好感度数値が見えるようになった。仲のいい彼女達は〝13〟だった。泣きたい。   作:鹿里マリョウ

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あけましておめでとうございます。
今年最初の投稿です。
数話くらいで完結させようかなと思います。


好感度数値が見えるようになった。仲のいい彼女達は〝13〟だった。泣きたい。

 身体が熱い。

 

 腹の奥底から炎が吹き出て身体中を駆け巡っているかのような苦しさに魘されている。

 

 分からない。どういう状況だ?

 

 熱い。

 

 ただ熱い。

 

 思考も焼ききれて脳が機能しない。

 

 熱い。

 

 熱い。

 

 熱い熱い熱い熱い!!

 

 

「熱いッッ!!!!」

 

 絶叫が口から飛び出した。

 

「・・・・・・え?」

 

 気がついたら、ベッドの上であった。

 

「夢?」

 

 身体を焼く熱さは消えている。しかし、吐き気を催す不快感は一向に引いてくれない。

 汗で張り付く寝巻きがこれまた不快感を増幅させるのに手を貸していた。

 

 鬱陶しい朝日、最悪の気分だ。

 

「水、飲みたい・・・・・・」

 

 とにかく何でもいいから気分をリセットしたい。

 自室のドアを捻る。

 押し寄せる廊下の冷たい空気が心地よい。

 

 

「──朝から情けない顔ですね、兄さん。癪に障ります」

「うおお!?ビビったあ!!」

 

 誰もいないとタカをくくって廊下で深呼吸を繰り返していたが、なんか目の前に妹がいた。いつも通りの羽虫を見るような冷たい視線。

矢羽猪(やばいの)秋葉(あきは)。俺、矢羽猪(やばいの)直来(すぐくる)の妹。鋭い目つきが特徴の秋葉だが、いかんせん他のパーツも整いすぎているので、むしろ厳しい視線もクールビューティーを彩る一因としてプラスに働いていた。

 烏の濡れ羽色のロングヘアは淀みなく、スレンダーな身体と完璧なマッチングを魅せる。

 学校でもモテのモテらしい。というか毎日のように告白されているのを見る。

 目付きが悪いだけの俺と大違いだぜ。

 しかもこの女、思春期真っ只中である。お兄ちゃんに当たる態度が人に対するそれじゃない。彼女の目には俺がハエに写っているのかもしれない。

 最悪の朝がもっと最悪の朝になってしまった。秋葉のことが嫌いな訳では無い。ただ苦手だ。いや、怖いと言った方が正しいのか。特にその睨むような視線が。

 

 しかし、そんな全自動お兄ちゃん拒絶マシーンがなんだって俺の部屋の目の前に待機しているのか。

 

「どうした秋葉?お前が呼びに来るなんて珍しい」

「拒否します。なんで私が兄さんの質問に答えなきゃいけないんですか。あとその喋り方不快です。今後二度とやらないで下さい」

 

 え?拒否されたんだけど。キレそう。・・・・・・ん?

 

「・・・・・・なんですか、じっと見つめて。まさか実の妹である私に欲情して視姦しているのですか。いよいよもって終わってますね。私以外の女性にやったら即刑務所行きですよ」

「そんなことしないよ!!?お兄ちゃんをなんだと思ってんの!!?」

「妹を性的に捉える変態だと思っていますが、違うのですか?」

「ちげえよ!!逆によくそこまで思ってて一緒に暮らせんな!?・・・・・・俺はただ、お前の頭の上にある数字が気になっただけだ」

 

 そう、この妹、何を思ったのか頭の上に〝15〟という数字を浮かばせているのだ。最新のファッションだろうか。最近の若い子が心配になる。

 

「数字?なんのことです?とうとう脳みそまで不良品になってしまいましたか?」

「いや、頭の上に浮かんでるピンクのやつだよ。〝 15〟ってのが浮いてんじゃん」

「はあ?兄さんのお巫山戯に付き合っている暇はありません。風紀委員の仕事がありますので、先に学校に行きます。兄さんも、遅刻はしないで下さい。私の信頼にまで関わりますので」

