魔法科高校の劣等生~世界最強のアンチェイン~   作:國靜 繋

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お久しぶりです。
最近アカメが斬る!!のSSばかり更新していて、こちらが疎かになっていました。
更新を待っていた方には本当に申し訳ないです……


テロリストの襲撃……その割には、誰も怖がってないよね?

入学式も終わり、生徒達も新しい学校生活に慣れ始めた頃だった。

何かいろいろあって、達也が風紀委員に選ばれたと深雪から連絡があり、深雪自身は生徒会に入ったと教えてもらった。

深姫と真姫はそう言った、目立つことに興味がないため、生徒会入りを断っている。

まあ去年の九校戦、その中でも一年生だけが出場できる新人戦で大暴れしているのだが……。

深姫は『ミラージ・バット』と『アイス・ピラーズ・ブレイク』真姫は、『クラウド・ボール』と『バトル・ボード』で一位を取っている。

その時の映像は、自前で撮っていた分と大会委員が撮っている分を、深姫と真姫が出場している部分のみを編集してもらっている。

むろんその事を知っているのは、自分付である香波のみだ。

 

「それで、奴らの動きはどうだ?」

 

「今の所は大丈夫だと思われます。ですが、ブランシュに入っている学生は動きを活発化しているようで、先日放送室に立て籠もり事件をお越し、今日はその生徒達との対話のために討論会があるそうです」

 

また面白そうなことをしているな、終夜はそう思いながら香波が用意してくれたお茶を啜る。

終夜はこれでも四葉宗家の嫡男だ。

幼いころから、礼儀作法はもちろん味についても躾けられてきているため、終夜の舌はそこらの美食家以上に肥えている。

その終夜に美味いと感じさせる香波の腕は、相当なものだ。

 

「念のため監視を付けているが、そちらからの報告はどうなっている」

 

「今の所は何も報告が来ておりません。しかしブランシュに入っている学生が、何か行動を起こしたとなると、そろそろ本格的に動き出すと思われます」

 

「そうか、まあいい俺自ら動くとなると目立つからな。奴らが目に見えた形で動くか深姫と真姫に何らかのアクションをとらない限りは俺は動かない。それで深姫と真姫はどうしている?」

 

「お二人ならまだお帰りになっていません」

 

「……そうか」

 

香波は、いい加減娘離れすればいいのでは?と思いはしたが口には出さない出来たガーディアンだ。

例えそれを口に出したとしても、終夜は笑って流す程度には良好な関係を保っている。

言い換えればだけ長い付き合いであるとも言えるのだが。

 

 

 

 

 

所変わって、第一校にいる深姫と真姫はと言うと。

 

「なんだかすごく嫌な感じがする」

 

深姫がそう呟いた。

四葉においてさえ規格外の災害と称される終夜と終夜と言う例外を除いて唯一精神構造干渉を可能とする深夜の遺伝子を継いでいる深姫は、人の悪意に敏感だ。

 

「大丈夫よ深姫。お父様が、一校周辺に監視員を配置しているから」

 

終夜が配置した部下はあくまでも監視止まりであるため、荒事に向いていない。

向いていないと言っても、魔法の方向性がそう言う風に特化させられているだけであって、一般的警察組織に比べたら、何倍も役に立つ者達だ。

そんな中深姫の不安を他所に討論会が始まった。

二人は興味があったからと言うよりも、暇だから聞いていると言った部類に入る。

そもそも二人は一科生も二科生も差別していない。

確かにそう言った輩もいるだろうが、終夜と言う例外を生まれた日から知っている二人にとって魔法師は終夜か有象無象のどちらかに部類されているからだ。

 

「真姫、何か来る」

 

生徒会長である真由美の話が、粛々と進む中、深姫は悪意が近づいて来ていることを真姫に訴えた。

次の瞬間、轟音が行動の中に響き渡り、その音は講堂全体を震わせた。

それと連動するように、講堂内に何かが投げ込まれてきた。

それが、落ちると衝撃で起動するようになっていたのか、白い煙を吹き出し始めると、直ぐに逆再生するように煙は投げ込まれた物に戻って行った。

風紀委員は、マークしていたのであろう人物たちを一斉に取り押さえ出した。

 

「動ぐへっ!?」

 

講堂内にいきなり武装した者達が入り込んで来たが、真姫はとっさに空気の密度を上げ見えない壁を作り上げた。

勢いよく侵入してきた武装したテロリストであろう者達は、見えない壁にぶつかり後続の者達も勢いをつけていた所為で、前で牽制をしようとした者に全力でタックルする形になってしまい蛙が潰れた様な鳴き声を上げた。

ただ、CADもなしに実行したためあまり頑丈ではなかった。

そのため、直ぐに空気は拡散してしまいテロリストたちは、支えを失ったためそのまま倒れ込んでしまった。

 

「結構な人数が攻めて来ているみたいだね」

 

「あくまでも監視だからね。流石に全員を止めることは出来なかったみたい」

 

二人は、そのままCADを預けている事務室方面へと向かった。

 

「思った以上にかなりの人数みたいだね」

 

事務室方面へと駆ける中、校門周辺と実習棟から黒煙が上がっている。

実習棟は、先ほどの轟音の正体である携行型地対地ロケットランチャーによる砲撃のため黒煙が上がっているのは理解できる。

そうなると校門周辺の黒煙は、二人の父である終夜が手配した監視員がテロリストの車両を破壊したのだろうと当たりを付けた。

 

「それよりも急がないと。お父様が来るよりも早く制圧しないと」

 

「……そうね。テロリストのことを思うと私達で制圧してあげるのがせめてもの情けね」

 

