GBNフォース『レイヴンズ·ヒル』活動録 作:屋根裏部屋の深海
もう一人のキャラも含め、割りとオマージュ元は分かりやすいはず。
彼等については機体の方が難産でした()
とある傭兵の一日───希望の護り手
それは、夢のような話だった。
ガンプラバトル·ネクサスオンライン、通称GBN。
GPDでは、ダメージレベルの設定次第ではあるが相手も自分もガンプラが破壊されていく。
自分のガンプラならいざ知らず、相手の想いの篭ったガンプラを破壊することに躊躇してしまう自分にとって、相手のガンプラを壊さず楽しくバトルができる、それだけで手に取るには十分過ぎる理由だった。
だから、狙われた。
チュートリアルミッションをこなした後、誘いをかけてきたダイバー達。
疑いもせずミッションに喜んで参加した自分を、容赦なく彼らは攻撃してきた。
後で知ったことだが『初心者狩り』は初心者への詐欺まがいのパーツ取引と並んで当時GBNでは日常的に行われており、悪質なダイバー達を運営が一部の高ランクダイバーと協同して制圧に掛かるまでの事態になっていたらしい。
そんなことも知らなかった、ただ思いのままにガンプラと飛び、戦い、世界を駆け巡れると思っていた自分は格好のカモに見えただろう。
────あの日、たまたま自分を救ってくれた傭兵。
その出会いが無かったら、今ここに自分はいただろうか。
「それじゃあ、訓練を始めるよ。まずは前後左右に歩いてみて────」
モニターの向こうでは、動きがぎこちないザクが前後左右に歩き、前進と後退、頭や胴体の捻りや旋回といった基本の動きを行っている。
初心者への教導、及び伸び悩んでいるダイバーや脱初心者を目指すダイバーとの協同。
傭兵としては異様と言える内容だけど、これこそがGBNにおいて重要になることだと思っている。
世界ランク2桁台の高ランクダイバー『マギー』が初心者にアドバイスを送るように、自分のように不幸に巻き込まれないようにと願いを込めて、自分は傭兵を続けてきた。
使えるものは味方でも使え、背後から不意打ち上等、卑怯は敗者の言い訳───そんな傭兵が集うレイヴンズ·ヒルの中でも変わっているのは知っている。
何せ、おおよそ騙し討ちということはしていないし、裏切りもしてはいない。
せいぜいがトラップを仕掛けてターゲットを追い込み、逃げられないようにしてマトモに戦わせないで撃破した位…そんな傭兵はそうはいない。
自分を救ったダイバーなフォースメンバーに鍛えられ、何回か依頼を受けた中で自分にはそんなやり方は合っていないと考えたからでもあるが。
─────誰かの助けになりたいという『理想』は結構。
─────だが、吹けば飛ぶような力無き理想では誰も掬えはしない。
─────お前にその力はあるのか?
