魔法科高校の劣等生~世界最強のアンチェイン~   作:國靜 繋

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テストの結果とその裏で

今年も九校戦の時期が迫って来た。

九校戦が何かと聞かれたら場合、簡単にまとめて説明すると、全国にある魔法科大学校付属高校の代表者一同に集まり凌ぎを削る、学校の代表者による体育祭の様なものだ。

その前に魔法科高校とて例外ではない、どの時代の学生でも平等に嫌う定期テストがあるからだ。

 

「あずさテストの順位どうだった?」

 

「あっ、真姫さん!!私はいつも通りでしたよ。真姫さんはどうでした?」

 

「……私もいつも通りだった」

 

真姫も順位が低いと言う訳では無い。

むしろ学年全体で見ても上から数えた方が早い。

では、何故こうも落ち込んでいるかというと。

 

「今回も私の方の方が上だったな」

 

深姫に1点差で負けてしまったからだ。

去年も全ての定期テストで1点差で負け続けて来ているのだ。

むしろ去年全ての定期テストを1点差で負け続けていると言う事実が凄いとも言えるのだが。

もちろん、一教科だけが負けて、他の教科が同点と言う訳では無く、真姫が勝っている教科もあり実技では真姫の方が優に勝っていた。

しかし総合の合計で見ると毎回1点差で負けると言う不憫な思いをしているのだ。

 

「さ、今回も私が勝ったんだからケーキを奢ってもらうとするか」

 

「うぅぅぅぅ、仕方ない、約束だからね」

 

「真姫さん今回も賭けたんですか……賭け事はやめた方がいいですよ」

 

あずさが言っているのは、世間一般的常識から考えたら正論だ。

だが真姫にも引けない時がある。

何故なら、負けた方が奢ると言うのは、一か月のおこずかい全てを奢るのに費やさないといけないからだ。

それが定期テストの数だけあるとすると、今更後には引けないのだ。

 

「あずさ、人には引けない時もあるのよ」

 

かっこよく言っても、賭けの実態を知っているあずさには今さら感があるのだ。

 

「そもそも学校で賭け事自体がいけないと思うんですけど……」

 

あずさが、賭け事自体止めにした方がいいと至った時であった。

 

『一年E組司波達也君、一年E組司波達也君。至急生徒指導室まで来てください。繰り返します――』

 

「あれ、司波君が呼ばれているみたいですね?」

 

「何かあったのかな?」

 

「多分、一年のテストの順位じゃないかな?確かペーパーテストでは一位だったから……」

 

「さすが司波君ですね。でもテストの順位が一位だからという理由で呼び出されないと思うんですけど?」

 

「さすがにそこまでは分からないけど。表示されている順位はテストの点数だけだから……」

 

流石にどの教科が何点だったかというのは、深姫や真姫にも分からない。

個人情報の漏えいに厳しい昨今では、使用した問題用紙と解答用紙は、教員立会いの元専門業者によってシュレッターにかけることになっている徹底ぶりだ。

 

「そう言えば話変わるけど。あずさ今年はもう見つかった?」

 

「何がですか?」

 

「九校戦のエンジニア」

 

「それがまだなんですよ。会長たちが頑張っているみたいなんですけど中々……」

 

「あずさもエンジニアするんでしょ?」

 

「去年は観戦しかできなかったですから、九校戦事態初めてで……」

 

「緊張してるんだね。大丈夫、リラックス、リラックス」

 

「ううう、今からお腹が痛くなってきました」

 

「あずさ落ち着いて。意外と何とかなるから」

 

お父様の相手に比べたら、その言葉を深姫と真姫は必死に呑み込んだ。

終夜の所構わず発揮する親バカぶりで与えられる羞恥によるダメージを考えたならば、九校戦のプレッシャー程度どうということはない。

 

「そう言えば、選考段階ですから絶対とは言えないですけど、お二人とも今年も選手に選ばれると思いますよ」

 

「競技は去年と一緒?」

 

「多分そうなると思います。ですが、各部活動の人達もいますから……でもでも、会長や十文字会頭が調整してますから去年と一緒になると思いますよ!!」

 

何だかんだで、あずさも楽しみにしてるんだなと二人は思った。

あずさは、実技も高い成績を出しているがそれ以上に魔法技師としての資質が高い。

 

「何々何の話をしてるの?」

 

「九校戦のメンバーに付いての話だよ花音。そう言えば、今年は五十里くんも一緒に行けるんだったよね?」

 

「そうなのよ!!去年は一緒に行けなかったからその分今年で取り返すのよ!!」

 

