金で愛が買えぬというのならば、愛などいらぬ!   作:リーグロード

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奪っていいのは奪われる覚悟のある者だけだ

「ここの盗賊共のお(かしら)はとっとと出てきな!今日からお前の座を俺が座ってやるからよ!」

 

突然アジトに乗り込んできた貴族らしき女が喧嘩を売ってきた。当然、それをまともに受け入れる者はおらず、アジトにいる盗賊は全員が腹を抱えて笑った。

 

「「「「「ギャッハッハッハッハ!!!」」」」」

 

「おい嬢ちゃん。ここはお子様のお遊戯会の場所じゃねぇんだぜ。生意気な口を叩くのは感心しねぇな」

 

「「「「ボ、ボス」」」」

 

奥からボスの風格を漂わせた片目を眼帯で覆ったデカイ男が登場した。俺を案内した盗賊たちもボスと言っていたし、コイツがこの盗賊団の頭で間違いないだろう。

 

「あんたがここの盗賊団の(かしら)だな。だったら悪いがさっき言ったことは洒落や冗談でも何でもない。正真正銘ここの盗賊団の(かしら)の座を譲ってもらいに来た」

 

そう先程と同じように宣言する。

 

「あっ?」

 

「あんま調子に乗んじゃねぇぞ!」

 

近くに座っていた下っ端の数人が立ち上がってナイフを片手に近づいてくるが、問題はない。

 

「「グベェ!」」

 

瞬き一つするよりも短い時間で近づいてきた下っ端をぶっ倒す。

 

後ろにいる案内係の男は『あ~やっぱり』と呟く。まあそりゃそうだな。ここにいる連中はボスを除けばどんぐりの背比べ、自分とさほど実力の変わらない相手ではこうなることは目に見えているだろう。

 

「悪いな。多少は手荒な真似になったが、お前らも盗賊ならこれぐらいの事は承知しているだろう」

 

「ふん、やられっちまうような弱い奴が悪い。この世界なら当然の常識だ。別に謝る必要はねぇ。だが、分かっているとは思うが、その世界に足を踏み入れたってことは当然自分もそうなる覚悟があるってことだよな?」

 

「当然だ。奪っていいのは奪われる覚悟のある奴だけ。どうだ、至言だろ?」

 

「そうだな、そいつは気にいった!」

 

ボスはでかい図体を大きく利用してタックルをかましてくる。悪くない手だが、所詮はその程度しかない。俺は避けることはせず、ただその場を動かずにボ~っと立っている。

別に相手を舐めているわけでも、油断しているわけでもない。ただその方が手っ取り早かったからそうしただけだ。

 

「ノロいな…」

 

ボスの手が俺を掴むよりも一瞬速く動いて懐に潜り込む。

そして…

 

「吹き飛べ、エアロバースト」

 

「……ッ!?」

 

両の掌からボスのガラ空きとなっている腹に風の魔法を叩き込む。カウンターの要領でぶち込まれたボスは声を上げる事なく、反対側の壁にメリ込むほど吹き飛んだ。

 

「「「「「………………」」」」」

 

一瞬のこと過ぎたのか、アジトにいた男たちは全員理解することができない様子でポカンとしていた。

 

「おい、これで俺がこの盗賊団の(かしら)になったってことで構わないよな」

 

そこでようやっとハッと正気に戻った盗賊共はそれぞれ腰に備え付けていたナイフを片手に立ち上がる。

 

「テメェ!よくもボスを!?」

 

「誰が女の下で働くかボケ!」

 

「俺らが誰の元に着くかは俺らが決めるんだよ!」

 

「そうだそうだ!」

 

どうやら誰も俺が頭になることを認めないようだ。

 

「っち、まあいい。誰に逆らおうとしているのか骨の髄まで教え込んでやる」

 

ポキポキと拳を鳴らして威嚇すると、先ほど吹っ飛んだボスの姿を思い出して警戒したのか、後ずさりする盗賊たち。

まあ、別に警戒しようとしなかろうと結果は同じだ。チワワがライオンに敵う道理はないように、俺とコイツらの戦力の差はそれほど離れている。

 

そこからは速攻だった。手始めに近くに立っていた男に柔道による投げ技で投げ飛ばし、そこから順に蹴りとパンチによる一撃を喰らわしてダウンをとっていく。

これでも幼い頃から鍛え上げているし、両手足に魔力を纏わすことにより単純な攻撃力を上げることもできる。

今の俺の実力は魔法を組して王国でもトップレベルの実力だ。もちろん、才能があったのだろう。言われたことはすぐにマスターできたし、魔法だって前世の知識を参考にしてより高度で実戦的なものを作り出すことが出来た。

今の俺に敵わないものがいるとすれば、それは伝説に語られる龍くらいなものだろう。

 

だから当然こんな盗賊共に負ける筈がなく、アジトに突入してものの数分で制圧は完了した。

 

目の前には正座で判決を下されるのを待つ盗賊たち。そのありさまは酷いもので、タンコブに鼻血とおよそ漫画でボコられたザコの姿であった。

 

「さて、これで俺がここの盗賊団の(かしら)になることに反対の奴はいねぇよな?」

 

「「「「「はい。貴方こそが俺たちのお(かしら)です」」」」」」

 

先程まで歯向かってした姿勢はどこへ行ったのか、皆が口をそろえてアリアを頭だと認めていた。

 

「それで、ここの盗賊団の名前って何かあんの?」

 

「えっと、どんな相手もぶっ飛ばすていう意味を込めてオックスホーンって名前でやってます…」

 

