物質もただひたすらに誤りなく、記憶する。生命を有する物質のどんな単位にも無限の力が潜み眠っている。その理由は、これ以上分割を許さぬどの原子にも、今は消滅した幾億万の宇宙の無限にして不滅の経験が宿っているからである
――小泉八雲(旧名 パトリック・ラフカディオ・ハーン)
これは恐らく、昔の話であり、未来のお話。出会いは違えどもマエリベリー・ハーンと八雲紫との間を紐解くお話にきっと成りえるのかもしれない。
§
大都会京都に憧れていい国立大学進学して初めて蓮子が私に会ったのは大学のサークルメンバー募集の張り紙が雑多に張られた掲示板の前に突っ立っていたときだったと記憶している。掲示板に張り出されている募集の紙はさすが京都だけある。どれも個性的で自己主張の激しいものばかりだった。そんな刺々しい張り紙ばかりだったからかもしれない。つい先ほど張られたのか他の募集の紙を潰すよう最前列に貼ってある一枚の古びたオカルトサークル結成するための勧誘を示唆する和紙に私は目を奪われた。読み解いていくとまるで宝の地図でも記載されているかのような魅力的な文字数列は私をここのサークルに入ることを決心させるだけの価値はあった。他のサークルもいいことにはいいのだが魅力は感じ得ない。張り紙に書かれてあることを最後まで読み終わると、考えたから即行動に移したらしく今から作りますから来てくださいと荒っぽい字で書かれた募集だった。日時と場所が殴り書かれ、張り紙の右下に『超統一物理学専攻 宇佐美 蓮子までこの紙持って足を運んで!』と書かれていた。
日時は日没までで場所は大学から出てすぐの食堂ホールの人気のすくない南側の一角だった。
もの憶えはいいほうの私だが行く途中までに忘れてしまうかもしれないと張り紙に手を伸ばし、紙を掲示板からはがし取った。できるだけ綺麗に剥がす。几帳面かもしれない私である。
しかしながら、剥がし終わると後ろから手がゆっくりとでてきたと思えば剥がした張り紙を取ってしまった。
束の間、手の主は私の手を不意に握ると淡々と自分の主張を歩きながら喋り始めた。
呆気の虜になっていた私には何故か振りほどく選択肢を選択できなかった。
「よし、貴方の入部を確認した。さて、さっそくだけど、私たちの部室にいこうか。やることいっぱいあるのよ」
手の主は私と同じ年に見えた。
「ちょっ、ちょっと」
私はなされるがまま、不明な少女に引きずりこまれて大学の外にあるひっそりとした喫茶店につれこまれ、一番奥の窓際の二席に座らされた。
奢るからと、連れ込んだ当人は嫌らしそうに一言言うと趣あるメニュー表を食いついて見ていた。
私はというと見知らぬ人ではあるが奢ってもらえるならともうひとつあったメニュー表を開けた。店は花の女子大学生が通うような華やかなオープンテラスもなければ注文に困ってしまうほどのメニューも長ったらしいトッピングもない。
むしろ単純にコーヒーと紅茶、あとミルクぐらいしか飲み物はない。カフェラテなどとは縁がなさそうだ。
向かいの席の住人はうなりながら長考していた。
日が暮れそうだと内心思うのは決して私だけではないはずだ。
結局、なにをそこまで悩んでいたのか「注文は?」と聞かれると大きな声で「コーヒー!」と人目をはばからず若々しい声で言った。続けと私もコーヒーを注文したがミルクは要りませんと申告したが数分後にきたコーヒーを一口飲んで見栄ははるものじゃないと後悔した。
ここの喫茶店のコーヒーはどうやら刺激的で攻撃的な非大衆向けのサディスティックな味だった。
誤字脱字はないはずですが、あれば申告してくださると助かります。