 

 ため息混じりに踵を返す秋葉。分からん、あの数字は何なんだ。アレつけたまま学校行くのか。それでいいのか風紀委員。

 階段を降りて玄関へと向かう後ろ姿に、心の中で問いかけてみるが、当然答えなどはなかった。

 

 

 因みに登校中に調べて見たが、あの数字のやつは出てこなかった。

 でもよくある2021メガネはあった。あけましておめでとうございます。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

 おい、聞いてくれ。俺のクラスの連中が皆頭に数字をつけてる。何を言ってるか分からねえと思うが、俺の方が分かんねえから!!舐めんなよ!!?(錯乱)

 

 登校中は殆どの人間に数字はなかった。

 俺のクラスの中だけで流行っているのだろうか。

 大体の人間が4か5を乗せている。

 しかし、誰一人として自分の頭の上の異物について触れない。どころか視線も意識さえ向けないのだ。

 これはおかしい。最新の流行、しかもクラス中それで持ちきりになるほどの物だとしたら、この浮く数字の話題で持ち切りになっている筈だ。何かがおかしい。まるで誰も、数字が見えていないかのように生活している。

 

 本当に、見えてないのか?

 

 思い出すのは、今朝の悪夢。

 あの灼熱によって俺の脳みそは、本当に不良品になってしまったのかもしれない。

 

 俺の頭が壊れていると確信を得たのは、すぐ後のHRだった。

 

 中年の先生が入ってくる。その頭にも、5の数字。

 平然と本日の伝達事項を伝えていく。

 彼は巫山戯るような教師ではない。そんな教師がこの異常ファッションを注意しないわけがないし、まして自分も参加するなど有り得ない。

 

 確信。

 俺の脳みそは、不良品になった。

 

 一瞬ドッキリの可能性を疑ったが、それもない。だって俺ボッチだから。・・・・・・ボッチだから!!なんか文句あるかクソがッ!!〇ね!!

 

 HRが終わり、急いで携帯で検索をかける。

 

 人、頭上、数字──検索。

 

 嘘をついた回数?うちのクラス正直者すぎ。

 残りの寿命?あと数日で何が起こんねん。

 好感度?俺嫌われすぎじゃん。

 

 ・・・・・・え、流石にそんなに嫌われてないよね。

 皆一桁だよ。あ、もしかして10が最大?

 いや、俺を嫌いな秋葉が15なんだ。100が最大じゃね。

 

 好感度。

 考えてみれば、俺が嫌われすぎなこと以外、あらゆる辻褄が合ってしまう。

 

 数字を浮かべているのは、俺のクラスメイトや先生と妹の秋葉のみ。

 関わったことの無い人は好きも嫌いも存在しない。故に好感度が存在しない。

 一流ボッチの俺は他クラスとは交流がない。だからクラスメイト以外は数字がない。

 

 ・・・・・・何だか信ぴょう性が出てしまった。

 ・・・・・・え?じゃあもしかして俺って嫌われてるのでは?おいおいおい、死んだわ俺。

 

「大丈夫?スグクル君。顔色悪いよ?」

「天使?」

 

 頭を抱える俺を覗き込んできたのは、マジで天使と見まごう美貌を持った超がつく美少女だった。

 

「て、天使?ち、違うよ?私春香だよ?隣の席の」

 

広角(こうかど)春香(はるか)。クラスのマドンナ。というか学校のマドンナ。

 茶髪気味のボブカットとまん丸お目目は元気を振りまいている。あと胸が大きい。言い換えるとおっぱいがいっぱい。

 誰にでも、それこそこんな俺にでも優しい人気者。文化祭で行われたミスコンでは四人同率という結果ではあったものの、優勝を手にした広角さんの優しさが染み渡る。

 因みに同率四人の中にはマイリトルシスター秋葉も名を連ねる。

 