去年の九校戦では、千代田花音自身はメンバーに選ばれた。

しかし花音の婚約者である五十里啓は、一年生ながら高い論理知識を有していたが一年生であると言う枷の所為でエンジニアになることができなかった。

むろん花音は反論したが、当時の生徒会長や部活連会頭が今の生徒会長や部活連会頭に比べて、今までの伝統を守る保守的な人間であったせいもありエンジニアになれなかったのだ。

その時の花音の荒れっぷりは未だに二年生の間で語り継がれる笑い種だ。

 

「そう言えば花音はテストどうだったの?」

 

「うっ!?……それを私に聞く深姫」

 

「その様子で分かったよ。もう聞かない」

 

「それなら聞かないでよぉ」

 

今回もテストの点数は芳しくなかった様で、花音は目に見える形で落ち込んでしまった。

一科生は、魔法技能による成績であるためペーパーテストはあまり反映されない。

だからと言って、内申点に反映されない訳では無いのだが。

 

「まあ、花音の場合五十里君に教えてもらえばいいからね。ペーパーテストの成績も良いし、何より花音の婚約者なんだし」

 

「ふっふん!!啓は頭も良いからね」

 

啓のことを褒められたからか、落ち込んでいたのが嘘のように花音は元気になった。

チョロイナ、話に加わっていなかった教室内にいた者達さえ内心思っていた。

それに気が付いていないのは、当の本人である花音だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

とある場所にある、円卓に数人の者達が集まっていた。

その全員が中華系の顔つきをしている。

そしてこの場にいる者達は、一人の例外もなくある組織の一員だ。

 

「オッズはどうなっている」

 

「予想通り一校が一番人気です。このままでは我々が一人負けになってしまいます」

 

「やはりそうなってしまったか」

 

「三年には七草に十文字、それに並ぶ渡辺選手にA級ライセンス相当の生徒が選手として選ばれている。さらに二年生にはあの四葉の姉妹がいる」

 

「優勝候補と目されるだけの盤石な布陣だな」

 

「しかしこのままでは、我々が」

 

「そのためには手段を選ぶ必要がある」

 

この場にいる者達は九校戦を使って賭けを取り仕切るブックメーカーたちだ。

だが同時に四葉終夜の恐ろしさを知っている者達でもある。

そのため四葉終夜(災害)の矛先が自身に向かないようにしなければならない。

 

「ジェネレーターを使おう」

 

「出来るだけ痕跡を消すために、一校の向かうバスに自爆特攻させればいい」

 

「そうだな。時限式の爆弾も仕掛けておけば、最悪失敗しても痕跡を消せる」

 

「では、その方法で一校に関しては出場不能になってもらおう」

 

男たちにとって恐ろしいのは、本部の粛清だ。

賭けに参加している客には何とでも言い訳をすることができる。

兵器ブローカーも客の中におり、総じて諸国の政府と大なり小なりパイプを有している。

そう言った輩が騒ぎ出されたら男たちとしても、不味いがそれでもいくらでも巻き返す手段が男たちには、いや男たちの組織は有している。

 

「失敗した所で、最悪競技で脱落してもらえばどうとでもなる」

 

「ならば、出来うる限り早い段階で脱落してもらわなければ困ることになる」

 

「……四葉か」

 

「そうだ!!あの災害(バケモノ)を含めあのイカれた一族が、一族の者を害して許すはずがない!!」

 

この場で一番立場が上であろう者が、円卓を強く叩いた。

終夜の手によって大漢が大打撃を受け大亜細亜連合に吸収される前のことだ。

この男は一度、まだ十代の頃の四葉終夜を目にしたことがある。

幸い、軍や魔法研究に関係のある施設に直接関わっていたわけではないため、生き残ることができていたが、災害(バケモノ)がたった一つの施設を殲滅するときの余波だけで街が蹂躙される様を覚えているのだ。

 

「協力者とも連絡は取れている」

 

「ならば、四葉の姉妹に関しては、直接害の及ぶ妨害ではなく、性能を発揮出来ない様に細工するようにでいいな」

 

「その程度ならば、今からでも電子金蚕のプログラムを変更できる」

 

「四葉に関してはその方向で進ませよう。協力者に我々のことを喋れない様にしているか?」

 

「抜かりなく」

 

「そうか」

 

「これで今日の会合は終了する。翌日の会合もいつも通りの時間に」

 

この場で一番立場が上であろう男が、そう言うと男たちは存在しないことになっている部屋から出て行った。

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