上位ランカーや実力者との戦いの中で、上手く行かない日々に諦めそうになった時もあるけれど。
今の自分には、少なくとも自分の意志を貫き通すだけの強さはある。
それは、自分なりの誇りだった。
「ミッションに行くわよ!」
「また急だね…」
F91時代の連邦軍ノーマルスーツを着た朴訥な雰囲気の青年が少し呆れたようにこぼす。
その前には赤髪のセミロングにやや吊り上がった大きな琥珀色の爬虫類のような目をした女性ダイバーがおり、青年の前に腕を組んで仁王立ちしている。
「アップル、あんたここ最近の依頼とミッションで高難易度のところに行った?」
「いや、ここ最近はヘルプが多くて…」
「あのね、他人気にして自分が腕落としたらどうしようもないでしょうが!錆び付かせる前にランク上げも兼ねて行くわよ拒否権は無いから!」
「拒否権無いんだ…他の人は?」
どうやらミッションロビーまで強引に自分を連れてきたのはあくまでも自分を思んばかっての事らしいと分かった青年は、取りあえず他のメンバーを確認するため相方に問いかけるが…
「何いってんの、二人で行くのよ」
「そっか二人だけか…え、二人でこのミッションやるの!?」
ミッション名「永遠への回帰:ブリュッセル防衛戦」
それはガンダムWエンドレスワルツにて登場したサーペントの大部隊をコクピットブロックに攻撃を直撃させず戦闘不能にのみしていくという、原作においても奇跡の所業としか言い様の無い戦いに防衛側として加わるミッションである。
原作において参加したというサーペントは500機超、増援を含めれば1000機以上というまさしく数の暴力。
対してこちら側は単機ならば確かに強力だがおおよそ防衛には向かない格闘機のデスサイズと迂闊なことをすれば蜂の巣になりかねないサンドロック、凄まじい技量で奮戦していたがいかんせん性能に差があるトーラスと、自力で何とかしていることが多いトールギスⅢとヘビーアームズ以外には問題点が多いのだ。
無論原作に沿っているためクリア条件は時間経過だし全てを撃破する必要はない…のだが、そこはGBN。
何と累計1000機以上行動不能で直接参加はしていないアルトロンやウイングゼロを含めた機体のパーツやレアオプション装備が手に入る可能性があり、特にガンダムアクエリアスのパーツやアビリティが手に入るチャンスなのだ。
「…ねぇ、これ僕はともかくレジーナは機体的に無理があるんじゃ」
「無力化すればいいんだから足でも撃って行動不能にしてやればいいのよ。まさかバランスがとれない状態で特攻しかけてくる奴はいないでしょ?」
「無理がないかなぁ…まあ、取り敢えずやってみようか」
ハーディガンをベースとした支援型の自分の機体ならともかく、高火力殲滅型の彼女──レジーナの機体であるヘカテーの改造機にはおおよそ向いていなさそうだと青年、アップルビーは思ったが一先ずは受けてみる事にしたのだった。
ミッション開始から数分後。
銃声と爆音に包まれるブリュッセルは、しかしガンダムパイロット達とプリベンター、そしてアップルビーとレジーナの手によって最後の一線でありながら固く守られていた。
数機から同時に放たれ迫り来るミサイルの弾幕を榴弾がまとめて爆発させ、一時的に視界を奪われたサーペント達をハーディガンの放った高出力のビームが薙ぎ払い。
続いて現れた増援にはヘカテーのプラズマサイズによる制圧射撃からロケット弾を着弾させて足を止め、遠方から接近する部隊には頭上からトリモチ内蔵弾頭に変更したミサイルを、鼻先に榴弾を叩き込み動きを止める。
そうして進軍が止まった一瞬の隙をついて割って入ったガンダムサンドロックがショーテルを振るえば面白いようにサーペントが行動不能になり、後続が体勢を立て直す頃には離脱して再び隙を伺う。
「合わせるのは初めてなのに、よくあそこまで動けるな!」
「ホント、ネームド様々よ、ねっ……!」
アップルビーとレジーナが援護相手に選んだのはガンダムサンドロックだった。
元々マグナアック隊との連携や他のガンダムパイロットとの協同を得意としていたカトルのNPDなだけあり、その動きはきちんと連携を想定したものである。
