魔法科高校の劣等生~世界最強のアンチェイン~   作:國靜 繋

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下調べは重要です※妹に恋人兼婚約者がいることは絶対許さない!!

あれから四年の月日が経ち、終夜は十四歳、深夜、真夜は十二歳になった。

 

深夜と真夜は終夜が受けた様にクソジジイじゃなかった、烈の元で短いながらも魔法を習った。

真夜の場合は魔法が特殊、というよりもそのものが前例がないものだ。

『精神構造干渉』魔法、世界でも禁忌とされる魔法だった。

終夜もその魔法を視ていたから使えなくもないが、特化型の深夜と比べたら若干見劣りするだろう。

それでも他の魔法と並列して使うと深夜を越えたことが出来なくもないが、疲労が半端ないことに為る。

まあ、この辺りまでは、問題ない。

そう、問題なのは、真夜に婚約者が出来てしまったことだ。

四葉の家として命令で、七草との仲を強固にするという意味では確かに良い選択だろう。

真夜は四葉の中でも歪なまでに強力な魔法力を持って生まれて来ている。

これは確かに七草としても嬉しいことだろう。

論理的な考え方でならば理解できる。

だが、感情がどうしても許せずにいた。

目に入れても痛くないほど可愛がってきた妹たちだ。

思春期に入っても、下着を別々に洗濯したり、何の理由もなく無視されたりしていない(父はされていたが)。

そして思春期とともにやって来るようになった、某女の子の日に真夜と深夜は卵子を幾つか採取された、らしい。

その辺りの詳しい事情は教えてもらっていないが、そんな妹が十二という若い身で婚約だ。

互いの仲はそこそこ良好のようだがからまだいいが、嫌々だったのなら間違いなく反乱している自身のある終夜だった。

そんな真夜の婚約者と今日、終夜は会うことになった。

会うといっても、少年少女魔法師交流会に参加するついで、ではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年少女魔法師交流会、国際魔法協会アジア支部主流で行われるもので、態々旧台湾の台北まで来ていた。

そもそも第三次世界大戦といわれている戦争が終わっていない中、海外で少年少女魔法師交流会を行うこと自体がばかばかしいことだと思う。

そのことに何人が気づいている事か。

と、日ごろなら思いたいところだが今はそんなことどうでも良い。

何たって、目の前に我が愛しの妹である真夜の婚約者であり恋人である、七草弘一がいるのだから。

ハッキリ言おう気に喰わないと。

俺を差し置いて真夜と婚約など、血が繋がっていなかったらいや、繋がっていたとしてもいろいろやりたいけど。

 

「それで、彼が真夜の婚約者で恋人の七草弘一かい?」

 

「そうです。兄さん」

 

「初めまして七草弘一です。終也さんのことは真夜からいろいろと伺っています」

 

真夜だと、こいつ真夜を呼び捨てにしやがった。

しかしここで怒っては真夜の品格を貶めることになる。

あくまで笑顔で応えないとな。

そう思い完全な作り笑顔を作った終夜だが、見慣れた真夜からは『兄さん不機嫌になってる』とバレバレだった。

 

「そうか、よろしく。俺のことは終夜でいいよ」

 

「では、僕のことも弘一でいいですよ」

 

「分かったよろしく弘一」

 

「こちらこそ終夜」

 

表面上は全く問題ない状況だった。

しかしお互いの中身は違った。

終夜は、愛すべき妹を自分から盗った奴としか見ておらず、弘一は、七草家からそしてお世話になった九島烈から終夜のことを教えられていた。

現在最も危険な兵器として――

それも仕方がない事だろう。

魔法式を感覚だけで組み上げ、剰え環境を変化させる規模の魔法を使うのだ。

魔法には物理的制約はなく、その気になれば終夜は今いる場所から世界各国の環境を変化させ文字通りの天変地異を起こすことも出来なくはない。

まあ、そんなことをした日には終夜自身の体がもつかどうかわかったものではない。

 

「そういや、二人は烈殿の元で一時期、一緒に教えを受けていたそうだが」

 

「そうですが?」

 

「深夜も真夜も成長していたからね、どんなことを習ったのか気になってね」

 

「ああ、そういうことですか」

 

弘一は納得した様にうなずいた。

 

「そうですね。まずはやっぱりどんな系統魔法が得意か、から始まりましたね」

 

「あ、姉さんだけはちょっと違ったみたいです」

 

確かに、深夜の系統外魔法はいくら烈でも無理だろう。

そんな中でも深夜の力を伸ばすように出来たのは、素直に賞賛できる。

まああのジジイのことを気にいることは一生ないだろうがな。」

 

「他には、――」

 

 

暫く、弘一からどんな内容だったか聞いた結果。

あのクソジジイ、俺だけ無駄にきついメニューを組んでいた事が分かった。

 

「ありがとう。そうだ折角の少年少女魔法師交流会何だ、態々ここまで来て他の人と話さないのはもったいないからね。俺はここで」

 