二人が通っている学校にテロリストが攻め込んだと知れば、間違いなくテロリストが物理的に世界からいなくなってしまう。

監視員がいる以上、間違いなく既に知られているだろうが来るまでに時間がある。

その僅かな時間で全てを制圧しなければならないのだ。

幸い終夜が手配した監視員も制圧にかかっているから、思ったよりも早くケリがつくはずだ。

 

「すみません。2Aの四葉真姫です」

 

「と、2A四葉深姫ですCADの返却をお願いします」

 

「!?分かりました」

 

状況が状況なためか、事務員の人は声を掛けた時、ビクリと肩を震わせた。

そして生徒だと分かると、急いで二人のCADを持ってきた。

 

「だ、大丈夫なんでしょうか?」

 

「大丈夫ですよ。私達もいますから。それに元々父が監視員を派遣してましたから、そんなに時間が掛からない内に父が来ますよ」

 

不安気に聞いて来る事務員に励まそうと深姫が堪えた。

私達と言うよりも、父が来ると言う言葉の方で安堵の表情を浮かべる辺り、やはり十師族の四葉家直系で四葉終夜の嫡女と言う身分と、二人の父親であり世界最強であり軍事衛星で24時間365日監視されている災害(化物)である四葉終夜と言うネームバリューとでは矢張り信用に差があるようだ。

二人も四葉終夜(父親)に魔法の訓練を手伝ってもらっているから、その辺りの割り切りは出来ている。

 

「行くよ深姫」

 

「あ、待って真姫」

 

テロリストに学校が強襲されたと言うのに全く動じた様子を見せない二人を見ていた事務員は、何でこの学校の子達はあんなに嬉々としているのだろうか?と少し前にCADを取りに来た学生を思い出していた。

特に銀髪オッドアイとか。

 

「それで私達はどうするの?」

 

「テロリストがここを襲撃したのには理由があるはず。お父様も言っていた通りブランシュが絡んでいるのなら、欲しているのは魔法研究の最先端情報なはず」

 

「なら、アクセスできる図書館の方に向かうべきね」

 

深姫と真姫が図書館へ向かうと決めた時であった。

地上から雷が昇ったのだ。

空から雷が落ちると言うが、まさかその逆を見るとは二人も思いはしなかった。

しかしそれを可能とする人物を二人は知っているが、頭に思い浮かべる様な真似はしなかった。

DNA上では血縁であるが、見た目は誰がどう見ても同じ血縁であると分からない。

事実その子供を産んだ深夜や双子の兄である達也でさえ、血縁である事を否定しているのだから。

まあ、その事実について当の本人は全く気が付いていないのだが。

そして、二人にそんな風に罵倒されている本人はと言うと。

 

「ふははははは、どうだ『千の雷』の力は!!」

 

襲い掛かってくるテロリストに対し、周りに自分の実力を見せる様に立ち回る。

 

「ほら、どうしたどうした!!この程度か?来れ虚空の雷、薙ぎ払え。『雷の斧』」

 

テロリストを煽りながらも、確実に倒していく。

バカで人の神経を逆なでし、嫌悪感を抱かせることに関しては、間違いなくGの異名を取る生物を抜いて生物界一位なのは、覆しようのない事実だ。

 

「さて、そろそろ敵の本陣を潰しに行くか。確か場所は確か街外れのバイオ燃料の廃工場だったはずだ」

 

他の人達が自身の身を護り、敵を制圧するのに夢中な今こそが抜け出すチャンスと思った鋼也は、誰にも気づかれることなく学校を後にした。

これが事件を更に面倒なことに導くとは知らずに。

 

 

 

「あっ、達也君と深雪さん。えっとそちらは?」

 

「四葉先輩がた、こちらは千葉エリカです」

 

「始めました。千葉エリカです」

 

達也達も近くにエリカが居たためか、二人の心意を察して苗字、先輩付で呼んだ。

こんなところでボロを出すのはこの場の誰にとっても好ましいことではないからだ。

 

(ちょっと、達也君何でこの二人と知り合いなの)

 

(少し前に知り合ったんだよ)

 

(その割には仲がよさそうだけど?)

 

(その件についてはまた今度詳しく説明する)

 

(……分かったわ。この場は引いてあげる)

 

若干不服そうな表情だが、エリカはこの場での言及を辞めた。

この場で言及しているほど暇ではないからだ。

 

「それにしてもかなりの人数を倒したようですね」

 

「そう?真面目に訓練してきた様子もないからね。それにいきなり学生と連携を出来るほど優秀でもなかったから」

 

そう言って真姫は、死屍累々と横たわるテロリストとそれに加担した学生の山を見た。

流石に殺すことはしていないようだが、完全に後遺症がないかと訊かれたら二人は間違いなく押し黙るだろう。

 

「でも数だけはいたからね。殺せないって制約がある以上足止めはされたんだけどね」

 

戦争ではない以上、終夜のような個人と国家で条約を結ばない限り、殺したならば殺したなりに相応の理由が必要だ。

 

「でもまだ人数がいるみたいだから私達はそっちを片付けるから、奥の情報を得ようとしている奴らをお願い」

 

「分かりました」

 

三人は、そのまま図書館の奥の方へと駆けだすのを深姫と真姫は見送った。

 

「さて、続きでもやりましょうか」

 

「そうね。お父様の相手をしないで済むのだから私達の慈悲を受け止めるべきね」

 

真姫がCADを軽やかに、深姫が鮮やかに操作しながら言った。




次で、入学式編終わりです。
本番は、九校戦と横浜ですかね~

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