魔法科高校の劣等生~世界最強のアンチェイン~   作:國靜 繋

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戦いとは対等であって初めて成り立つこと……世界最強にとっての悩みは、おおよそ戦いと言う展開に成りえないこと

終夜が監視員から連絡をもらい、第一校に着いた時には既にテロリストたちが制圧された後であった。

 

「お父様遅かったですね」

 

「いつもでしたら既に付いていらっしゃると言うのに」

 

娘たちが出迎えてくれたことに終夜は内心喜んでいたが、ふと疑問に思ったことがある。

あれ、何で俺に対して敬語?と。

 

「言い訳になるから言いたくないんだけど」

 

「お父様遅かったですね」

 

「いつもでしたら既に付いていらっしゃると言うのに」

 

あれもしかして、理由言うまでこの子達ループさせ続けるきか!!と終夜は戦慄した。

 

「監視員から報告は確かにあったらしいよ。でも俺の娘離れを促すためにって、香波が合えて連絡を遅らせたんだ……」

 

「いつも愛してるとか言っているのは嘘なんですか?遅れたのを香波さんのせいにして」

 

「お父様、私達信じていましたのに」

 

二人は、手で目元を隠しながら泣くふりをしながら言った。

凄くわざとらしいが、遅れてしまったのは事実であると終夜はその事実のみを真摯に受け止めた。

 

「はぁ、一応望みを聞こうじゃないか」

 

二人が何かを欲しているのは確定的だ。

そして、わざと連絡を遅らせた香波も間違いなく二人とグルであるのは確定的である。

 

「さすがお父様、話が早くて助かります」

 

「私達、今日から達也達の家で暮らしますね」

 

「そうか、今日から達也達の家で暮らすのか、まあその位なら…………」

 

終夜は、聞き流すように了承しようとした時であった。

どうせ何か欲しいものがあるのであろうと、終夜は高をくくっていた。

しかしその予想に反して、深姫と真姫が求めたのは、達也と深雪とその他一名が住んでいる家に一緒に住むと言うものであった。

さすがの終夜にとっても予想外の展開で、どの様に返答したものかと考えさせられる。

 

「まあその位ならと言うことは、了承と言うことで受け取っていいんですね?」

 

「あ、いやちょっと待て、年頃の娘が男と同棲何てお父さん認めないからな」

 

「でもお父様は、その位ならとおっしゃったではありませんか?」

 

「まさか、私達の話を聞かずに適当に答えた何ておっしゃらないですよね?」

 

はいそうですと、言えるわけがない。

それを分かっていてこの子達は言っている。

幸いなことに、話をしているのが車の中であるためこの会話が一般生徒や今回の事件のために集まった警官や公安に聞かれていないことだ。

出来れば、今の段階で達也と深雪が、四葉と関わりのあると知られるのは好ましくはない。

幸い一校内では、実際に四葉の名を持つ者が二人もいるため対外の目耳をそちらに集めることができているので、現状では探りを入れる様な真似はされていない。

 

「もし同棲したことで、達也と深雪が四葉と関わりがあると知られたらどうする気だ」

 

その他一名の名前が出ていない気もするが、そのことを気にする様な者は残念なことにこの場にはいなかった。

 

「それはお父様がどうにかしてくれるでしょう?」

 

「はぁ、どうも二人は楽観的すぎる。いいか、もし他の組織が何らかの理由で司波家を監視したとしよう、その監視員に何かがあれば、司波家には何かがあると逆に疑いを深めることになる」

 

「ですが、お父様の持つ魔法の中には確か人の記憶を操作するような物もあったはずですが?」

 

「確かにそれもある。が、そう言った魔法は濫りに使うものではない。ただでさえ俺の行動は、世界中が軍事衛星を使ってまで監視をしているのだ。さらに脅威度を上げる様な真似をすれば、お前達の暮らしさえ脅かされることになる。俺は、もう二度と誰かを失うかもしれない、という思いはしたくないんだ。分かってくれ」

 

過去に一度、真姫の母であり、深姫の異母であり、さらに終夜の妹である四葉真夜は一度、大亜連合が吸収した大漢に誘拐された経歴を持っている。

詳しいことは二人は教えてもらっていないが、当時十四歳であった終夜が単身大漢に乗り込み真夜を救出し、謹慎を脱けだし深夜と真夜の二人をつれ大漢に攻め入り魔法研究を行う研究機関をはじめ、事件にかかわった者達を一人も残らず殺害。

上層部の人間が一斉に死去したことで大漢内で内乱が発生し、その隙を突くように大亜連合が攻め込み吸収されたとのことだった。

その事件は三人が原因の様に思われているが、事実としてはほぼ終夜一人が殲滅や破壊活動をしているのだ。

どちらかというと深夜と真夜の二人の役割はやり過ぎようとする終夜のストッパーだったのだ。

その事実を知っている者達は、軍勢と言う分かりやすい物であれば、国の軍隊を動かしやすいが、個人を制圧するために軍隊を動かすとなると国民の反感を買う恐れがあるため、どの国の主導者たちも終夜と言う災害の矛先が自分達に向いていないか常に監視をしているのだ。