話を切り上げ、二人と別れようとした。

序にあのジジイの嫌がるようなことを言いふらしてやろうとも思った。

 

「折角ですし僕らと一緒に回りませんか?」

 

「いや、遠慮しておくよ。他にやることが出来たから」

 

終夜は、あのジジイに対する嫌がらせの為に取った選択を後悔することになった。

 

 

 

 

 

真夜と弘一と別れてからは一人で会場内を回っていた。

少年少女魔法師交流会というだけあって、アジアのいろいろな国の人が来ていたので、あのクソジジイの嫌がりそうなことをついでに言いふらしていた。

スキャンダルになるようなことや、国にデメリットになるようなことはせずに、あくまでもあのジジイだけが嫌がることしかしなかった。

このくらいの報復はあってしかるべきだろう。

ただいろんな人と話して気になったのが大漢と大亜細亜連合の人も来ているということだ。

第三次世界大戦が始まってから、今まで溜まっていた鬱憤を晴らさんとばかりに急激に周りの国を呑み込んでいきこの戦争で一番膨れ上がった勢力と言って良いだろう。

そしてその二国は、同じ国が南北に分かれて成長した国という背景がある分、特段仲が悪いことで有名だ。

互いが常に牽制し合い、隙あらば呑み込もうとしているのが丸わかりだ。

しかしお互いの武力が拮抗しているが為に未だ決定打となることがなくずるずると引きずった状態で、今に至るわけだ。

そんな中、耳に挟んだのが大漢が日本の魔法師に目を着けているということだ。

大漢とは、大亜細亜連合を共通の敵とし、軍事同盟とまでは行かずとも協力関係にあるがその均衡は危うい。

その大漢が、大亜細亜連合高麗自治区軍が日本の対馬に侵攻したさい、九島烈をはじめとした二十八家の者達が目覚ましい功績を立てたというのは必然だったのだろう。

そしてどこで奴らが嗅ぎつけたか知らないが、その二十八家の者達が日本の魔法技術の集大成といってもいい兵器であることを知ってしまったようだ。

二十八家の者は基本的に国から出ない。

出るとしても行軍であり、戦闘で殺されたとしても死体は完全に焼却されるか持って帰られる徹底ぶりだ。

そこまで徹底して遺伝子管理をしているのも国も二十八家の力と魔法の兵器としての価値を見出しているからだ。

そんな魔法師の血族が国外に碌な護衛もつけずに出て来ているのだ。

それも子供ともなれば、なおのこと攫いやすいし洗脳もしやすい。

それを狙わない程、大漢も馬鹿ではない。

その中でも特に気を付けないといけないのは、真夜だ。

男の場合は、種を取ってしまえばおしまいだが、女の場合はいろんな意味で価値があるからという背景がある。

むろん終夜はそんなこと許す気はさらさらないが、何事にも不測の事態と言うものがある。

一応、弘一と真夜は烈のお墨付きだから心配ないと思うが不安がない訳では無い。

だから、念には念をということで真夜たちの元へと戻ろうとした時だった。

 

ドンッと、会場全体に破裂音が響き渡る。

その音に会場内はざわついた。

次の瞬間、扉が強く叩きつけられるように開かれるとアサルトライフルを装備し、ヘルメットにゴーグル口元をスカーフのような物で隠し、防弾チョッキの様なものを着込んだ奴らが雪崩れ込んで来た。

それを見て、交流会に来ていた子供たちは、一斉に反対方向へと逃げ出した。

 

「動くな!!」

 

最後に入って来た如何にも司令官と思われるものが、数人の護衛の元入って来た。

言語が中国……大陸の言葉だったので、間違いなく話を聞いていた大漢の連中だと当たりを付けることが出来た。

子供達もこの交流会に呼ばれるだけあって言語は達者だったので、皆一斉に動きを止めた。

くそ、せめてマルチスコープだけでも発動しておけばよかった。

今さら悔やんでも仕方ない、それにしてもこんなことが在れば支部の人が助けるなり抵抗するなりあってもいいはずだ。

展開しているマルチスコープで様子を見て見ると、可能性の中で一番最悪な光景を目にしてしまった。

最初に支部長として挨拶をした奴が、軍人から金をもらっていたのだ。

つまり、最初からこの支部自体がグルで、この交流会自体が罠だったということになる。

平和機関を自称する国際魔法協会の支部がこれだ。

舌打ちしたくなる気持ちを抑えながら、こいつらを一斉に鎮圧するための魔法を準備し始めた時だった。

 

「キャッ!!何するんですか」

 

「いいから着いて来い!!」

 

終夜のよく聞きなれた声の主を軍人が無理矢理引っ張りながら司令官と思わしき者の元へと連れて行っていた。

 

「これが、件の……連れて行け」

 

「はっ!!」

 

「放してください。放して」

 

