金で愛が買えぬというのならば、愛などいらぬ! 作:リーグロード
ふもとの村では、見れば逃げろ! 会えば身ぐるみを捨てて命乞いをしろ! とまで噂される死の魔剣団と呼ばれる盗賊団のアジトから怒号と剣のぶつかり合う音が響いてくる。
「敵襲だ! オックスホーンの奴らが攻めてきやがったぞぉ!!!!」
その声を合図に、死の魔剣団のアジト目掛けて剣を持った男共が攻めこんできた。同業ゆえに攻め込んできたのが隣の領地を縄張りにしていたオックスホーンの盗賊団だということがすぐ理解できた。
「うおおぉぉぉ!!!」
「大人しくしやがれ!」
「返り討ちにしてやらぁ!」
罵倒が飛び交う混戦入り混じる戦場の最中で、誰もが避けて通る場所が1つだけあった。
そこに並び立つのは互いの盗賊団のボスである、人よりも頭一つ飛び抜けてデカイ筋肉のボルゴと、極東の衣装を着て腰に刀を携える長髪のイケメンよりのガルゴの2人であった。
「よお、久しいなガルゴ!」
「お前の方こそ、わざわざ俺に殺されるためにここまで来たのかボルゴ!?」
片方は気楽に旧友に挨拶を交わすような雰囲気だが、もう片方は血管が浮き出るほどの形相で腰に携えた刀に指をかけている。
いきなり問答無用でアジトまで襲い掛かってくればキレないほうが無理があるだろう。
「まあそう言うなよ。実はテメェに一つの提案があってここに来たんだ」
「提案だと? ここまでのことをしておいてロクなことじゃねぇのは分かっているぞ!」
「クックックック、まあそうだな。俺も同じ立場ならそう言うぜ。だがな、これは俺とお前らの今後の未来の為の話しだ。少しくらいは耳を傾けな」
そこまで言うと、死の魔剣団のボスであるガルゴがほんの少しだけ刀にかけていた指を離した。
未だに顔は怒りの形相のままであるが、ひとまずは会話をする気になったのだろう。
「へへ、別に難しい話をしに来たんじゃねぇ。簡単なことさ、ここにいる奴ら全員をスカウトしに来たって訳だ」
「ほう、スカウトねぇ~。このありさまを見て素直に信じられはしねぇが、そこは盗賊だからってことで流してやる。だが、俺は俺が認めた奴以外の命令は聞かねぇ主義だ。文句があるならこいつでケリをつけようぜ!」
そうして刀を鞘から抜くと、その剣先をボルゴに突きつける。すでに臨戦態勢に入るガルゴ。
そして、そのガルゴの肩を後ろから叩く者がいる。
トントン
「なんだ? 悪いが後にしろ!」
トントン
「いい加減にしろ! 目の前に立つ男の危険性が分かんねぇのか!?」
トントン
「ああもう! 何だってんだ!!!」
ついに我慢できずにボルゴから目を離して後ろを振り返ると、そこには戦場には似つかわしくない少女がニコニコと笑いながら拳を構えて待ち構えていた。
「え~い!」
「ごはっ!?」
可愛らしい声とは裏腹に、大の男を吹き飛ばすような強烈な一撃がガルゴの頬を捉える。
それを見ていたボルゴは呆れたような目でこちらを見ている。
「うへ~、相変わらず容赦ないですね。あれって生きてますか?」
「うるさい。お前はさっさと周りのザコ共を処理してこい。俺はこの男を相手にしといてやるからよ!」
「あいよ! ならこの場は任せますが、くれぐれもやり過ぎっちまわないように頼みますよ」
ヘイヘイっとボルゴのお小言を軽く聞き流すと、ようやくガルゴが殴られた衝撃から立ち直り、ふらつく足取りの中で刀を手に近づいてくる。
「これはやられたな。まさかこんな伏兵が潜んでいたとはな。あのボルゴがこんな手を使うとは……。いや、先程の話しぶりだとお前の方が立場が上のように聞こえた。この急な襲撃の原因もお前か!?」
「ご明察! 流石は部下を纏める立場の人間は理解が早いな。うちの国のバカ貴族共と交換しても案外上手くできるんじゃないか?」
ヘラヘラと笑うアリアを見てガルゴの刀を握る力が強くなる。
この女は何者だ? 先程の不意打ちは確かに効いた。いつも荒くれ者の盗賊たちを力で従わせているこの俺が何の反応もできずに殴られるなど……。
