死――
生きる者にとって、逃れえない事実。
始まりがあるように、終わりがある。
絶対的なまでに確定されたものだ。
そう、まさに自分がそうであるように――
「ここはどこだ?」
いろんな物語で使われる、『知らない天井だ』ということはなかった。
そもそも天井と言うものが無いのだから、仕方ないともいえるが。
『ここは、どこでも無いし全てでもあるよ』
声のした方を見ると、そこには、男にも女にも見える。
年寄りにも見え、童子にも見える。
聖人にも見え、咎人にも見える。
悪い言い方をしたならば、チャラ男にも見、良い言い方をするなら淑女にも見える。
大よそ人という形の全てに”それ”は見えた。
果たしてこの中に答えが在るかさえ、甚だ疑問だ。
『俺のことは、見た目で判断しない方がいいって』
口調がチャライので、間違いなくチャラ男だなと結論付けた。
「で、あんた誰だよ」
『ふっ、聞いて驚け、俺は神だ』
どうやら、痛い人の様だった。
そもそも自分を神だと言い張るのは、余程の馬鹿か、取り返しのつかない精神疾患のどちらかだろう。
『そもそも自分を神だと言い張るのは、余程の馬鹿か、取り返しのつかない精神疾患のどちらかだろうって、今考えていただろ』
「地の文と見せかけた、人が思った事を言うとか……」
『そんなジト目で見なくてもいいじゃない』
どうやら、心が読める辺り神とまでは行かなくても、そこ出来る奴の様だ。
「で、自称神様が何の様だ?」
『おおっと、そうだった、そうだった。何と君は輪廻転生の中で好きな所に行くことが出来るようになりました』
パンパカパーンと、口に出しながら言い放った。
「へー」
『君、ノリが悪いね~。まあ、それは置いといて、君はそんな中でも願いを三つ叶えることが出来るようになりました!!』
おお!!と嬉しがるべきなのだろうが、どんな世界に行くのかも分からない以上変な願いは出来ない。
魔法が無い世界に行くのに、無限の魔力とか王の財宝や無限の剣製なんて、貰ってもどうしようもないしな。
なら――
「一つ、行く世界での、過去、未来、その時全ての技術と知識固有の能力の全てをノーリスクで使える様に、そしてその世界で最も有用な力を世界最高峰で十全に使えるようにしてくれ。二つ、絶対男で尚且つ幸運で。三つ、行く世界で最も理想的な存在にしてくれ」
TSだけは、絶対に勘弁願いたいからな。
『クールな表情で言った割に、結構がめつく願うのだね』
まあ、良いかとため息交じりに言った、自称神はリモコンを取り出すと、
『じゃあ、転生させるね』
スイッチを押した。
とっさにその場から飛び退くと自分のいた場所が開き落ちる仕組みになっていた。
「ぶね~」
『チッ、これだから最近の奴は何で手口を知ってやがる』
こいつ本当に神かと疑惑が尽きない。
そんなことを思っていた時だった。
いきなり四方に何かが落ちて来て囲まれてしまった。
「まさか――」
『と思うじゃん、残念でした正解は、これ』
天井知らずの上空より螺旋状に回って墜ちて来ていた――水が。
「流が――」
言い終わる前に水に飲まれ、最初に空いた穴に流されていった。
『ふう、さて作業するかな。そう言えば今流した奴記憶云々や生まれぬ年代については、言ってなかったから、記憶消せば、原作知識とか俺TUEEEEとかしないだろ』
そうと決まれば、消しとくか。
自称神は、スイッチ一つで転生させた奴の記憶を消去した。
『さて、次はどんな奴転生させようかな~』
自称神は、釣竿を持つとリモコンのスイッチを押した。
次の瞬間、自称神の周り意外が消滅した。
消滅した所を、自称神が覗き込むとそこには数多の魂が、混ざり融け合い、反発し合い、調和し合い、自己主張していたりしていた。
まさにカオスとは、この事だろう。
そんな中に、自称神は釣り糸を投げ込んだ。
すると、直ぐにヒットし新しい魂を釣り上げた。
まさか、こんな形で転生者を決めていたとは誰も知り得ないし、知ることはないだろう。
それが、当事者にとっては幸せなことと言うものだ。
『おめでとう、君は転生者に選ばれたよ』
今度は、釣り上げた転生者が何かを言う前に応えた。
毎度同じセリフを聞かされていたらつまらないから、常にいろんなパターンを考えているのだ。
だから、こう見えて自称神は神なりに忙しいのだ。
世界作ったり、新しい法則を作ったり、概念的なもとを考えたりというのは、神がやることではなく既に出来上がった物に対して神が生まれるのだ。
様は、人が考えているのとは逆なのだ。
在るからそこに神が生まれるのだ。
神が新たに生み出すということはしないし、出来ないのだ。
全知全能の神など、所詮は夢物語。
空想の産物でしかない。
精々出来るとして、人という存在を人の域を越さないならば何にでも成らせることが出来るのだ。
しかし、こんなこと誰かに説明しても無駄だということを既に自称神は知っているからしない。
「やっぱり、俺転生者になれるような気がしていたんだ」
見た目、メタボで典型的なオタクと言える姿の四十代は、最初に言い放った。
「それで、どこに転生できるの?」
『魔法科高校の劣等生だ』
「おお、あれか。あれは俺TUEEEEEしやすいからな――――――――
『終わった、終わった』
そこそこの数を転生させると、自称神はリモコンのスイッチを押した。
すると、どこからともなく複数のテレビが出現した。
未だ映し出されているのは一つだけ。
他のテレビはノイズが走って全く見られない。
そして、映し出されている映像の中には、最初に転生させた奴が放送されていた。
それも丁度誕生シーンだ。
つまり、ノイズが走っているのは、転生者が誕生していないことを示している。
『さてさて、俺を楽しませてくれよ』
頬杖を突きながら、自称神は呟いた。