての答辞を終え、檀上を下りて行くのが見えた。

 

「続きまして、PTA会長より祝辞。PTA会長、四葉終夜様お願いします」

 

四葉、魔法師として魔法を習う為に国立魔法科大学附属第一高校に入学した者達が、知らないはずがない魔法師のコミュニティーで一種のタブーとされている名前。

その四葉の中でさえも、更にタブー視されており、既に歴史にその名を既に残している、現在の歴史の教育、魔法師育成のカリキュラムの中に名前が出て来る男。

ある意味、一生涯で関わらなくて良いならば一生関わらない方を、権力者は皆迷わず選択したくなるような人物だ。

まあ、ただ単に妹と娘を愛しすぎているだけの変態とも言えなくもないが。

そんな終夜が壇上へと上がると、深雪の時とは違った意味で静まり返っていた。

世界最強の称号は伊達ではなく、そこにいるだけで放つ存在感と纏う風格が違い過ぎていたのだ。

圧倒的、絶対的と言った言葉以外に、何と言えば良いのかその場の誰もが思いつかないでいた。

一科生に入れたと言う優越感に浸っていた者達は現実に引き戻され、あの人の前では誰もが等しく劣っていると思い知らされていた。

そんな終夜は、端から端まで一通り目配せした。

深姫と真姫はどこにいるのかな、と探していたりするのは終夜としてはお約束だろう。

 

「まずは入学おめでとう。一校に入学できたことを心から祝おう」

 

本来こういった祝辞ならば敬語を使うべきなのだろうが、終夜は上から目線で言い放った。

だが、それが許されるのが四葉終夜と言う存在だ。

誰もが彼の前では等しく下にいる存在であり、彼の横に並び立つことが許されているのは、彼に許しを得られた本当に一握りの存在だけだ。

 

「この国立魔法大学付属第一高校に入学できたと言うそれだけで、諸君らは世間の者達とは違う特別な力を持った存在であると認識してもらいた。だが、それに傲り選民意識に囚われていてはいけない。既に諸君らの中には一科生、二科生、いやこの場合、君たちの言葉で言うならば、ウィードとブルームと言う蔑称で壁を作り選民意識を持っている者達がいるだろう。僕たち私達は、お前達に勝っている、そう思っている者達に言おう。そんなものは所詮幻想だ。確かに君らの胸にある校章が原因なのはわかるが、花は手入れを忘れ雑草が生えただけで枯れてしまう。それに比べ雑草はどのような環境でも育つ。何が言いたいか分かる者はいるか。この場で誰かを当ててもいいが、まだ高校生になったばかりの者ばかりだ、この様な場でいきなりあてられるのは酷だろうから、今回は誰にも当てないが、つまり一科生はこのまま傲っていては、何れ二科生にその座から引きずり降ろされ、奪われると。君たちは歴史を習っているはずだ。ならば、権力と言う力を持つ者達のまつろを。それの縮図が今の君たちだ。余裕が慢心へ、そして油断へと変わる。その油断が君たち特に一科生となった者達が持った時がまさに歴史の革命と同じ最後になる」

 

終夜が言い放つ言葉一つ一つが、この場で優越感に浸っていた者達に圧倒的重圧としてのしかかり、劣等感を抱いていた者達は一筋の希望を見いだせていた。

 

「それでなお、油断し、優越感に浸りたいならば己の力を示せ。誰もが認める力を示してこそ初めて認められ、その時優越感に浸ればいい。しかしその優越感が堕落に繋がってはいけない。この魔法師の世界は常に進化し続けている。一瞬の油断が君たちの横にいるこれから仲間になる者達の命を脅かすことになる。それだけは忘れるな。以上」

 

それだけを言い切ると、終夜は檀上を下りて行く時には、割れんばかりの拍手が講堂内に響き渡った。

本当ならば一拍置いて、「人の娘に手を出したらどうなるか分かってるだろうな?」とドスを効かせて言い放とうと思ったが、深姫と真姫に先に「そんなこと言わないでよね」と念押しされたので断念したのは余談んだ。

その後も式は粛々と予定通りに進んでいった。

深姫と真姫は、終夜が余計なことを言わなかったことに安堵し、胸を撫で下ろしていたりする。

 