それにあの威力はあんな華奢な女が出していいレベルではない。理解不能なことが多すぎてまいってしまう。
だが、確実に分かることが一つだけある。それは、この女が俺よりも強いということだ。
俺はこの歳になるまでずっと戦場でこの刀を振り回していた。戦場には弱い奴もいれば強い奴もいる。いくつもの修羅場をくぐり抜けた結果、俺が一番に身につけたのは敵の強さを見抜く目だ。
その目で見たこの女の強さは今まで出会ってきたどんな敵よりも歪で凶悪だ。構えは素人そのもののクセに、その奥にある強さは歴戦の戦士を軽く超えている。
ふふっ、初めてだよ、俺がこの目で見た敵の強さを疑うのはな。
「どうした来ないのか? ……ああっ! さっきの不意打ちが効いているのか。ならハンデをつけてやる。俺はこの指一本で相手してやる。どうだ、これならいい勝負ができそうだろ?」
「なっ、バカにしているのか!?」
確かに実力差はケタ外れに離れているのは理解している。だが、指一本で俺の刀を相手に戦うだと……。これでも武人の端くれ、その言葉を後悔させてやるという思いで刀を振るった。
「てりゃ!」
「よっ」
「なっ!!?」
だが、女は余裕そうに刀を宣言通りに指一本で止めて見せた。しかも、爪ではなく腹でこの鋭い刀を止めて見せたのだ。
普通なら振るうどころか当てた状態で少しでも動かしただけで人の肌など斬り裂くこの刀が、何の防具も装備していないただの指に止められたのだ。
これで驚愕しない者などいはしないだろう。
俺が驚いて声を上げると、次の瞬間には俺の刀を受け止めた指が目の前に現れる。
「うりゃ!」
「うぐっ!?」
鋭い痛みが額に走った。恐らくデコピンされたのだろう。あの女の指を斬り落とそうとした代償がデコピンとは……。つくづくバカにされていると感じる。
だが、いいだろう。もう指一本だと油断も怒りもしない。今の俺にとってこの女の指一本が強敵だ。その強敵を斬り飛ばすために全力でこの刃を振るってみせる。
「ふぅ~、居合抜刀術」
刀を鞘に収めて息を吐きだすと同時に全身を脱力させる。
そして、完全に脱力しきった体から一気に力を込めて刀を抜き放つ。
『朧連撃18連』
18の居合による斬撃は一直線ではなく曲がりくねった蛇のようなもので、上下左右から襲い掛かるこの連撃を受けて生きていた者はいなかった。
「だったんだけどな……」
「ふっふふ~ん!」
目の前の女は鼻歌まじりに指だけで全て弾き返していきやがる。マジもんの化け物だ。
「おいどうしたもうお終いか? 剣の筋は中々良かったが、それだけじゃ俺に傷1つ付けることも不可能だぜ!」
カッカッカ! と笑う女の顔を見て絶望する。一体俺は何の為に剣を振るってきたのか。ここまで俺がしてきたことは全部無駄だったてことなのかと思ってしまう。
もうこの手に握った刀を手放して楽になろうか? そう考えると──
「なんだその顔は! ここからが楽しいところだろうが、まだ俺は本気の2割も出せていないぞ! やるんならもっと全力を出してかかってこい! お前もまだ出していない本気の100%の全力を出してな!!!」
なんだそれは……。あの朧連撃18連は俺の全力だった。それを使ってかすり傷1つ付けれねぇのに、その上更に全力を出せってか。
絶望して緩みかけてた刀を持つ手に力が入る。
「上等だ! やってやるよ! こうなったら死なばもろともだ!!!」
スピードが駄目なら力で斬り裂くまでだ。
「ハアアアァァァ!!!」
「う~ん。居合が駄目なら力でっていう柔軟な対応にはマルをやってもいいが、居合の使い手が力勝負はナンセンスだろ?」
あっさりと指で受け止めて返される。クソこれも駄目か!? 力でならいけるって考えは甘すぎたか。
なら他にどうする? テクニックで翻弄して斬るか? いや駄目だ。あの朧連撃18連はスピードとテクニックの2つを極限にまで研ぎ澄ませた必殺技だ。それを鼻歌まじりで受け止められたのだ。今更テクニックが通用する相手とは思えない。
