何処にでもいる(?)ような性転換願望のある少年の願いが実際に叶ったら。



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頑張って書きました。少しでも暇つぶしの材料になれたら幸いです。


始まりは突然に

寒い。もうすぐ春だと言うのに、先日の雪のせいでか冬らしい寒さはなくならず、寒さの中手がかじかんで体の震えは収まらない。

 

足元の水溜まりには氷が貼り、そこには中学生くらいの女の子が男物のジャンパーに体を丸め寒そうに縮こまっている。顔は薄汚れているが、よくよく見れば美少女と読んでいいレベルのようで、頭の上には狐なのか猫なのか、または狼なのか、何のかは分からないが動物の耳っぽいものがあるように見える。だが薄暗い裏路地には、自分の他には人っ子一人いない。

 

いやそうだったか。それは今の俺の姿が写っているだけか。

 

もう頭もまともにはたらいて無いらしい。近くにコンビニか、スーパーか、とにかく中に入れる建物はなかったか。そんな事を考えながらも、なぜ今こうしているのかをぼんやりと思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

原因はおそらくわかっている。

 

今年は毎年元日にお参りをしている地元で一番でかい神社には行かなかったから、代わりに散歩ついでに近所の林の端にある小さな神社に行った。いつも誰もいないが、申し訳程度の正月飾りがあるから誰かが管理はしているのだろう。

 

でも俺は至って普通の無神論者で、お参りの理由だって「何となく」以外はない。それに別段何かしらの夢や目標がある訳でもなく、せいぜい「宝くじが当たりますよう」にくらいだ。

 

話は変わるが、俺は所謂オタク趣味でアニメもゲームも好きで、最近は特にVtuberにハマっている。Vtuber、バーチャルライバーのことで、最近の主流はイラストを動かしながら雑談やゲーム実況をする様子を動画投稿や生配信することだ。

 

俺はそんなVtuberを見ることで、だんだんと自分もVtuberになってみたいと思うようになった。実際やろうと思えばスグにでもできるのがVtuberだ。体は無料で作れるところなんていっぱいあるし、声もボイスチェンジャーを使えばどうとでもなる。

 

でも、体も作って、安物のボイスチェンジャーも使って、配信こそしてないものの画面の中の別人の様な自分をみて、気づいてしまった。俺はどうやらVtuberになりたいのではなく、2次元イラストのような美少女に、画面の中ではなく現実でなりたいのだと。

 

そして話は戻るが、俺はその神社で「俺をけもみみ美少女にして下さい!!」と頼んだ。それは叶うなんて一欠片も思ってなくて、話のネタ以外に意味なんて全くない願い。

 

でも意外とこの願いは俺の中で強かったようで、どうやら口から声として出てしまっていたらしい。ここが誰も居ないような神社で良かった。誰かに聞かれでもしていたら顔から火が出て、丸一日は布団にくるまって悶々としていたらことだろう。

誰にも聞かれていなくても恥ずかしいものは恥ずかしく、その後周りに人がいないかビクビクしながら神社をでて、1人帰路についた。

 

 

 

 

 

そして翌日、休みなのをいい事に昼頃に起きて、少し違和感を覚えた。目線が少し低い気がするし服も少しぶかぶかだ。でも気のせいな気もして、そのまま昼ごはんを食べ終えて歯磨きをしに洗面台の鏡をみて、固まった。

 

「え......?」

 

そこには写っていたのは、美少女だった。

まるで2次元からそのまま出てきたかのような可愛らしい顔はポケッとこちらを見ており、身長はおそらく150cmを超えるか超えないかぐらいで胸は小さめ。その手には俺の歯ブラシが握られている。目と髪は俺と同じ黒に少し茶色を混ぜたような一般的な日本人の色で髪は肩にギリギリかかるくらいのミディアム。そして何より、頭の上にある何の種類かは分からない獣耳。俺の理想的と言える美少女が、そこにあった。

 

朝からの違和感がだんだんと形になっていく。

俺が手を顔に当てると、鏡の中の少女も手を顔にやり、手を振れば振り返す。思わず目線を下げれば、手は明らかに普段の俺のより小さく可愛らしく、胸に手を当てれば僅かながらの膨らみも感じられる。

思わず股に手を当てれば、産まれてから共にあり続けた息子の膨らみは無く、僅かな割れ目をかんじる。

 

「はぁ......?」

 

人って驚きすぎると何も考えられなくなるんだなーと思いながらだんだんと意識が冷静になり、

 

「はぁぁぁああああああああああああ!?!?!?!?」

 

ここ近年一の声量の叫びとともに、大きな困惑と、それ以上の歓喜が頭を占めた。

 

 

 

 

 

一旦落ち着いて、現状確認のために自室の椅子に座る。

 

「これって所謂あさおんってヤツだよな?てか家に誰もいなくて良かった。前の俺とは似ても似つかんし完全不審者だよなぁ。」

 

俺の家は両親と兄と妹の5人家族で、父は普通のサラリーマンで正月早々に仕事、母も同じくパートで夜遅くにしか帰ってこない。兄は社会人だが何やってるかは知らないが滅多に家には帰らない。(絶対にブラックな企業なんだと思う)妹は中3だがスポーツ推薦がほぼ確定していて、早朝から夕方まで中学の部活に顔を出している。(おそらく俺の運動神経は全て妹に取られたと言えるほど、俺は運動が出来ない。兄妹なのに)

そんなわけで家には俺一人だからしばらくは俺の変化は家族にはバレないだろう。

 

「小説とかなら家族にしか分からないこととか家族の絆とかでわかるんだろうけど、俺わかってもらえる自信全く無いぞ。友人もそうだよなぁ。」

 