「ありがとう広角さん。でも大丈夫だよ」

「もう!スグクル君!春香って呼んでくださいっていつも言ってるじゃないですか!」

 

 し、下呼びか・・・・・・はっはーん、さてはお前、俺の事──

 

 〝13〟

 

「ゑ?」

「どうしたのスグクル君?凄い顔だよ?」

 

 一旦目を擦る。

 もう一度広角さんを見る。

 

「・・・・・・ゑ?」

「す、スグクル君?」

 

 深呼吸。

 脳を落ち着かせる。冷静になった頭で、広角さんを見る。

 

「・・・・・・ゑ?」

「あ、あのぅ、なんか喋って欲しいっていうか・・・・・・」

 

 広角さんが何かを言っているが、俺の耳には全くと言っていいほど届いていなかった。

 俺の視線は、彼女の頭上に固定されていたのだ。

 

 ・・・・・・あ、あの優しい広角春香が、

 広角さんが、

 春香さんが、

 

 

 ・・・・・・好感度、13・・・・・・?

 

「大丈夫?保健室行く?」

 

 じゃあ、なんだ?アレなのか?こんなキモ男にも優しくしてる私カワイーみたいなことに利用されているのか俺は。

 は?死にたくね?

 いやいや、まだ、まだ好感度と決まったわけじゃない。落ち着くんだ。

 

「保健室行った方がいいよね。連れてってあげるからね」

 

 椅子に項垂れる俺との距離を心配そうに近づいてくる。

 ・・・・・・心配そう、な顔なのだろうかこれは。なんか息が荒いし、にじり寄ってくる広角さんに脳内が警報を鳴らしているんだが。

 

 息を飲んで広角さんから後ずさる。

 そんなやり取りをしていると、視界の端から殺気を感じた。

 我がクラスの男子たちである。

 そんな嫉妬隠さないことある?っていうぐらいのおどろおどろい視線である。

 彼らの頭上の数値が下がって2や3となった。

 

 クラスの人気者と仲良くして下がるものとは?

 

 好感度。

 

 ・・・・・・じゃあ俺は?

 

 き、嫌われ者・・・・・・?

 

「さ、スグクル君。一緒に保健室行こう?大丈夫、怖くないよ。何にもしないから」

「い、いや、一人で行くよ」

 

 悲しいことに、本当に悲しいことに、高い確率で頭上の数字は好感度を表すものだろう。

 ならば13なんて数値の広角さんとはあまり行動を共にするべきではない。お金巻き上げられそう。逃げよう。

 

「ううん、何かあったら危ないから。一緒に行こう」

「だから一人で──」

「一緒に・・・・・・ね?」

 

 広角さんが顔を間近まで迫らせてきた。有無を言わせぬ威圧感。

 鼻先が触れ合いそうな距離に、胸がドキドキする。勿論、恐怖で。

 ヒッ、と掠れた悲鳴を震わしてしまう。

 

 彼女の瞳には、光がなかった。

 吸い込まれそうな程の、虚ろが渦巻いていた。

 

「えへへ、二人っきりで、一緒に、行こう?」

「は、はひ・・・・・・」

 

 もう俺は頷くしか無かった。そこ、ダサいとか言わない。

 何故か満面の笑みで先導する広角さんの後ろを追従する。

 消えない広角さんへの恐怖と、後にした教室から零れる怨嗟の舌打ちに板挟みされた俺は、ただ身を縮ませるしかないのだった。

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・因みに、矢羽猪直来は知らないことだが、この好感度、上限は〝10〟である。

 であるなら、好感度〝13〟〝15〟というのは・・・・・・。

 

 

 

 

 




ま、まさか俺がこんなに嫌われているなんて!しかも優しかった広角春香さんにまで!で、でも大丈夫、俺にはまだ仲のいい後輩がいるぜ!きっと60くらいはある筈だ!次回、『後輩、13』

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