「どうすればいい? どうすれば一矢報いられる?」
歩いて近づいてくる女に逃げながら効かないと分かっているも刀を振るい続ける。けれどあの女は欠伸まじりに防いでいく。
「どうした? 本当にもう全力は出し尽くしたのか?」
「クソォ! ああそうだよ。あの技が俺の本気だった。あれを受けて生きていた奴なんていなかった。だから、この後のことなんて知らねえ! あれを受けて無傷だった奴にどう立ち向かうかなんて知らねぇんだよ!!!」
もうどうしようもない思いを口に出す。流したくもない苦渋の涙が溢れ出る。ずっと強者だと信じていた。刀さえあれば自分は負けることはないなんていう根拠のない自信があった。
それがこの1分にも満たない短時間で打ち壊されそうになっている。
「う~ん。どうもお前は考えすぎてドツボにはまっている節がある。さっき言ってた朧連撃とやらの必殺技も、中々面白い技だったが、2つのこと同時にしようとして逆に足を引っ張っている気がするぞ」
「2つのことを同時に……だと?」
「ああ、居合ゆえにスピードを求め、敵に躱されたり受け止められないようにとテクニックを欲する。そういう思いが見えた。別に悪いとは思わないし、技自体の完成度は非常に高かった。だが、必殺とつけるには大げさすぎる。精々が牽制か次の技までの繋ぎといったところだな」
本当に何なんだコイツは? 俺の必殺の技が牽制とか繋ぎだとか……。まるで次元の違う相手からの言葉に困惑するばかりだ。
だが、それでも今コイツの口から俺の技の完成度が高いと褒めてもらった。そんなこと部下共から飽きるほど聞いた筈なのに、こんなスゲェ奴から褒められる。それだけで胸が高鳴るぐらいに嬉しく感じてしまう。
「そうかよ。ならもう深くは考えない。俺はただ自分の腕を信じ抜くことに決めたぜ!」
再び刀を鞘に戻し、今度は最もやりやすいと思った姿勢になるように腰を深く落として呼吸する。どこからどう見てみても隙だらけの無防備な格好だ。
今の俺なら剣を初めて持った野郎にでもあっけなく倒されっちまうだろう。
だが、あいつは絶対に手を出してこない。そういった確信がある。
だからこそ、例え無防備になろうとも次の一瞬に今まで出したこともない全力を出して答える。
それが今の
「必ず殺せる技を魅せてやる。即興ゆえに名はまだないがそれは勘弁してもらおう!」
「──―いいぜ! テメェの全力の全力で出す技を魅せてみろよ!」
もうアリアの顔に貴族令嬢らしいおしとやかな笑みは浮かんでいなかった。それは獲物を喰らう悪魔のような笑みで、見れば心の弱い人間ならば泣いてしまいそうな迫力であった。
だが、それを真正面から見ているガルゴの顔は同じような笑みを浮かべていた。
ここは敵味方入り混じった戦場だというのに、この2人の目には互いの姿しか映ってはいない。それほどまでに集中しているのだ。
2人の間の空気が痛いほどに張り詰められている。
ガルゴの親指が刀を僅かに抜く、それに合わせてアリアの指にも力がはいる。
「しっ!!!」
「──―っっ!!!」
ガルゴが放った一撃はただただ速かった。アリアが動きをみせるよりも早く。今まで生きてきたなかでの最速の動きだった。
恐らくこの世界で今のガルゴの動きを見切れる者など数えるくらいしか存在しないだろう。まあ、その数えるくらいのなかに入っているのが、ガルゴの目の前に立つアリアなのだが。
すれ違いざまにガルゴが放った一閃は容易くアリアの指が受け止めた。
これで先ほど言っていた必殺の技を魅せるという言葉は噓になった。だがしかし、変化は2つあった。
1つはガルゴが全力の全力を出したということ。体は酸素を求めて荒い呼吸を繰り返し、刀を持つ手に意識を向けていなければ落としてしまいそうになるほどに疲れ切っており、足はもうガクガクと笑い過ぎて今にも崩れ落ちそうだ。
そしてもう一つの変化は──―