真夜は、逃れようとジタバタと暴れるが、子供の力では大人の、それも軍人の力から脱出できるわけでもなく無理矢理連れ出されようとした。

それを大人しく見ている終夜ではない。

組み上げた魔法を発動し制圧しようとした時だった。

 

「真夜を放せ!!」

 

弘一が魔法を発動させながら真夜を引っ張っている軍人へと特攻した。

しかし軍人たちは慌てた様子はなかった。

むしろ子供が背伸びして頑張っているなといった風な目で見ていた。

その理由は、司令官が指にはめている真鍮色の指輪、アンティナイトといわれるサイオンノイズを作り出す金属だ。

それにサイオンを注入され、キャストジャミングが発生し、弘一が発動しようとした魔法はサイオンノイズによって阻害され発動することはなかった。

 

「あっ!?」

 

「やれ」

 

司令官の殺しの命令を下すのに慣れたような冷めきった一言で、弘一い照準を合わせられていた銃口が火を噴いた。

複数の銃口から連続的に発射された弾丸は、吸い込まれる様に弘一へと向かい周りにいる誰もが弘一の命がないと思った。

ただ一人以外は。

弘一の周りに対物防御魔法が展開され、弘一を貫くはずだった銃弾は、尽く対物防御魔法によって阻まれた。

 

「なに!!」

 

司令官の男は未だキャストジャミングを発動していた。

そんな中で魔法が発動されたのだ。

司令官は周りを見渡し魔法を発動した相手を探し、終夜と目が合い魔法を発動していることに気が付いたのだ。

 

「あの餓鬼にキャストジャミングを発動させて、魔法と使えないようにしてから殺せ!!」

 

司令官の男は怒気を放ちながら命令した、その命令が生涯最後の命令になるとも知らずに。

司令官はこの場では自分こそが絶対強者でありその命令は神の先刻にも等しいと思っていた。

実際その通りだろう、この場にいるのが本当に無力な少年少女たちならば。

司令官は、燃え尽き炭となり雪崩れ込んで来ていた兵隊は凍りつき彫刻と化していた。

対象エリアを二分し一方の振動、運動エネルギーを減速し、その余剰エネルギーをもう一方に逃がす魔法『氷炎地獄』。

この魔法により隣接するエリアに灼熱と極寒を同時に発生させることで司令官と兵隊を文字通り無力化した。

兵隊の場合は、きちんと解凍すればどうにかなるだろうが、司令官は完全に絶命した。

 

「弘一、俺は真夜を救出しに行くお前は、四葉と七草両方に救援を呼べ!!」

 

「僕も行くよ!!」

 

「駄目だ!!まだ残党がいるかもしれない」

 

「ぐっ、でも……いや分かった。真夜のことは頼んだ」

 

正論を言われては弘一も引き下がらずにはおれない、でもここで引き下がるのは自分が真夜を見捨てたのと同義になる。

それだけは、嫌だったがもし終夜に助けられなかったら弘一は、よくて重症、下手をしたら死んでいたことだ。

さらに一瞬で敵を文字通り無力化した終夜なら信用できると思った。

 

「じゃあ、俺は行くから後は頼むぞ」

 

終夜は弘一に後のことを任せると会場から飛び出し加速術式を展開し領域魔法で空気抵抗を限りなく零にすることでロスを極限にまで縮めて走った。

一分、一秒でも早く真夜の元へとたどり着けるように。

 

「いたぞ!!」

 

「俺の邪魔をするな――――」

 

加重・収束魔法『圧潰』対象または焦点を決めて範囲を指定することで焦点へと収束し続ける魔法。

これにより終夜の道を阻んだ者達は悉く肉塊へとなった。

建物の外へと出た終夜は、真夜を乗せ終わり飛び立ちだしたヘリを目撃した。

あれでは攻撃できない。

下手に中の人を殺しヘリが墜落したり、直接ヘリを撃墜させたら真夜が死んでしまう恐れがある。

流石の終夜といえど死者蘇生は不可能だ。

僅かなりにでも生きていれば可能だが。

 

「クソッ」

 

終夜は真夜を助け出せなかった己に憤りを感じずにはいられなかった。

なにが助けるだ、ただの傲りではないか。

だが終夜とて呑気に見送るだけではなかった。

未だ精霊の眼で真夜を乗せているヘリを認識し続けている。

その間に父に直接電話を掛けた。

 

「……終夜だが」

 

『話は七草の小僧から訊いた』

 

「真夜は今、大漢方面へと輸送されている。だから俺も今からそこへと向かう」

 

『貴様独りで何が出来る』

 

「出来るさ。一国をめちゃくちゃにするくらい」

 

抑制の効き過ぎた声で終夜は応えた。

 

『まて、貴様独りで先行させるわけにはいかない』

 

「では待て、と?はっ、その間に真夜の身に何かが在ったらどうする?じゃあな当主」

 

『待て終夜。話は――』

 

携帯を切った終夜は、真夜の連れ去られた方向。

海を跨いだ先に在る大漢を見据えていた。




次回無双回。
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