教室での騒ぎが終わり、放課後珍しく一人で下校中‥
緑谷を誘ったが、別に用事があるらしく別々に帰路に着くことになった。
「あ〜‥そういえば、一人って久々だな〜。」
独り言を言いつつ、商店街のロードを歩く。
ふと目に入ったのは、大手のCDショップ。
特にやる事の無い俺は、CDショップに入り新曲の物色を始めた。
(おっ、プレゼントマイクの新曲出てたんだ。結構、上がるんだよねこの人の曲。)
CDを手に取り、裏面を見ながら買うかどうか考えていると‥‥
ドガアアアァン‼︎‼︎‼︎
キャー‼︎‼︎
いきなりの爆音と共に、悲鳴が上がる。
外に目をやると、黒煙が上がっていた。
「な‥なんだ?‥まさか、ヴィランか?」
手に取っていたCDを棚に戻し、急いで外に出る。
店の外は、さっきまでの商店街の様子とは一転していて、多くの人だかりが出来ていた。
「おい!聞いたか、ヴィランが出たらしいぞ!」
「えー!嘘でしょ!早く逃げないと‼︎」
人だかりから声がして、予想通りヴィランが襲撃したのだと分かった。
俺は、人混みをかき分けてヴィランが暴れているであろう、商店街の中心に足を向けた。
特に、理由は無かったがこれでもヒーロー志望だ。事件や、ヴィランが出たと聞くとやはり気になってしまう。
(こんな商店街の真ん中にヴィランだって‥ヒーロー達も、もう向かってるんだろうな‥)
ようやく、現場に到着すると予想通りヴィランが暴れていた。
それを囲うようにヒーロー達が身構えて、睨み合いが続いていた。
(な‥なんだあのヴィランは、ヘドロ?周りのヒーロー達は何で手を出さないんだ?)
暴れ回るヘドロ型のヴィランに対して、周りで傍観しているヒーロー達を疑問に思っていると、隣で見ていた野次馬の声が耳に入った。
「なんでヒーロー達は、手を出さないんだ?」
「なんか、中学生が人質に取られてるらしいぞ。」
野次馬の声を聞いて、ヴィランに目を向ける。
確かに、ヴィランの中に誰かが捕まっているのか確認できた。
どうやら、ヒーロー達も捕まっている彼の身を案じて手が出せないようだ。
(なるほどね。ヒーロー達も迂闊に手が出せないわけだ。それにしても捕まってる奴、なんか見覚えがあるような… )
そう思いヴィランに目を向け、取り込まれそうになっている奴に注目してみる。
よく見ると、金髪に見覚えのある制服‥それにあのギラついた目…
(ま‥まさか、勝己‥なのか!?)
まさかと思い、しっかりと見直すがやはり間違いなく捕まっているのは、幼馴染のアイツだった。
必死の抵抗で、個性の爆破を使い脱出を試みるがヴィランのヘドロがそれを許さない。
苦しそうに悶え、目には涙を浮かべそれでもまだ抵抗する勝己を見て体が震えた。
(クソ‥何とかできないのか!?けど、俺が行った所で‥)
自分の無力さに腹が立つ‥
幼馴染があんな目に遭ってるのに何も出来ないなんて‥
拳を握り、目の前の事何も出来ない自分の無力さに悔しくて下を向き、顔を歪める。
‥‥‥その時だった。
「バカヤロー!!止まれ!止まれーーー!」
「え‥‥?」
ヒーローの叫び声に、顔を上げる。
ヴィランに向かって、猛然と駆ける一人の男が目に映る。
(まさか‥‥あれは‥緑谷!)