 

 

 

式は無事に終わり生徒たちは、IDカードの交付があるため事務の窓口へと向かっていた。

その際も矢張りと言うべきだろうか、一科生と二科生で分かれていた。

差別意識や選民意識は簡単には無くならないようだ。

まあ、今の生徒会長である七草真由美や部活連会頭である十文字克人がそう言ったことを嫌うので表ざたにならずに済んでいる。

深姫や真姫も達也と言う、魔法師至上主義である四葉の闇の集大成を知っているがために、差別や選民意識と言ったものとは程遠い思想になっていることに、父親として喜ぶべきだろう。

四葉の人間として、やっていくには少し辛いだろうが……

そんなことを考えながら終夜は、着慣れないスーツをモデル以上に着こなしながら生徒会室へと向かった。

本来ならば、あいさつ回りなどしなければならない事が多くある終夜だが、『面倒だ』の一言で放りだして来ていた。

そのため面倒な仕事は総て香波に押し付けて、逃げて来た終夜は生徒会室である人物達と会う約束をしていた。

コンコンコンと三度礼儀としてきちんとノックした終夜は、中から『どうぞ』と言う声が聞こえてから開けてもらった。

国立魔法科大学附属第一高校の生徒会室と言うこともあり、セキュリティーは万全で専用のIDカードが必要だ。

終夜とて望めばその程度のこと容易に手に入るが、さして興味がないためIDを発行していない。

 

「お待ちしてました、四葉さん」

 

扉を開けて出迎えてくれたのは、第一校の生徒会にして四葉と因縁深い七草。

その息女である七草真由美であった。

 

「克人君もいるようだね」

 

中に入った終夜は、本当に高校生か?と初見の人ならば誰しも疑いたくなる巌のような男である、十師族が一つである十文字家当主”代行”である十文字克人と対面に位置する席に座った。

 

「さて、長々と前口上を言うつもりはない、いきなり本題に入らせてもらう。ブランシュが一校の内部に入り込んでいる。いや、これは正しくないな……正確には一校の生徒がブランシュに入ったか」

 

「……矢張りそうですか」

 

克人は僅かに間を置いて答えた。

 

「そうなの十文字君!!」

 

「克人君は気が付いていたようだな。いつ頃からか知っているか?」

 

「いえ、あくまでも仮説の段階でしたので、いつからと訊かれても答えかねます」

 

「そうか。ならば怪しいと思っている者の名簿があるならもらえるか」

 

「理由をお聞きしても」

 

「簡単なことだ。深夜に手伝ってもらい頭の中を洗う」

 

頭の中を洗うと言うのは、物理的なことを言っている訳でないことをこの場にいる二人は理解してる。

世界で終夜と深夜のみが使うことを許されている魔法。

世界で禁忌とされている精神構造干渉魔法を使うことができるのだ。

その魔法を応用すれば、いくらでも情報を吐き出させることができる。

主に人格を強制し、従順にして聞き出すなど。

そして、そのことに気が付かない程二人は愚かではない。

 

「でしたらお断りします」

 

克人がそう言って断った瞬間、終夜内からただならぬ気配が溢れ出した。

主に娘たちに対する接し方のせいで変態扱いをされている終夜だが、その実力は文字通り世界最強クラスであり一言で表すならば災害だ。

そんな災害に睨まれて毅然としていられるものは存在しない。

克人は十文字家を背負う身として表面上こそ毅然としているが、実際には全身から嫌な汗が出て来ており、真由美は無意識に一歩引いてしまっている。

 

「俺が娘たちに対する脅威を見す見す見逃すわけがなかろう。大人しく渡せ」

 

「先ほども言いました通りお断りさせてもらいます。これは当校の生徒の問題。ならばこれは既に当校の問題でありその問題を解決する力を我々は持っています」

 

「あくまでも自分達で解決すると?」

 

「ええ、何か問題でも」

 

克人はあくまでも自分達で解決したようで、終夜に強い意志を込めた瞳で見つめて来た。

終夜としては、野郎からそんな目で見られてくないと言うのが本心で、せめて真由美の方が見た目も良いんだからと思っていたりする。

 