「そう。なら今日からその名前は改名な」

 

「ええええ!そんな、この盗賊団結束当時からずっとこの名前でやって来たんですぜ。最近じゃこの名前を出せばビビる奴らも現れたぐらいなのに…」

 

「いや、関係ないから。俺が改名って言ったら改名なんだよ。もしかして、文句ある感じ?」

 

「いえ滅相もありません。お(かしら)が改名って言ったら改名ですね。そうだろお前ら!」

 

Yes Ma'am

 

どうやら誰も文句はなさそうだな。まあ、脅して言うことを聞かせたんだけどな。

 

「んじゃ今日からこの盗賊団の名前は国の守護龍を殺すって意味で『ドラゴンスレイヤーズ』に決定な」

 

「あの~お(かしら)、それってもしかして国を襲うって意味に聞こえるんですが…」

 

「え?そうだけど。何か問題あるか?」

 

「「「「「いや、問題しかありませんお頭!!!?」」」」」」

 

まあ、そうだろうな。現状じゃ龍どころか国を相手にしても勝てるかどうかだ。かろうじて勝てたとしても、生き残るのは俺1人のみだろうしな。

 

「まあ、安心しろ。今すぐ国を相手にするって訳じゃない。ひとまずこの程度の人数で敵うと思うほど俺も楽観的な訳じゃない。ひとまずは、ここらの盗賊団をいくつか仲間に引き入れる」

 

そう言うと手下共はホッと安堵の息を吐く。どんだけ俺が考えなしの人間だと思ってんだコイツら。

 

「んで、ここいらで使えそうな盗賊団っていそうか?」

 

「へい、ここいらでいうと俺らのような規模の盗賊団は4つ。俺ら以上の規模の盗賊団は1つしかありません」

 

「ならまずその4つの盗賊団から仲間にしていって、最後にそのデカイ盗賊団を仲間にするか」

 

「そうですね。お(かしら)の実力なら最初に挙げた4つの盗賊団なら問題なく仲間にできるでしょうが、最後の盗賊団だけは別問題です。あそこのボスだけは次元が違う…」

 

元ボスの顔が沈み込む。そんなにヤバい奴がボスなのか?しかし、今までそんな危険な奴の名前を聞いた覚えがないな。まあ、ただの貴族令嬢が盗賊のボスの話を聞くことはないんだろうがな。

一応俺の実力を知ってる元ボスが警告してくれレベルだ。警戒だけはしておくに越したことはないだろう。

 

「あ!そういえば、お前の名前ってなんだっけ?ずっと元ボスで認識してたわ」

 

「俺の名前はボルゴって言います。以後お見知りおきをお願い致します」

 

なんかどこぞの『俺の後ろに立つな』の人にそっくりな名前だな。けど覚えやすいし気にすることでもないか。

 

「よし、そんじゃ明日からその盗賊団の勧誘な。とりあえず今日は俺が(かしら)になった記念で宴をするぞ!」

 

「了解しました。おいお前ら俺たちの新たな(かしら)の最初の命令は宴だそうだ!準備しろ!!!」

 

「「「「「ウェ~イ!!!」」」」」

 

こいつらノリがいいな。ついさっき殴りこみで(かしら)になった奴を祝う宴だっていうのに。いや、それはこのボルゴが負けを認めているからか。そういや、最初に会った盗賊たちも仲間の情報を売ることに抵抗していたもんな。

これが人徳ってやつか。俺には一切無いやつだな。

 

「あっ、そうだ。お~い!ボルゴ。もし宴するのに金が足りなかったらいいモンがあるんだけど?」

 

「いいモンですかい?一応は宴するぐらいの備蓄はありますが、そのいいモンってのは一体?」

 

俺はここまで案内させた盗賊たちに命令してそのいいモンをここに持ってこさせる。

 

「うへぇ」

 

「マジかよ…」

 

「あれ生きてんのか?」

 

そのいいモンを持ってくると下っ端盗賊たちが顔を青ざめて口々に悲鳴じみた声を漏らす。

 

(かしら)これがそのいいモンですかい?俺には半死半生の死体にしか見えませんが?」

 

俺が持ってこさせたのはさっき半殺しにした鬱陶しいブ男だった。

こいつは前に説明した通りそれなりの高い地位に立つ人間だ。その着ている服を売れば一般家庭の半月くらいの生活費が手に入るだろうし、身代金を要求すればかなりの額の金を手に入れることも可能だろう。

 

「ほ~、そいつはいいことを聞きやしたぜ。おい、聞いたかお前ら!いつまでもブルってやがる。さっさと動きやがれ!」

 

「「「へい、了解しました!」」」

 

ボルゴに叱咤されて先程まで青ざめていた盗賊たちは一斉に動き出した。ブ男の着ていた服を脱がし、粗末な布の服に着替えさせ手足を縄で縛っていく。

その手際は流石盗賊と褒めるレベルで、宴の準備をする者と身代金を要求する者に分かれて行われる。

 

30分もする頃にはそこそこ豪勢な料理がテーブルに並べられた。俺の手には酒の入ったジョッキがは握られており、皆が俺の乾杯の音頭を待っている。

 

「よし、お前ら皆ジョッキは持ったな。長ったらしいことも面倒なことも言わない。全員俺を信じてついてこい。ただそれだけだ。そんじゃカンパ~イ!」

 

「「「「「カンパ~イ!!!!!」」」」」

 

これが災厄の龍殺しの異名を語る盗賊団ドラゴンスレイヤーの結束の日であった。

 

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