「カ‥‥カッちゃーーーん!!」
駆け出していたのはよく知る人物、もう一人の幼馴染緑谷だった。
それを見た俺は、考えるよりも先に体が動き緑谷の背中を追っていた。
周りから、悲鳴にも似た叫び声が聞こえる。
それもそのはずだ‥
ヒーロー達が、何も出来ない程のヴィラン相手に、ただの中学生二人が向かっていくのだから‥
自殺行為‥普通に考えればそうだろう‥だが、俺は見てしまった‥
勝己の諦めない目‥‥
緑谷の必死の背中‥‥‥
ここで、なにもしないなんて‥‥男として、幼馴染として絶対にダメだ!!
「何やってんだ‼︎お前ら、死にたいのか!!」
ヒーロー達の静止を振り切り、駆け続ける。
緑谷が、自身が背中に背負っていた鞄をヘドロヴィランに投げ付けた。
「グァアァーーーーー!」
当たり所が、悪かったのか、ヘドロヴィランの動きが鈍った。
その隙に、先に駆け出していた緑谷が懐に入り込み、勝己を助けようと必死にヘドロをかき分け救助を試みる。
しかし、ヘドロは一向に勝己から離れず、抵抗虚しく回復したヘドロヴィランが緑谷を襲おうとしている。
「緑谷!勝己!目ぇ瞑ってろ!らああぁぁあ!!!」
「か、霞君!」
「根暗野郎‼︎来んじゃねーーー!ムグっ!」
緑谷と勝己の、叫び声が聞こえる‥でも、もう止まらない!
俺は、近くの残骸の上からヘドロヴィランに飛び込んでいた。
「次から次へと‥邪魔するなーーーー!」
「クソヴィランが!これでも、喰らってろ!」
手のひらを、ヘドロヴィランの目に向けて個性を発動させた。
今の俺に出来る、精一杯の抵抗‥手の平から黒煙を放ち相手の視界を奪う。
俺の個性「煙」なら、十分に視界を遮る事も出来るし、いきなり煙が入った目はすぐに開くのは困難なはずだ。
「グァアアア!なんだ、この煙はーー!目が!!」
狙い通りにヘブンヴィランの視界を遮る事に成功した俺は、勢いそのままに着地し、緑谷の加勢に入る。
「霞君!カッちゃんが!」
「分かってる!!視界は塞いだけど、あんなの子供騙しだ!急いで助けるぞ!」
「ハッ‥うん!!」
2人掛で助けようと、ヘドロをかき分けるが滑るヘドロがそれを阻んだ。
「クソ!絶対に助けるから!」
涙を流しながら、必死の形相でヘドロをかき分けようとする緑谷。
俺も、懸命にかき分けるが全く助ける事が出来ない。
そうこうしている間に‥‥
「クソガキ共が‥調子に乗るなーー!」
「クソっ‥‥!」
視界が少し回復したのだろう、ヘドロヴィランが俺達に向けて攻撃を仕掛けようと、鞭のようにしならせたヘドロを振り上げた。
その攻撃が、振り下ろされ俺たちに当たりそうになったその刹那だった。
「情け無い‥‥」
目の前で、ナンバーワンヒーローのオールマイトが俺達に当たるはずだった攻撃を右腕一本で防いでいた。
いきなりの事で、頭が混乱する。
「オ‥オールマイト‥」
「君に諭しておいて、己が実践しないなんて!!」
止めた攻撃を右腕で振り払い、俺たち三人の手をオールマイトが左手で掴む。
「プロいつだって!命懸け!!!」
「オ、オールマイトーーー!」
「デトロイト!!スマーーーシュ!!」
ヘドロヴィランに対し、オールマイトの攻撃が炸裂する。
辺りを暴風のような風が襲い、目の前でヘドロヴィランが粉々に砕け散った。
手を掴まれていた俺達は、暴風のような勢いに飛ばされる事なくオールマイトにその場に、寝かされた。
「あー‥‥‥終わったのか‥?なんか、体が‥」
チラリと横を見ると、緑谷と勝己が同じく横になっている。
(良かった‥二人共‥‥無事‥‥で‥)
そう思いながら、俺は眠るように意識を手放した。
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