「ほう、油断はしていた認めよう。慢心もしていた認めよう。だが、力を抜いていたなんて間抜けは晒してはいなかった。称えよう、お前はまごうことなき強者だよ」
アリアの刀を受け止めた指から一筋の赤い血が流れていた。あのどうあがいても超えられない壁と認識していたアリアの指から血を流させたのだ。
これを知らない人間が見ればたかだか小娘相手に刀を使っても皮膚を斬り裂くことしかできないのかと侮られるだろうが、今の貴族を辞めて闘いに身を浸す盗賊のアリアに血を流させたと知る者が知れば凄まじい偉業だと褒め称えるだろう。
「ふふ、よく頑張ったと褒めておこうか? とはいえ、俺も人間でな? 当然のこと血が出れば痛いんだよ」
もし今ここにボルゴが立って聞いていれば「人間……?」と疑問の声を呟いていただろう。ちなみに、その後アリアにぶっ飛ばされるまでがお約束だ。
とまあ、そんなことはおいといて。今ここに立っているのはボルゴではなくガルゴであって。アリアに傷を負わせたのもガルゴだ。
そうなるとどうなるか? 想像することは簡単だ。例えば小学生の力の強い
結果は決まっている。それはもう見るに絶えないボコボコにされるのだ。
「痛いじゃすまないから覚悟しろよ!」
「ぶっ! べっ! ぼごぉ!?」
デコピン(岩が砕ける威力)シッペ(骨にヒビがはいる威力)チョップ(二度と逆らう気力が湧かないレベル)の3連撃がガルゴを襲った。
ただの罰ゲームクラスの攻撃でも、アリアが
地に打ちのめされたガルゴが転がるなか、雑魚の対処を任せていたボルゴがようやく
「頭! やり過ぎないようにって言ったじゃないっすか。どう見てもこれ瀕死ですよ。本当に仲間になるか心配なんっすけど?」
「ふん、心配すんな。回復魔法を攻撃と同時にかけていたから見た目よりも問題はない。それにこんだけ力の差を見せつけておけば従順になるだろう!」
「従順どころかトラウマになってそうなんですけど?」
未だピクピクと痙攣して辛うじて生きていることが分かるガルゴを見て心配するボルゴと違って、アリアはこの程度では心配はしない。
「まあ大丈夫だろ。ところでそっちの方はどうなったんだ?」
「こっちは頭以上に問題なく終わりましたよ。ウチの奴らはほとんど無傷で、相手も軽症程度に抑えましたんで」
「当たり前だな。そうでなければお前らは帰ってから地獄を見ていたぞ」
「いっ、嫌ですぜ! もうあんな地獄すら生ぬるい修業は勘弁すよ! まあ、成果はちゃんと出てますが……」
青ざめた顔でイヤイヤと両手を前に出して拒否のポーズを取るボルゴは、一度アリアから最低限の強さになるまで叩き上げてやると言われてやらされた修業内容を思い出す。
それは四六時中アリアとボルゴ&部下たちの命を賭けた組み手(命の危険はボルゴ&部下たちのみ)をすることだった。
その際に課せられたことが1つあった。それはアリアが前世の
《魔闘練武術》とは、簡単に言ってしまえばドラゴンボールの界王拳だ。自身に流れる魔力を魔法陣を介さずに肉体に作用させる効力を持つ技であり、使用すれば自身の身体能力を何倍にも高めることができる。
とはいえ、そんな効果の高いものがそう簡単に使える筈はない。この技は相当の魔力が無ければあまり身体能力の変化は見られず、制御を誤れば筋肉や血の流れを異常に高め過ぎてボン! と爆発なんて危険なことになってしまう場合もある。
まあ、体が誤って爆発するほどの高い魔力をボルゴたちは持っていないため起こりはしなかったが。
それに、この技は制御の難しさも問題だが、それ以上に問題なのは会得の方だ。単純に魔力で強化といっても簡単なことではない。細胞の一つ一つに魔力を付与する精密さと、それを可能にする魔力コントロールが必要とする。
それは一流もしくは二流の魔術師が出来る芸当だ。当然のこと魔術師でもない勉学もロクにしていないただの三流以下の盗賊が出来る芸当ではない。ではどうやって覚えたのか?