「まあいいだろう。早めの実地練習と思ってやる。が、もし何かあった場合迷わず介入する」

 

「分かっております。そこまで断る理由はないですから。それに当校の生徒とて何かをやるなら相応の覚悟があるはずです。ですが殺しだけはくれぐれも、やらないようお願いします」

 

終夜とて娘の学友を殺める気は元々ない。

ただし娘に傷を負わせる様な真似をしなければ、が付くが。

もしそのような真似をしたならば、娘や妹のことに関して沸点がヘリウム並みに低い終夜だ。

何をしでかすか娘である深姫や真姫は無論、妹である深夜や真夜でさえ未だに分からないのだ。

唯願うならば、大漢のようなことにならないことそれのみだ。

 

「確認することはそれだけだ。俺はこれで失礼する。予定が詰まっているからな」

 

終夜はそれだけを言うと出て行った。

克人と真由美は、終夜が完全に出て行くのを確認すると、椅子の背もたれに体重を預けた。

 

「あれが四葉終夜か」

 

「よく十文字君は臆面もなく話せたわね。私なんて迫力に呑まれて何も言えなかったわよ」

 

「俺だって、あの迫力には呑まれてたさ」

 

「え?でもいつも通りに見えたけど……?」

 

「ひとえに慣れか。当主代理で何度かあの人に会っていたからこそだ。それにそう言うならば七草のお父上の方があの人相手に一歩も引かずに話せると思うが」

 

「……私もそこだけは、あの狸親父のことを素直に尊敬しているわ」

 

そう言いながら真由美は立ち上がると、生徒会室に備え付けられているお茶セットを使いお茶を淹れだした。

お茶と言っても緑茶などではなく、この場では紅茶を指すのはみんな分かっているだろう。

 

「はい、十文字君」

 

そう言って真由美は克人に居れたお茶を渡した。

 

「すまんな」

 

そうい言って克人は、一口口にし、一瞬固まるとそのまま全てを一気飲みした。

 

「俺はこれで失礼する。勧誘週間に向けて部活連で会議があるからな」

 

「そう?もう少しゆっくりして行けば良いと思ったけど、忙しそうだからこれ以上呼び止めておくのも迷惑ね」

 

「ではこれで失礼する」

 

克人はそう言って、生徒会室を後にした。

その時足跡が過ぎ去るのが徐々に早くなっていったのは真由美の勘違いだと思いたいものだ。

 

 

 

 

 

 

「それで言い訳はありますか」

 

克人と真由美に恐れられていた終夜は、面倒なことを全て押し付けた香波に怒られていた。

本来なら従者が主人を怒るなどあってはならないのだが、そこは二人の信頼関係もあって御咎めはない。

むしろ終夜付の香波に手を出そうなどと思うものは基本的に皆無だ。

稀に夜会で誰の従者でも関係なく顎で使う者もいるのだが、大抵そう言う奴は夜会に参加するような権力を失い、そのまま落ちる所まで落ちて初めて、高い買い物を借金してまで買ったこと気が付くのだ。

特に終夜の従者を顎で使ったものは、終夜に目を付けられ、終夜(災害)に目を付けられている者にすり寄ったり助けようと思うものは存在しない。

的確に分かりやすく言うならば、盗まれると分かっている美術品の保険を加入させてくれる保険屋がいない様なものだ。

 

「まあいいじゃん。思ったよりも面倒じゃなかった様だし」

 

「そう言う問題ではありません!!」

 

「まあまあ、それにせっかく姪が高校に進学したんだ入学祝でも渡しに行こう」

 

「って、話を逸らさないでください!!」

 

そんなことをしながら、運転手に運転されている車の中終夜は一時帰路に着いた。

しかし、そんな終夜の内心ではブランシュ、引いてはその背後にいる組織をどうするかを考えていた。

まあその横で未だに主人を想い過ぎる従者が、主人のために怒っているためあまり締まらなかったが。




次の話は一気に飛びます。
終夜関係するのって、次は襲撃された時くらいですから。
要望が有れば、深姫や真姫視点で書いてもいいかなと思いますけど、書ける自信が……

そしてまた更新が遅くなるんですよきっと……
全部卒論が悪い
すみません、若干愚痴が入りました。
可能な限り次も早く書きます。

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