特に一度滅ぼされかけた事のある、大亜連合の中に居る大漢の者達は戦争アレルギーならぬ、災害(終夜)アレルギーを持っていたりする。

 

「……分かりました。確かに我儘が過ぎたようですね」

 

「そうか、分かってくれたか」

 

終夜は、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「でしたら、家を一軒達也達の家の近くに買ってくれませんか?」

 

「まあ、その位ならばいいだろう」

 

家一軒を娘の我儘で買ってあげられる父親など、世界中探してもそう多くはないだろう。

 

「さて、娘の願いは買うにしても立てるにしても時間が掛かるだろうから話はこれまでだな。俺は別の用事があるからそろそろ行くとするよ」

 

「別の用事……ブランシュ日本支部だね?」

 

「きちんと覚えていたか」

 

「でも、場所は分かっているの?」

 

娘二人も終夜の気持ちを理解したのか、いつも通りの和気藹々とした雰囲気に戻り、口調も敬語からいつものものへと戻った。

 

「その程度の情報なら吐かせるまでもなく得ているよ」

 

情報元は教えるつもりはないがな、と付け加えようと思った終夜だが、そのことを口にはしなかった。

 

「そう言うことだから降りなさい。私達が今から始末をつけて来るから」

 

終夜は二人の頭を撫でて、降りるように促した。

二人もこの場で反抗するほど馬鹿ではない。

促された通り、車から降りた。

 

「後のことはすべてこちらで処理する。そのことを十文字と七草に伝えておいてくれ」

 

二人を降ろした終夜は、窓を下ろして二人に伝えた。

この場での十文字と七草は、克人と真由美のことを指していることを二人は察した。

二人を大事に思っている終夜が、十文字と七草の代表に連絡を入れろと無理を言うはずがないからだ。

 

「分かりました。先輩方には私達の方で伝えておきます」

 

「ああ、頼むよ」

 

二人に笑顔で答えた終夜は、スモークで外から中が窺えないようにしてある窓を上げ、外と完全に遮断すると二人に見せていた笑顔が嘘と思えるほど、ゾッと背筋を凍らせる表情で車を出発させるように言った。

 

「包囲はどうなっている」

 

「完了しております。命令があり次第即時殲滅可能です」

 

終夜が遅れた本当の理由はこれだ。

香波が二人とグルになっていたと言うは事実だが、連絡を遅らせる様な真似はしていない。

二人のお願いを基本的に優先するように終夜は伝えてはいるが、優先順位では二人の身を守るのが最優先に指定してある。

いくら二人が遅らせる様にお願いした所で、その情報が二人の身に危険が及ぶ場合直ぐ終夜に伝えられる。

ならば何故遅れたのか、ということになるが、終夜は連絡があった段階で敵の勢力を確認し、二人に害が及ばないと判断したからだ。

そのため終夜は、学校に急行するよりも先に敵本陣を抑えるための準備を優先したのだ。

いくら終夜と言えど不老不死ではない。

いつまでも二人を守る事は出来ないし、何時かは二人が政略にせよ恋愛にしろ結婚するのだ。

そのため自立させるために、今回はあえて二人を後回しにしたのだ。

終夜が二人から少しづつでも良いから離れられるようにするために。

流石にいきなりお願いで同棲は許容できなかったが。

 

「そうか、ならば俺が到着次第工場の裏口から突入、俺が正面から突入し、逃走者がいた場合即時捕縛だ。死なない程度ならば制限はなしだ」

 

娘たちの通う学校を襲ったのだ。

落とし前だけは確りと取らせるからな。

 

 

 

 

 

 

 

そう意気込んでいた、終夜だが突入するなり頭が痛くなっていた。

それと言うのも目の前の存在が原因だ。

 

「これはこれは、まさか世界最強の四葉終夜殿が直接来られるとは。事前に教えていただいていたならもっといいおもてなしが出来たのですが」

 

とても残念だと言いたげな表情で首を振る、ブランシュ日本支部支部長の司一。

そしてその背後には大量の銃口が終夜に向いている。

 

「ああ、彼ですか。彼は意気込んで『覚悟しろ悪党ども!!このオリ主である俺様が貴様らを倒してやる』などと言ってたのですが、直ぐに改心したのか我々の同志となってくれましたよ」

 

見慣れたくはないが、見慣れた銀髪に虹彩異色症によるオッドアイ。

骨格や見た目からして誰がどう見ても白人なのだが、デオキシリボ核酸による親子鑑定で残念なことに深夜と法律上の結婚相手である司波龍郎の子であることが証明された存在。

 

「鋼也君、君の力を私は疑ってはないのですがね。周りを認めさせるために実力を示してください」

 

司波鋼也が司一の横にいたのだ。

 