サンドロック自体が白兵戦以外特化した能力を持っていないため必然的に援護対象に選ばれたのもあるが、それにしても水を得た魚のごとくの奮戦であった。
また一機を切り伏せるサンドロックを背後から狙うサーペントにはアップルビーのハーディガンからビームが飛び、ガトリングガンを構えた機体にはレジーナが腕部に追加したグレネードライフルでガトリングガンを狙い撃ち、その爆発で腕部と脚部を同時に損傷させる。
損壊したサーペント達は着実に道を塞ぎ、行軍を一層困難にしていく。
しかし、相手は各所から迫る1000機以上の大部隊。
一大勢力の総攻撃といっても過言ではないその数こそが最大の敵である。
「南側が押されてる!アップル、こっちは任せていい!?」
『了解、デスサイズも後退してきてるから気を付けて!』
真正面から撃ち合いでサーペント隊に対抗している南側のヘビーアームズ改に敵のヘイトが集中し、更に撹乱のために敵陣にいたはずのデスサイズヘルが後退してきたタイミングで、サンドロックの援護を相方に任せたレジーナは2機の前に自機を敢えて突っ込ませ、空に機体を躍らせる。
「何も仕込んでない訳じゃないのよ!ワイヤー射出ッ!」
愛機のブロックビットベースを改造したウェポンベースから射出されたスクウィーズワイヤーが、空中でその切っ先を散らばらせ多数の機体に絡み付く。
すぐさま振りほどこうとした機体もいたが─既に一手遅い。
「痺れなさい!」
ワイヤーの正体は高電圧を流し込むヒートロッドワイヤー。
MS08小隊のグフカスタムのロッドを参考に、それより更に電圧を高められた高圧電流に晒され、絡めとられた機体は停止を余儀なくされる。
その動きと武装に目を牽かれたNPDから一気にヘイトが集中し、ミサイルが、ガトリングガンが、ビームキャノンが殺到する。
並みの機体なら数回破壊してお釣りが来る攻撃の嵐を、曲芸師のように宙返りを打ち、巧みなスラスター噴射の姿勢制御でかわし、ミサイルを弾幕の前に誘導して誘爆させ、実弾の一部はジャハナム用のシールドで敢えて受けることで捌いていく。
空中を踊るように跳ねるように、足場が狭い市街地ということを感じさせず飛ぶその姿は、さながら奔放なジプシーの踊り子か。
尚も攻撃を続けるサーペント達の集団が突然切り刻まれ、内部から崩れ始める。
「機体は良くても、所詮はNPDよね!」
後退していたデスサイズヘルが再び姿を隠し、その鎌を振るったのである。
レジーナのアクロバットと特殊兵装に気をとられたサーペント達は、一番捕捉を外してはいけない相手を見失ってしまったのだ。
再び捕捉するべく動き出すサーペント達はレジーナのワイヤーとプラズマサイズを含めた制圧射撃に阻害され思うように動けず。
更に体勢を立て直したヘビーアームズが合流すれば、もはや突き崩すことは叶わない。
プリベンター側に至っては戦力がダイバー側に集中したせいか、時たま二人が遊撃で支援するだけで後は二機だけでどうにかしてしまうという何とも言えない有り様であった。
「な、長かった……」
「もう、しっかりしなさいよ。最後の方はほぼ流れ作業だったじゃない」
制限時間まで防衛ラインを守り通した後、W0カスタムの砲撃を見届けハンガーに帰還した二人。
アップルビーは草臥れたのか猫背気味で、レジーナもその背をどつきながらも疲労を滲ませていた。
「……それで、どうだった?」
レジーナが何処と無く不安げなのは、クリア後に突きつけられた現実についてだろう。
「チャンプがいかにとんでもない人かっていうのが改めて良く分かった、かな」
結果だけ見れば、確かにミッションは成功であり戦闘不能機体も1000体を越えていた。
しかし圧倒的な戦力差と物量差に加えて、無双系ミッションとは違う、撃破してはいけないという縛りがどれ程難しいことかを体感し、その条件下で尚圧倒的なクリアタイムトップに輝くチャンピオン【クジョウ·キョウヤ】がいかに驚異的な力量を持っているのかを知らしめられた格好ではある。
常人ならば並び立とうとすら考えないであろう、実力の差をタイムという形で示された。