家族や親友しか知らないようなことを言って信じて貰うのはTS小説の定番だが、そんな上手くいくとは思えないし、信じて貰えなかったらただの頭のおかしい不審者だ。そもそも親友と呼べるような存在が俺にはいない。(決してぼっちな訳じゃない。ぼっちでは無い)

 

「どうするか......。」

 

現状俺は無戸籍のそもそも人間かどうかも怪しい生物だ。獣耳がある人間なんて聞いた事も無いし、最悪人体実験コースになりかねない。

 

「というかこの耳どうなってんだ?てか何の耳なんだ?しっぽもちゃんとあるし。しっぽの形からみて、犬系かね?」

 

おしりを見れば、ちょうど尾てい骨辺りから狐の様な狼のようなしっぽが生えているし、どうやら感覚もあるようだ。

 

「人間の耳もちゃんと残ってるし。耳塞いでも音が聞こえるからこのケモ耳も本物か。ちょっとだけ目とか耳が良くなった感じがするぐらいで別に変なところも無いな。」

 

本当に獣耳っ娘になったようで嬉しいけど、自分の体が勝手に改造されてて怖さもある。でも概ねおかしなところは無いようでとりあえずは安心だ。

 

「たぶん、原因はあの神社だよなぁ。」

 

十中八九昨日行った神社が原因だろうと思い、しっぽを服の中に入れ、耳をパーカーのフードで隠して神社に向かう。(ちゃんと服は大きめだけど自分のを着ていった。さすがに妹のを無断で借りるほど落ちぶれてはいない)

 

しかし神社の境内をどんなに見て回っても、これといったものは何も無く、せいぜいがポイ捨てされたゴミがチラホラある程度で手がかりのようなものは何も無かった。

 

「ホントに、どうすっかなー。」

 

しばらくは家にいても家族とは会わないこともできるし、隠れ続けられるだろうけど、いつかはバレる。遅かれ早かれ家には居られなくなるだろう。

 

「やっぱり、家出の準備はしないといけないかな...。」

 

今のうちにできるだけ準備はして、いざ1人で生きていく時に最低限生きられるようにする必要がある。かろうじて、夏の短期バイトの給料が数万はあるから、これとあとは家から少しずつ拝借して必要なものをそろえていくしか無い。

 

「もう何も考えずに推しの配信を見てたいけど、そうもいかないよなぁ。」

 

獣耳美少女になりたいという俺の願いは叶ったが、それに付随するデメリットが多すぎる。もっとちゃんと考えとけばといくら思ったところで、そもそも本当に獣耳美少女になれるなんて予想できるわけが無いわけで、もう現状を受け入れる以外に俺のできることは無かった。

 

 

 

 

 

数日たって、家族と会わないように最大限気をつけながら生活し、一応ネットで調べたサバイバル等で使う道具一式としばらく分の栄養バーを詰めたバッグの用意も出来た頃に、想定していた最悪の事態が起きた。

 

その日も布団は頭まで被って、太陽も登ってある程度暖かくなってきた頃に目が覚めた。そして、

 

「兄!起きて!!ご飯だよ!!!!」

 

俺の部屋のドアが開けられ、妹と目が合う。

 

「...」

「...」

「......」

「...え、と、どちらさま?」

 

(妹にバレた!!そうだよ今日妹は部活休みだった!完全に忘れてた!俺のアホ!!!!)

 

突然の闖入者に俺はついパニックになって、頭が真っ白になる。

 

「え...兄の彼女さん?」

「ソッソウダヨー。ハジメマシテー。」

「あれ?じゃあ兄は??」

「え、えと......。」

 

妹の勘違いにこれ幸いと乗っかかるが、テンパって完全に棒読みなのと、咄嗟の言い訳が出てこない。

 

(あっ、詰んだ...)

 

「とりあえずお昼ご飯、ご一緒にどうですか?」

「は、はぃ...」

 

 

お昼ご飯は、妹が用意してくれたスパゲッティだったが、わざわざ2人前を3人前にわけ直して、冷凍おにぎりを加えたが、妹の俺とどこがいいのかなどの質問に「はぃ...」「ええと...」などと言うのが精一杯で、味なんて1ミリもわからなかった。

 

「それにしても、兄どこいったんだろね?」

「...」

「彼女さん1人家に置いてとか...」

「......」

「そう言えば、彼女さん名前なんて言うの?」

「......」

 

昼食後も、妹は1人分のスパゲッティにラップをかけて、お茶を出して話を続ける。でも俺の頭はもはや真っ白で何も考えられない。

 

「初対面でこんなに話すと緊張するよね。兄が帰ってくるまで兄の部屋で待ってる?」

「...はい」

 

「兄帰ってきたら呼ぶねー」

 

妹が俺一人にしてくれる提案をしてくれて、殆ど脳死で返事をして自分の部屋に1人になる。

 

「もう、無理か...」

 

妹に見られて、本来の俺がいつまでも帰ってこないとなれば、さすがに怪しまれるだろう。予め纏めていた荷物を持って、妹にバレないように慎重に家を出る。

一応俺の部屋の机に「旅に出ます。探さないでください。」とは書き置きしてある。

 

「行ってきます...。さよなら......。」

 

今まで過ごして来た家を見上げ、寒空の下俺は家から離れていく。これからの不安は尽きない。まともな生活には、もう戻れないだろう。自分の手を見ながら、これは俺が望んだ結果なんだと思う。この俺の理想の体だけが俺に残されたものなんだ。

 

 

 




最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

一応はバトル系を想定していたり...
あっちなお店行きルートならR18行き

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