「あぁ、任せておけ。俺が最強なんだゴバッ!?」

 

終夜は言い終わらせる前に、さっさと鋼也を眠らせた。

ヒーローの変身や必殺技の溜めの瞬間に生まれる隙を悪役みたいに、態々待って見逃すような愚かな真似はしないスタンスの終夜は、CADの操作をしなくてもいいと言う他の人には真似できない利点を生かし、勝手に話し込んでいる隙に魔法式を構築し、どのタイミングでも発動できるようにしていたのだ。

 

「貴方と言う人は、学生に対しても容赦をしないのですか!?」

 

発動した魔法は、ただの空気圧縮弾だが、当った場所が悪かった。

鳩尾と顎の先端だ。

下手をしたら殺してしまう様な急所に終夜は躊躇いなく魔法を撃ち込んだため、司一を始めとしたブランシュのメンバーは驚いていた。

そもそも司一は、鋼也が使えるとは思っていなかった。

精々攻めて来るであろう者達に対する動揺を誘うか、動きを鈍らせる程度の役割しか期待していなかったのだ。

自己顕示欲が強すぎるため洗脳にもあっさりと掛かる程度の実力しかないと言うのも、期待していない一因でもあったが。

 

「はぁ、そもそも俺が学生だからと手加減をかけるとでも思ったのか?」

 

終夜にとっての身内とはかなり限定的だ。

深夜と真夜、深姫と真姫、ギリギリ深雪までが終夜の中で身内判定を出している。

次に両親や四葉の本家や分家に連なる者達が親族判定であり、この時点で終夜の庇護は存在しない。

ガーディアンである達也や身内に対して不快感を与える鋼也は、せいぜい男なんだから自分の身は自分で守れ程度の認識でしかなく、自身のミスは自身で取り換えさせるべきだと思っている。

他人の尻拭いなど面倒だと言うのが本音であるのだが。

 

「さて、何時までもお前達に構ってやる時間はないのでな」

 

直ぐに終わらせる、暗に終夜はそう言った次の瞬間だ。

 

「撃て、撃て撃て撃てうてぇええええ!!」

 

司一は、身の危険を感じたのか背後に控えさせている兵隊に対して、撃ち殺すようにヒステリック気味に命じた。

銃声が廃工場内に響き渡る。

フルオートで銃口から吐き出される銃声は、轟音となり耳を劈く。

しかし終夜にはかすり傷を付けるどころか届きさえしていなかった。

それどころか、弾丸は終夜の前で空中に停滞していたのだ。

 

「はぁ、舐められたものだな。この程度の物が俺にとどくとでも思ったのか?もし思っていたのなら、相当おめでたい思考をしているんだろうな」

 

そう言って、頭を掻いた終夜はパチンッ!!と指を鳴らした。

その音が鍵であったかのように、終夜にとどかず空中で停滞していた弾丸が一斉に銃を使っていた者達に襲い掛かかり、僅か一瞬にして司一が集めていた兵隊が無力化された。

 

「所詮この程度か」

 

そう言って、終夜は一歩近づく。

 

「く、来るなぁぁああああああ」

 

司一は、死屍累々と転がる兵隊に脇目も振らず逃げだした。

時には同志であり仲間であった兵隊を踏みつけてでも終夜から逃げた。

怖いのだ。

目の前にある明確な死の形を取った何かが。

裏口は既に終夜の集めた者達が押さえているため、司一にはどの道逃げ場はない。

 

「はぁはぁはぁはぁ、来るな来るな来るな来るな来るな」

 

扉を閉めては鍵を閉め、少しでも時間を稼ぐようにして逃げる。

逃げる逃げる逃げる、司一は自身の持つプライドをかなぐり捨てて、逃げる。

まるで閉まっていた地獄の釜の蓋を開けてしまい、魑魅魍魎や罪人たち、それらを呵責している鬼たちを出してしまったかのような恐怖。

この時になって初めて、一校に手を出すべきではなかったと司一は悟ったのだ。

 

「さて、鬼ごっこも飽きた。もう眠れ」

 

その言葉を最後に司一は意識を失った。

 

「逃走者はいるか?」

 

『いえ、現在一人も逃がしておりません』

 

「分かった。こっちは司一を掴まえた。あと正面入り口に転がっている奴らも回収しておいてくれ。鋼也に関しては回収後四葉の息のかかった病院に搬送しておけ。マインドコントロールを受けているからな、俺が面倒だが解いておく」

 

『分かりました。病院に関しては後程連絡します』

 

「分かった」

 

終夜は耳に差していたインカムを取ると、今年の九校戦に娘たちが間違いなく出場すると確信しているため今からカメラの準備をしないとなと、場違いなことを考えていた。




九校戦の話を書きたいがあまりかなり簡潔にまとめてしまいました。
九校戦は、深姫と真姫視点で書くからきっと長くなるはずです。
書き方が少し変わるかもしれませんが……
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