それでもアップルビーの目に諦めの色はない。
「まだ強くなれる余地はある……僕も、エスペランザも。それだけでも挑んだ甲斐はあった。誘ってくれてありがとう、レジーナ」
「……そ。なら、良かった」
ふい、と顔を背けたレジーナの耳が赤くなっていたのを見ながらも指摘はしない。
強気な彼女は中々素直にはなれないけれど、暖かな心の持ち主なのはフォース内では周知の事実である。
迂闊に指摘して殴られる事もないと考え、ふとアップルビーは自分の機体を見上げる。
モスグリーンと臙脂色に塗り分けられた、大型の砲塔が目を引く機体。
『誰かの希望になる』という願いを込めた半身───ハーディガン·エスペランザ。
ベース機にアンテナを追加し、一部を黒く塗り分けた重武装の機体。
『自分の力で立つ』という強さを求めたレジーナの半身───エキドナ·へカート。
「自分のために、誰かのために───僕はもっと、強くなるよ」
「……一人で抱え込んだら、今度こそ許さないからね。アタシも、もっと強くなるから。一人だけで、苦しんだりしないで」
青年はこれからGBNの世界に入る、新たなダイバーと仲間達の為に。
蛇目の女王は、青年を護り、共に歩むために。
寄り添い、共に誓う二人の姿を、二人のガンプラだけが見下ろしていた。
※リア充ムーブしてますが実際リア充。
[機体紹介]
ハーディガン·エスペランザ
見た目はハーディガンをモスグリーンと燕脂色に塗り分け、バックパックに多連装垂直発射型ミサイルポッドと大型アンテナ、肩にスラスターユニット、腰にヘビーマシンガン内蔵型ショットランサーを追加したもの。またビームキャノンが一部Gバードの装備に改造され、ジェネレータが独立。その性質上原型機よりも更に支援向けであり、中衛を得意とする。
際立つ印象こそ無いが、堅実に味方をサポートし勝利へ導く希望の機体。
エキドナ·へカート
『Gのレコンギスタ』に登場するヘカテーをベースに更なる火力の増強を図った機体。
特筆すべきは棺桶状のブロックビットコンテナを基にしたウェポンベースであり、ここに多種多様な装備をマウント可能。今回は∀ガンダムのバンデットを参考にしたスクウィーズワイヤーを積載し多連装ロケット砲をマウント。
腰部には複合兵装プラズマサイズがマウントされ右腕部にはグレネードガンを大型化させたグレネードライフル、左腕部にはジャハナム用シールドを装備している。
攻撃的な機体だが重量増加により機動力は低下。作中のアクロバットは技量に依るところが大きい。
ダイバー:アップルビー
茶髪碧眼の朴訥な雰囲気の優しき好青年。
元々ガンプラ好きではあったが、優しい性格ゆえに他人のガンプラを破壊するGPDには参加できず。
しかし他人のガンプラを破壊しないGBNの登場で一念発起、自らの憧れを叶えた。
フォースへは騙し討ちを受けた際にたまたま救助されたことがきっかけで参加。なお、救助したのはレジーナの父親である。
様々な価値観、思想のダイバーと関わるなかでそれでも優しさと一途さを失わなかった彼をフォースメンバーは強く信頼している。
操縦技術も高く、既にランキング1000位以内に到達。更なる強さは、新たなるダイバー達のために。
ダイバー:レジーナ
一見してセミロングの赤髪の普通の女性だが、目が琥珀色の爬虫類のような目になっている。
元々プレイを反対してくる父親への反発心でGBNを始めたものの、そこで初めて父親がGBNダイバーであり、ひいてはGPDと関わりがあったことを知った。
初心者狩りの対象になりMS08小隊での大規模爆撃の的になりかけるが無事に救助される。
その後加入時期が近かったアップルビーと関わるようになり、一時期伸び悩み苦心していたアップルビーを叱咤激励したことが切っ掛けとなって後に結ばれた。
勝ち気な性格だが根は優しく、アップルビーが技量の伸び悩みに苦しんだ時期には鍛練に付き合ったり気分転換に連れ出すなど献身的な所も。
機体は高火力機オンリー。その特性と性格上殲滅戦や短期決戦は得意だが防衛·長期戦にはあまり向いていない。