答えは1つだけ。いつの世も、どこの世界にいっても変わらない。当たり前のこと
文字通り命を賭けた組み手が彼らの生存本能を揺さぶらせ、心身魔力共に成長──否、飛躍させたのだ。
未だ二流の域に片足を踏み入れた程度だが、それでも僅か数日でこの成果は驚きを通り越して奇跡とすらいえる。だがまあ、それにふさわしい地獄をもう一度経験したいとは誰一人思わないだろうが……。
とまあ、《魔闘練武術》を修得したボルゴは3倍の部下達は辛うじて2倍のパワーアップに成功している。当然だが、開発者のアリアは100倍以上のパワーアップが可能である。
ちなみに、アリアは常日頃から《魔闘練武術》を発動させ続けており、言うなればセル編のスーパーサイヤ人の常時維持をし続けている。
そんなわけで、アリアが育てた盗賊たちがこの程度の奴らに負けるどころか、軽症で捕らえることも余裕である。今は縄で縛り付けて動けなくしているが、仮に動けたとしても反抗する勇気も力もないだろう。
「ぐぐぐぅ……。俺たちはどうなる?」
回復魔法が効いてきたのか、ふらつきながら立ち上がったガルゴは今後の自分たちの扱いをどうするのか聞いてきた。
「安心しろ。別に奴隷のような待遇にはせん。お前らには俺の野望を手伝ってもらう」
「野望……?」
「クックック、聞いたら驚くぞお頭の野望はよぉ!」
「まあそうだろうな。自分でも俺以外の人間が言ったら腹を抱えて笑っていたさ!」
1人ついていけずに呆然とするガルゴをよそにアリアとボルゴの2人は盛り上がる。
「なら話そう俺の野望を! 俺はこの国を相手に喧嘩を売る。その際に守護龍も殺す。それが俺が掲げる野望だ!」
「はっ?」
「だっはっは、そりゃそうなるわな! 俺も最初はそういう顔になったぜ!」
あまりにスケールの違う話しに呆然とするガルゴの肩をボルゴはバシバシと笑いながら叩く。
それでようやく我に返ったガルゴはその野望を否定する。
「バカな!? できる筈がねぇ! 国を相手にすることが無茶だってのに、そのうえ龍を殺すだと! バカも休み休み言え。そんなことができるわけがねぇんだ」
吐き出すような思いを口に出すと、そのままドカリと地面に座り込みアリアの野望を夢物語だと切り捨てた。
それに対するアリアの答えは単純なものだった。
「なら俺と一緒についてこい! 夢だろうが理想だろうが、お前の見たこともない光景を見せてやる。だからこの手を握れ!」
アリアから差し出された手に戸惑いを覚えるが、先ほど己の刀をこの手の指で止められた事実を思い出し、もしかしたら、こいつなら本当にその野望を叶えてしまうのではないか? そう考えてしまう。
だからガルゴはその手を──―
「分かった。あんたがどこまでいけるのか、俺とこの刀で見届けよう。だから、あんたの仲間に入れてくれ」
掴み立ち上がった。その強さと信念がどこまで通じるのかを見るために、あるいは突き通すことを信じてしまった為にか。
「OK! これでお前たちも今日から俺の仲間だ。さあ野郎共! 歓迎の宴を開くぞ。準備しろ!!!」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」
すぐさま死の魔剣団たちを拘束していた縄を切って解放すると、早速宴の準備に取り掛かった。困惑する死の魔剣団の盗賊たちも、ボスであるガルゴから、これからアリアの傘下に入ることを宣言されると、戸惑いつつも納得し、攻めてきたはずのドラゴンスレイヤーズの盗賊たちと一緒に宴の準備にはいっていった。
「これで、残る盗賊団はあと3つと1つですね」
「ん? あと3つと1つってまさか!? お前らあそこも仲間に引き入れるつもりか!!?」
「お! 今ので分かるんだ。そうだぜ! 俺の野望の為にここいら全ての盗賊団を仲間に引き入れるつもりだ。そこに例外はねぇ!」
自信満々に答えるアリアを見て、こいつを相手に警告をすんのもバカらしいと考えたのか、肩の力を落として刀を手に取る。
「そんな……。いや、国と龍を相手取るつもりのあんたに警告すんのも野暮ってもんか。いいぜ! とことんあんたについていく。よろしくな!」
「ああ、よろしく頼むぜガルゴ!」
互いに認め合ったことを証明する握手を交わし、夜が明けるまで新たな仲間の参入を祝った宴を楽しんだ。